最近では、多くの英語学習本に導入されるほど人気の学習方法となっている「オーバーラッピング」。
スクリプトを見ながら英語の音声を発音する英語学習法です。
今回の記事では、オーバーラッピングの効果的なやり方について解説しています。
- オーバーラッピングで得られる効果が分かる
- オーバーラッピングの効果的なやり方が分かる
- 実際の体験談や科学的な根拠を含め正しい取り組み方が分かる
総合して、自分のレベルに合った英語学習法を把握できるため、ぜひ一読して英語習得を目指してみてください。
オーバーラッピングとは?ネイティブの音声に合わせて英語を口に出す訓練方法
オーバーラッピングとは、教材のスクリプトを確認しながら、流れてくる英語音声と同時に発音していく学習法です。
ネイティブのスピードに合わせて発音するので、生きた英語の速さに加え、リズムやアクセントにも慣れていけます。
リスニング力や発音の正確さを向上させる上で、効果的とされる方法です。
英語をコミュニケーションの手段として習得したい方や、仕事として使えるレベルまでスキルアップさせたい方におすすめ。
英語ができるといっても、実際にネイティブに通じないとコミュニケーションの手段としては意味がありませんよね?
学習法として、スクリプトを読んだり音声を聞いたりするだけでは、実践レベルの英語は身に付かないのです。ネイティブと同じ発音・スピード・リズムなどを習得して初めてスムーズにコミュニケーションが取れるようになります。
オーバーラッピングは、流れてくる英語の音声に始めから終わりまでピッタリと重ねて英文を読み上げることがポイント。
オーバーラッピングを活用することで、自分の伝えたいことをスムーズに伝える英語力を習得できますよ。
オーバーラッピングにはどんなメリットが?効果を5つ紹介
![オーバーラッピングの効果を5つ紹介](https://gakumado.mynavi.jp/english/wp-content/uploads/2023/07/overlapping-koka-1024x576.jpg.webp)
実際にオーバーラッピングに取り組むと、具体的にどのような効果があるのでしょうか。以下、5つに絞って紹介していきます。
効果①ネイティブが話す英語のリスニングスキル向上
リスニングスキルとは、耳から入った音声を識別し、正確に意味を理解する能力です。
オーバーラッピングに取り組む際には、正確に発音するために音声変化にも注意を払い、正しい音を聞き分け、意味を理解しておく必要があります。
目や耳、口などを駆使して、複数の器官から脳が刺激を受けるため、複数の勉強法の中でもリスニングスキルの向上に影響があるとされています。
「ネイティブの発音が聞き取りにくい」「単語の聞き間違いが多い」と悩んでいる方には非常に嬉しい効果です。
効果②ネイティブのスピーキングスピードに慣れて英会話で意思疎通しやすくなる
実際のオーバーラッピング学習の際に聞き取る音声は、ネイティブの発音の英語です。
そのため、普段英語に馴染みのない人からすると「少し速いな」と感じるほどのスピードです。
ですが、そのスピードについていく練習を何度も繰り返すことで無意識に口が動くようになるはず。
スクリプトをただ読んでいるだけでは身に付かない、実際に英語で会話する際のネイティブのスピード感を体で覚えることができるのです。
結果的に、外国人と英会話をするときにも、「相手の英語が速くて意思疎通できない……」という状態に陥ることを防げます。
効果③ネイティブらしい英語特有のリズム感が身に付く
日本語にもリズムが存在するように、英語にも英語特有のリズムが存在します。
日本語でも、一音一音を全部同じ強さで読み上げると、子どもっぽい印象に聞こえませんか?
一部の音は聞こえるか聞こえないかの音で発声したり、呼吸と置き換えたりなどして無意識に行っている部分があるはずです。
オーバーラッピングは、聞き取った音声をそのまま発音することで、ネイティブのリズムを真似ることができるため、勝手に体に染み付くというわけです。
また練習を通じて音声の細部まで聞き取ることで、“the”や“to”など、日本人が聞き逃しやすい音も把握し、自然と自分でも再現できるようになりますよ。
効果④ネイティブらしい英語の発音(イントネーション・アクセント)が身に付く
もちろん、正確な発音でないと英語が通じないわけではありません。
しかし、英語でコミュニケーションを取る上では、お互いに理解に苦しむ状況を避けることが大切です。
スクリプトで、正しい単語を学び、音声で何度も同じように真似て発音することで、アクセントやイントネーションを身に付けることができます。
特に、英語は独特な口の動かし方や、舌の使い方があるため、「正しく発音しているつもりでもなぜかネイティブに通じない」と悩んでいる方はぜひ試してみてください。
効果⑤英文を日本語訳しなくても英語の語順で理解してリーディングスキルの向上を図れる
オーバーラッピングは、基本的にスクリプトありきの学習方法です。
そのため、スクリプトを読むことさえできれば口に出すことはできるはずです。
しかし、音声と同じ速さのスピードで口に出す必要があるため、スクリプトを読む速度と同時に、意味を理解する速度もあげる必要があります。
こうすることでオーバーラッピングでは、英語を英語の語順で理解する習慣が身に付くのが特徴。
いちいち日本語訳しなくても、英文の意味を理解できるようになっていくのです。
オーバーラッピングの正しいやり方ガイド!効果的な5つの手順
![オーバーラッピングの正しい効果的なやり方・手順を5つ解説](https://gakumado.mynavi.jp/english/wp-content/uploads/2023/07/overlapping-tejun-1024x576.jpg.webp)
いざオーバーラッピングに取り組んだとしても、誤った方法では満足いく効果は現れません。
細かいステップに分けて、地道に練習を行うことで効果が発揮されるのです。
ここからは、最も効果の出やすいオーバーラッピングの方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
やり方①オーバーラッピングのための教材を準備する
オーバーラッピングを始める際には、まず教材を準備する必要があります。
教材に関しては、必ず自分に合った「ネイティブによる英語の音声付き」教材を入手しましょう。
そして、教材を選ぶ際には以下の点に気をつけてみてください。
- 英語の難易度
- 教材の内容(趣味に合ったもの)
- フレーズの長さ
これから英語を学習するという方であれば、急に教材の内容が難しいものを選ぶと、英単語を調べる時間を大幅に取られてしまうことになります。
そのため、内容を確認して、ある程度英単語の意味が理解できるレベルの教材にすると良いですよ。
さらに、ビジネス英語を学びたい方であれば、日常英語が載っている教材よりも、ビジネス英語の教材を選ぶなど自分の目的に合わせた教材にすることが重要です。
以下の動画では、初心者におすすめの英語学習方法について分かりやすく解説されています。オーバーラッピングの具体的な手順は1分37秒から解説されているため、参考にしてみてください。
やり方②目視で知らない言葉を特定し理解しておく
そもそも、意味が分からない例文を、読み方だけをマスターして音読したところでオーバーラッピングの効果はありません。
まずは、音声を聞く前に、教材のスクリプトを黙読してみましょう。
黙読する中で、知らない単語が出てきた場合には、辞書を使って意味を調べます。
その際に、文法上の使用方法や、類義語まで調べておくと単語力も同時に上がります。
時間がない方でも、単語のどこにアクセントがくるのかだけでも確認しておくと、次にリスニングするときに楽になりますよ。
そうすることで、全体の流れが分かり、内容のイメージができます。スクリプトだけを読んでいくよりスムーズに発声でき、上達を感じる時期も早まるわけです。
以下の動画では例文を使って、オーバーラッピングの実践的なやり方を解説しているので、視聴しながら練習してみてください。
やり方③リスニングしてみて聞き取れない箇所を特定【発声するのはまだ!】
次に、実際にリスニングを行います。
このタイミングでは発声せずに、聞き取れない箇所がないか、アクセントやイントネーションなどにも注意して、スクリプトを見ながら音声を聞いてください。
すると、黙読をした時と同様に、聞き取れなかったフレーズが出てくるはずです。
その箇所は、ネイティブがどのように発声しているのか分かるようになるまで、何度も繰り返し聞くようにしましょう。
一度聞き取ることができるようになると、途端にはっきりとした音声として理解できるようになるはずです。自信を持って発声できるようになるまで、リスニングを徹底して行いましょう。
このように何度も繰り返すことが、ネイティブの発音に耳を慣れさせ、リスニング力を向上させる秘訣だといえます。
やり方④完璧に内容を理解できたところで実際にオーバーラッピングを行う
これまでの工程を振り返って、意味が分からない単語がない・発音できない単語がない状態にしてから、オーバーラッピングに取り組むようにしましょう。
意味の分からない単語や聞き取れないフレーズがあれば、オーバーラッピングに取り組む上で障壁となり得ます。
完璧に理解しているか確認する作業を怠らず、「内容をすべて把握できた」という状態になったとき、初めて実践練習に入ることが大切です。
実際にオーバーラッピングをする際には、以下の点に気をつけてみてください。
- 英文スクリプトを必ず目で追いながら話す
- 英語の音声に最初から最後までピッタリ合わせて話す
- アクセントやスピード、イントネーション、リズムを忠実に再現する
- ネイティブを忠実に真似た話し方をする(恥ずかしがらない)
実践中は、他に意識が向かないよう、英文スクリプトと音声にしっかり集中して取り組むようにしましょう。
やり方⑤音声と自分が発する音にズレがないかを何度も反復して確認
オーバーラッピングでは、正確に音声が聞き取れて、音声通りに話すことができれば練習自体は成功といえます。
オーバーラッピングを何度か行ったら、英語の音声と自分の発音でズレがないか確認します。その際には、単語の発音だけでなくアクセントの位置やイントネーション、リズムまで合っているか細かくチェックすることが重要です。
聞き取りにくい単語がある場合は、何度も繰り返し聞き、何度も発音して体に染み込ませます。フレーズにして流して聞くと、聞き流してしまう場合があるので、その単語だけに集中して聞くと良いでしょう。
どうしても聞き取れなかったり、スピードについていけなかったりする場合には、再生速度を一時的に落としてみる方法もあります。
5回以上やってもうまくいかない場合、1段階速度を落として、それでも追いつかない場合はもう1段階落とします。
無理なく追いつける速度を見つけたら練習し、段階的に速度を上げましょう。最終的に、通常のスピードでオーバーラッピングができる状態になるまで行ってみてください。
実際にオーバーラッピングをやってみて分かった注意点
実際にオーバーラッピングをやってみて、分かった点を紹介します。
以下の点を理解して取り組んでもらえると、途中で挫折したり十分な効果が発揮されないという事態を避けられるはずですよ。
今回は実際に「プラダを着た悪魔」を教材として実践してみました。
オーバーラッピングを実践する前に「意味を調べて理解する時間」を設けることが重要
実際にやってみて思ったことは、スクリプトを目で追い音声と共に発声するまでの、「意味を調べたり流れを理解したりする時間」をおろそかにしてはならないこと。
いきなり始めてしまうと、生きた英語はすばやく、音の連結といった音声変化もあり、つまずく度にそれ以降の音は聞き取れなくなります。
実際にオーバーラッピングを始める前に、ある程度の時間をかけて、意味を理解することで、情景がイメージできるようになりましたね。
意味を調べて理解する過程を設けることで、スクリプト上の英文字を読んでいるのではなく、内容を理解しながら発声できました。
この流れで訓練を重ねれば、結果的に、相手に伝わりやすい感情のこもった英語を話すことができるようになると感じます。
実際の英語でのコミュニケーションを想定!大きな声で何度も反復することで声を聞き分けながら英語を体に染み込ませる
実際に英語をコミュニケーションの手段として使用する際には、スクリプトはありません。そのため何度も繰り返し発声することで、英語を体に染み込ませる必要があります。
数回しか実践していないと、次に聞いたときには忘れていたり、もう一度調べ直したりする手間が必要になります。
そのため単語を聞くだけで、無意識にイントネーションやリズムも再現できる状態が望ましいです。反復練習することで、自然に英語のリズムでコミュニケーションを取れるようになるという効果を期待できますよ。
その際に忘れてはならないのが、大きな声で発声すること。
実際にやってみて痛感しましたが、自分の声が耳に入ってこないと、音声と合っているかも聞き分けられませんでした。
上記の点を踏まえた上でオーバーラッピングに取り組んでみると、つまずくポイントを軽減させられるはずです。
オーバーラッピングが難しい場合のやり方は?コツとポイントを解説
![オーバーラッピングが難しい場合のやり方は?](https://gakumado.mynavi.jp/english/wp-content/uploads/2023/07/overlapping-muzukashii-1024x576.jpg.webp)
いくら手順を追って、オーバーラッピングの準備をしたとしても、英語を全く勉強してこなかった方や、英語が苦手だった方にとっては、難しいと感じることも多いでしょう。
そこで、オーバーラッピングをやってみて難しいと感じた方にも、取り組みやすくなるコツを、難しく感じた理由も合わせて紹介していきます。
ネイティブのスピーキングスピードについていく必要があるから
英語に少し触れたことがある方でも、実際のネイティブのスピーキングスピードは速いと感じる方がほとんどだと思います。
リスニングだけならまだしも、実際に自分が同じスピードで口を動かすのは非常に大変です。
それもそのはず、ネイティブの英語には独特なリズムがあり、日本人と異なる舌・口の使い方をしているのです。
その使い方に慣れていない日本人が、同じことを行うのは難しくて当たり前。
そこで、ネイティブの発音を習得するための方法を紹介します。
【おすすめのやり方】再生速度を落としてみる
ネイティブの英語を身に付けるためには、発音やイントネーション、リズムを正確に聞き取るために、音声をゆっくり聞いてみることをおすすめします。
継続的にやると、そもそものオーバーラッピングの効果が薄れてしまいますが、一時的なら問題ありません。
再生速度を落とした状態で、流れてくる音声に忠実に合わせられるようになったら、その一文が何を言っているかを理解できたということになります。
その状態を達成できて初めて、通常スピードへ戻せば良いのです。
必死に英語の音声を真似していると自分の発音が正しいか分からなくなる
音声に合わせて発音していると、自分の発音が音声と被ってしまって、本当にリズムやイントネーションまで合っているか分からなくなることはありませんか?
音声と同時に発声しているため、自分の発音と音声とを正確に聞き分けることは容易ではありません。
知らず知らずのうちに、合っていないものを合っていると勘違いして進めていくのはもったいないことです。
【おすすめのやり方】自分の音声をレコーディング
音声と自分の発声を聞き分けられない場合には、オーバーラッピング中の音声を録音しておくことが重要です。
客観的に聞くことで、自分のクセや無意識に作っているリズム・アクセントに気づくことができます。そうすることで、徐々にオーバーラッピングの精度を上げていくことができます。
初めは、自分の声を繰り返し聞くことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、自分の声ではなく、リズムやアクセント、イントネーションに注意を向けて聞いてみると声の質は気にならなくなるためおすすめです。
英語音声に追いつくことに集中していてスピーキングに内容理解が追いつかない
どうしても、流れてくる音声に追いつこうと一生懸命になると、スクリプトの内容を理解できないまま、ただ英語を口に出しているだけの状態になりやすいです。
黙読した際には理解できていたスクリプトも、いざ口に出してみると、理屈を理解できないまま話している状態になっている可能性があります。
この状態では、なんとなくオーバーラッピングを続けているだけで、本当に効果があるか不安になることもあるでしょう。
そのような時には以下の方法を試してみると良いですよ。
【おすすめのやり方】自分のレベルに合わせたテキストを選ぶ・文章の内容を頭の中に思い浮かべる
ネイティブのような速さのスピードでスピーキングするためには、英文を読めることはもちろん、内容が理解できて情景がイメージできることが重要です。
そのためには、使用している教材を自分のレベルにきちんと合わせる必要があります。
レベルに合った教材であれば、英語を話しながらでも英文の意味を瞬時に理解し、情景をイメージさせることは容易になりますよね。
最終的には、聞いた音声をそのまま理解し、正しく発声できる状態がゴールです。難しい単語を理解できるようになることが目的ではありません。
そう考えると、自分に合った教材で無理なく継続していくことが大切ですよね。
オーバーラッピングは初心者におすすめ!慣れてきたらシャドーイングにも挑戦するのがおすすめ
オーバーラッピングはコツをつかめば取り組みやすく、初心者にもおすすめの学習方法と言えます。
ただ、英語学習者の間で、オーバーラッピングより幅広く知られているのが「シャドーイング」です。
書籍やインターネットで「シャドーイングが効果的」という情報を得て、いきなりシャドーイングを始めようとする人もいるかもしれませんね。
しかしシャドーイングは、オーバーラッピングの上級レベルに該当するため、初心者にはオーバーラッピングの方がおすすめです。
オーバーラッピングである程度の力が身に付いた段階なら、シャドーイングも有効な学習方法のため、
「どちらがいい」
というよりも、レベルに合わせて段階的に取り組むことが大切。
まずは両者の効果について、違いも含めて解説していきます。
そもそもシャドーイングとは?聞く&話すスキルを同時に鍛えるトレーニング
![そもそもシャドーイングとは?](https://gakumado.mynavi.jp/english/wp-content/uploads/2023/07/overlapping-shadowing-1024x576.jpg.webp)
シャドーイングはオーバーラッピングよりワンランク上の英語の学習方法で、聞いている英語音声のすぐ後を追って発音します。
英語の音声に1〜2語ほど遅れて、同じように発音するトレーニングです。英語の音声を影=シャドーのように追いかけるため、シャドーイングと呼ばれます。
聞き終わってから話すのではなく、聞きながら話すことを同時に行うのがポイント。難易度はやや高めですが、効率良くリスニング力を鍛えられるのがメリットです。
オーバーラッピングのようにスクリプトを確認できないため、多少は英語に耳慣れしている人の方がとっつきやすい方法といえます。
オーバーラッピングとシャドーイングで期待できる効果の違い
基本的には以下の表のように、鍛えられるスキルは類似しています。
しかし、全体的に比較すると、シャドーイングの方が効果が高いことが伺えます。
オーバーラッピング | シャドーイング | |
---|---|---|
リーディング効果 | ◯ | – |
リスニング効果 | ◯ | ◎ |
スピーキング効果 | ◯ | ◎ |
シャドーイングは、音声だけを頼りに聞き取り、同じ発音・スピードで発声する必要があるため、スクリプトを見ながら発音するオーバーラッピングよりも遥かにリスニング効果・スピーキング効果が期待できるわけです。
しかし唯一、シャドーイングのデメリットとして、リーディング効果がないことが挙げられます。
音声だけを聞いて発声するため、実際にその英単語がどのようなスペルなのかは理解できないのです。
そのため、一定の英語力がある上で、今以上に実践レベルで会話ができる状態を目指したい人に向いている英語学習法だといえます。
オーバーラッピングに慣れてきたらシャドーイングがおすすめ
オーバーラッピングは英語特有の「音」自体に触れる最初のステップとして、英語学習初心者の人に非常に有効な学習方法です。
発音やリズムなどを英語の音声とスクリプト両方からインプットすることにより、正確なイントネーションをネイティブレベルで身に付けられます。
ただ、スクリプトを用いた学習方法であり難易度が低いため、オーバーラッピングのみでネイティブレベルの英語力を鍛えるには時間がかかります。
そのため、「流暢に話せるようになること」が目的である場合は、シャドーイングも合わせて行うことがおすすめです。
ある程度オーバーラッピングに慣れると、スクリプトを読んだり音声を聞き取ったりすることに苦戦することが少なくなってきます。
徐々にシャドーイングに移行して、徹底的にリスニング力とスピーキング力を強化していくのが望ましいでしょう。
オーバーラッピングがおすすめな人の特徴:英語で伝えるスキルを効率的に身に付けたい人
![オーバーラッピングがおすすめな人の特徴](https://gakumado.mynavi.jp/english/wp-content/uploads/2023/07/overlapping-osusume-1024x576.jpg.webp)
英語学習法にも様々な方法があり、効果的な学習をするには、自分のレベルに合った学習法を継続的に実践することが大切です。オーバーラッピングについても、不向きな人が続けても成果が出ず、意味がありません。
そこでここでは、オーバーラッピングがおすすめな人の特徴を紹介します。
以下の2点に当てはまった方はぜひオーバーラッピングに挑戦してみてくださいね。
オーバーラッピングがおすすめの人①ネイティブ相手に自分の英語が通じないと感じている人
自分では、英語が話せているつもりでも、いざ英語圏でネイティブと対峙すると何度も聞き返されたり、不安な顔をされたりした経験はありませんか?
その場合、聞き取りにくい英語を話している可能性があります。カタコトでも、英単語1語のみでも、イントネーションやアクセントが合ってさえいれば、相手には通じます。
逆に、イントネーションやアクセント、少しの音の違いで、相手には別の言葉だと聞き間違えられてしまうのです。オーバーラッピングでは、実際の英語の音声と同じタイミングで発声して、差異がないか確認する工程があります。
そのため、無意識のうちに行っている発音の仕方や誤ったリズムも見抜くことができ、伝わる英語に修正していけるのです。
「ネイティブになぜか自分の英語が通じない」と悩んでいる方は、ぜひオーバーラッピングに取り組んでみてください。
オーバーラッピングがおすすめの人②リスニング・リーディング・スピーキング力を一気に鍛えたい英語学習初心者
複数の英語スキルを一気に鍛えたい人には、オーバーラッピングはぴったりの学習方法です。
初期は英単語の意味を調べたり、何度もリスニングして英語のリズムを覚えたりして大変なこともあります。しかし、リスニング・リーディング・スピーキング力を一気に身に付けたい場合には、必要な工程です。
英語が体に染み込むよう、リスニングやスピーキングを同時に行う方法は、学習効率が良いため、面倒くさがらずに行いやすいはず。
英語は学校で習ったきりで、自信がない方でも、一気にスキルアップしたい方はぜひオーバーラッピングに挑戦してみてくださいね。
オーバーラッピングでどのような効果が期待できるのか研究論文で検証
![オーバーラッピングでどのような効果が期待できるのか研究論文で検証](https://gakumado.mynavi.jp/english/wp-content/uploads/2023/07/overlapping-koka2-1024x576.jpg.webp)
オーバーラッピングを活用することによって得られる効果を、研究論文で検証された結果を基に紹介していきます。
様々な検証方法で試されており、結果が出ているため、オーバーラッピングをこれから始める方にとっては安心して取り組むための材料となるでしょう。
論文①英語力向上のためには単語力が必要不可欠
論文タイトル:英語力向上における単語テストの有効性 -TOEICを使った試み-
著者名:山科美智子
発行年:2019年
発行元:埼玉女子短期大学
英語力の向上のためにはボキャブラリーを増やす必要があるとされている反面、効果的なボキャブラリービルディングの方法については確立されていない。
そこで、記憶やスキル定着のメカニズムなどを参考にして4つの項目を取り入れ、効果的なボキャブラリービルディングについての検証を行う。
その上で、このボキャブラリービルディングの方法がどのようにTOEICスコアの向上に効果的であったかデータとアンケートを基に検証する。
論文では、ボキャブラリービルディングを向上させるための4つの項目の内容と検証方法、調査結果や今後の課題についてまとめられている。
研究結果
ボキャブラリービルディングの方法として、
- 単語帳の使用
- オーバーラッピング
- ペアワーク
- 単語テスト
の4つの方法を取り入れ検証が行われました。
調査対象はTOEICクラスを履修する学生24名です。検証方法は、以下の3種類の値を比較することで行われました。
- テストの平均値
- TOEICのスコア
- 春〜秋学期のスコアの伸び
その結果、ボキャブラリービルディングを行うことでTOEICスコアが伸びることが結論づけられました。
特に、オーバーラッピングに関してはネイティブの発音やイントネーションを聞き取り発話することで、リスニング力の向上に効果的だと判明。
同時に、英語を語順のままに理解するリーディング力にも寄与したとされています。
論文②英語学習は地道な反復と積み重ねである
論文タイトル:英語コミュニケーションのためのスキルアップ法
著者名:小野寺進
発行年:2015年
発行元:弘前大学21世紀教育センター
英語をある程度学習して大学に入学した学生でも、英語でコミュニケーションが取れる学生はそう多くはない。
インターネットが普及し、グローバルが急速に拡大している世界情勢にある今、英語でコミュニケーションが図れることは必要不可欠とされている。
全ての日本人が英語を使えるのが望ましいが、できれば大学を卒業した人には英語でのコミュニケーションにストレスを感じてほしくない。
そこで、特にコミュニケーションのために必要とされるリスニング・スピーキング・リーディング・ライティングのそれぞれについて、授業や講習に頼らずに、学習者個人が無理なく即効性の期待できるセルフラーニングの具体的方法を紹介する。
研究結果
セルフラーニングについては以下の方法が挙げられています。
リスニングスキルアップ | オーバーラッピングやシャドーイングを用いる |
スピーキングスキルアップ | 言いたいことを簡単な言葉に置き換えて伝えるリフレージングを利用する |
リーディングスキルアップ | パラグラフの構造を把握したパラグラフリーディングを用いる |
ライティングスキルアップ | 同時通訳者も行っているリプロセシングを用いる |
以上の方法を駆使した英語学習を提案。
オーバーラッピングは英語耳を鍛え、リスニング能力を高めることができると結論づけられています。
何より、英語で発信するための力を鍛えるには、反復と積み重ねが非常に大切で、アウトプットを重視すべきということです。
インプットで単語や文法の知識を身に付けるだけでなく、自分の意見を外に向かって発信することも、大事であるとまとめています。
論文③地道な練習が音読の即効性を発揮させる
論文タイトル:TOEIC® 教材を活用した一石「数鳥」の音読指導
著者名:安藤公仁
発行年:2019年
発行元:樟蔭学園英語教育センターフォーラム
音読を英語学習の一環として活用する方法について紹介する論文。
英語学習における音読の活用は有効とされていながらも、音読は退屈でモチベーション維持が難しく面白みのない学習方法だとされている。
さらには、学校の授業中でさえ音読の回数は限られており、やり方に慣れさせるのが主眼となり、それだけで大きな効果が期待できるわけではない。
そのため、音読で英語力を向上させるためには、学習者は自主的に取り組むための工夫が必要とされている。
そこで、本論文ではTOEIC® の得点アップを標榜とする音読指導の内容と、学生たちがいかに効果を実感しながら、自主的に練習に取り組むようになったかについて述べられている。
研究結果
授業の音読とは別に希望者を募り、2〜3人の少人数レッスンで検証しました。
アクセントやイントネーションを中心とした発音指導に加え、語彙や文法事項を確認しながらの読解指導、シャドーイングなどの音読実践を、1回につき約40分徹底的に行いました。
学生は次のセッションまでの1週間同じスクリプトを繰り返し練習。
その結果、全てのメンバーが音読の即効性を感じさせ、音読だけでなく受け答えもスムーズに行えるようになりました。
聞いた英文をそのまま最初から理解できるようになった学生もいたほどでした。
オーバーラッピングの効果についても、初めて聞いたときには難しかった発音、スピード、イントネーションもマスターできるようになると述べられています。
オーバーラッピングの効果が気になる人からよくある質問と回答
オーバーラッピングは、ネイティブスピーカーに近づくための効果的な学習方法であることはもちろん、リスニング力・スピーキング力を大幅に向上させたい方にぴったりの方法です。
効果を出すためには、自己流や短期間で行うのではなく、正しい方法で地道に反復練習を行うことが最も重要です。
最後に、オーバーラッピングを行う上で学習者がよく抱く疑問に答えていきます。
オーバーラッピングの効果が出るまでの期間はどれくらい?毎日何分くらいやればいい?
個人差があり一概には言えませんが、効果を出す上では、毎日同じフレーズを10回、1日少しずつでも反復練習を継続することが必要です。
挫折しないよう、まずは1日5分・ワンセンテンス10〜20回の反復を継続という、軽い目標から達成していくと良いでしょう。
その練習に慣れてきたら、徐々に1日10分〜1日30分と時間を増やしていくのです。
大事なのは、効果が出ないからと諦めるのではなく、効果が感じられるまで継続することです。
オーバーラッピングの練習に特化した英語学習用アプリはある?
オーバーラッピングに特化したアプリはありませんが、「Cake」は5分程度の豊富な動画を使って、オーバーラッピングができる無料アプリです。
動画は映画やVlog、コメディなどさまざまなジャンルのものが日々更新されており、学習素材に飽きることがありません。
自動でリピート再生されるため、繰り返し練習したい人におすすめです。