ニュースの教室:7限目「電子出版」 ―新しいトレンドの読み方―

2012/03/08

対人マナー

ニュースの教室:7限目「電子出版」 ―新しいトレンドの読み方―

1980年代、電子編集制作(DTP)やCDを使った電子出版が始まった。

1990年代、インターネットが普及してオンライン出版が始まった。

2010年、Amazonでは電子書籍が紙の書籍の売上高を抜いた。

2012年、日本でも電子出版のニュースがあふれ始めた。

こうした新しいトレンドを理解する手がかりを探る。







【ニュース1】(3月2日CNET)

BookLiveは3月2日、電子書籍ストア「BookLive!」にて、EPUB3.0をベースにした集英社作品を、Android端末向けに配信すると発表した。



【ニュース2】(2月28日産経)

講談社、小学館、集英社の大手3社が中心となり、180の出版社が賛同して、4月2日に「出版デジタル機構」を立ち上げる。書籍100万点の電子化をめざす。



【ニュース3】(2月22日朝日)

電子書籍化促進に経産省が補助金を出す。東北や被災地の出版社の書籍などの場合は補助率を上げる。電子化作業も東北で行うことで雇用創出を促進させる。







BookLive!をネットで調べると、

トッパングループが事業主体の電子書店のことで、

EPUB3.0とは電子編集のフォーマットだとわかる。



また国内ではBookLive!の他にも主要な電子書店として、

Reader Store(ソニー)、Book Web Plus(紀伊国屋書店)、

honto(大日本印刷、NTTドコモ)、ガラパゴスストア(シャープ)、Raboo(楽天)などがあるという。



しかしいずれの電子書店も取り扱い点数はまだ少ない。

たとえばAmazon.comが扱う電子書籍は100万点を超えたという。

これに比べて国内の電子書店は20分の1以下の点数だ。



Amazon.comは電子書籍でも印刷書籍でお馴染みの戦略を取る。

「ロングテール」と呼ばれる、ネット販売で独自の手法だ。

販売機会の少ない書籍も含め、点数を幅広く取り揃えることで、

結果的には全体の売上げを大きくするやり方だ。



ある分野の商品の売上げの8割は、2割の商品で占められる。

したがってその2割を「売れ筋商品」として重点的に仕入れる。

実店舗では、この8:2の法則に従った販売手法が効果的だった。



しかしネット店舗では、売上げの2割しかない8割の商品を、

できる限り揃えることが、客を圧倒的に呼び込む要件になる。

電子書店の優位性は、扱い点数の多さにかかっているのだ。



こうしたネット書店の販売優位性を確保するために、

国内の出版社が集まって電子書籍100万点を作り出すという。

出版デジタル機構を設立するという記事がそれだ。

これならAmazon.comに匹敵する電子書籍点数になるだろう。



ではなぜ今まで進まなかった電子出版が進み出したのか。

理由はEPUB3.0という電子書籍フォーマットにもある。

パソコンや端末の種類を選ばずに表示可能なフォーマットで、

画面に合わせて表示を調整する「リフロー機能」もある。



EPUB3.0は米国の電子出版標準化団体が策定したもので、

欧米、韓国、台湾では事実上の標準フォーマットだという。

3.0からは日本語や縦組みの対応が進んだと、記事は伝えている。



しかし100万点もの電子書籍を作るのは容易ではないだろう。

金もかかるし人手も要る。利害関係の調整も必要そうだ。

そこで作った仕組みは次のようなものだ。



1.各出版社は出版デジタル機構に本を提供する。

2.機構は無料で本を電子化する。

3.機構は電子化した本を有料で電子書店に卸す。



その後の細かい取引関係は省くが、

これなら出版社にとって、電子化の敷居は低くなる。

とは言え、本の電子化に金はかからないものだろうか。



金はかかる。広い作業場も人手も要るらしい。

それを援助するのが経産省の補助金だ。

しかも作業場を東北に置き、雇用創出にも役立てる考えだ。

電子出版は、いまや国を挙げての一大ビジネスなのである。







文●楢木望

ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長

『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。

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