第3回:ビジネスに"自分なりに"は禁句

2013/09/04

仕事全般

第3回:ビジネスに"自分なりに"は禁句

「社会人の4大タブー」の第二弾は、"自分なりに"働くことの罪についてだ。「"自分なりに"働くことが罪なの?」とビックリする人がほとんどだろう。いままで「頑張っていること」の代名詞的な言葉だと思っていたものが「実は違う」と聞かされれば。しかし、この罪深さを理解することが、"働く"ことの真の意味を理解する近道になる。サラリーマンとして成功するかどうかは、今回のテーマを理解することにあり、と言える。

その理解を助ける名文がある。朱子学の創始者として知られる朱熹(しゅき)が北宋(960〜1127年)時代の「名臣」97名の言動を「宋名臣言行録」として編さんした。その97名の一人、范純仁(はんじゅんじん)の言葉に次のようなものがある。

「人、至愚(しぐ)なりといえども、人を責むるは明らかに、聡明ありといえども、己を恕(じょ)するは昏(くら)し。なんじらただつねに人を責むるの心をもって己を責め、己を恕するの心をもって人を恕すれば、聖賢の地位に至らざるを患(うれ)えず」

よく読めば意味をつかみ取ることは可能だが、現代訳は次の通りである。

「いかに愚かな人間でも、他人の行ないをとがめるときには、正鵠(せいこく)を射るものであり、いかに聡明な人間でも、自分の行いをゆるすときには甘くなる。だから、おまえたちは、人をとがめるときの目をもっておのれの行ないをチェックし、おのれに寛容な目をもって人の行ないをゆるすがよい。つねづねこれを心がけておれば、多少なりとも聖賢の域に近づけぬものでもない」(『中国古典名言・名句ハンドブック』PHP研究所)

この言葉は、人間の本質を突いている。自分の行ないはどうしても甘く見てしまう。それが人間というものなのだ。

私のいままでのマネジメント経験を思い出すと、期待通りに働かない部下ほど言い訳が多い。その言い訳の大半が、「"自分なりに"仕事はしているのですが......」というものだ。"自分なりに"という言葉を「自分としては精一杯働いているつもりです」という意味で使っているのだろうが、范純仁の言葉にある通り、人間は自分の行いに対して甘い目を持つ。"自分なりに"働いているというのは、第三者が客観的にみると、それほど働いていない場合が多いのだ。

もうひとつ、"自分なりに"という言葉には罪作りな意味がある。それは、文字通り「いまの自分の能力水準で」ということを公言してしまっているということだ。もし、「いまの自分の能力水準」が、組織の求める水準よりも低い場合、それを組織側が容認することはできない。なぜなら、勉強をしない上に成果も出さない社員が「低い水準で仕事をすること」を許すことになってしまうからだ。営業職で言えば、目標売り上げを達成しなくても、「いまの自分の能力水準」で頑張っているんだからいいじゃないか、という開き直りを正当化してしまうことになる。もちろん、組織としてそれを許すことはできない。仕事というものは、"自分なりに"ではなく、常に"与えられた仕事のレベルなりに"行わなければならないのだ。その分の報酬をもらっていることを考えれば当然のことだといえるだろう。

このように"自分なりに"という言葉は努力をしない自分を過保護にする言葉として使われている場合が少なくない。使っている本人たちはその自覚がなく、"自分なりに"という言葉の魔力に酔ってしまうのだろうが。

仕事というものは、"与えられた仕事のレベルなりに"行わなければならない。そのために、日頃から自分の能力を磨く責任を持たなければならない。しかし、"自分なりに"を肯定してしまった段階で、能力向上の努力に目が向かなくなってしまうことになりやすい。いついかなるときでも"自分なりに"を許す自分がいないかを自己チェックしてほしい。「結果はどうであれ、"自分なりに"努力したんだからいいじゃないか」という開き直りの心が芽生えてしまうことを防ぐために。

けっして、"自分なりに"を肯定すること無かれ。



著者:藤本篤志 USEN取締役、スタッフサービス・ホールディングス取締役を経て、株式会社グランド・デザインズ設立、代表取締役に就任。著書に「社畜のススメ」「就活の壁」など。

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