「社畜のススメ」著者のコラム、「自分で考える」ことが考える力を退化させる!?

更新:2016/01/28

社会人ライフ

「社畜のススメ」著者のコラム、「自分で考える」ことが考える力を退化させる!?

本連載の第1回で、立川談志師匠の言葉として紹介した「型破りと型なし」の話を覚えているだろうか?

基礎、つまり型をマスターした人だけが型破りなことができる人になれるが、型すら知らない人は型なしにしかなれず使いものにならない、というのが「型破りと型なし」の本当の意味であり、このことが示唆することは多い。今回取り上げる「自分で考える」というテーマは、その好例である。

ビジネスシーンで使われる「考える」という言葉をほとんどの人が誤解している。もしくは、理解不足だ。その原因は、「考える」という言葉が、実は2つの意味を持っているということに起因する。ひとつは、「応用する」という意味であり、もうひとつは、「創造する」という意味である。

まず「応用する」とは、「1から2を導く」ということである。より早く、正確に質の高い「2」を導くには、そのための知識や効率のよい方法を頭の中に仕入れておかなければならないことになる。仕入れた知識がスカスカの状態だと、的確に「1」を把握することすらままならないので、質の高い「2」など導けるはずなどない。せいぜい出てきて、当てずっぽうの「2」ということになり、上司がその「考え」を受け入れるはずもない。音楽に例えると、楽譜通りに完璧に演奏できるようになったバイオリニストだけが、質の高いアドリブ演奏を弾けるようになるのと同じである。楽譜通りにさえ満足に演奏できないバイオリニストが弾くアドリブは「1」の部分が不安定なので、どうしても不協和音を奏でてしまうのだ。

一方、「創造する」とは、「0から1を創り出す」ということである。しかも「0=無」から創り出した「1」が、会社や組織が持つ課題に対して、的確な内容でなければならないということを考えると、クリエイティブな能力を持つ、限られた天才の人にしかできない芸当なのだ。前者と同様に音楽に例えれば、作曲するようなものである。完璧に演奏できても誰もが作曲できるわけではないように、作曲という特殊な能力を持っていない限り、創造することなどできないということなのだ。

このように「考える」という言葉を分類すると、会社や上司から「○○について考えるように!」という場面で使われる「考える」は、そのほとんどが「応用する」という意味で使われていることがよく分かると思う。つまり、「〇〇について(知識をフル動員して)応用し、答えを出すように!」と指示されているのである。ところが、新卒社員や知識習得をサボっている社員は、知識をフル動員するにもその知識そのものがスカスカ状態なので、的確に応用することができない。そんな状況では答えを「自分で考える」、つまり、「創造する」ことをせざるを得ないのである。当然、経験の浅い社員からは、天才社員でもない限り、会社や上司の期待する答えが出てくるわけがないのである。

しかし、普段は誰もが「応用する」と「創造する」を意識しないので、知識の習得という地道な反復練習をしなくてもよい「創造する」に依存するようになってしまっている。その結果、的外れな答えばかり出してしまうので、「いつも自分の考えたことが通らない」という状態に陥ってしまうのだ。

以上を理解してもらえれば、新卒社員が取るべき方向性はただひとつだということがわかるはずだ。「考える力」をつけるためには、「応用する」力を磨き続けること。つまり、地道な基礎知識の修得、基本の反復練習にほかならない。それが、成長の基本になるのだ。

基本もないうちから「創造する」ばかりだと、いつまで経っても「考える力」を向上させるための知識習得をしない癖がついてしまい、「考える力」が退化してしまう危険があるので、注意してほしい。

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