「うがった見方」とは、「物事の本質を捉えた見方」という意味です。例えば、誰かが「彼はうがった見方をする人だ」と言ったとしたら、「彼」はポジティブな印象を持たれていることになります。
ただし、ここでちょっと気がかりなのは、近年この「うがった見方」をネガティブな意味に取り違えている人が多いことです。一体なぜ、そのような誤解が多いのでしょうか。誤用しないためにも、本来の意味をしっかり把握しておきましょう。
▼目次
1.「うがった見方」とは?
2.「うがった見方」はなぜ誤用が多い?
3.「うがった見方(うがった)」の正しい使い方・例文
4.「うがった見方(うがった)」の類義語・言い換え表現
5.「うがった見方(うがった)」の対義語・反対表現
6.まとめ
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「うがった見方」の意味を掘り下げるために、品詞に分解してみましょう。「うがっ(他動詞「うがつ/穿つ」の連用形)+た(助動詞)+見方(名詞)」に分かれます。
「うがつ」を漢字で書くと「穿つ」です。難読語ですが、「点滴石をうがつ」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんね。次のような意味があります。
なお、助動詞の「た」は動詞の連用形に付いて、その後に体言を伴い、「すでにあった結果が今もあることを」を示す ‘存続・存在’ の働きがあります。
「うがった見方」という場合の「うがつ」は(2)「物事の本質を捉えた」という意味です。さらに、助動詞の「た」、名詞の「見方」と合わせた「うがった見方」は、「物事の本質を捉えた見方」という意味です。「人情の機微を巧みに捉えた見方」という意味もあります。まとめると「物事の真相や人情の機微など、本質を捉えた見方や考え方」ということができるでしょう。
つまり、冒頭の「彼はうがった見方をする人だ」は、「物事の本質を捉えた見方をする人」として彼を評価する言葉です。表面的ではない見方ができる人という、ポジティブな意味ですね。
このように「うがった見方」は、「物事の本質を捉えた見方」というポジティブな意味です。
しかし、実はこの言葉が非常に誤解されているということが、平成23年度の文化庁による「国語に関する世論調査」で分かっています。「疑って掛かるような見方をする」と誤った理解をしている人が非常に多いという調査結果でした。
調査によれば、「疑って掛かるような見方をする」と答えた人の割合(48.2%)が、本来の意味である「物事の本質を捉えた見方をする」と答えた人の割合(26.4%)を上回っていたのです。
なぜ、このようなことが起こるのでしょう。いくつかの理由が考えられます。
1)「うがつ」という語が知られていない
「うがつ」という言葉は普段さほどよく使われる言葉ではありません。そのため、正確な意味があまり知られていない可能性があります。漢字の「穿つ」も難読語です。
2)「うがつ」と「うたがう」の字面と響きが似ている
文字数は異なるものの、「う」と「が」が共通しており、耳から聞いた場合の響きが似ています。
3)「本質を捉える」人の気質が関わっている
物事の本質を捉えた見方をする人には、そもそも洞察力や観察力が鋭く、探究心が旺盛。そのため、表だけでなく裏側や奥も見極めようとする姿が、他人には「疑ってかかっている。行き過ぎた追求」と映る可能性もあります。
4)「うがつ」には「凝る(こる)」という意味も。
本質を捉えることに凝るあまり、その性質が行き過ぎと捉えられても不思議ではありません。
さらに、この逆転現象は、近年の辞書にも反映されつつあります。『明鏡国語辞典 第三版』は、「うがつ」の項に、3つ目の意味として[新]と赤字で注釈を添えたうえで「深読みする。行き過ぎだと思われるような解釈をする」と掲載しています。
「疑って掛かるような見方をする」とまでは書かれていませんが、表面的に捉えず、さらに追求するためにそのような新しい解釈が加わったのでしょう。
もともとは「本質を捉えた見方」という良い意味しかなかった、「うがった見方」という言葉。誤った捉え方をする人が増えた結果、このような逆転現象が起きている現状については、知っておくほうが良さそうですね。
本来の意味で使う人よりも、誤用している人のほうが多い可能性が高い「うがった見方」。冒頭の「彼はうがった見方をする人だ」のような使い方は、そのシンプルさゆえ、正しい意味と間違った意味の両方に受け止められる可能性があります。
誤用が多い点をふまえて、正しい意味でしか捉えようがないように、文脈を工夫することをおすすめします。以下にいくつか例文を挙げます。
「できる」を加えて「うがった見方ができる」という表現にしたり、文脈的に良い意味の文を加えたりすると、ポジティブな意味として捉えられやすいでしょう。
何において「うがった見方」なのかを具体的に表現すると良いでしょう。望ましい結果へと導かれたことを示せば、「うがった見方」がポジティブな意味だと分かります。
上記の例とは逆に「もっと本質的な捉え方をするべきだ」という論調で使うこともできます。
「抜本的でうがった見方」「画期的でうがった見方」など、他の語と組み合わせて「うがった見方」を修飾するのも良いでしょう。
「物事の真相や人情の機微など、本質を捉えた見方」という「うがった見方」。本来の意味と同じように使える別の表現を紹介します。類語として言い換えたい時に活用してみてください。
読みは「かくしんをついたけんかい」。「核心」とは「物事の中心となる大切な部分」のことです。その大切な部分をつく見解は、本質を捉える「うがった見方」と同じような意味です。
読みは「ほりさげたみかた」。「掘り下げる」とは、「表面的にではなく、より深く追求する」という意味があります。つまり、「掘り下げた見方」は、本質を捉える「うがった見方」と同じように使えます。
読みは「ほんしつをとらえたみかた」。「うがった見方」本来の意味そのものであり、同じように使うことができます。
読みは「きびをとらえたみかた」。「うがった見方」本来の意味そのものであり、同じように使うことができます。
「うがった見方」の反対の意味を持つ言葉を紹介します。本質を捉えていない見方、表面的で的外れな見方のことを表したい時に、使ってみてください。
読みは「ひょうめんてきなみかた」。「物事の表面だけを見た考え方・見解」という意味です。
読みは「まとはずれなみかた」。「核心から外れた見方」という意味です。
読みは「ピントのぼけた意見」。「ピント」とは、焦点、フォーカスのことで、転じて「物事の要点」のこと。物事の要点をしっかり捉えていない意見や考え方という意味です。
読みは「あさいけんかい」。物事を深く掘り下げて本質に迫る意味がある「うがった」とは逆で、「浅い」は「物事を深く掘り下げない」という意味があります。「見解」とは、見方や考え方、評価」のこと。まとめると「物事を深く掘り下げない、表面的な見方」という意味です。
今回は「うがった見方」の意味や使い方に加え、本来の意味とは逆の意味で捉える人が増えている現状についても解説しました。言葉は生き物、とはよく言われることです。言葉を使うのが人であり、私たちが生きている時代が変化していく限り、言葉もまた変化することは止めようがありません。
変化の節目にある言葉をどのように扱うかは人それぞれです。ただし、相手の理解と自分の理解が異なれば、コミュニケーションが思いも寄らない結果になる点は気をつけたいところです。
(前田めぐる)
※画像はイメージです
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