新社会人からリアルな悩みを募集し、独自の視点からアドバイスをもらうこの「お悩み相談室」。
今回は、「今の仕事に向いてないかも」と悩んでいる人に、面接官に向けた逆採用サイト「世界一即戦力な男」がヒットし、著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)を持つライターの菊池良さんが回答します。
イラスト・わかる
こんにちは菊池良です。先日、ちょっと身体にだるさを覚えたので病院に行き、健康診断のような検査をしたあと、「どこも正常」と言われました。その後、ごはんを食べたらだるさはなくなりました。どうやらお腹が空いていただけだったようです。
それでは、今回の相談です。
なるほど、この相談にはすごく共感する部分があります。ぼくはライターをやっていますが、この仕事が自分に向いているのかどうか、実はよくわかっていないのです。
ぼくは今年の7月に会社を辞めて、ライターになったわけですが、「おれはライターに向いているから、ライターになるぞ!」と思ったわけではありません。むしろ、「ああ、やっぱりライターになってしまったか」と思っています。
というのも、ぼくは会社員とライターを掛け持ちしていたわけなんですが、ほんとうはビジネスエリートになりたかったんですね。
本屋に行けば『ビジネスエリートになるための~』みたいな本がいっぱいあるじゃないですか。
ああいう本を読んでは「おれもビジネスエリートになってバリバリ仕事したい」って思っていました。
だから、会社員生活をやりたかったんです。
カッコいいスーツを着て気のいい仲間といっしょに切磋琢磨してね。派閥争いなんかもしちゃって、世界中にインパクトを与えるものを作ってビジネス誌の表紙で腕組みしたりして。
ニューヨークで「アイム・ジャパニーズ・ビジネスマン」「フロム・ミツビシ」って言ってね(三菱に入る必要がありますが)。
でも、ビジネスエリートは向いていなかったのです。きっと。
だから誰も「来月からアメリカに駐在してくれよ」と言ったり、「我が社の命運はきみにかかっている」と大規模なプロジェクトをまかされたり、電話がきたと思ったら「ヘッドハンターだ。きみを倍の給料で引き抜きたい」という内容だったり……といったことはなかったのです。
それで何に向いているかというと、ライターだったんですね。だから、「本を書きませんか」「記事を執筆してください」と頼まれるのです。
それでいろいろ頼みごとをやっているうちに、気がつけば独立していたのです。
何が言いたいかというと、「頼まれることが向いていること」ってことです。「頼む」ってことは、相手は「これができるのはあの人だな」と考えています。なぜそう考えるかというと、第三者から見たら、それがあなたに向いているように見えるからです。
なので、基本的には周囲に頼まれることは、自分に向いていることだと考えていいでしょう。
質問者さんは「何となく仕事をつづけてきた」と言いますが、会社は「この人にはこれをやってもらおう」と思って仕事を振っているわけです。向いていないことを振っていたら、日々の業務に支障が出てしまいますからね。その点は、周囲を信頼してもいいのではないでしょうか。
しかし、問題はまだあります。「その仕事が面白くない」という部分です。
向いているかどうかと、面白いかどうかは別です。たとえば歌が下手でも、カラオケは楽しめますよね。それと一緒です。
「面白くない」というのは具体的に何が面白くないのでしょうか。自分がどの要素に退屈しているかを、把握しないといけません。そして、退屈なことそれぞれに対して、個別に対処しましょう。
例えば、
気が散って作業に集中できない → どうやったら集中できるかを考える
重要なのは「1つずつ」対処していくこと。
ぜんぶをいっぺんに解決しようとすると、「転職」のような大がかりなことを考えがちです。しかし、転職は未知数が多いので、それで解決するかはわかりません。
転職すれば仕事内容、職場環境、人間関係などがすべて変わることは確かですが、それぞれでサイコロを振り直すだけなので、すべてがいい結果になるとは限りません。
自分に向いていること、自分が退屈していることを、もっと詳細に観察してみましょう。解像度を上げることによって、見えるものが変わってきます。
「ああ、自分はこれをつまらないと感じるんだな」と理解できれば、それを避けることもできるようになります。そうすることで「退屈」や「ストレス」を遠ざけることができるでしょう。
ぼくも自分を観察することによって、「身体がだるい」と「お腹が空いている」を見分けられるようになりました。半分は医者のおかげですが。
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