企業には製品を自ら製造する業種がある一方で、商品を仕入れて販売する業種もあります。主たる事業において、それぞれ発生する製造原価や仕入原価について、売上原価とどのような関係があるのかをつかんでいきましょう。
【監修協力:資格の大原(社会人講座)】
製造原価は、主にものづくりを行う製造業などで用いられる言葉です。
製品やサービスを生み出すには、さまざまな費用がかかります。
例えば機械を製造する場合、材料や部品などの購入費用が発生します。機械を組み立てる従業員に対しての人件費も必要となります。さらに作業を行う場所の水道光熱費などもかかります。
このように製造原価には、「材料費」「労務費」「経費」といった費用が含まれ、具体的な原価計算は、「前期末時点で作りかけになった製品の費用 + 当期にて製品を作るためにかけた費用- 当期末時点で作りかけとなった製品の費用」で求めます。
一方で売上原価とは、売れた商品やサービスにかかった原価を指します。
製造原価が用いられている製造業では、製品に直接かかったコストを指します。計算式は「前期の売れ残り製品の製造額+当期に完成した製品の製造額-当期の売れ残り製品の製造額」となります。
この当期に「完成した製品の製造額」が前述の「当期製造原価」です。
ちなみに前期の売れ残りの製品の製造額は「期首製品棚卸高」、当期の売れ残り製品の製造額は「期末製品棚卸高」といいます。棚卸高とは、売れ残った製品の金額を意味してます。
つまり、製造原価は当期中に完成した製品の製造額であり、売上原価は当期中に販売された製品の製造額となります。
仕入原価とは、商品を他社からそのまま仕入れて売る場合の原価を指します。主に他社から商品を仕入れて商売を行う小売店で用いられる言葉です。具体的には、百貨店やスーパー、コンビニといった商売形態の店舗が該当します。
通常仕入原価は、商品そのものの仕入れ価格に加えて運搬費などの経費がプラスされたものとなります。
一方で売上原価は、会計期内において売れた商品の仕入額を算出したものです。仕入原価がその会計期内において仕入れた商品に対する金額であるのに対し、売上原価は、その年度に販売された商品の仕入れ額に重点を置きます。
小売業で売上原価を求めるには、「前期時点の売れ残り品の仕入額+当期の仕入額-期末に残った商品の仕入額」で算出します。売れ残りの商品は「棚卸高」、当期の仕入額は「当期商品仕入高」といいます。
製造原価や仕入原価のように、企業の主たる事業によって原価の呼び名は異なります。それぞれの業種で売上原価とどのような関係があるのかを踏まえ、混同しないよう注意しましょう。
(学生の窓口編集部)
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