おおゆうしゃたちよ、死んでしまうとは!
せっかく魔法を唱えたのになぁ。私? ダンジョンで戦闘不能になったキャラをよみがえらせる導士である。またぬののふくと雀の涙程度のG(ゴールド)を持たせてやらねばならんのか......。
なに? 手っ取り早く「めんせつかん」を倒したい? ......よかろう。ならば攻撃のレベルアップ法を教えようじゃないか。
自己PRは抽象的すぎても具体的すぎてもダメ
就活生はみんなよく「抽象的すぎる」&「具体的すぎる」ことで失敗するんだよ。
おぬし「めんせつかん」に「アルバイトの経験は?」を聞かれ、こんなことを言っておったな。
「居酒屋のアルバイトでは、お客様が求めるものを聞くことにより、売り上げを伸ばしました。また、お店の後輩にも積極的に指導し、周囲の信頼を得ました」
でもこれを聞いて「いい学生だな、採用!」となるだろうか? いやいや、面接会場に行けば、売り上げを伸ばした学生、周囲の信頼を得た学生だらけだぞ。
いいか、よく聞け。これが回答が「抽象的すぎる」例だ。抽象的で何もわからん。なら、何を伝えればいいのか。結論から言えば、「具体的な成功体験」と「成功を再現するコツ・独自の理論」だ。
たとえば先日、テレビを見ていたらだな、毎年地域で漁獲高No.1を誇るマグロ漁師が出てきたのだ。どう見ても風采が上がらず、正直「本当にこのおっちゃんが?」と感じた。ところが彼は海に出ると、日焼けした顔を水平線に向けこう言った。「最近の若ぇのは、魚群探知機なんか頼るから獲れねえんだ。オレは山を見るのさ」。なぜ山かと聞かれると「そりゃ、栄養ってのは陸から流れてくるからだよ。あそこに山があるだろ、んで、○日前に雨が降ったとなれば、川から養分が流れてここに......」と、大いに成功体験とコツを語った。ようやく「なるほど、この人は独自の理論を持っているのだな、さすが!」と思ったものだ。
就活生も「めんせつかん」に「さすが!」と思ってもらうためには「具体的な成功体験」と「成功体験を再現するコツ・独自の理論」を語ればいい、というわけだ。
というわけで、おぬしは具体的に居酒屋で何をしたのだ? もう一度答えてみい。
ゆうしゃ「私は、店長が『売り上げが伸びない』と悩んでいたのを聞いて一念発起し、以降、接客のたび『歓送迎会などあればぜひうちで』と声をかけていました。進歩があったのは『何かお困りのことは?』と聞いた時です。ある大学生のお客様が『ネットゲーム仲間が快適にプレーできる場所がなくて困っている』とおっしゃっていました。さっそく店長にかけあうと『昼ならあいてる』とのこと。そこで私は、個室にそのゲームのポスターを貼り、お客様に『1時間に1本ドリンクをオーダーください』とお願いすると、私の居酒屋はゲーマーの集会場になったのです。その後も......」
もうよいもうよい。それは、「具体的すぎる」例だ。具体的な話が長すぎて、いつまで経ってもコツが出てこない。テレビで芸人が暴露話なんかをする時、笑わせるために必要な事実だけをチャッチャと伝えるだろ? それと同じで「コツ」を語るために必要なことだけをチャッチャと語ればいいのだよ。ではおぬし、その成功体験を会社で再現するための「コツ」は何だと思う?
ゆうしゃ「営業のポイントは、他者の困りごとを解決することにあると考えます。人はたいてい何かの困りごとを抱えています。その相談に乗ると宣言し、解決をはかると、お客様は私たちのファンになってくれるのです」
いいじゃないか! なら、面接で「アルバイトの経験は?」と聞かれた時に、こう話してみたらどうだ!
「居酒屋のアルバイトで一念発起、昼間、ゲーマーの集会場にしするという新ビジネスで店に利潤をもたらしました。ポイントは『他社の困りごとを聞きまくる』営業力でした」
おぬしが最初に言っておった「売り上げを伸ばした」という話には、残念ながら証拠がない。せっかくおぬしの武器なのに、まるっきり使い物にならないわけだ。
でも「具体的な成功体験」と「成功体験を再現するコツ・独自の理論」は証拠になる。
よいか。
会社はなぜ「めんせつ」などという面倒くさいことをするのか。それは、学生がこの会社に入って役に立つかどうか見極めるためだ。どんな質問も、この意図でなされる。多くの学生が「人をまとめてきた」「サークルで信頼を勝ち得た」などと言うが、そんなのはみんなが言うのだ。差別化できるのは「コツ」だぞ。「コツ」がわかっている人間は、成功を再現できるからな。
だから「コツ」が抜けているアピールでは「めんせつかん」は倒せぬのだ!
本日の武器(まとめ)
■自分の成功体験を抽出しよう。
■具体的な成功体験とコツを思い出し、紙に記入しよう。
文●夏目幸明
(本コラムは、内定というクリアを目指すために必要な心構えや戦略をわかりやすく紹介する連載企画です。続きはサイトに随時アップしていきます→http://student.mynavi.jp/style/column/quest/)
夏目幸明プロフィール
「マネジメント、経営、技術の3つが見えれば企業が見える」を旗印に様々な企業を取材する経済ジャーナリスト。大学・専門学校で就活支援、マーケティングなどの講師をつとめる。講義は「資格の学校TAC」などで聞けるほか、ネット放送で「就活SHOW」を行う。著書は「社長あるある」(朝日新聞出版社)など。
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