東日本大震災による福島の原発事故から避難した人々を、全国でも数多く受け入れてきたのが京都。その地で「京都からの復興」をテーマに活動を続けているのが京都大学、立命館大学、同志社大学などの学生で構成された団体・KIZUNA from Kyotoだ。
「5歳の時に父の勤務先があった神戸で、2010年には留学していたニュージーランドのクライストチャーチで被災し、東日本大震災の時もたまたま前日まで、岩手に滞在していました」と話すのは、代表を務める徐東輝(ソォ トンフィ)さん。3・11によって震災との因縁を一層強く感じ、「自分にもできることはないのだろうか」という思いに駆り立てられたという。1年後の春、念願がかなって三陸にボランティアとして数週間滞在。その時、地元の人から「震災で受験や進学そのものをあきらめた子どもが少なくない」という話を聞き、心を痛めた。その後大学のある京都でも、福島の避難者をサポートする人たちを通じて、子どもの教育に悩みを抱える親が多くいることを知った。
「福島から避難されたご家庭は、お父さんと離れて母子だけの場合が少なくありません。だから勉強が遅れ気味になっても、子どもを塾へ行かせたり、家庭教師を雇う経済的な余裕がない。そこで東北出身者やボランティア経験者を集めて『京都でできる復興支援』とは何かを考え、KIZUNAfromKyotoを立ちあげました」(徐さん)。
2012年6月にスタートしたプロジェクト名は、ずばり「スタディサポート」。現在は大学生のべ20名ほどが参加している。毎週木曜日に、京都市伏見区の集会所に7〜8名の学生を派遣。小学校低学年から中学生までの15〜20名の子供たちに対して、個別指導形式で実施している。
「本当は辛いこともあるのかもしれませんが、子どもたちは明るいですよ。木曜日はスタサポでお友達と一緒に勉強できると、毎週楽しみに来てくれる子もいる。実は勉強が嫌いになりそうだったけど、スタサポのおかげでまた頑張れるようになったという子もいて、嬉しいですね」(徐さん)。
秋には教室を飛び出し、「秋の大遠足! 京大11月祭へレッツゴー!」というイベントを実施。子どもたちと保護者を合わせて30名以上の参加があり、大勢で秋の一日を楽しんだ。これからも登山や座禅体験など、さまざまな仕掛けを考えている。それも「避難先にせっかく京都を選んでくれたのだから、京都を大好きになって欲しい」から。子どもたちに今の生活を楽しんでもらうことこそが、京都発の復興支援になるはずという思いがある。
避難者には一切経済的な負担をかけないことをポリシーとする「スタサポ」は、今までメンバー自身のお金や中央共同募金、有志の義援金で運営されてきた。しかし、実は資金難のために、夏以降の活動継続ができるかどうか分からない状況だという。そこでKIZUNA from Kyotoでは今回、このプロジェクト継続のための支援を広く募集している。
「僕たちの活動は、未来に種を蒔くことだと思う。子どもたちが『あの時、みんなが助けてくれた』という思いを心のどこかにしまってくれて、いつか大人になった時に、次の世代の子どもの夢を叶えてあげて欲しい。どこまでかは分かりませんが、可能な限り一緒に歩いていきたいと思っています」(徐さん)。
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