共感とは? 「同調」との違いと共感力を鍛える方法

2023/09/29

社会人ライフ

社会の一員として生きていくのに「共感力」は大切だといわれています。しかし、共感とはそもそも何なのか、共感は大切と言われても、共感力をつけるためにどうしたらよいのか、同調との違いはなに? など実態はわからない方も多いと思います。今回は共感力について解説していきたいと思います。

共感とは?


「共感」の辞書的な意味は『他人の考えや主張に寄り添うという感情』をいいます。

心理学的には『他者の感情状態を共有する精神機能』とされていますが、これを実生活レベルで解説すると、 「相手の立場になって考えてみる」とか「相手を思いやる」といった姿勢が共感で、そのような姿勢が強い人が共感力が高い人だといえるでしょう。

ビジネスコミュニケーションに共感力が必要な理由

近年共感力の重要さがビジネスコミュニケーションにおいて叫ばれるようになった理由のひとつに、ネットの発達やSNSの台頭によって個人の声が強い発信力と拡散力を持ってきたことがあげられると思います。

ビジネスを行う先には必ずクライアントがいますし、企業内においても必ず人間関係があります。企業が常に「対人」と向かい合ってきたことは昔から変わりませんが、ネットで発言することによって対人、つまり「相手」の気持ちに気づけなかったり疎かにすることをすると、それは瞬く間に世界に拡散され、企業評価を短期間で大きく下げるリスクを持つようになりました。

そのためコンプライアンス意識を大切にする会社ほど、相手の立場に立って寄り添った言動ができる共感力を重要するという傾向になっています。

共感には2種類ある?

実は、「共感」という概念は大きく分けると2つあります。

1つは「 認知的共感」です。これは、たとえば同僚が仕事でミスをして落ち込んでいた場合、自分はその仕事でミスをしていなくても、もし自分がミスをしたら……と相手の立場に立って考えてみるという姿勢。つまり、思考を要するものです。

もう1つは「 情動的共感」。これはたとえば友人の話を聞いていて思わずもらい泣きするといった直観的で自動的なものです。

対クライアントという視点に立てば、必要となるのは認知的共感力の方になるでしょう。自分がその立場でなくても思考力を働かせて相手(クライアント)の立場にたって考える力がつけば、良い提案ができるなどビジネス上の成功につながりやすくなります。

一方で、会社の同僚や後輩などビジネス上の「仲間」に対しては情動的共感力の方が円滑なコミュニケーションに役立つことも多いです。自分が辛いときに一緒に泣いてくれたり、落ち込んだ時に一緒にいてくれたりといった体験の共有は、仲間としての絆を強固なものにしてくれます。

使い分けが難しいと感じる方もいると思いますが、まずは概念としての2つの共感を理解し、TPOに応じて認知的共感力と情動的共感を使い分けられるように少しずつ学んでいきましょう。

共感と同調の違い

共感と似た言葉に同調があります。同調の辞書的な意味は「他の者に調子を合わせること」ですが、共感との違いがわからないという方もいると思いますので、共感と同調の違いについて説明します。

「同調」とは、 自分の意見と異なっていても相手に合わせるという姿勢で、これは一見すると相手に対する配慮で美徳のように思われます。

しかし、なぜ相手に合わせるのかを考えると、「合わせておけば怒られない」「合わせれば面倒な手間が省ける」など自分に何らか利益や保身があるからでもあります。その場を円滑に進めるという側面だけでみれば一概に同調は悪いとは言えませんが、健全なビジネスの発展にはつながらないこともあり、それどころか同調した自分に後悔することにもなりかねないということを抑えておきましょう。

一方の「共感」は、 自分や他者の利に関係なく相手の立場に寄り添うという姿勢をいいます。

共感力を鍛える方法

では、共感力を鍛えるにはどうすればいいのか、3つの方法を解説したいと思います。

1)5つのWを意識する(いつ、誰と、どこで、なぜ、何を)

ポイントは話を聴くときにその場面を想像しながら聴くことです。

たとえば「昨日先輩に理不尽に怒られてむかついた」と言われたら、まずその人が不快な顔をしている場面が出てきますよね。そうすると自然に「それはどこで怒られたの?」つまり「Where(どこで)」という気持ちが出てきませんか?

そこで「会社を出るときに呼び止められた」と返ってきたら、そこでWhereとともに詳しい「When(いつ)」も判明します。すると「帰る間際に言うのも酷いよね。それで何を言われたの?」「What(何を)」と聞くという流れになります。

このように、相手のいた世界を想像しながら聴くと、5つのWが自然に相手から引き出され、共感しやすい環境が作られます。

2)否定をしない

カウンセリングにおける傾聴においては「無条件の肯定的関心」という姿勢が大切ですが、日常生活では「無条件」まで意識する必要はありません。ただ、世の中には色々な考えや価値観の人がいることを認識し、「一概に否定をしない」ということを押さえておきましょう。

わかるわかる、などと大げさに言わなくても否定をせずにただ聞いてくれるだけで「共感してくれた」という気持ちになることもあります。

3)小説、漫画、映画などストーリー性のあるものを視聴する

共感力をあげるハウツーマニュアルの類も否定はしませんが、ストーリーのある小説や漫画、映画の視聴もおすすめします。視聴していると、ある特定の人物の側にたって視聴をしてしまうものですが、2度目に視聴するときはあえて自分が感情移入していない人物の側に立って視聴してみるのが共感力を高めるためにはおすすめです。

違う視点から見たことによる気づきを重ねていくと、「他者の感情に寄り添う」という感覚が育ってきます。

まとめ

ビジネスの場では共感力が重要なスキルのひとつであるともいえます。

ただ、「共感力」には資格や検定があるわけではないので難しいですよね。もし周囲に「人の気持ちがわかってくれるな」と感じる人がいたら、彼らの言動を観察したり交流を持ってみることも良いと思います。

できることからはじめて共感力を身につけていってくださいね。

(小日向るり子)

※画像はイメージです

【著者】小日向るり子

「カウンセリングスペースフィールマインド」代表。心理カウンセラー。一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー。JAAアロマコーディネーター。恋愛、人間関係、メンタルヘルスなど多くの悩みにカウンセリングを行っている。恋愛や心理系コラムの執筆やメディア出演、監修も多数おこなっている。2023年4月までの相談件数は約5500件を超える。
オフィシャルサイト:http://feel-mind.net/
X(旧twitter):https://twitter.com/ruriyakko1107
ブログ:https://ameblo.jp/r-kohinata/

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