1980年代、電子編集制作(DTP)やCDを使った電子出版が始まった。
1990年代、インターネットが普及してオンライン出版が始まった。
2010年、Amazonでは電子書籍が紙の書籍の売上高を抜いた。
2012年、日本でも電子出版のニュースがあふれ始めた。
こうした新しいトレンドを理解する手がかりを探る。
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【ニュース1】(3月2日CNET)
BookLiveは3月2日、電子書籍ストア「BookLive!」にて、EPUB3.0をベースにした集英社作品を、Android端末向けに配信すると発表した。
【ニュース2】(2月28日産経)
講談社、小学館、集英社の大手3社が中心となり、180の出版社が賛同して、4月2日に「出版デジタル機構」を立ち上げる。書籍100万点の電子化をめざす。
【ニュース3】(2月22日朝日)
電子書籍化促進に経産省が補助金を出す。東北や被災地の出版社の書籍などの場合は補助率を上げる。電子化作業も東北で行うことで雇用創出を促進させる。
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BookLive!をネットで調べると、
トッパングループが事業主体の電子書店のことで、
EPUB3.0とは電子編集のフォーマットだとわかる。
また国内ではBookLive!の他にも主要な電子書店として、
Reader Store(ソニー)、Book Web Plus(紀伊国屋書店)、
honto(大日本印刷、NTTドコモ)、ガラパゴスストア(シャープ)、Raboo(楽天)などがあるという。
しかしいずれの電子書店も取り扱い点数はまだ少ない。
たとえばAmazon.comが扱う電子書籍は100万点を超えたという。
これに比べて国内の電子書店は20分の1以下の点数だ。
Amazon.comは電子書籍でも印刷書籍でお馴染みの戦略を取る。
「ロングテール」と呼ばれる、ネット販売で独自の手法だ。
販売機会の少ない書籍も含め、点数を幅広く取り揃えることで、
結果的には全体の売上げを大きくするやり方だ。
ある分野の商品の売上げの8割は、2割の商品で占められる。
したがってその2割を「売れ筋商品」として重点的に仕入れる。
実店舗では、この8:2の法則に従った販売手法が効果的だった。
しかしネット店舗では、売上げの2割しかない8割の商品を、
できる限り揃えることが、客を圧倒的に呼び込む要件になる。
電子書店の優位性は、扱い点数の多さにかかっているのだ。
こうしたネット書店の販売優位性を確保するために、
国内の出版社が集まって電子書籍100万点を作り出すという。
出版デジタル機構を設立するという記事がそれだ。
これならAmazon.comに匹敵する電子書籍点数になるだろう。
ではなぜ今まで進まなかった電子出版が進み出したのか。
理由はEPUB3.0という電子書籍フォーマットにもある。
パソコンや端末の種類を選ばずに表示可能なフォーマットで、
画面に合わせて表示を調整する「リフロー機能」もある。
EPUB3.0は米国の電子出版標準化団体が策定したもので、
欧米、韓国、台湾では事実上の標準フォーマットだという。
3.0からは日本語や縦組みの対応が進んだと、記事は伝えている。
しかし100万点もの電子書籍を作るのは容易ではないだろう。
金もかかるし人手も要る。利害関係の調整も必要そうだ。
そこで作った仕組みは次のようなものだ。
1.各出版社は出版デジタル機構に本を提供する。
2.機構は無料で本を電子化する。
3.機構は電子化した本を有料で電子書店に卸す。
その後の細かい取引関係は省くが、
これなら出版社にとって、電子化の敷居は低くなる。
とは言え、本の電子化に金はかからないものだろうか。
金はかかる。広い作業場も人手も要るらしい。
それを援助するのが経産省の補助金だ。
しかも作業場を東北に置き、雇用創出にも役立てる考えだ。
電子出版は、いまや国を挙げての一大ビジネスなのである。
文●楢木望
ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。
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