一生懸命とは? 一所懸命との違いや正しい意味、類語を解説【例文つき】

2023/11/22

ビジネス用語

「一生懸命と一所懸命、どちらが正しいのだろう……」 そんな疑問を持ったことはありませんか? また「特に深く考えず、その時の気分で使っている」という人、「一生懸命の方が好みで使っている」という人もいるようです。

結論から言えば、どちらも間違いではありません。「一所懸命」から派生したのが「一生懸命」です。今回は、「一生懸命」と「一所懸命」について考えてみましょう。

一生懸命とは?

「一生懸命」は「いっしょうけんめい」と読みます。誰もが聞いたことも、使ったこともある言葉ですよね。まずは意味から調べてみましょう。

「一生懸命」の意味は?

「一生懸命」には、次のような意味があります。

【一生懸命】いっしょうけんめい
イッショケンメイ(一所懸命)の転。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)


「一所懸命」から転じた言葉であることが分かります。では、もとになっている「一所懸命」とは? どんな意味があるのでしょうか。

【一所懸命】いっしょけんめい
(1)賜った1カ所の領地を生命にかけて生活の頼みとすること。またその領地。
(2)物事を命がけですること。必死。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)


2つめの「物事を命がけで行う」という意味から「一生懸命」という言葉が生まれました。
「一所懸命」も、そこから転じた「一生懸命」も同じように「物事を命がけで行うこと。必死に真剣に行うこと」という意味があります。

「一生懸命」の由来・語源とは?

語源的には、「一所懸命」の方が古く、「一生懸命」は「一所懸命」から転じた言葉です。中世の頃、日本の各地で戦が行われ、武将たちは戦功として領地を得、家来たちに分け与えました。

主君から認められた1カ所の領地を命がけで守ることから「一所懸命」という言葉が生まれました。さらに、その命をかけて守るさまから、「一生懸命」という言葉が派生したとされています。

「一所懸命」との違いは?

「一生懸命(いっしょうけんめい)」と「一所懸命(いっしょけんめい)」は、読み方が違います。「命がけで行う。真剣に行う」という意味では、どちらも同じように使うことができます。ただし、現在は「一生懸命」の方がよく使われており、新聞やテレビなどマスコミでも「一生懸命」に統一されているようです。

もちろん、「その1カ所を命がけで守る」という意味合いで使う場合は、「一所懸命」のほうがふさわしいでしょう。

「一生懸命」を使う際の注意点

「一生懸命」は必死に何かに取り組む際の真剣なさまを表す言葉です。真面目で、誠実な印象を与えます。

ビジネスやプライベートで「一生懸命頑張ります」と意思表示をしたことがある人は多いでしょう。取引先や上司に対して、自分の行為について伝える時に使っても問題ありません。

ただし、「命がけで」という意味があるので、濫用せず、心して使いましょう

一生懸命のビジネスでの使い方・例文

「一生懸命」の意味を理解したところで、実際に使ってみましょう。所信表明や抱負、就活や転職、さまざまな場面で使うことができます。

商談での使い方・例文

取引先に対して、請け負った案件を頑張る意志を示す際に「一生懸命」を使えます。

<例文>

今回のプロジェクト、スタッフ一同、一生懸命取り組む所存です。

所信表明での使い方・例文

入社式で新入社員を代表して所信表明を行う際に、「一生懸命」を使えます。

<例文>

これからの仕事を通じて社会に貢献できるよう、一生懸命頑張ってまいります。

部下や後輩に対しての使い方・例文

スタッフを鼓舞したい時に、「一生懸命」を使えます。

<例文>

皆さん、どうか一生懸命がんばってください。

一生懸命の類語

「一生懸命」と似たような意味を持つ四字熟語です。言い換えたい時に、微妙なニュアンスの違いをふまえて使い分けてみましょう。

1)一心不乱

読みは「いっしんふらん」。他の事に心を乱されず、ただ一つの事に集中して打ち込むさまを表す言葉。「一生懸命」と同じ意味です。

2)一意専心

他のことに心を動かされず、一つの事に気持ちを集中させることを意味しています。「一生懸命」と同じ意味です。

3)無我夢中

読みは「むがむちゅう」。一つのことに気を取られて我を忘れること。「一生懸命」が意志を持って頑張っている様子を表すことが多いのに対し、「無我夢中」は意識せずとも自然に夢中になっている様子を表す時によく使われます。

4)無二無三

読みは「むにむさん」。ただ一つだけで他に類がないこと。また、それを脇目も振らず行うことを意味しています。元は仏教語で「仏になる道はただ1つで、他にない」という意味がありました。ニュアンスとして、「一生懸命」が意志の力を感じさせるのに対し、「無二無三」は自ずと湧き立つ信心や信念を感じさせます。

5)不惜身命

読みは「ふしゃくしんみょう」。自分の身も命も惜しまず、事に当たること。仏教の言葉。「一生懸命」と似たような意味です。

6)粉骨砕身

読みは「ふんこつさいしん」。骨身を惜しまず、全力を尽くして事に当たることを意味しています。「一生懸命」と同じような意味です。

一生懸命の対義語

「一生懸命」と反対の意味を持つ四字熟語です。逆の状態を表したい時に、ニュアンスをふまえて使い分けましょう。

1)中途半端

読みは「ちゅうとはんぱ」。 物事や行動が不完全で未完成な様子。どっちつかずで徹底していないという意味です。「一生懸命」は主に人について使われますが、「中途半端」は距離や時間についても使われます。

2)放恣佚楽

読みは「ほうしいつらく」。したい放題に遊んで暮らすという意味。放蕩三昧。命懸けとは反対の意味です。

3)悠悠忽忽

読みは「ゆうゆうこつこつ」。のんびりと何もせず、ぼんやりとしているさま。一生懸命に何かを行うのとは程遠い意味です。

まとめ

「一生懸命」という言葉は、自分でも周囲でも普段よく使っていると感じる人は多いでしょう。あまりによく使うために「真剣に」という意味ではあっても「命がけで」とまで考えることは少ないのではないでしょうか。

物事を一生懸命に行うことは、命がけという意味もあるのだと考えれば、この言葉を口にした時の思いが変わってきそうですね。与えられたこの場を日々を、一所懸命に、一生懸命に生きることができれば、きっと悔いのない人生になりますね。

(前田めぐる)


※画像はイメージです

【著者】前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

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