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高校生による高校生のためのお仕事図鑑~Vol.1字幕翻訳家松崎広幸さん~

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CONTENTS

世の中には色んな職業が溢れている。名前は聞いたことがあっても実際にどんなお仕事をしているか、どうやったらその職業につけるのか、分からないことばかり…そんな高校生のみなさんのために、同じ高校生のガクラボメンバーが実際に働く人に会ってインタビューをしてきます!

憧れの職業に就く人の話を聞いて、今の自分にできることを何かひとつでも考えてみませんか?

今回、お話を聞くのは…

7月24日(水)より大ヒット公開中の映画『デッドプール&ウルヴァリン』で字幕翻訳を担当された松崎広幸さん(東京都出身  /60歳)

お仕事について

基本DATA

業種 翻訳
職種 翻訳
勤務時間 不定
残業時間 不定
休日 不定
勤務形態(リモート、出社など) 自宅
服装 不定

字幕翻訳家とはどんなお仕事ですか?

しらべさん

映画の字幕を翻訳して映画につける仕事です。

松崎さん

お仕事の日はどんな一日を過ごしていますか?

しらべさん

どこかに出かけて仕事をするわけじゃないので、朝起きて、ご飯を食べて自宅の仕事部屋にこもって仕事をしています。何か時間を決めて仕事をしているわけでもないので、だらだらしようと思えばいくらでもできちゃうような一日を過ごしています。

松崎さん

集中できる時間などはありますか?

しらべさん

特にないですが、仕事を始めてから3時間くらいが1番集中できます。疲れたら昼寝したり、散歩をしたりすることもあります。自分で“こうやろう!”などはあんまり決めずに、集中できる時に進めて、疲れたらやめてという感じです。

松崎さん

日本語字幕を今回担当された『デッドプール&ウルヴァリン』でも同様に過ごしていましたか?

しらべさん

翻訳をしていてすべてポンポンと頭から完成するわけでなく、これどうしようと止まるところが常に出てくるんです。進めていって疲れたと思ったらやめて、ご飯を食べに行くんですけど、その間も意識して考えていることや無意識に考えていることがあるので、翻訳の仕事はその間も仕事をしているのではないかと思います。道を歩いていてアイディアが浮かんでくるときもあるし、2、3日経過しても全く良い案が出てこないときもあります。だから、夜寝るときに布団に入ってぼんやりする時間でも仕事が進行しているのではないかと自分では思っています。大袈裟に言えば、一日中何かしら仕事のことを考えながら過ごしていました。

松崎さん

お仕事のない日はどのように過ごしていますか?

しらべさん

高校生の方と同じように、晴れていたらどこかへ出かけて、雨が降っていたら部屋にいるような過ごし方をしています。原稿を仕上げた後でもまだ考えなければいけないことがあると休みの日もどこか頭が動いているので、完全に仕事のことを忘れて過ごす日は、1年間の中でそんなにないかもしれないです。

松崎さん

字幕翻訳家として映画への字幕を担当するまでにどのような経験を積む必要がありますか?

しらべさん

私は翻訳家になろうと思ってなったわけではなく、たまたまの成り行きでなっちゃったところがあるので、どんな経験が必要かはっきりとお伝えすることは難しいですが、まずは外国語が得意でなければならないのと、それ以上に日本語が得意であることは重要だと思います。英語がクラスで一番だったら日本語は学校で一番でないといけないと思っています。私は学校で作文を出して学校で一番だったので、国語に関しては誰にも負けない自信がありました。英語の力はそこまでではないですが、得意なほうでした。私の世代では中学1年生から英語を習うのですが、小学3年生の時に「the」=「ザ」というのを自分で気づきました。自分で言うのもなんですが、語学の才能はあったんだと思います。外国語に関して、特別な勉強をしていたというのもないので…。

松崎さん

字幕翻訳家というお仕事をする上で大事にしていることはありますか。

しらべさん

“完璧に翻訳をするのは無理だ”という認識を持つことです。完璧を求めると無理が出てくるので、できるだけ近づけようという意識をもって外国の言葉を日本語にしています。

松崎さん

映画『デッドプール&ウルヴァリン』の字幕翻訳をする際にも同様のことを大事にされていますか。

しらべさん

日本語にしきれないセリフが多い映画なので、大まかでも観ている人に伝わるようにしました。ギャグのセリフがあった時にダジャレなのか、時事ネタなのか、芸能ネタなのか、それだけでもわかるように、海外で有名なことなどを大まかにでもわかるように心がけています。

松崎さん

学生時代のお話

どんな高校生でしたか。

しらべさん

授業はサボっても怒られないようなあまり厳しくない学校だったので、運動部の練習ばかり行っていました(笑)。

松崎さん

何部だったんですか?

しらべさん

バスケットボール部です。

松崎さん

大変でしたよね?

しらべさん

そうですね。部の練習は休みなしでやっていて、たまに授業をさぼって映画を観に行ってました。

松崎さん

それは日本語の映画ですか?

しらべさん

あらゆる映画です。今と違って映画館が多かったのと、その頃は2本立て、3本立てで400円、500円で観られる映画館があったので、よく観ていました。

松崎さん

なぜ、どのタイミングで翻訳家になろうと思いましたか。

しらべさん

翻訳家になろうと思ったことはないんです。映画を作る方の仕事をやりたいと思ったのが大学生以降で、当時はすごく景気がいい時代だったので、特に就職しなくても何かしらで食べていけるだろうという世の中でした。映画を作る仕事になんとか就けないかなと思って、アルバイトで映画の助監督をやったことはあるんですが、なかなかそこから監督になる道っていうのは開けなくて。テレビで放送される映画番組の制作の仕事を紹介されて、当時は毎週テレビで吹替版の洋画を放送していたので、毎週一本翻訳の仕事が発生していたんです。そのうち翻訳家の人数が足りなくなって、私は外国語が得意だったので「君ちょっと一本やってみないか」と言われました。翻訳の勉強はなにもしていなかったのですが、原稿の書き方だけ教わってやってみたらたまたま評判が良くて、それから仕事が入るようになりました。翻訳の仕事をやろうと目指さず動いているうちにいつのまにか字幕もやるようになって、今の感じです(笑)。

松崎さん

高校生の時になりたかったお仕事はありますか?

しらべさん

高校生の時は何も考えていなくて。景気のいい時代でしたし、運動部に入っていたので、大学でもそのまま続けて、卒業したら実業団にでも入れるんじゃないかという甘い考えでやっていました。結局、大学の部は途中で合わなくて辞めてしまいましたが、高校生の時は映画を作ろうとか、映画の監督を目指そうとかは考えていませんでした。

松崎さん

高校生の頃に戻れるとしたら、 今のお仕事に活かすために何にチャレンジしてみたいですか?

しらべさん

何もないと思います。たまたまなっているので(笑)。

松崎さん

翻訳家になりたいと思っている高校生にアドバイスをするとしたらどのようなことを伝えますか?

しらべさん

とにかく日本語が大事。外国語の勉強ももちろんなんですけど、外国語の勉強よりも日本語。勉強だと思ってやると芯から身につかないので、日本語なり外国語を身につけるとなると、楽しみながら常に言葉に触れていること。私の同業者にも本を読むことが好きな人が多いと思います。勉強だと思わずに楽しんで本を読んだり、楽しんで映画を観たりすると自然と語学力が身についてくると思います。

松崎さん

松崎さんにとって 「働く」 とは何ですか?

しらべさん

なんでしょうね。働かないとお金を稼げないし生きていけないので。朝起きて自分がやりたい時に仕事してという形で仕事しているので、仕事しているぞという気構えがないんです。だからあまり働くということを意識して暮らしてはいないです。

松崎さん

趣味に近い感覚でしょうか?

しらべさん

趣味というわけではないんですが、ご飯を食べないと生きていけない、水を飲まなきゃ生きていけない、寝ないと体が弱っちゃう…そういうことの中に仕事をしている時間も含まれているのかもしれないです。

松崎さん

松崎さんが思う翻訳家に向いている人はどんな人だと思いますか。

しらべさん

●本を読むのが好きな人
●人と接して喋るのが好きな人
が向いていると思います。翻訳を始めた頃、「おしゃべりですか?」って聞かれたことがあって、多分おしゃべりな人が向いてるからだと思います(笑)。私はそんなにおしゃべりではないんですけど、人の話を聞くのが好きでもいいと思います。いろんな言葉に触れて、自分が使える言葉をどんとん増やしていくということが大事です。

松崎さん

話すということも翻訳につながっているんですね。

しらべさん

繋がりますね。特に映画は人の話し言葉なので、いろんな人の喋り方や特徴、癖など、いろんな世代の言葉に触れて自分も使えるようにできたらいいと思います。

松崎さん

松崎さんが思う翻訳家を目指すために高校生のうちにやっておくとよいことを教えてください。

しらべさん

●本を読むこと
●「落語」を聞くこと
がいいと思います。落語は話し家という喋りの専門家が、今の日本人が忘れてしまった古い言葉をたくさん使っていて、そういう言葉が生かされる作品もあるし、自分たちが生きている今の世の中で使われなくなった言葉に1番触れることができます。意識してテレビや寄席で観て触れてみると刺激にもなるし勉強にもなると思います。

松崎さん

映画『デッドプール&ウルヴァリン』について

「デッドプール」シリーズに関わると聞いた時の心境を教えてください。

しらべさん

第1作『デッドプール』(2016)の時点では世の中にあまり知られていなくて、ちょっとヘンテコな映画がきたな程度で特に気負いはしてなかったですし、イケイケな映画だから気軽にできるだろうと思っていたら大ヒットしちゃって(笑)。初めの時は「こんなのがあるんだ」という思いでした。

松崎さん

2回目、3回目がきた時はいかがでしたか?

しらべさん

2回目の時にはもう1作目がヒットしていたので、前回の上がった期待値を外さないようにしようと思いました。今回も同じです。

松崎さん

映画『デッドプール&ウルヴァリン』を鑑賞する高校生へ字幕翻訳でこだわったポイント、注目してほしいポイントを教えてください。

しらべさん

今回はセリフがとても短くて早いものが多かったんです。字幕って大体1秒間に4文字が標準とされているのですが、1秒以内のセリフに7、8文字の字幕を出しちゃってるところがあって…そこを頑張って読んでほしいです(笑)。

松崎さん

「デッドプール」シリーズでは、パロディやダジャレなど英語から日本語に翻訳したことで伝わらないことなどもあると思いますが、どのような工夫をされていますか。

しらべさん

100を100伝えることはできないので、おおまかにこれがどういったネタなのか伝わればいいかなと。できるだけ言っているセリフのニュアンスを伝えたいと思ってるのですが…、これに関しては毎回観ている方にこの程度しかできなくて申し訳ないなという気持ちになります。

松崎さん

日本語と相入れないニュアンスを訳す時はどうしていますか?

しらべさん

日本語の場合、語尾で「〜じゃん」に変えるだけでもガラッと変わることがあるので、そのような軽いノリを表せるような言葉遣いはある程度は気をつけています。個人的にはやりすぎないように抑えていて、逆にそれを思いっきりやる翻訳家の方もいるのでいろんなスタイルになるかなと。私はここぞという時だけ利かせています。

松崎さん

映画『デッドプール&ウルヴァリン』を楽しみにしている高校生へメッセージをお願いします。

しらべさん

どうしても元のセリフの面白いところを全部伝えきれてないところばかりのような気がしていますが、字幕で足りない部分もスクリーンを観ればきっと楽しめると思うので、字幕の至らないところは大きい心で見逃してもらって楽しんでください。

松崎さん

映画『デッドプール&ウルヴァリン』は大ヒット公開中!

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