「やぶさかではないけど…」といわれたとき「拒否された」と感じる人も多いようですが、「やぶさかではない」の本来の意味は「肯定」です。
意味を間違えて覚えていると、全く逆の意味になってしまうなんて怖いですよね。
「やぶさかではない」を使う人は、上位の役職についている年長者が多く、「同意されるということでしょうか」などと確認もしにくい雰囲気があります。
今回は、「やぶさかではない」の意味と使い方、誤用表現などについて紹介します。
「やぶさかではない」とは、「やぶさか」の否定表現です。では、この「やぶさか」とはいったいどういう意味でしょうか?
「やぶさか」は漢字で「吝か(やぶさか)」と書きます。「吝」という漢字はけちという意味の「吝嗇(りんしょく)」という熟語でも目にしますね。
「吝」は、他にも「ものおしみする」「ためらう」という意味があるので、
「やぶさか」+「ではない」
で、「けち」+「ではない」、「ものおしみ」+「しない」という意味になります。
「やぶさか」について『広辞苑』での意味は、以下のようになっています。
やぶさか【吝か】
(1)物惜しみするさま。けちなこと。吝嗇(りんしょく)。
(2)未練なさま。思い切りの悪いさま。
(3)(「…に―でない」の形で)…する努力を惜しまない。ためらうことなく…する。「過ちを認めるに――でない」
(『広辞苑 第六版』P.2834より引用)
「○○するのに、やぶさかではない」という表現は、積極的な姿勢をあらわす言葉なのですが、『文化庁』が行っている「国語に関する世論調査」によると、正反対の意味で理解している方が半数程度います。
調査結果によると、このように「喜んでする」と正しく意味を理解している人は、「仕方なくする」と誤解している人よりも、約10ポイント少ないのです。
日常的に使う言葉ではないですし、約半数の人が誤解していることを考えると、重要なビジネスシーンでは使わない方が無難かもしれませんね。
「やぶさかではない」が遠回しに表現した強い肯定になるので、対義語ははっきりとした否定表現になります。
たとえば、
が対義語にあたります。
「やぶさか」は通常、「○○にやぶさかで(は)ない」と用いられ、「○○する努力を惜しまない」「積極的に○○する」「ためらうことなく○○する」という意味で多く使われます。
例文をあげると
「○○党の□□議員『△△党と合流するのにやぶさかではない』と発言」
のようになります。この例文の意味は、○○党のA議員は「△△党と合流する努力を惜しまない」「ためらうことなく△△党と合流する」になります。A議員の態度は「合流」に「前向き」ということになりますね。
他にも「やぶさかではない」を使った例文をあげてみましょう。
「やぶさかではない」は積極的な姿勢を表す言葉ですので、上の例でいえば、それぞれ「投資」「彼との結婚」について前向きということになります。
「やぶさかではない」は、以下のような表現で言い換えが可能です。
「異存はない」「異論はない」という言葉は、「反対はしない」という意味にもとれるので、「やぶさかではない」が本来持つ、奥ゆかしい、非常に日本的な表現がやや薄まった感じに聞こえるかもしれません。
とはいえ、ストレートに「賛成」だという気持ちを強く出しすぎると「やぶさかではない」の持つ、やわらかなニュアンスが伝わりにくくなってしまうので、「100%賛成ではない」という場面や、「物事を円滑に進めたいとき」に使うといいかもしれないですね。
「やぶさかでない」と同じく、肯定表現なのか否定表現なのか分かりにくい表現に「まんざらでもない」があります。
まんざらでもないの意味は
です。「やぶさかでない」と同じように肯定表現になります。
どちらもはっきりと口に出すわけではないけれど「いい」「好ましい」と思っているという意味合いで使われます。
どちらかというと「まんざらでもない」の方がよく使われますし、誤解も少ないかもしれませんね。
「やぶさかではない」を、英語ではどのように表現するのでしょうか?
たとえば「be ready to ~」という表現を使うと「いつでも準備ができている」「用意がある」という意味になるので「やぶさかではない」というニュアンスを表現することができます。
君と一緒に行ってもいいよ。
⇒あなたと一緒に行くのにやぶさかではない。
また、「be interested in ~」という言い方で「そのことについて興味がある」という意味になります。これに「very」を付けて「とても興味がある」「とても興味深い」という表現にすると「やぶさかではない」という言葉が持つ前向きな姿勢が出せそうです。
株式投資にとても興味があります。
⇒株式投資にやぶさかではない。
「やぶさかではない」は、積極的な姿勢をあらわす言葉ですが、直接的に強く主張をする表現ではありません。前向きな気持ちを保ちつつ、謙虚で慎ましやかな姿勢をあらわすときにピッタリな言葉です。
奥ゆかしく、日本らしい表現ともいえますがそのせいもあって誤用や誤解も多く、使い所に気をつける必要もあります。
相手と状況を見ながら使うといいでしょう。
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