「女性は“男性と同等"に働くべき」それって正しい? #モヤモヤバスターズ

2020/10/30

社会人ライフ

社会人のみなさんの、なかなか言えないモヤモヤを解決していく連載 #モヤモヤバスターズ。秋も深まり、けやき並木も色づき始めましたね。今回も“女性のキャリアモヤモヤ”について解決していきます。

相談者のサキコさんは、「男性と同等に働け」と社会から圧を感じて悩んでいるそう……。女性の活躍が期待される時代、こういったモヤモヤを抱えている女性も多いのではないでしょうか。さっそく瀧波ユカリ先生からのアドバイスをみていきましょう!働くことを改めて考えるきっかけになるはずです。

★今回のモヤモヤ(お相手:女性に働くことを勧めてくる社会)
私は女性ですが、女性が男性と同等に働くのは難しいと思っています。 しかし世の中の流れは女性活躍推進の方向に向かっていて、 「女性も男性と同じように働かなければいけない」という圧を感じることもしばしばです。 男は仕事、女は家庭という時代に戻ってほしいとまでは思いませんが、 女性に働くことを勧めてくる社会にモヤモヤします。
(サキコ・29歳/女性/出版)

「女性活躍推進」は男性と同様に働けという意味ではない


サキコさん、こんにちは!モヤモヤバスターズ隊長の瀧波です。

「女性が男性と同等に働くのは難しいのに、社会は働くことを勧めてくる」ご相談をまとめたこの短い言葉の中に、いろんなクエスチョンが隠れているなあと私は思います。

たとえば「女性活躍推進」の目指すところって、「女性が男性と同等に働く」で合っているのか?そして「男性の働き方」自体は、問題のないものなのか?2015年8月に成立した「女性活躍推進法」についてちょっと見てみましょう。概要にはこうあります。

「自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性の個性と能力が十分に発揮されることが一層重要。このため、以下を基本原則として、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会の実現を図る。」

そして基本原則は以下です。

・女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
・職業生活と家庭生活の両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
・女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意志が尊重されるべきこと

いかがでしょうか。これを読むと女性活躍推進法はあくまで、「女性が自分の意思で働こうとする時に能力が発揮できること」が重要と定めていることがわかりますよね。

そしてそのためには、採用や昇進の機会を積極的に提供することや、女性が家庭と仕事を両立できるように雇用する側が環境を整備すること、そして本人の意思が尊重されることが基本だと。お気付きのとおり、概要と基本原則の中には「男性と同等に」どころか「男性」の文字すらないのです。

現在の一般的な男性の働き方は、問題ない?


ということはですね、「女性も男性と同じように働かなければならない」なんて言ってくる人は「女性活躍推進法」のことなんて何も知らないんです。もしくは知っているくせに、「女も男と同じように働けよ」と言いたいがために、女性活躍推進の意味をねじまげているのです。

……と言うと、こんな意見もどこかからか出てくると思うんですよね。
「法律は別として、男女平等ってことを考えたらやっぱり女性も男性と同じように働かなければいけないのでは?」これに対しては、さっきちょっと書いておいたこの疑問をお返ししたい。

「男性の働き方自体は、問題のないものなのか?」
私は現在の一般的な労働環境だって、「問題ない」ものだとはとても思えないんですよね。残業が当たり前だったり、上司や取引先との飲み会も仕事のうちだったり、有給や育休を取れなかったり、取ったら社内評価が下がったり、転勤を断れなかったり。こういったことが「よくあること」として未だ労働の現場に存在しています

「健康で体力があり仕事にすべてを捧げる独身の人」を基準にして考えて「これくらいやるのが当然」とする慣習が残っていて、多くの労働者がしかたなくそれに合わせている、というのが本当のところではないでしょうか。

その問題は置いといたままで、「男女平等だから女性も男性と同等に」というのは、おかしなことだと思いませんか?私は思います。

女性が男性と同等に働くことを難しく感じる本当の原因は?


そうそう、大事なところにふれるのを忘れていました。サキコさんは最初に「女性が男性と同等に働くのは難しい」と書いてましたね。サキコさんがどういう意味でそう書いたのかはわかりませんが、私は本当にそのとおりだと思っています。

それは女性のほうが能力や体力が劣っているとか、そういうことではありませんよ。
採用の時点で同期の男性と差をつけられ、昇進の機会もない。
上司からのセクハラがひどく、仕事を続けられない。
夫が転勤になり、ついていくために仕事をやめることにした。
夫が育休を取れなかったので、妻である自分が仕事をやめるしかない。
保育園に落ちたので育休から復帰できず、退職せざるを得ない状況になった。

そんな女性の声が絶えないのが現実です。能力の問題とかではなく、現状に追いついていない仕組みや人の意識が、単純に女性が働くことを難しくしているのです。

だとしたら、モヤモヤすべき相手は「女性に働くことを勧めてくる社会」ではなく、「女性を働きにくくしている仕組みや人の意識」ではないでしょうか?

私はこの連載で毎回のように「モヤモヤの矛先をまちがってはいけない」と書いています。「女性は男性と同等に働くのが難しいのに、働くことを勧めてくる社会にモヤモヤする」という感情はまちがっていないと思いますが、もう一歩進んで「女性が働きにくい仕組みを作ったり、支持しているのは誰なのか?」を考えてみてほしいです。

つまり「女性に働くことを勧めてくる存在」ではなく「女性を働きにくくしている存在」に対してモヤモヤしてほしいのです。

サキコさんが「女性も男性と同じように働かなければ……」という圧をかけられた時に
「その考え方はまちがっている」と切り返すこと(心の中だけでも)ができるようになること。
社会人生活の中で女性として難しさを感じた時に「誰が、何が、私を働きにくい状況にしているんだろう」としっかり考えられるようになること。
そこを目指してもらえたら、隊長としてはとっても嬉しい限りです。応援しています!

文・瀧波ユカリ
漫画家、エッセイスト。北海道生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。主な著書に『臨死!! 江古田ちゃん』『ありがとうって言えたなら』等。雑誌Kissにて『モトカレマニア』連載中。

Twitter:@ takinamiyukari
公式サイト:Takinami Yukari Official Site


瀧波ユカリさんの
連載バックナンバーはこちら


社会人たちのモヤモヤを解きほぐします!
投稿はこちらから


関連記事

新着記事

もっと見る

HOT TOPIC話題のコンテンツ

注目キーワード

 ビジネス用語・カタカナ語80選

 キャリアロードマップの一歩目

  • ピックアップ