「want toではなくhave toで生きる」村田諒太に学ぶ、キャリアを好転させる一歩の踏み出し方

更新:2020/05/20

社会人ライフ

渋谷〜原宿〜表参道エリアを中心に、多拠点でカンファレンスなどが開催されるイベント『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2019』。
9月21日のセッションでは、プロボクサーでありWBA世界ミドル級王者の村田諒太選手が登壇し、自身の競技人生を振り返りながら、今年のテーマである 『New Rules.〜新しい価値観 〜』とセッションタイトルである『一歩踏み出す勇気』について自身の哲学を語りました。

目次

1.競技人生の原点は「自分が1番強いと証明したい」気持ち
2.勝つことで居場所を見つけてきた
3.「自分に目を向けること」でスランプを克服できる
4.価値観は移り変わるもの
5.want  toではなくhave toで生きる

村田諒太 哲学 一歩踏み出す勇気

競技人生の原点は「自分が1番強いと証明したい」気持ち


今回のテーマは『新しい価値観』とのことですが、僕自身、 今まで意識的に「新しい価値観を得よう」と思って行動したことはないんです。ただ価値観が自然に移り変わっていっただけで。ですから今日は、自身の人生を振り返ることで、どの地点でどんなふうに価値観が変わっていったのかをお話ししていこうと思います。

ボクシングを始めたのは本当にささいなきっかけです。中学校の時、学校で喧嘩して一個上の先輩4人が殴りかかってきました。戦うまでもない相手だと思って無視して家に帰ったら、翌日学校に行ったときに、なぜか自分が喧嘩に負けたという噂が流れていたんです。

その時に感じた、「自分が1番強いということを証明したい」「根も葉もない噂を流されるのを止めたい」……そういった単純な気持ちが原点でした。

村田諒太 哲学 一歩踏み出す勇気

勝つことで居場所を見つけてきた


その欲求はボクシングを始めて練習していくなかで、だんだんと形が変わっていきました。

「もっと技を磨きたい」「大会で優勝したい」……そしてその先に「自分が所属する組織に貢献したい」という気持ちが出てきました。子供から大人になって、自己中心性からの脱却が起こったんだと思います。でも結局高校生のうちは、その思いを達成することはできませんでした。

大学に進学し、1年生のときは僕にとって3回負けたスランプの時期でした。負けてアイデンティティが薄れて不安になっていき、自分が特別だってことを示す安易な方法として、憂さ晴らしに走ってしまいましたね。

結果としてこのときは必死に練習して全日本選手権で優勝し、自分自身のアイデンティティを取り戻すことができました。そこからは順調に勝利を繰り返して、大学4年の時にはリーダーを任されることになります。そのときになって再び、チームや大学に対して貢献したいという気持ちが出てきました。

弱くて自分の居場所がない状態から、勝つことで自分の居場所を見つける。居場所ができると、集団への貢献に気持ちが向く……学生時代はその繰り返しでした。今振り返るともっとうまくやれたんじゃないかなぁと思ったりもしますが、必要な過程だったと思います。

村田諒太 哲学 一歩踏み出す勇気

自分自身の体験から思うことは、自分の居場所を見つける、要はアイデンティティを確立させることで、はじめて周囲に貢献しようという気持ちが芽生えるということです。

やっぱり、手元に少ししか水がなければ誰かに分け与えようとは思えないわけです。まず自分が満たされている状態じゃないと、周りに目を向けるのはなかなか難しいと思います。

「自分に目を向けること」でスランプを克服できる


金メダルは自分のキャパを超えたアイデンティティでした。獲得した時はすごくもてはやされて評価されますが、一方で、時が流れてだんだん忘れられて行く寂しさとも戦わなくてはいけません。ただ、そのときの虚しさ、「もっと自分を見てほしい」……そんな気持ちはまた次に頑張るための原動力にもなりましたね。

また、プロボクサーとして試合をしていくなかで、勝負には勝っていても、自分にとっては全然内容のない試合だったなと思うことがありました。でも、周りにはそれは見えないので、人気が上がってCMの仕事がバンバン決まったりするんです。そうなると、自分の中の実力と周りからの評価の余白を埋める、この作業がすごく大変でした。

周囲の評価に合わせて自分を良く見せるためにイキがらなきゃいけない。そうなると本当にしんどいしダサいし運もついてきません。今思い返せば2013年から15年までは3年間ぐらいは、ずっとそんな状況でした。

村田諒太 哲学 一歩踏み出す勇気

スランプから脱却するためにしたのは、自分が負けた試合の録画をみること。自分を冷静に見られるようになるんです。録画を見てダメだった内容の正反対のことをすればいい。悪い自分にちゃんと目を向けてあげるってことはすごく難しいけど、自分の成長につながるんですよね。

「一歩踏み出す」ためにやるべきことは、ひとつはやめないこと、ひとつは逃げないことだと思います。逃げないこととは、本当の自分をみること。現実の自分の姿から逃げない、一歩踏み出して向き合う……言葉で言えば簡単ですが、ものすごく自分のプライドも傷つくし恥ずかしい作業です。

価値観は移り変わるもの


こうやって自分自身の人生を振り返っても、価値観はずっと移り変わっていったんですよね。自己というのははすべて他者との関係性のなかで成り立っているもの。だからこそ、世界チャンピオンになったことで周囲が変わり、それに伴って自分の価値観も変わっていきました。

価値観は変わることが当たり前で、「新しい価値観を持つ」と考えることすら自分を縛ってしまうかもしれない

ただ、「価値観の違い」を逃げ口上にしないためには、縦の軸と横の軸のバランスが大事です。自分自身の生きる軸を縦軸として大事にしながらも、横の軸、周りのために生きるとか社会貢献とかそういう部分も意識していくべきです。

価値観の多様性が大切と言われていますが、共生あってのものだと思います。

want  toではなくhave toで生きる

「師匠、勇気を定義することはできますか?」
「それはできない、なぜなら勇気とは行動でしかないからだ。」

最近読んだお気に入りの本の中にある一節ですが、この言葉の通りで、どんなにいいことを言っていてもアクションに落とし込めないと意味がないと思っています。

村田諒太 哲学 want to have to

今の僕が行動を起こすモチベーションは、自分がチャレンジして勝って周りを喜ばせる・周りに貢献すること。それは僕にとっての「have to(する必要があること)」です。チャンピオンになって、サポートする人の数が多くなったことで、have toをやらなきゃって意識が生まれたんだと思います。

そりゃボクシングはしんどいですよ(笑)。殴られるし減量つらいし……(笑)。

でも、それぐらいやらないと人生張り合いがないじゃないですか。

みんなwant toに目を向けすぎなんじゃないかな、want toをやりたがってhave toを嫌がる人が多いんですけど、実際はhave toに取り組むことこそが、自分のアイデンティティを確立させることにつながると思いますね。


SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA(2019.9.11-2019.9.22)

渋谷〜原宿〜表参道エリアを中心に、多拠点でカンファレンスや体験プログラムが開催される都市回遊型イベント。2019年のテーマは 『NEW RULES. 〜新しい価値観〜』。

https://social-innovation-week-shibuya.jp/

文・写真:フレッシャーズ編集部

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