“seem” は「〜のように思われる」や「〜らしい」と訳される自動詞です。断定を避け、話し手の印象や推測を表したい時に使われます。
中学校で学ぶ基本動詞で、日常英会話でもよく使われるため、「簡単に使いこなせるよ!」と考える人もいるかもしれません。
しかし、いざ実際に英会話をしようという場面で、こんな風に迷ったことはありませんか?
例:友人と話しているとき、相手の気分が優れないように見えたので「今日は疲れているように見えるよ?」と言いたいんだけど……
“You seem tired today, right?”
“You seem to be tired today, right?”
どっちが適切な表現なんだっけ……?
“seem” を使う表現には、“seem” もしくは“seem to be” と言う場合の2パターンがあります。紛らわしく、使い分けに混乱する方も多いですよね。
今回の記事を読めば、“seem” と ”seem to be” の違いを明確に理解でき、今後迷うことがなくなりますよ!
結論:“seem” は「主観的」 “seem to be” は「客観的」

“seem” は「主観的」なニュアンスを持ち、よりカジュアルな文脈で使用されます。
“seem to be” は「客観的」なニュアンスで、よりフォーマルな文脈で使われるのが特徴です。
“seem” は「主観的」でカジュアルなニュアンスを持つ
“seem to be” は「客観的」でフォーマルなニュアンスを持つ
冒頭の例文で考えてみましょう。
You seem tired.
You seem to be tired.
いずれも、日本語に訳すと「(あなたは)疲れているようだ」という意味です。2つは同じ意味を表しますが、ニュアンスが異なります。
“You seem tired.” は、話し手が相手の様子を見て、主観的に「なんだか顔色が悪いな。今日は疲れているのかな?」と推測しているイメージです。
あくまでも話し手が「疲れているのかな?」と考えているだけで、他の人も同様に考えている証拠はありません。
一方“You seem to be tired.” は、より客観的・一般的な表現で「誰が見ても疲れているように見える」というイメージです。
「疲れている」と話し手本人だけでなく、他の人も同様に判断できる状態を示唆しているんですね。
友人と話しているとき「今日は疲れているように見えるよ?」と言う場合、主観的か、客観的か
冒頭の例文「今日は疲れているように見えるよ?」について、今回は「気分が優れない様子の友人に対して言う場合」を考えてみましょう。
まずは話し手の意見が主観的(seem)か、客観的(seem to be)か判断してみてください。
例文の情報だけで判断するなら、友人の様子から「気分が優れないように見えた」と感じたのは、あくまで話し手ですね。
相手に会ったときの印象から「話し手が主観的に判断している」ニュアンスが強いため “seem” が適しています。
解答
“You seem tired today, right?” 「今日は疲れているように見えるよ?」
以降でさらに主観的(seem)/客観的(seem to be)の違いをそれぞれ理解できるよう、分かりやすく解説していきます。
“seem”は話し手の主観的意見&カジュアルなイメージの英語表現

“seem” は、「話し手の主観的意見」を表すニュアンスを持ちます。
“He is sad.”(彼は悲しんでいる。)という文章について考えてみてください。
英文の情報だけでは、本当に彼が悲しんでいるか判断できませんよね。つまり「悲しいかどうか」についての真意は、本人のみが知っています。
本当に悲しんでいるかどうか「彼」本人にしか分からない状況ということは、第三者が「悲しそう」と感じたとしても、それは意見に過ぎません。
「〇〇という根拠があるから、間違いなく彼は悲しんでいる」と断定してはいけない状況ですね。
そこで“seem” を付けることで、「どうやら悲しんでいるようだ」という、あくまでも受け手の主観的な意見として、彼の様子を伝えられるのです。
実際に以下の例文で、ニュアンスをチェックしてみてください。
※例文はいずれも三人称単数(私・あなた以外の1つのもの)が主語のため、動詞である“seem” には“s” が付きます。
She seems to know the answer.
(彼女は答えを知っているようだ。)
⇒ 彼女の様子から「答えを知っていそう」と話し手が推測している主観的なイメージ。
Her explanation seems confusing to me. I didn’t understand it well.
(彼女の説明は私には分かりにくいように思える。よく理解できなかった。)
⇒ 彼女の説明が話し手にとっては「分かりにくかった」という主観的なイメージ。
Today seems perfect for a long walk in the park.
(今日は公園での長い散歩にぴったりの日のように感じる。)
⇒ 「今日は散歩日和だ」と話し手が個人的に思っている主観的なイメージ。
例文から分かる通り、“seem” は日常的な感覚や抽象的な印象を主観的に伝え、「日常会話などのカジュアルな文脈」で使われることが多いのが特徴です。
相手に対して、軽い気持ちで、個人的な意見・感想を伝えたい時に“seem” が適しています。
“seem to be”はより客観的な事実&フォーマルなイメージの英語表現

先述の通り、“seem to be” は「より客観的な事実」を表すニュアンスを持ちます。
日常生活で時々、相手を納得させるだけの材料がある状態で、話の説得力をより高めたいタイミングがあるのではないでしょうか。
その際は単に“seem” と言うのではなく、“seem to be” を使って、「客観的な事実であるというニュアンス」を伝えるのがおすすめです。
She seems to be a talented musician.
(彼女は才能ある音楽家のようだ。)
⇒彼女の音楽の才能は誰もが「認めている」という事実を伝えるイメージ。
The old building seems to be structurally sound.
(その古い建物は構造的にしっかりしているようだ。)
⇒その建物の構造が世間では「頑丈だ」と考えられているという一般的なイメージ。
The team seems to be working efficiently to meet the deadline.
(チームは締め切りに間に合わせるため、効率的に働いているようだ。)
⇒チームメンバーたちは誰から見ても「効率的に働いている」という客観的なイメージ。
“seem to be” は、具体的・客観的な状態を示すのが特徴です。
主観が入らない分、より正確な事実を求められる文章やフォーマルな文脈で使われることが多くあります。
そもそも“seem” “seem to be” は、古くは原始ゲルマン語の“somiz” に遡ると言われ、中世には「明白である・明らかである」という意味で使われ始めました。そこから転じて「そう見える」「外見上はそう見受けられる」という意味になったのです。
参考:seem の語源|Etymonline – Online Etymology Dictionary
ただし、“seem” “seem to be” はいずれも「確実にそうだ」と言い切れない状態です。
Cambridge Dictionaryに掲載された、とある例文を見てみてください。
I’m not sure, but the doves seem to be building a nest.
(確かではないが、ハトが巣を作っているようだ。)
引用:Cambridge Dictionary | 英語辞典, 訳 & 類義語
※和約は筆者
例文の話し手は、ハトが巣を作っているか確信できていません。
ハトの様子や周囲の状況を観察し、情報を参考にしながら、客観的に「巣を作っている可能性が高い」と判断していることがうかがえます。
このように、話し手の個人的な印象は挟まずフラットに、具体的な状況・事実を表したいときには“seem to be” が適しているんです。
なお、客観的に「~ようだ」を意味する表現には、他にも“appear” や “look” などがあります。いずれの表現も、特に視覚的な情報をもとに「~のようだ」「~に見える」と判断しているニュアンスが強いのが特徴です。
“seem” の類似表現まで使い分けられるようになると、よりシチュエーションに適した英語を話せるようになります。ぜひあわせて、全部の表現をマスターしてみてくださいね。

“seem” と “seem to be” の違いについて理解度チェックテスト
“seem” と “seem to be” の違いを理解できたか、チェックテストで確認しましょう!
以下の例文を、“seem” と “seem to be” のいずれかを使って英訳してください。
① 計画にはいくつか問題があるようだ。
(何らかの根拠があって、客観的に「この計画には問題がありそう」と判断しているニュアンス)
② このマンガは面白そう。
(話し手がなんとなく「面白そうだな」と感じているニュアンス)
解答
① There seem to be some problems with the plan.
⇒根拠にもとづいて客観的に判断している場合は“seem to be” が適切です。
② This comic seems interesting.
⇒主観的に面白そうな場合は“seem” が適切です。
※主体のcomic(マンガ)は三人称単数扱いのため、動詞である“seem” の語尾には“s” が付きます
表現の違いまとめ!“seem” =主観的 “seem to be”=客観的
あらためて、“seem” と “seem to be” の違いをまとめると、以下の通りです。
seem | seem to be | |
---|---|---|
持つニュアンス | 主観的 話し手の意見・推測 | 客観的 具体的な状況・事実 |
例文 | She seems to know the answer. (彼女は答えを知っているようだ。) ※「私はそう思う」というニュアンス。 | She seems to be a talented musician. (彼女は才能ある音楽家のようだ。) ※「誰もが認めている」イメージ。 |
よく使われる文脈 | 日常会話などのカジュアルな文脈 | 文章やよりフォーマルな文脈 |
今回紹介した例文を繰り返し音読して、自然と口から出るレベルにまで身体にしみこませれば、感覚的に“seem” と “seem to be” を使い分けられるようになりますよ。
また音読して例文をインプットした後、主語や時制を入れ替えれば、さまざまなシチュエーションを英語で表現できるようになるはず。
さらに自分で実際に“seem” と “seem to be”を使った例文を作ると、使い分け方が感覚的に理解でき、マスターしやすいのでおすすめですよ。
まぎらわしい2つの表現ですが、迷ったときは「seem=主観的」「seem to be=客観的」というポイントをおさえ、使いこなしていきましょう!