お酒が解禁になった二十歳。「まず試してみたいのはやっぱりビール!」という人も多かったのでは? 家庭の食卓やラーメン店などで、大人がおいしそうにビールを飲んでいる姿は、子供心にも「大人の嗜み」として映り、なんだか憧れたりもしたものだ。
いざ大人になってからビールを注文して、さぁ飲もうとしたときにちょっとした違和感。子どもの頃に見た瓶よりも小さい気がする......。そう、昔の記憶で大人が飲んでいたのは『大瓶』で、今、目の前にあるのは最近主流となっている『中瓶』なのだ。あの頃に憧れていた大瓶のビールはどこへ行ってしまったのだろうか......?
そこで、キリンビール株式会社の広報に話を聞いてみた。「たしかに、ライフスタイルの変化によって、家庭用のビール需要を長年支えていた家庭への宅配市場=ビール大瓶という図式が消えました。お茶の間でお父さんが瓶ビール(大瓶)を飲んでいるシーンもほとんど見られなくなったのではないでしょうか」とのこと。キリンラガーや一番搾りといったビールの出荷割合も、2012年には瓶:20%、缶:46%、大樽:34%と、瓶の割合が一番低くなっているとか。さらに瓶ビールの中でも「2005年当時の出荷量では大瓶が中瓶の約1.5倍の出荷量でしたが、2012年には中瓶が逆転しています」ということだった。
では、大瓶のビールはどこへ行けば飲めるのだろうか。これまたキリンビールの広報さんによると「現在でもビール大瓶は、一部のレトロな雰囲気の大衆酒場や、お客様への量のサービス等の理由で採用されている店舗などで、根強く支持されています。昔の風景が思い出されるというような理由で、レトロ調のお店での採用が多いのかもしれません」とのこと。
ちなみに、中瓶は500mlなのに対して、大瓶1本の内容量は633mlと中途半端な量。なぜかというと、1940年に酒税法が改正される際に、徴税をスムーズにするため規格を統一することに。そこで、それまで各メーカーで使用されていた瓶を調査したところ、一番大きなものが3.57合(643.9922ml)、一番小さなものが3.51合(633.168ml)だったとか。だったら、小さい方に合わせれば、それまで使っていた大瓶もそのまま使えるという理由で633mlになり、小瓶も同じ理由で334mlになったとか。
大瓶はまだまだ現役。ちょっとした飲食店では中瓶が多いが、たとえば宴会場のある旅館や昔ながらの居酒屋、地方のお店などではまだまだ大瓶を扱うところも多いとか。遠出した際や老舗の居酒屋に行ったときなど、ビールに注目してみてほしい。きっとそこには、あの頃に憧れた大瓶があるはず。
文・タカハシダイスケ
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