明るくポジティブでいつも前向きな人のそばにいると、こちらまで明るい気持ちになりますよね。筆者も、タレントのローラさんを見ると、毎回明るい気持ちになります。
巷の書店には「ポジティブな思考を身につけよう」「ポジティブで前向きな女は好かれる」「どのようにしたら前向きでポジティブになれるか」というテーマの本が数多く並んでいます。それらを見ると、ネガティブよりもポジティブのほうが良しとされ、誰もがポジティブになりたいと願っているかのような印象を受けますが、実は国によって違いがあるのをご存知ですか?
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もし、あなたの身近にいる外国出身の同僚やお友達と接していて、「この人は文句が多くてネガティブだなぁ」と感じているようであれば、それはもしかしたら「文化の違い」が原因かもしれません。
日本では愚痴が多い人や批判が多い人、悪口が多い人は間違いなく嫌われますから、人前で延々とネガティブなことを言う人は比較的少ないです。初対面ならば、なおさらです。基本「悪口を言わない人」のほうが日本では評価が高いのですね。
ところが国によっては、批判や愚痴が大歓迎というか、それらがコミュニケーションツールになっているところもあります。世界の色んな国を見ると、ポジティブで前向きな姿勢や発言が良しとされている国と、そうでない国があるのです。
たとえば筆者の出身国であるドイツは間違いなく後者です。ドイツ人が集う会合に行ってみると、初対面なのに出るわ出るわ、愚痴と批判(悪口とも言う)のオンパレード。みんな、自己紹介もそこそこに、「天気が悪過ぎる。政治も悪過ぎる。環境汚染も酷いし、食品も何を食べれば安全なのか分からない。仕事も大変だし、そもそも景気が......」と愚痴と不満が延々と続きます。でもその場にいるドイツ人同士は、うんうんと頷きながら妙に楽しそうに聞いていますし、これはこれで一つの会話スタイルとして成り立っているわけです。ドイツの場合、むしろあまりに前向きな発言ばかりしていると、「批判の一つもできない教養のない人」と思われてしまいます。そして物事を批判するにあたってある程度の悪口は必要(!)だと考えられているため、ドイツ人は悪口というものに対して比較的寛容だったりします。そういう意味ではドイツ人はネガティブな態度が比較的好きな人達だと言えるでしょう。日本人から見たら間違いなく「ネガティブ思考」です。
ハンガリー人も基本、「明日、不幸が起きたらどうしよう」「友達がいなくなったらどうしよう」などのマイナス思考の発言が多いですし(でも慎重で現実的だと筆者は思います)、ネガティブな内容の発言に対しては寛容ですね。
日本ではマイナス思考の人はもちろん、愚痴や悪口の多い人は「残念な人」として扱われてしまいます。日本の場合、愚痴は「ある程度は」言ってもいいけれど、ホドホドにしておかないと、周りに煙たがられますね。そういう意味で、日本人は「ポジティブ思考」だと言えるかもしれません。
ちなみに日本人だけでなくタイ人も、発言内容が非常にポジティブな人が多いです。全体的にフレンドリーで、あまり愚痴を言わないし文句も言わない。これは気候が暖かいのと、もしかしたら仏教が関係しているのではないかと筆者は(勝手に)考えています。
国によっては政治家やその国の支配層の悪口を言うと罰せられてしまう国もありますから、そういった国々の人達は必然的に文句やネガティブ発言も少なくなります。これはこれで、「強制ポジティブ」なのかもしれません。そう考えると、大きな声で悪口や批判が言える国というのはある意味幸せだと言えるのかもしれません。
ちなみに筆者は来日してから、数多くのアメリカ人と仕事をした経験がありますが、アメリカ人もかなりポジティブです。真っ白な歯を見せながら笑顔で「Be positive!(ポジティブにね!)」なんて励まされると、完全に「ハイッ!」と従いたくなります。
アメリカ人にそんな「ポジティブ洗礼」を受けるたびに、ドイツとのハーフである筆者は本当にネガティブなんだなあ、いや、ネガティブシンキングの国出身なんだなあ、世界は広いなあ、国によってこんなに違うんだなあ......などと感じる次第です。
このように、「ポジティブ思考」 「 ネガティブ思考」というのは、「個人の問題」または「本人の性格の問題」だと思われがちですが、意外とその人の育った国や文化といった背景も関係しているのですね。
国によって、こんなにも違う「ポジティブ思考」VS「ネガティブ思考」。
筆者はせっかく日本にいるのだから、もっとポジティブになれるよう日々精進してまいりたいと思います。
文●サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン プロフィール/ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴16年。 自身が日独ハーフであることから、ハーフとバイリンガル問題、ハーフはナニジン? ハーフといじめ問題などハーフのテーマを中心に執筆活動をしている。著書にベストセラーとなった「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) のほか、「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(メディアファクトリー)など計7冊。
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