オーケストラには欠かせない「指揮者」。みなさんは、あの指揮者の動きがどういう意味なのか、疑問に思ったことはありませんか? また、正直いなくてもいいのではないかと思った人もいるのではないでしょうか。今回は、音楽大学の指揮科を卒業された人に聞いた、指揮者の動きの意味や疑問、豆知識をご紹介します。
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■指揮者のことを知るとクラシックに興味が湧くかも?
●指揮者の動きの意味は?
指揮棒をテキトーに振っているように見える指揮者の動き。音楽の教科書には指揮者は図形で何拍子かを伝えているという記述があったりします、それはそのとおりで、例えば三拍子なら三角形の打点を示す、といった動きがあります。
ただ、こうした動きは初歩的なもの。オーケストラの指揮、特にプロになると、テンポや音のタイミングだけでなく、「この楽曲はこう演奏するのだ!」という指揮者の解釈を伝えるのがメインになります。技術の高い指揮者は、それぞれで独自の動きや複雑な動きを加えるため、同じ楽曲でも同じ動きをすることはほとんどないそうです。こうした独自の動きが指揮者の個性であり、「よくわからない動き」に見える要素なのかもしれません。
また、オーケストラの指揮は、伝えたい内容を半拍子先に振る「先振り」という指揮法を使うことがあります。指揮棒を向けている方向とは違うタイミングで音が鳴ったり、見ている側はわずかなズレがあるので、そこに違和感を感じる人もいます。
●指揮者がいなくても成立はする?
よくあるのが「指揮者がいなくても成立はするんじゃないの?」という疑問。これについては「楽曲の演奏はできるけど良い音楽にはならない」とのことです。指揮者がいなくても、全員が楽譜どおりに演奏すればいいだけです。しかし、大人数の演奏ではどうしても各パートのズレが出たり、曲も単調なものになってしまいます。そこで指揮者の出番です。指揮者は自分の解釈を演奏者に伝えるだけでなく、各パートの音や動きを管理し、的確な指示を出します。いわばオーケストラ全体の責任者のようなものですね。
楽曲をよりよいものにすることができる指揮者ですが、反対にひどい指揮をして楽曲を台無しにすることもあります。極端な例ですが、テレビ番組で子どもに指揮棒を振らせる企画があり、テンポや強弱などむちゃくちゃで、聞くに耐えないものになっていたこともあります。
●指揮者によって解釈が大きく異なる曲もある?
指揮者によって楽曲の解釈が異なるクラシックは「誰が指揮棒を振っても同じ」ではありません。例えばベートーベンの「交響曲第5番」(運命)という楽曲。この楽曲の有名な出だしだけでも、指揮者によって解釈が大きく変わります。有名な指揮者の人でも、明らかにゆったりなテンポの人、早いテンポの人などさまざまです。高名な指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンなどはテンポが速めだったりします。
クラシックは「指揮者の楽曲への解釈も楽しむ」ものなので、指揮者ごとの個性を知ることも楽しいことです。
●演奏者って指揮者を見ているの?
楽譜を見ながら演奏する演奏者ですが、実は指揮者のことも見ています。もちろん、ずっと指揮者を見ながら演奏することはできません。なので、重要なポイントだけは顔を上げたり目線を指揮者に向けます。こうした重要なポイントの場合は楽譜に「めがねマーク」を書き込みます。指揮者を見られないときはコンサートマスターを見たり、指揮者が視界に入るように楽譜の位置を調整したりするようです。
●指揮者になるにはどうすればいいの?
指揮者になるには、指揮科のある学校に入るのが一番分かりやすいでしょう。ただ、入試には基礎的な外国語のテストに楽曲や聴音の問題、指揮やピアノ演奏の実技ももちろんあり、超がつくほどの難関です。素人がいきなり入るというのは厳しいでしょう。他にも「絶対音感があった方がいいのか」なども聞かれます。音を操る立場なので、音をくみ取る高い能力は必要ですが、絶対音感の持ち主でないと指揮者になれないというものではありません。その人の努力次第だといえます。
指揮科の卒業生の方にいろいろ聞いてみましたが、「先振り」や「楽譜と一緒に指揮者を見ている」などは筆者も知りませんでした。クラシックをテーマにした映画やドラマなどもありますし、こうした内容を知ってから見ると、面白みが増すかもしれませんね。
(中田ボンベ@dcp)
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