「先輩たちへのマナーでしょ!」と注意。本質と違うマナーにどう向き合えば? #モヤモヤバスターズ

2021/03/04

社会人ライフ

社会人のみなさんの、なかなか言えないモヤモヤを解決していく連載 #モヤモヤバスターズ。今月も、いつの時代もモヤモヤが尽きない“マナー”について解決していきます。

相談者のミリさんは、ストラップ付きのヒールを履いていったら、その日に呼び出されて注意されてしまったそう。注意の理由が「先輩へのマナー」という一言。モヤモヤバスターズ隊長・瀧波ユカリ先生も、思わず昔を思い出してしまった相談内容です。 

★(モヤモヤの相手:職場の上司)
はじめまして。今の会社が嫌になってる新卒1年目です。もともと華やかなOLにあこがれていた私。でも入った会社は服装に厳しい会社でした。

個人向け営業職なので、毎日スーツを着用しています。それはいいのですが、問題は靴です。指定の靴があるわけではありませんが、なぜかヒール(7~8センチ)、色はベージュ・黒・グレー等ベーシックな色じゃないとだめ。この前そろそろ新しいヒールが欲しいなと思い、どうせなら少しでもオシャレなものが欲しいと、色は黒だけどストラップ付きのものを選びました。
すると初めて履いていったその日に上司から呼び出しがあり、靴のことを注意されました。ストラップはダメだったみたいです。私はなぜダメなのか理由を聞いたら、「先輩たちへのマナーでしょ!先輩たちだってそんなヒール履いてないでしょ!」と注意を受けました。
会社のブランドイメージのためやお客様のためのマナーとしてできるだけベーシックなものを身に着けてといった理由でNGなら理解できますが、「先輩へのマナー」ってどういうことでしょうか?
日頃から先輩たちのことは尊敬しているし、たかがストラップがマナー違反だとは思えませんでした。
(ミリ・23歳/金融・保険)


むか〜しむかし。今からさかのぼること、28年前。わしが通っていた、日本の片田舎の中学校の話じゃ。


その学校の女子の制服は、ブレザーに赤いリボンタイじゃった。
校則によると、リボンタイは蝶結びにするのが決まりじゃった。しかし、もうひとつ、だれが決めたかわからないルールもあったんじゃ。

1年生は、蝶結びの輪の長さと、垂れの長さを同じにしなければならぬ。2年生になると、ちっちゃな蝶結びを作ってもよい。そして2年生の中でも3年生に認められた者だけが、リボンタイをゆるめてワイシャツの第一ボタンをあけることが許されるのじゃ。

このルールを守らない1年生は、2年生に注意される。2年生は、3年生に注意される。こんなふうに言われるんじゃ。

「リボンタイのルール守れよ。生意気だなお前。先輩なめてんのか?」

そうなんじゃ。ルールを守らないイコール、先輩をなめている、先輩に歯向かっている、ということになってしまうんじゃ。どういうこっちゃい。わしはたいそう、モヤモヤしたわい。

だが、当時のわしは、しぶしぶそのルールに従った。先輩、怖いしのう。校舎の裏に呼び出されてボコられては、たまったものじゃないからのう。


それから1年後。わしは、2年生になった。どこか誇らしい気持ちで、リボンタイをちっちゃく結んだ。そして、1年生の群れを見かけるたびに、輪と垂れを同じ長さで結んでいるかどうか確認した。ある日、2年生と同じようにリボンタイをちっちゃく結んでいる1年生を見つけて、思ったんじゃ。

「ルール守ってない!あいつ、調子にのってる」

と。
そう、わしはたったの1年で、最初に感じたモヤモヤをすっかり忘れて、理不尽な謎ルールに染まりきってしまったんじゃ。

そして月日は流れ、わしは漫画家という職業を選んだ。以来17年間組織に属さず、上下関係のない世界に生きておる。
おっと、昔話が終わったのに、昔話口調がなおらぬ。まあよかろう。このまま続けるぞ。

仕事用の靴はどうあるべきか

さてさて、ミリ殿の会社は、靴の色だけじゃなくてヒールの高さまで決められておるのじゃな。7〜8cmのヒールなぞ、だれもがはきこなせる代物ではなかろう。体に負担がかかるし、走ることもままならぬ。ヒールを履きこなせない女性社員は、その仕事を続けられるのじゃろうか? わしは心配になってしまうぞ。
それに、ミリ殿が禁止されたというストラップ。あれは、靴がすっぽ抜けないための安全装置としても機能する。むしろストラップがついていたほうが、機能的にはいいんじゃないかのう?

社員の健康や安全を考えた場合、ヒールもストラップも、その有無を個人が選べるようにするのが社員にとって一番いいことであるのは、まちがいない。健康や安全を担保する観点から、選択の自由は保障されて然るべきじゃ。
そしてその上で、「その業務にさしつかえのない範囲でのファッション」もある程度認められると、よりよいと思うんじゃ。

ファッションと言うと仕事に不要なものだと考えられがちだが、何を着るかは自己表現のひとつじゃ。仕事中だからって、自己表現を慎まねばならない理由はなかろう。もちろん、業務とのバランスはとる必要はある。社会人には、そのバランスのとり方も含めて、自分で考えて実行する権利がある。わしはそう思うのだが、どうかのう。

未来のために、モヤモヤを持ち続けよう

リボンタイの謎ルールは、今となってはつくづくくだらぬと思う。ミリ殿が言われたという「先輩へのマナー」という考え方も、まったくもって意味不明でばかばかしいと思う。一方で、人はだれが決めたのかわからない不合理なルールにも、かんたんに染まってしまう生き物であるとも思うんじゃ。

ルールとはどうあるべきか。だれのために作られるべきか。そういったことをしっかりと考えられる人間は、実はあまり多くないのかもしれぬ。
もともとは考える力があっても、組織に組み込まれたら流されて、考えられなくなってしまう人も少なくないじゃろう。28年前のわしが、そうであったようにな。

これはモヤモヤバスターズ隊長であるわしからのお願いなのじゃが、ミリ殿にはどうか、今のモヤモヤを忘れないでいてほしいんじゃ。数年たって後輩もできて、ものを言える立場になった時に「こんなルールやめよう」と言えるまで、今の気持ちをしっかりと胸に抱き続けてほしいんじゃ。

今は行き場のないモヤモヤを、そんなふうに使ってくれたら本当にすばらしいと、わしは思うんじゃよ。

そうして、もしミリ殿が異を唱えたことがルールの廃止につながれば、それはとてつもなくすごいことじゃ。いつか、そうなるといいのう。わしは心から応援しておるぞ!

文・瀧波ユカリ
漫画家、エッセイスト。北海道生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。主な著書に『臨死!! 江古田ちゃん』『ありがとうって言えたなら』等。雑誌Kissにて『モトカレマニア』連載中。

Twitter:@ takinamiyukari
公式サイト:Takinami Yukari Official Site


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