採用面接では、せっかく素晴らしい素質を持っていても、それを伝えきれずに内定を逃す残念なケースも多いようです。こうしたケースで勝敗を分けるのは、その人の能力ではなく、それを明確に伝える表現力や、「伝えたい」という熱い気持ちです。
今回お話を伺うのは、2011年「働きがいのある会社」調査(従業員50〜249名の企業カテゴリ・Great Place to Work(R) Institute Japanが実施)において第3位に選出された、ライフネット生命保険の採用担当、曽和利光さん。同社の選考を含め、これまで採用担当として10,000人近くの学生と関わってきた経験の中で、面接での“ちょっと残念な人”の具体例を教えていただきました。
【その1.成功した結果ばかり話す人】
面接での“エピソード選び”で損をしている人は意外と多いようです。インターハイで何位になった、コンクールで優勝したなど、うまくいった結果を中心に話す人が多いのですが、実はこれが代表的な“残念な例”なのだとか。
「もちろん、そうした結果自体に価値がないわけではありません。ただ、すべての過程がうまくいった体験を聞いても、その人らしさがまったく見えないのです。採用担当としては、小さなことでも、自分なりに工夫した過程や、逆境を乗り越えた過程の細かいエピソードが聞きたいですね。また、一人で頑張った経験よりも、人との関わりがあって、その中で何らかの役割を果たした経験を選ぶのがベター。その方が、人との接し方や組織の中での立ち位置など、企業側が知りたい情報が盛り込まれている可能性が高いからです」(曽和さん)
一つ良い例をあげると、過去にある学生がした、ケーキ屋さんでのバイト体験のエピソード。普通、機械的に注文を受けるバイトが多い中、その学生は、一人ひとりのお客さんがどんな時間帯に来てどんな商品を注文するか覚えていたそうです。おかげで、新商品が出たときには、お客さんの好みに合わせてオススメすることができ、買ってくれる人が増えたのだとか。これは、ビジネスの現場で営業が行う「提案」の仕事にも通じることで、入社してからの働きぶりが瞬時にイメージできる、面接での話題に適したエピソードと言えそうです。
ちなみに曽和さんは、知りたい情報が盛り込まれていなかった場合、さりげなく「ほかに何かないですか?」と聞いてみるそうです。面接官に「ほかには?」と聞かれたときは、まだあなたの人柄が伝えきれておらず、エピソードを変えてさらにアピールするチャンスだと思うのがよいかもしれません。
【その2.自分の性格を矛盾してアピールする人】
誰しも、面接の場では自分をよく見せたいもの。しかし、ウケがいいと思って発言や行動に矛盾がおきている“残念な人”もいるようです。
極端な例を挙げると、うつむきながらボソッと「私は明るくて積極的です」と言ってしまっては何の説得力もありません。また、協調的で自立的などと、逆に近い性格を並べて強調すると、どちらがその人の本当の姿か、面接官には判断がつきません。
「私たちが面接で学生を見るときには、自己認知ができているかどうかも見ています。自分に足りない部分やダメなところを分かっていれば改善もできますが、それが分かっていないと、実際に仕事をし始めてから、なかなか成長しないからです」(同)
わずかな時間しかない面接の場では、なるべくスムーズに自分の特徴を面接官に伝えたいもの。矛盾したアピールには気を付けた方がよさそうですね。
【その3.人見知りでなかなか発言できない人】
伝えたいことや良いエピソードを持っているのに、もともと控えめでおとなしく、積極的に発言できない人も“残念な人”と言えるようです。
「この場合、決して人見知りであること自体に問題があるわけではありません。面接官は『暗いから』、『明るいから』といった表面的な気質だけでその人を判断することはないと思います。ただ、発言が極端に少ないと、面接官はその人がどんな人か判断できず、不採用にするしかなくなってしまいます」(同)
普段はおとなしい人も、面接の場では失敗を恐れず、どんどん発言していくと、チャンスにつながるのではないでしょうか。
【その4.最終面接で力を出し切れない人】
最終面接までは必ず通るのに、いつも最終で落ちてしまうという人もいます。最終面接では、何が求められているのでしょうか。
曽和さんによると、選考を突破して最終面接まで残った人たちは、その会社の採用基準を満たしている人がほとんど。最終面接では、そんな学生たちの中から、限られた人数を選び抜かなければいけないため、面接官は、その人の“すごさの度合い”を見極める必要があるのだそうです。
「したがって最終での結果は、自分がどのくらいすごいのかということを、いかに面接官に伝えられるかにかかっています。能力を持っているのに伝えきれずに最終で落ちてしまう人は、たぶん具体的なところを表現できていないのだと思います」(同)
たとえば、大会で3位になったなら、50人中3位というように、数字にできることは数字にし、比較対象をあげると、相手にも“その人のすごさ”が具体的にイメージできるようになるそうです。
【結局、ちょっと残念な人とは?】
求める人材像は、職種や業種、企業によって違うので、ここでご紹介した例や表現のポイントがどの採用面接でも当てはまるとは限りません。しかし、どんな面接にも共通して言えるのは、「自分がどういう人間か」を伝える場であるということ。
「求める人材のタイプは、企業によってさまざま。無理にその企業に合わせたアピールをして選考に受かっても、入社してから職場の雰囲気に合わず、自分がつらい思いをすることになります。自分の性格や能力を正直に伝えて、合うかどうかは採用担当者に判断してもらえばいいのではないでしょうか」(同)
“残念な人”というのは、経験や成果以前に、自分らしさをうまく伝えられていない人のようです。しっかり客観的に自分を理解した上で、自分の特徴を相手に伝える練習を重ねてみましょう。
曽和利光氏プロフィール:
1995年、新卒でリクルートに入社。以来、自社の人事や組織人事コンサルティングを担当。特に採用や教育の企画・運営に携わり、新卒採用マネジャーとして最終面接官でもあった。採用活動を通じて出会った学生は10,000名近く。2009年夏、ライフネット生命保険に入社。
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