

人生の大きな節目である「就職」。学生から大人へと踏み出すこの一歩は、社会人人生の始まりとして重要です。大切なファーストキャリアだからこそ、自分の理想の仕事に就きたいもの。
その選択肢のひとつとしておすすめなのが、“ホテル業界”。
日本の観光産業を支える要としてホテル業界は、重要な役割を担っています。また、日本全国に所在するホテルは、働く地域の選択肢も豊富。ホテル業務には飲食、サービスなど様々な職種があり自分の希望やスキルにあった働き方が選べます。自分にぴったりな仕事がきっと見つかることでしょう。
そんなホテルの様々な職種をわかりやすく漫画で紹介します。さらに、就活中の学生さんがホテル業界で働く漫画の主人公たちにOB・OG訪問を実施。業務内容をはじめ、やりがいやホテル業界での仕事の実情などをお届けします。
ホテルで働く6人のストーリー

お客さまを最初にお迎えする
ホテルの顔
【どんな職種!?】
お客さまをお出迎えし、ホテルへのお荷物の運び入れやお客さまのお見送りをするドアマン。ホテルをご利用になるお客さまの最初と最後に接するため、ホテルを印象づける大事な役回りです。車の誘導、車をお預かりして駐車や出庫の代行するバレーサービス、玄関周りの警備など、安全面に配慮する業務も多くあります。また、タクシーの手配を頼まれることもあり、機敏な対応が必要です。
あらすじ
雨の日も雪の日もホテルの玄関にきりりとした佇まいで立つドアマン。お客さまの名前をお呼びして礼儀正しくお出迎えし、丁寧にお見送りをするのが仕事である。しかし、ある日、常連のお客さまの名前を間違えるという大失態をおかしてしまう。よくホテルをご利用してくださる品の良い紳士がふたりいるのだが、帽子と眼鏡がそっくりなため見間違えてしまったのだ。ミスと向き合い、「一人ひとり大切なお客さま」と胸に刻み仕事に励んでいると、挽回のチャンスが……。

ホテルの印象をつける
受付業務
【どんな職種!?】
チェックイン・チェックアウトの対応をするイメージがあるフロント業務。急なキャンセルや予約なしのお客さまの対応を含めた宿泊予約の整理、お客さま滞在中のさまざまな案内のほか、お荷物の預かりや外貨の両替など、幅広い業務に携わっています。お客さまとのコミュニケーション量が多く、ホテルの印象を決める重要なポジションです。
あらすじ
ホテルは、日本だけでなく、世界各国からもお客さまが訪れる。今日もまた、海外からのお客さまがいらっしゃったが、お客さまは心なしか複雑な様子。記念日旅行に来たものの、ご希望のお部屋が取ることができなかったそうだ。「なんとかしてご希望の部屋をご用意できないだろうか」という気持ちを捨てきれないフロントスタッフ。再度、予約のスケジュールを確認していたところ、ある変化が……!

お客さまが楽しみにする
食事を提供
【どんな職種!?】
総料理長、シェフ、ソーシエ、ブッチャー、ベーカリー、パティシエ……とさまざまなポジションのある調理。それぞれの立場で、技術とセンスをフルに活かし、思い出を鮮やかに彩る料理をチームで作り上げます。味、食材、盛り付けなどでお客さまを感動させる美味しい料理を多くの人に提供し、そして心を掴むというお客さまに感動を与える仕事です。
あらすじ
何十年も前から、年に1度やってくるひとりの老紳士は、身なりや佇まいの美しさからホテルでは有名なお客さま。しかし、調理スタッフはひとつ気にかかることがあった。それは、その老紳士が寂しそうに食事をしていること。そこで、その老紳士に幸せな食事の時間を味わっていただくべく、密かに行動し始める。聞き込みで訪れた前料理長が開くレストランで事情を伺ったところ、興味深い話が……! そして、老紳士が訪れた際に調理スタッフはとあるメニューを勧めた。

お客さまと接する機会が
最も多い
【どんな職種!?】
ホテルを利用するお客さまをおもてなしする立場として、最も身近なのがサービス職。飲食をご利用されるお客さまからオーダーを取り、ドリンクや料理の提供やメニューの説明のほか、お客さまのご要望に対しての対応なども行います。また、宴会やルームサービスなどもあり、業務は多岐に及ぶのが特徴。幅広い知識ときめ細やかなホスピタリティが求められる仕事です。
あらすじ
ある日、小さなお子さま連れのファミリーがダイニングに訪れた。ところが、どうもご機嫌ななめ。食事が提供される前から、「早くテレビ見たい」と駄々をこねるお子さまにお母さまはお困りの様子。ついには、食事が出てきても「食べたくない」とそっぽを向いてしまい、家族の食卓はやや険悪ムードに。そんな姿を見ていた、サービス職のスタッフが「何かできることはないだろうか」と考えていると、ひとつのアイディアが浮かぶ。さあ、一体どんなおもてなしをするのか。

特別な1日を
縁の下で支える
【どんな職種!?】
ブライダルコーディネーター、介添人、テーブルコーディネーターなどプロフェショナルが特別な1日を作り上げるブライダル。ドレスのコーディネート、当日の会場設営、披露宴での食事、照明や音響のプランニングなど、お客さまに寄り添うことが大切です。人生のなかでも、最も思い出深い1日を演出するという高い接客スキルが求められる仕事です。
あらすじ
ある日の挙式のこと、あいにく朝からの台風で交通規制がかかり、お客さまの多くが会場に来られないという状況に。 「なんでよりによって、この日に台風なの?」と涙を流す新婦。それもそのはず、新婦の父はシングルファーザーで、花嫁姿を誰よりも見せたい、ウェディングロードを一緒に歩きたいと、新婦は願っていたのだ。なんとかして挙式も披露宴も成功させるべくブライダルスタッフが“ある方法”を考案。そのおもてなしとは……!?

企画とプロデュースを
一挙に担う
【どんな職種!?】
営業は、宴会業務や客室、飲食のセールスなど、ホテル経営を舞台裏で支える役割を一挙に担います。企業のパーティ、記者会見、ツアーや修学旅行の宿泊などでホテルを使ってもらえるように、さまざまな企画を立てたり、企業や団体、旅行会社等と交渉したりする仕事です。コミュニケーション能力や交渉力はもちろん、リサーチ力や企画力なども求められるホテルの重要な役割です。
あらすじ
ホテルを舞台裏で支える営業職。その仕事の実情はなかなか見えにくいが、企業のパーティや団体ツアーなど大規模な企画を一手に引き受けているやりがいのある仕事だ。今回、営業が担当したのは、とある企業の30周年パーティ。創業以来ずっとパーティやレセプションなど複数の企画を引き受けている得意先だ。参加者全員が満足するようなパーティにするべく、過去のパーティを全てリサーチ。それを土台にプランを立てようと、企業の担当者に伝えた。すると……。
ホテルにはどんな仕事が
あるの?
それぞれの業務の実態に迫る
お客さまが快適に過ごす時間を支えるホテルの仕事。しかし、働くイメージがわかない人もいるのでは? そこで、ホテルで働く人に就活生がOB・OG訪問してきました。

はじめまして。私はホテルも就職先の候補に考えて、就活中です。今日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、みなさんが実際どのような仕事をされているのか教えていただけますか。
ホテルにいらっしゃったお客さまを、最初にお出迎えするのが私の役割です。ホテルの第一印象を決めるので、仕事として責任感を持っています。毎日、笑顔でお迎えしています。
またお客さまのお荷物や外出のお手伝いや安全な移動をサポートしております。


私たちフロントはお客さまのチェックイン・チェックアウト対応から、ホテル館内のご案内、周辺観光のご相談など、お客さまとのコミュニケーションが多いポジションです。
私はレストランサービスに従事しているのですが、ホテルには宿泊以外の目的、お食事や会合などでいらっしゃる方も多いです。特に、ホテル内のレストランはお子様連れからビジネスマンまで幅広い年齢層の方に合ったサービスをお届けします。


私は、ホテルレストランのシェフです。先ほどのサービス部門と連携し、美味しいだけでなく、思い出に残る幸せな食事の時間を提供できるように努めています。特に結婚式のような特別な日のメニューは、とてもやりがいがあります。
ブライダルは、調理、サービス……と多くの部門と関わる業務です。チームワークを大切にしつつ、お客さまのご結婚式を成功させるために力をつくし、お客さまの人生の華々しい1日にお力添えできることが喜びです。


私は営業を担当しています。ホテルで営業というとなかなか仕事内容が分かりづらいと思うのですが、宴会業務や客室、飲食のセールスなど、ホテル経営を裏で支える仕事です。パーティをはじめ、レセプションや周年など、さまざまな企画をサポートします。
ホテル業界で実際に働く人たちに
舞台裏を聞いてみました!

みなさん、ご紹介ありがとうございます。業務の役割イメージがつきました。
一番、わかりにくいのは私たち営業部門だと思いますが、実はホテル業務にとっては大きな役割になります。先ほど、宿泊以外にホテルには会食や結婚式、企業のイベントなどがあると話が出ました。たくさんあるホテルのなかで、自分のホテルを選んで会合や催し物を実施していただけるように営業活動します。例えば、みなさんよくテレビで観る記者会見などもイベントのひとつです。大きな企画などに携わることが多いので、責任感は大きいものの、やりがいを感じる仕事です。


そうなんですね。ホテルって24時間365日営業だと思います。すごく大変そうなイメージがあるのですが、実際はどうなのでしょうか?
確かにホテルは24時間営業とも言えるので、お客さまの対応で深夜や早朝に業務が発生することもありますが、交代制なので想像されているような所謂ブラックなイメージは全然ありません。休暇も普通に取れます、職種によってそれぞれローテーションで休暇を取得しています。平日が休暇になることもありますが、柔軟な働き方ができます。

年末年始やGWなどの長期休暇は働くことが多い分、オフシーズンに旅行ができたりもします。このような点は、このホテルの現場で働くならではのメリットですね。


いわれてみればそうですね。実際に働くために、何か資格などは取っておいた方がいいのでしょうか?
資格はなくても構いません。ただ、フロント業務に就くのであれば、コミュニケーション能力、様々なトラブルに対応できる問題解決能力、ホテルの施設や、周辺情報などの幅広い知識を習得して、お客様の質問に的確に答えられることが重要です。そして何より心からの笑顔と丁寧な言葉遣いによってお客様を大切にする姿勢が大切です。余談になりますがホテルスタッフの中には綺麗な所作を身につけようと「茶道」を習い、「茶道」をとおして指先にまで神経を行き届かせ、心をこめた「おもてなし」のプロを目指すスタッフもいますよ。



最近ですと、海外のお客さまも増えていると思いますが、英語の資格やスキルは必要ですか?
必須ということはありませんが、外国からのお客さまも多いのであった方が有利かと思います。でも、外国の利用客が多いホテル、国内の方が多いホテルなど、それぞれのホテルの客層によるとも思いますので、一概には言えないかもです。
ただ、共通して言えるのは、正しく美しい日本語を使えることはとても重要です。



仕事が大変そうという部分では、ドアマンの方にもお話を聞いてみたいのですが、外にずっと立ちっぱなしなんですか
そんなことはないです(笑)。 宿泊客のチェックインやチェックアウト時には、客室やフロントへの案内や誘導、荷物運搬などを行っています。そのほか、お客さまのお車のご案内もドアマンの業務です。お客さまのお出迎えのために立っている印象が強いかと思いますが、どちらかというと動いている方が多いかもしれません。



テキパキとしていてかっこいいですね。いつもホテルで見るたびに立ちっぱなしで辛そうとか、思っていました。すみません・・
季節に関わらず、ホテルの出入り口にいるので寒さや暑さを感じます。しかし、僕らは、ホテルの第一印象となるのです。とても重要な任務だと思っています。


今度は調理の方にもお伺いしたいのですが、実際は調理師免許とかが条件になるのでしょうか?
条件ではないと思います。専門学校などで調理師免許を取ることは有利になりますが、ホテルによっては働きながらも調理師資格取得のサポートをしてくれるなど、人材を育ててくれる環境が整っているところも多いと思います。


資格取得自体をサポートしてくれる環境が整っているホテルも多く、働きながらスキルアップも可能です。ブライダルに携わる方のなかにもブライダルプランナー検定などで資格を取得している人もいますよ。


そうなんですね。結婚式は絶対に失敗できないし、舞台裏では相当なプレッシャーがあると思いますが、どうですか?
おっしゃる通り、失敗は許されません。そのために何人ものスタッフでミスが起きないようにチェックしています。人生の最も幸せは日をご一緒させていただくので、その責任感やプレッシャーはあります。お二人と打ち合わせを重ね確認作業を何度も経て、晴れて当日を迎えた感動は一度味わうと忘れられません。私は一番幸せな職業だと思っています。



現在、インバウンドで日本の観光業界はとても賑わっていますが、今後はどうなっていくと思われますか?
コロナが明けてからは順調に回復し、日本政府もオーバーツーリズム解消に力を入れるほどまでになりました。ホテル業界もこれからさらに働き方改革や効率化などを求められると思います。

ホテルは泊まるだけの場所ではありません。多様なニーズがあるので、それにどう答えていくかが課題になりますね。日本のホテル全体で考えて前進していくと思います。



印象に残っているお客さまとのエピソードがあったら教えてください。
修学旅行でご利用いただいた学生が『楽しかった!!』『ご飯が美味しかった!!』と笑顔で帰られる姿にはいつも元気をいただきます。たまに、『昔、修学旅行の時に泊まった』と大人になってからご家族でいらっしゃることも。また、ある社長さんは、先代のお父様とおなじようにご出張の度にホテルに滞在し、特別な空間や時間を過ごすことが自身の原動力となっている。そのためにまたがんばれると仰っていました。世代を超えて、変わらぬ価値と環境を提供する重要性を感じる瞬間です。私自身もお客さまの素敵な思い出になるよう頑張らないといけないなと喝が入りますね。


ブライダルだと、披露宴を挙げたご夫婦が、毎年、結婚記念日に食事に来られることも多く、ご夫婦の年月の積み重ねを拝見できるのもとても嬉しいです。


それはグッときますね。ホテルの仕事に興味がどんどんわいてきました。どんな人がホテルでの仕事に向いているのでしょうか?
ホテルにはご高齢のお客様や小さなお子様もいらっしゃいます、様々なお客様とコミュニケーションとることや、触れ合うことに喜びを見出せる人が向いていると思います。あとは、ドアマンやフロントの仕事では重い荷物を持つこともありますし、シェフは何百人もの料理を作ることもあるので、職種によっては体力も大事です。


やっぱり、接客業なので、1番大事なのはホスピタリティだと思います! お客さまにこれをやったら喜んでくれるんじゃないか、こうしたらもっとよかったのではないかと常にお客さまの立場に立って考えられることも大切です。そのためには、日頃から五感を研ぎ澄まし、日々の生活のなかで感性を磨いていくことが大切です。最近では、推し活などの自分の趣味を大切にして仕事をがんばっているスタッフも多いですよ。


お客さまに喜んでいただくことに働きがいを感じられることが大切なのですね。お客さまと接して、思い出づくりのお手伝いができるのって本当に素敵で、とても魅力的な仕事だなと感じました。ありがとうございました!!
OB・OG訪問を通して、現場のリアルについて触れることができた方も多いのではないでしょうか。ホテルの仕事について気になった方は、ぜひ調べてみてください。