ビジネスの現場では、学生時代には口にしなかったような言葉を使う場面もたくさん出てきます。例えば「ご足労おかけします」のように使われる、「ご足労」という言葉。どんな意味で、どんな立場の人に対して、どんなタイミングで使うのか知っていますか? 社会人になる直前の今ちゃんと予習をしておき、いざという時にはバッチリ使いこなせるようにしておきましょう。
■ちゃんと知ろう!「ご足労」の意味
「ご足労」とは、足労「足をわずらわせる」(漢字の「労」には、骨を折って働くという意味があります)という意味のある単語に御(ご)をつけ丁寧にした言葉です。決して望んで歩くわけではないが仕方なく、という意味を持つので、相手の足に働いてもらって負担をかけた、というニュアンスが生まれます。「本来なら私どもの足を働かせてそちら様に出向くところを、わざわざ先方からお越しいただく」といった感じでしょうか。
ビジネスの世界では主に、こちらの社屋またはこちらがいる場所までわざわざ足を運んでくださった取引先の人の、労をねぎらう場合に使います。「今日はわざわざご足労いただきありがとうございます」など、相手の労力に対する感謝を示すイメージです。「ご足労」は主に外部の人に使われ、同じ目上の人でも社内の人に対しては使いません。使うシチュエーションとしては、基本的には足を運んでもらった後に使います。先方にわざわざ来てもらって面会した時の挨拶の言葉として、または事後のお礼のメールの中で、足をわずらわせて申し訳なかったという気持ちを感謝の言葉と共に伝える言葉です。足を運んでもらえるようお願いするときに使うこともあります。「もしよろしければ」というふうに相手の都合を尊重しつつ、申し訳なく思う気持ちを込めて「ご足労願えませんでしょうか」のように使いましょう。それなので「是非ご足労ください」のような、申し訳なさが排除された使い方は間違いです。ところで「ご足労」という言葉は少々古い言葉のようで、取引先の人の年齢が若い場合は意味が通じないこともあります。せっかくの敬語も相手に伝わらなくては意味がありませんね。その場合は「わざわざお越しいただきありがとうございます」など他の言葉に言い換えたりして臨機応変に使いましょう。
「ご足労」という言葉は、実際のビジネスシーンでは以下のように使います。
・わざわざ先方から来てもらったときの最初の挨拶として
「この度は遠路はるばるご足労いただき、恐縮です」
・先方から来てもらった後日、メールを送るときに要件に添えて
「先日はお忙しい中をご足労いただき、ありがとうございました」
・こちらから先方に来てもらえるようお願いをするとき
「申し訳ありませんが、ご足労願えませんでしょうか」
・こちらの不手際で先方に来てもらうことになってしまった場合のお詫びの言葉として
「この度はお忙しい中、ご足労をおかけ致しまして誠に申し訳ありません」
「ご足労」の正しい使い方のイメージは伝わったでしょうか?
ところでこの「ご足労」、労という漢字が「苦労」を連想させることから、良いイメージを持たない人もいるようです。使用するときは相手の反応を観察し、良い感触を得られなかった場合は、次回からは使わないようにした方が無難です。
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