伝え方を知って、世界が少し違って見えた ― 大学生が「見えない」「聞こえない」人たちとのコミュニケーションを学ぶ #つながる体験部
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大学生が“みんながつながる社会”を目指して、自分たちの目で見て、感じて、発信していく企画「#つながる体験部」。今回のテーマは、「“伝える”ってなんだろう?」。
もし、声だけでは伝わらない相手がいたら? 文字だけでは届かない場面に出会ったら?
手話、筆談、要約筆記、スマホの文字起こしアプリ……「伝える」方法は、ひとつじゃありません。この連載では意思疎通支援についてあまり知らなかった大学生たちが、さまざまな“伝える方法”と出会い、驚き、考え、そして自分ごととして捉え直していきます。
企画に参加してくれたのは、大学3年生のミヤシタさん、修士2年生のガモウさん、2年生のコさんの3名。“伝える”ことをめぐって交わされた、リアルな意見をお届けします!
#つながる体験部 メンバー
ミヤシタさん
大学3年生
ガモウさん
修士2年生
コさん
大学2年生
“聞こえる”“見える”ことが前提じゃない世界を、考えてみる
Q:「伝えるって、工夫が必要かも」と感じたことは?
まず3人が話し合ったのは、自分の体験を通して“伝える”ことの難しさを実感した瞬間について。日常の中のやりとりでも、実は気づかないうちに“伝える工夫”ってたくさんしているのかもしれません。

少し前、バイト先に外国人で、さらに耳が聞こえないお客さんがいらして。日本語も英語も、そもそも声での言葉では伝わらないし……だから、ジェスチャーや指さしでやりとりしました。お客さんも表情だったり、わかりやすくジェスチャーで返してくれたりして、相手の反応を見ながら伝える工夫をしました。
私も以前ボランティアで耳が聞こえない方とお会いしたことがあります。その方は口の動きを読んで会話を理解されていたのでびっくりしたんです。でも早口だと読み取れないかもと思って、いつもの3倍くらいゆっくり話して、表情も大げさっていうとあれだけど、はっきり表すようにして。
表情、大事そう! 私はそういった経験を身近に感じたことがなくて……。あ、でも昔同級生で吃音(きつおん)の症状がある子がいて、言葉がスムーズに出てこないこともあって、今考えるともしかしたら何かサポートが必要な場面もあったのかなぁ。

今まで気に留めてなかっただけで、受け取り方や伝え方に支援とか工夫が必要な人って身近にいるのかもしれないですね。
自分にできることってなんだろう?
Q:伝えるサポートが必要な人に、
あなたならどんな工夫をする?
身近な相手への伝え方を想像しながら、学生たちは自分にできそうな工夫を考えます。

耳が聞こえない方だった場合、やっぱり表情とかジェスチャーとかはどうだろう? でも、それだけだと細かなニュアンスを伝えるのは難しいから……今だったらスマホを使って会話をするのはどうかな?
文字ね! 紙に書くとかも。筆談?
文字にして伝えるなら私にもできる!

さっきの吃音(きつおん)の同級生の時に思ったんですけど、相手がすぐ伝えられない時に“少し待つ”ってことも必要かもしれないなって。同じペースでコミュニケーションをとることが難しい人もいそう。
社会のあちこちに“配慮”があった!
意外とたくさんある “伝える”工夫に、どれだけ気づいてた?
Q:社会の中にある“伝える”ための工夫って?
視点は少し広がって、“伝える”工夫がある「社会の仕組み」についての気づきへ。
コンビニのレジや、空港、駅など……気づいていないだけで、いろんな場所でも“伝えるための工夫”がされているのかも?
私がいいなと思ったのが、「レジのタッチパネル」。支払候補の一覧が全部表示されてるじゃないですか? あれって耳が不自由な方もお会計のやり取りを気負わずにできるのかなって。

ああ、指でピッとね。
うん、それが障がいだからとかじゃなくて、自由で、あたりまえに。
確かに、こう「手伝ってください」って声に出さなくてもスマートに買い物できる!
あとレジ周りで言えば、コンビニとかに指さしのシートがあるじゃないですか。
え? どういうやつ?
レジ袋いる・いらないとか、割りばし必要とか絵で書いてあって指さしできるの。

あ、空港でも似たような指さしシート見たことある!
そういったアイテムが当たり前にレジに置かれているっていうのも配慮だと思う。

私はこの前万博に行ってきたんですけど、音声アナウンスがたくさんあって、視覚障がいのある方も耳で聞いて万博を回れるっていう工夫を感じました。
音ね! 音といえば、赤信号でわたろうとする人がいた時に「信号が赤です、わたらないでください!」ってアナウンスが聞こえたことがあって、あれはセンサーで感知してるのかな? もし気づかず交差点に入ってしまった時に交通事故防止になりますよね。

へーそんな信号があるんですね! ボタン押して音が鳴る信号はあるけど、それは知らなかった。

一瞬、上空から見てるの⁉って思ってびっくりしちゃった(笑)!
広がる伝え方の選択肢
Q:支援の工夫って、どこまであるんだろう?
スマホのアプリ、介助犬、点字、デジタル教科書……。身の回りにある工夫を想像してみても、「伝える」ための仕組みが意外なほどたくさん! 世の中にはもっと、もっと、工夫があるかもしれません。
そんな工夫を知るべく、実際に調べてみることに……?

あ、点字……「点字通訳者」ってあるんだ。文字が読めない方が読めるように点字に翻訳するんだって。
盲導犬とかも視覚障がいのある方のサポートになりますよね。今調べたら、介助犬とか、音が鳴ったら教えてくれる聴導犬もいるみたい。知らなかった!

今便利なアプリとかもあるみたい。音声認識して文字起こしできるんだって。
わ、便利! 文字入力だと時間がかかるし、これならスムーズ。手話ができれば早いけど、それは今すぐ身につかないし……でもこれならスマホに入れて今すぐにでも使えますよね。
実際に“伝える”を体験してみたら……?
Q:体験してみて、見えたことは?
考えるだけではわからないこともある。
そこで、“伝える支援”を実際に体験してみることにしました。

聴覚障がいのある方が1人でカフェに来店されました。カフェの店員さんは、メニューの注文を伺います。どんなコミュニケーション方法がうまく伝わるか、状況をイメージしてその場で考えてみました。
[体験]聴覚障がいのある方役:コさん
カフェの店員役:ミヤシタさん

-まずコさん、耳が聞こえないことを伝えたら店員さんがどういった対応をしてくれたのか説明してもらえますか?-
カフェの店員さんが、注文を取りに来てくれたのですが、私は“耳が聞こえない”というようなジェスチャーをして伝えました。 そうしたらうなずいてくれてスマホを取り出して画面を見せてくれました。画面には「何を注文しますか?」と書かれてあり、スマホを渡してくれたので、その下に私はコーヒーが飲みたい旨を入力しました。
-ではカフェの店員役のミヤシタさんは、なぜ今のような対応を考えたのか思ったことを説明してもらえますか?-
聞こえないというようなジェスチャーがわかったので、口頭で注文することは難しいかもしれないと思って、スマホのメモ機能を使って入力してもらいました。
-実際体験してみてどうでしたか?-
カフェの店員さんがすぐわかってスマホを出して対応してくれたので「あ、この人なら大丈夫そう!」と安心感がありました。
駅のホームで視覚障がいのある方が困っていました。声をかけると道がわからず不安そうにしていたので途中まで道案内をすることにしました。
[体験]視覚障がいのある方役:ガモウさん
通行人の方役:コさん
-ガモウさん、どのような道案内だったか感じたことを教えてもらえますか?-
(一緒に案内をしてもらったのですが)行き先を左右で教えてくれて、歩いているときも「あと何歩くらい」と教えてくれたので距離感がつかめました。途中で「触れてもいいですか?」って言ってくれて腕の部分を持って誘導してくれました。
-では案内役のコさんは、なぜ今のような対応を考えたのか思ったことを教えてもらえますか?-
1人で歩くのは不安かなと思ったので、一緒についていくことにしました。言葉だけでは誘導が難しかったので手で支えて誘導することにしました。でも急に触れたら怖いかなと思い先に声をかけました。
-実際体験してみてどうでしたか?-

目をつぶっていたのでちょっと怖かったんですけど、応えてくれた声色が優しかったので安心しました。でも誘導してくれた時に肘を支えてくれたんですが、歩くペースが分からなくてそれはちょっと怖かったかも……。
あ、すみません! 速かった? 歩くペースってどうやって伝えたらいいんだろう。
-では今の視覚障がいのある方に対して、どうしたらもっとよりよい案内ができたと思いますか?-
ちょっと調べてもいいですか?
なるほど! ちゃんと誘導の仕方があるんですね! もう一回やってみよう!
[体験]視覚障がいのある方役:ガモウさん
通行人の方役:ミヤシタさん
全然違う! 安心感が全く違うし、歩くペースも歩幅までなぜかわかる! 正しい知識を“知る”って大事ですね!
そう思うと、カフェでの注文方法の対応の仕方も、もっといいやり方があるのかな?
んー……正解っていうか、なんかいろいろ出てくるけど……。

あ、でもなんか聞こえ方ってみんな全然違うから正解は1つじゃなくていいのかも。
その人に必要なサポートをしたらいいってことですかね。けっこう難しい……でもそれって大切なことだろうな。

知ることが、つながる一歩になる — 学生たちが感じた“変化”
Q:今日の感想は?
今回の学びを通して見えてきたのは、「知ること」そのものが、支援の第一歩になるということ。
支援の専門家じゃなくても、知ることが最初の一歩かもしれません。

改めて、意思疎通の支援になるものって、実は身近にたくさんあるんだなって思いました。駅ひとつとっても、いろんな工夫があって。私も今日、帰り道にちょっと観察してみようと思います!
私は今日、体験を通して表情や声色一つでも安心感とかに繋がると感じて、対応の仕方も大事だなと思いました。それに、支援するための専門的な職業ももちろんあるけど、今日体験したカフェの店員さんのように、配慮やサポートができたほうがお互いコミュニケーションがとりやすい職業もたくさんあるんだなって気づかされました。
駅のトイレの音声案内など、普段何気なく見たり聞いたりしていたものが、実はすごくたくさんの人に向けた配慮だったんだって気づけて、世界の見え方がちょっと変わった気がします。特別じゃないけど、特別に配慮するみたいな——そういった支援の方法も、広がってきているのかなって。あとは体験の時に特に思いましたが、やっぱり“知る”ことって1番大切だなって思いました。
一歩踏み出して“知る”ことは、自分と誰かをつなげる扉になるのかもしれません。「どうしたらいいかわからないし……」と対話をあきらめずに「もしかして困ってる?どんなサポートしたらいい?」と当たり前に聞ける心を持つためにも、まずは相手を慮る想像力、そして知ることがその背中を押してくれるはず。
次回は、実際に「伝える工夫」を実践している人たちの声をお届けします。お楽しみに!
「みんながつながる社会」カテゴリがオープン
“みんながつながる社会”を目指して、「意思疎通支援」にまつわる情報をお届けする「みんながつながる社会」カテゴリをオープン! 本事業は、意思疎通支援従事者確保等事業(厚生労働省補助事業)として実施しています(実施主体:日本廣告社)。
















