大阪など関西のおばちゃんは、外出時に飴を持ち歩いて人に配るという話をよく聞きます。彼女たちは、一体なぜ飴を持ち歩き、人に配るのでしょう。持ち歩くのは、どんな飴でもいいのでしょうか。その『飴ちゃん』文化を探るべく、関西在住または出身の飴好きの女性たちに聞き取り調査をしてみました。
【関西では、飴ちゃんをこんなふうに使う!】
まず、飴ちゃんに関する具体的な思い出やエピソードを聞いたところ、こんな声が集まりました。
・「私は神戸育ちですが、子どものころから咳き込んだりぐずったりすると、おばちゃんが飴ちゃんをくれるのを当たり前と思って育ちました。実際、電車の中や劇場(特になんばグランド花月)では、隣から飴やみかんが普通に回ってきますし、私も回します」(45歳/大阪府在住)
・「里帰り出産したときのこと。大阪のおばちゃんという感じの看護士さんが『病室に食べ物の持ち込みは禁止です』と言ったあと『でも、飴ちゃんくらいはいいよ』と付け加えたのが印象的でした」(32歳/奈良県出身)
電車の中や劇場で飴やみかんが回ってくるなんて、関東の人には想像がつきにくい情景です。関西人にとっては、こんなにも飴が身近なのですね。
【目的はコミュニケーション!?】
次に、飴を持ち歩く理由を聞いたところ、
・「外で会った人に配って、お近付きになるため」(60代/奈良県在住)
・「周囲の人に配るため。咳き込んでいる人を見ると、いつでもどこでも飴を差し出します」(45歳/大阪府在住)
と、最初から人に配ることを前提にしている人もいれば、
・「花粉症の不快感やのどの炎症に対応するため」(46歳/大阪府在住)
・「気分転換」(50歳/滋賀県在住)
と、自分のために用意している人も。
関西のおばちゃんたちは、飴ちゃんを、自分で食べて楽しむだけでなく、他人とのコミュニケーションツールとしても利用しているようです。しかも、一緒にいる友人や家族、同じ職場の人に配るだけでなく、知らない人にも積極的に配る人が多いよう。
コミュニケーションツールとして使われるのは、飴だけとは限りません。中には前述のエピソードのように、みかんを配るおばちゃんもいるようです。飴を携帯し配るおばちゃんが特に多いのは、飴が小さくて個包装されていて、「配りやすいから」と言えるでしょう。
【飴の種類の多さもポイント】
特に「この飴でなければ」という決まりはないようですが、「常に数種類の飴を揃えておくことが重要」(奈良県在住/60代)と言う人も。なぜなら、そうすることで、疲れた人には甘い飴を、喉が痛そうな人にはのど飴を、子供に会ったらミルキーをあげる……というように、周囲に対してきめ細やかな対応ができるからだそうです。
ちなみに、好きな飴を聞いたところ、ハッカ飴やのど飴のほか、カンロ飴、黄金糖、那智黒など、昔ながらの飴が特に人気でした。チェルシー、ミルキーなど、子供に好まれる飴も挙がりました。
今回の調査で見えてきたのは、気さくで社交的な上、とっても細やかで他人思いという関西のおばちゃんたちの素顔です。子供のころから、周囲のおばちゃんたちに世話を焼かれて育った彼女たちは、自然に世話好きな大人に育ち、知らない人にもついかまいたくなるのでしょう。そんなおばちゃんたちが、他人への気遣いを伝える手段が飴ちゃんなのです。あなたもまずは一粒、職場や友達同士で「飴ちゃんコミュニケーション」を始めてみてはいかがですか?
文●本居佳菜子(エフスタイル)
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