ユニクロが大学生の学年を問わない通年採用に踏み出した。
新卒一括採用や就職協定が崩れる第一波となるのだろうか。
それとももっと大きな動きの予兆なのだろうか。
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ファーストリテイリング傘下のユニクロが、
来年春入社の採用活動から、通年で選考する仕組みを導入した。
新卒、第二新卒、中途採用の区別をなくして、
大学生については、学年に関係なく内々定を出す。(2月14日日経)
2月3日の会社説明会には、765人が参加した。
そのうち約30人が、大学1年生と2年生だったという。
採用や就職秩序を守る立場からは、様々な論議が起こりそうだ。
しかしファーストリテイリングの経営戦略に沿って見れば、
新卒一括採用も就職協定も、同社の行く道を阻む旧秩序だろう。
同社の経営戦略とは「G1」(グローバル1)と呼ばれるものだ。
H&M(ヘネス・アンド・モーリッツ、スウェーデン)などを抜いて、
衣料品の製造・販売で世界一の座に着くのがネライだという。
記事によればG1達成のための同社の主な作戦は次の通りだ。
1.国内外でユニクロの大型店出店を増やす。
2.世界最大の銀座店を開業し、国内外へのブランド発信を強化。
3.数年後に海外出店を200〜300店のペースに引き上げる。
4.生産・商品管理から人事、会計分野までの一元管理をめざし、
新情報システムへの移行を1〜2年で完成させる。
5.大学1年生から内々定を出す採用制度の導入や英語の公用語化。
(3月11日 日経)
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5つの作戦はどれも難易度が高いだろうが、
中でも人材の獲得には苦労が強いられそうだ。
昨年9月の報道によれば、年間の採用人数は1,500人で、
そのうち1,200人を外国人採用にするという。
ということは、日本人採用は300人程度となり、
ユニクロの職場で外国人比率が年々高まることは明らかだ。
そのための英語公用語化で、これを発表したのは一昨年の8月だった。
その後、英語能力テストのTOEICで700点を取得した社員は、
半分弱であったと伝えられている。
ところで今春入社した新卒社員は、国内ユニクロで141人だった。
計画人員の半分で、前年とくらべても約100人少ない。
理由は「欲しい人材が少なかった」からだ。
ユニクロの動きから、私たちは次のような知見と覚悟を得るだろう。
1.日本の採用秩序や英語教育が企業の国際化とかみ合わなくなったことは、日本の産業が本格的な国際化に突入したことを思わせる。
2.本格的な国際化とは「国の際を行き来できること」で、日本人の現地化、現地人の日本化を互換できることが基本だ。アジアの諸国に比べて日本人は、この能力に習熟していない(ユニクロや楽天の英語公用語化を恐れて腰が退けた学生が多かった)。
3.1999年に小渕恵三内閣の私的諮問機関「21世紀日本の構想・懇談会」が、英語を第2公用語にする構想を示したが、その後この考え方はフォローされなかった。自らの将来を、国や諸機関や制度に支えてもらおうという考えは捨てなければならない時期にきたようだ。
4.個人の特性、能力、努力と企業の経営戦略をアジャストさせる主体は企業にだけあるものだろうか。個人がアジャストを主導する時期が、すぐそこまで来ているのではないだろうか。
文●楢木望
ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。
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