英語の「仮定法」はルールが複雑なため、苦手な方も多いのではないでしょうか?
仮定法とは、現実とは違う状況を仮想して「〜だったらいいのにな」と述べることです。
ここで、仮定法を学ぶと一度は目にする、有名な例文をご紹介しましょう。
I wish I were a bird.(もし私が鳥だったらなあ。)
例文に違和感を抱いた人も多いかもしれませんね。
なぜなら仮定法を習う際、“I” “He” “She”などの単数形の主語に続くbe動詞の過去形は、“was” と勉強したはずだからです。
“I” は単数形だから過去形のbe動詞は“was” になる。じゃあ、どうして “I was” じゃなくて “I were” なの?
本記事では、この疑問に対して、英語初心者にもわかりやすく解説していきます!
結論:仮定法では“were” を使うことで「現実との乖離」を表している
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仮定法過去で “was” ではなく “were” を使う理由は、「現実との乖離」のニュアンスを強く表現しているからです。
冒頭の例文 “I wish I were a bird.” では、「もし私が鳥だったら」という、現実では絶対にあり得ないことを仮想していますね。
通常、“I” のあとに続く be動詞の過去形は “was” です。「“was” が来るのでは?」と考えていた人の認識は誤っていませんので、安心してください!
しかし英語の世界では、あえて “were” という「通常ではない形」を取ることで、「現実から離れている状態(=ありえない感じ)」を出すんです。
もし“I was a bird” になると、自分が鳥になって飛べる可能性がある前提で、仮定しているニュアンスが出てしまいます。
人間が、
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今から鳥になろうと思えばなれるから、やってみようかな。
と考えている状態は、不自然ですよね。
背景:英語の古い歴史の影響が関係している!「be動詞の過去形」は、すべて “were” を使っていた
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ここで理解を深めるために、なぜ “were” という形をとるのか補足説明をします。
英語の歴史をさかのぼると、古くは「be動詞の過去形」は、すべて “were” を使っていたそうです。
現代人の感覚からするとかなり違和感がありますが、例えば “I were” や “She were” といった具合に、はじめはそもそも “was” というbe動詞自体が存在しなかったんですね。
その後、be動詞の過去形における別の形として “was” が生まれました。その後、徐々に一人称は “I was” や “She was” と、現在の形へと移り変わっていきます。
しかし1つだけ、 “I were” を使うケースが残りました。
「仮定法過去」です。
仮定法は「もし〜だったらなあ」という、現実ではあり得ないことを仮想する特殊な文法です。
“I were” という、今ではもう使われない表現をあえて使うことで、「現実じゃない感じ」「あり得ない感じ」を強調しているんですね。
高校までの一般的な英語教育では、なかなか教えてもらえない背景事情ですが、マメ知識として頭の隅に置いておくと、理解の助けになるはずです。
京都女子大学の論文でも触れられている通り、仮定法は日本人の英語学習者にとっては、難しい文法項目とされてきました。
しかし歴史的な背景を知り、「仮定法」=「現実じゃない感じ」のイメージさえできれば大丈夫です。複雑に考えなくても、「“I were” は非現実的なんだな」と、使い方をスッキリ理解できますよ。
仮定法“I were”について例文で考えてみよう〜 口語ではwasを使うケースも! ~
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いくつか仮定法過去の例文をチェックしながら、使い方をマスターしていきましょう。
If I were a cat, I would sleep all day.
(もし私が猫だったら、一日中寝てるだろうな。)
If I were an American, I would throw a party every weekend.
(もし私がアメリカ人だったら、毎週末パーティーを開くよ。)
If I were the Prime Minister, I would work hard to improve the country’s education system.(もし私が総理大臣だったら、国の教育制度を改善するために尽力するだろう。)
いずれも話し手が、ごく普通の日本人である前提です。その自分が猫 / アメリカ人 / 総理大臣になることは、現実ではありえない状況ですよね。
このように、現実ではないことを仮想するときに “I were” と仮定法を使うことで「現実との乖離」「あり得ない感じ」を出しているんです。
If I was slimmer, I could pull off various outfits.
(もし私がもっと痩せていたら、いろんな洋服が着こなせるのにな。)
「あれ? 話が違うよ!」
「今度は “I was” になっているけど、どっちが正しいの?」
……と混乱してしまいますよね。
実は、仮定法でも “I was” を使うケースは一部存在するんです。
非公式で口語的な言い回しですが、ネイティブの日常会話では主に、
「場合によっては、将来起きても不思議ではないこと」
を表現するとき、使われることもあります。
“If I was slimmer” は、「もし私がもっと痩せていたら」という仮定が「現実に起こる可能性がある」という微妙なニュアンスを含んでいます。
体質的にどうしても痩せられない人の場合、「痩せること」は非現実的ですが、技術の進歩で痩せる方法が見つかる日が来るかもしれません。
このような「現実的ではないけれども、少しなら実現可能性がある」と感じられる場合に “I was” を使うことがあるんです。
I wish I were a bird.
(もし私が鳥だったらなあ。)
⇒ 実現可能性0%
「現実との距離」がもっとも遠い = “I were”
If I was slimmer, I could pull off various outfits.
(もし私がもっと痩せていたら、いろんな洋服が着こなせるのにな。)
⇒ 実現可能性20%
「現実との距離」がちょっと縮まる = “I was”
“I was” は正式な形ではありませんが、口語表現としては使用されることがあるので、便利な英会話フレーズとして押さえておきましょう。
違いまとめ:仮定法で “I were” を使うのは「現実との乖離感」を表すため
今回のテーマ「仮定法の “I were”」について、記事の内容をまとめました。
- 仮定法で “I were” を使うのは「現実との乖離感」を表すため
- “I were” の形は英語の歴史が関係している
- 非公式な口語表現では “I was” も使うことがある
“was” も“were” も最初は「be動詞の過去形」として習うため、とても紛らわしいですが、仮定法では過去の出来事を表現しません。
参考:沢田照徹『現代アメリカ語の用法』(中京大学教養論叢, 1968)
あくまでも「現実に起きていないこと」を、仮の状況として説明するときに使われると覚えておきましょう。
仮定法は苦手意識を持つ人も多いと思いますが、しっかりマスターすることで、日常会話での表現の幅もぐっと広がるはず。つまずいたときは本記事を読み返したり、今回の例文を音読して感覚的に使い方を覚えたりして、理解を深めてみてくださいね!