すっかり気温も高くなり、登山のシーズンの到来です。今年から新たに登山を始めようと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし登山は楽しいだけではありません。「遭難」という危険も伴います。では、遭難しないためにはどんなことに注意すればいいのでしょうか。また、万が一遭難してしまったらどうすればいいのでしょうか?
■遭難する可能性を考えて準備する
遭難しないための注意点、遭難してしまった場合の対処法などを、日本山岳救助機構(jRO:ジロー)合同会社の代表・若村勝昭さんに伺いました。日本山岳救助機構(jRO:ジロー)合同会社は、会員制の山岳遭難対策制度を運営、また遭難対策などの講習会も行っています。
——登山をする際に、「遭難しないよう」にまず気を付けるべきことは何ですか?
若村さん 遭難原因の大部分は、道に迷うことと転・滑落です。今回は、その道迷い、転・滑落を中心に説明します。逆説的ですが、登山をするときは「もしかしたら遭難事故に遭遇するかもしれない」と、まず考えてください。それを常に意識の片隅に置いて、登山の準備をすることが大事です。
——「かもしれない登山」ということですね。
若村さん 登山中のヒヤリ・ハットはどなたも経験のあること。ヒヤリ・ハットで済んだか、遭難事故に至ったかはまさに紙一重、一瞬の違いです。この違いはベテラン、初心者を問いません。遭難事故の可能性はどなたにも、どんな登山にもあることと意識しておきましょう。「今、そこにある危機」を忘れないようにしましょう。
——その他に、気を付けるべきポイントはありますか?
若村さん 例えばシチュエーションごとですと、
●事前の準備が不十分なとき
コースの下調べをしていない。天気予報に注意していない。体調を整えていない。登るコースに対しての技術が不足。日程、コースに合わせた装備と食料を準備していない。登山届を用意していない。リーダーを決めていない、などの準備不足が考えられます。これらの各項に漏れがないかチェックして補完するようにしましょう。
●体調が悪いとき
風邪気味、睡眠不足、貧血気味、その他の体の不調全て。こうした体調不良は登山の途中で改善することはありません。万全でないときは潔く中止しましょう。山は逃げません。
●道に迷ったとき
大原則は分かるところまで引き返すこと。引き返せなかったらその場を動かず、救助を待つ。夕方になったら安全な場所で、しっかり着込んで一夜を明かす。沢を下ってしまうと進退窮まったり、滑落したりする恐れがあります。
●天候が急変したとき
低体温症、落雷を予想しましょう。早めの防寒具、雨具の着用や避難場所の選定をします。高温・高湿の中での登山は熱中症の恐れがあります。衣服の調節や小まめな水分補給が必須です。
●下山路を下るとき
転・滑落の90%は下山時です。疲労もたまっています。注意力も散漫です。下山の前に靴ひもをしっかり結びます。同行者同士で注意を呼びかけましょう。木の根、落ち葉、ぐらつく石に注意。ストックを持っている方は積極的に使用しましょう。特に、終点の5分前が要注意です。
......といったことに気を付けるべきです。
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