- 現状の日本人の英語力を知り、英語学習へのアプローチの仕方が変わる
- ネイティブに通じる英語を話せるようになるための正しい努力の道筋がわかる
- 現在の英語学校教育の方針を理解し、自分の学習のアップデートのために活用できる
学校教育で真面目に授業を受け、それ以降も英単語の暗記やリスニングのトレーニングを継続しているけど「一向に英語を話せるようにならない」と悩んでいる人もいるでしょう。
確かに、それだけでは英語を話せるようになるまでには、膨大な時間を要する可能性が高いです。
さらに日本人は、アジア人の中でも英語が苦手な人が多いといわれていることを理解しておく必要があります。
そこで本記事では、日本人は英語が苦手だといわれる理由や原因を解説し、解決策までわかりやすく紹介します。
日本人は本当に英語を話せないのか?世界における位置から実態を考察
以前からグローバル化が叫ばれるようになり、英語学習に励む人も増えている中、日本人にとって英語習得のハードルの高さから挫折した経験がある人も多いでしょう。
日本人は英語が苦手だといわれているとはいえ、今では英語を使いこなす日本人も増えてきています。
そこで、実際にデータを用いながら、日本人の英語力が世界レベルでどれほど評価されているか見ていきます。
英語力の世界ランキングで日本は例年下位にランクイン
2023年、英語能力指数ランキング「EF English Proficiency Index」の結果では、日本は113カ国中87位に位置付けられました。
世界的に見ても「日本人の英語力は低い」ことが、客観的な事実として示されてしまったのです。
英語能力指数ランキングとは、世界中からの2,200,000人もの所定のテスト受験者のデータを基に、成人の英語スキルを国や地域ごとにランクづけしたものです。
毎年発行されるEF EPIは、成人の英語能力に関する重要な国際ベンチマークとなっています。
そのランキングで日本は、5段階評価のうち下から2番目である「低い」と評価されています。
日本の学校システムにおいては、小学生から英語を習うように見直しがなされましたが、それ以前から中学校では英語が必修化されていました。
つまり、高校までを含めると約6年間は英語学習に触れた経験がある人が多いはずです。
にもかかわらず、現在の日本人の英語力は、英語圏の国での観光中に現地人と会話したり、簡単な世間話をしたりするレベルにしか匹敵しない状態だと評価されてしまいました。
いったい何が原因で、日本人の英語力が低いという扱いになっているのでしょうか。
英語と日本語の言語的距離が遠く習得までに時間がかかることが原因の1つ
大阪大学の成田一名誉教授による「日本人に相応しい英語教育」では、日本人が英語を話せない理由について以下の2つを挙げています。
- 言語的な距離、あるいは言語差の影響がある
- 日本語にはない、瞬時的処理を必要とする文法的な計算や操作などの脳内処理の負荷が高い
1つ目の言語差の影響とは、日本語と英語とでは、文字や発音の仕方、文構造などにおけるあらゆる面での言語としての距離がかけ離れているということを意味します。
日本語はSOV型(主語+目的語+動詞)の文型ですが、英語ではSVO型(主語+動詞+目的語)が用いられます。
つまり、SOV型である日本語話者は、SVO型である英語に違和感を抱きやすく、慣れるのに時間がかかるのです。
さらに、言葉を発する際の舌の使い方や発音の仕方も異なるため、LとRの発音の違いが聞き取りにくいという日本人特有の問題も発生します。
音と音がつながる「リエゾン」に代表される音声変化も英語の特徴。
“Can(キャン)”と“I(アイ)”がつながり「キャナイ」という音になるような変化のことで、日本人はうまく聞き取れず、内容を理解しにくいのです。
次に2つ目の、瞬時的処理を必要とする文法的な計算や操作などの脳内処理の負荷が高い点についてですが、特に日本人にとって障害だと指摘されているのが「WH移動」です。
WH移動とは、whoやwhatなどを使用する疑問文では疑問詞が文の先頭になければならないという性質(=移動)のことを指します。
もちろん、WH語の疑問詞を文頭に移動させること自体難しいわけではありません。そのWH語の移動に伴う、助動詞の脱落や倒置などを含めた文の再構築が障害なのです。(※1)
同様の理由で、英語話者にとっても、日本語は習得が難しい言語とされています。英語と日本語は言語的距離が遠く、双方にとって学習に時間がかかる外国語です。
そこで日本人英語学習者に必要なのが、以下のような、母語にない文法計算処理を瞬時に行うトレーニングを行うこと。
- 語彙理解
- 構文解析
- 理解した内容を吟味
- 反論を組み立てる
- 英語で述べる
上記の処理を会話の中で瞬時に行えるようになるには、かなり時間がかかるため、日本人は地道に習得していくことが求められます。
※1:吉田智佳”日本人英語学習者にとってwh-疑問文の何が難しいか-発達指標の構築を目指した予備調査-”, p.22
なぜ英語をマスターしにくいのか?日本の英語教育の現状【日本人の学習能力が低いわけではない】
京都女子大学の研究論文「グローバル化と日本の英語教育」によると、日本の学校教育における英語学習の問題点が、以下のように指摘されています。
従来までの小学校での英語学習は、「聞くこと」「話すこと」といった英会話の部分に重きが置かれていましたが、中学校の英語教育では「読むこと」「書くこと」などの読解や英作文の指導が盛り込まれます。
そのため、小学校での教育を素地としながらも、小学校と中学校における英語教育の連携が不明瞭である点を筆者は懸念しているのです。
つまり小学校までは楽しく学習していたものの、中学校の読解や文法などを含めた教育へ移行したことで、難しく感じてつまずく人が出てくるというわけです。受け身の授業がメインだったことが原因であり、決して日本人の学習能力が低いわけではありません。
ただ、この状態を打開するために学習指導要領が見直され、2020年度から英語教育が大きく変化しました。
小学校では、従来までは5・6年生が外国語活動という体験型学習を行っていましたが、2020年度からは3・4年生が取り組むことになりました。その結果、5・6年生から教科としての英語の授業が始まり、初歩的な読み書きといった運用能力が養えるようになったのです。
また、中学校の英語学習においても授業自体を英語で進め、自分の意見や仲間の意見を聞く授業が展開されるようになりました。
読み書きなどの英語習得に必要な4技能全体を総合的に学ぶカリキュラムが組まれたことによって、小学校から中学校への学習の移行がスムーズになるだけでなく、英語能力自体の向上を見込めるようになるでしょう。
日本人が英語を話せない理由6選!過去の教育と本人の認識による影響が大きい
日本人が英語を話せない理由として、以下の要素が挙げられます。
- 「読む」「聞く」などインプットが中心の試験勉強ばかり続けてきたため
- 英語をコミュニケーションの手段として認識できていないため
- 英語で話すこと自体が恥ずかしく外国人の前で黙り込んでしまうため
- 英語を使って「何かを伝えたい」という思いが弱いため
- 英語を使う必要性を普段の生活で感じられず学習動機が低いため
- 学校の授業で文法を理解するのが難しく英語が嫌いになってしまったため
英語は学校教育の一環として取り入れられたため、知らずしらずのうちに英語を勉強する環境下に置かれていた人も少なくないはずです。
日本人が英語を話せないといわれる理由については、過去の学校教育における要素も含まれています。
上記の各理由について見ていきながら、これまでの学習内容や理解度をしっかり振り返り、今後の学習に活かしていきましょう。
「読む」「聞く」などインプットが中心の試験勉強ばかり続けてきたため
従来の日本の学校教育における英語の授業では、単語の読み方や意味を学習し、リスニング内容を日本語訳するなどの読む・聞くという「受け身の授業」が展開される場合が多く行われていました。
つまり、試験のために知識をインプットする英語学習が中心で、実際に言語として英語を使うことを想定した訓練をしてこなかったのです。
そのため、単語の意味や文構造は理解できても、実際にネイティブを目の前にして自分の意見を言える人は多くありません。
コミュニケーションを取るためには、質問に答えるだけの受け身のアプローチではなく、積極的に自分から英語を口にする必要があります。
英語を話せるようになりたい場合は、インプット学習に加えて、アウトプットの機会を作ることが重要です。
英語をコミュニケーションの手段として認識できていないため
「英語の学習経験が日本人の英会話力に及ぼす効果:JGSS-2002 のデータから」では、学校教育の中で、日本人が英語の必要性を認識しないままに授業科目や受験科目の1つとして英語を学習してきたことに、英語を話せない要因があると推測しています。
振り返ると、英語は単語を覚えたり文法を覚えたりする暗記が多かったと記憶している人もいるのではないでしょうか。
「どうせ英語は使わない」
と自分自身が感じて、必修科目だからと仕方なく学んでいては、英語を話せないままであるどころか、学習した内容もすぐに忘れてしまうでしょう。
そもそも「勉強が嫌い」という人は、机に向かってノートを取ったり、テキストを読んで文法を学んだりする作業自体が苦手かもしれません。
そのような場合、英語を「会話のツール」ではなく、「勉強科目」だと認識して、知らずしらずのうちに拒絶してきた可能性があります。
多くの人は近い将来英語が必要になったときに、慌てて英会話教室やスクールに通い出します。そこで初めて、「英語で会話するための」トレーニングを行うのです。
その際には、学校教育において学習した内容は忘れてしまっており、一から学習し直さなければなりません。
大変な労力がかかる英語学習を乗り越え、「話せる英語」を習得するためには、英語の必要性を自覚してしっかりと学ぼうとする強い意思が大切です。
さらに英語を「勉強科目」ではなく、「より広い世界を知るためのツール」としてとらえ、仕事同様に主体的な姿勢で学ぶことが上達の助けになってくれるでしょう。
英語で話すこと自体が恥ずかしく外国人の前で黙り込んでしまうため
英語を学習する際には、座学やリスニングの授業がメインであるために、自分で考えて発言する機会があまりありません。
そのため、英語で発言すること自体を恥ずかしく感じてしまい、「間違ってしまうのではないか」という感情により、思ったような発言ができないのです。
英語に限らず、言語はコミュニケーションを取るために存在し、コミュニケーションを取ることで習得できるようになります。そのため、間違いを恐れて発言する機会を失ってしまうと、何も習得できないのです。
旅行やビジネスで日本に訪れている外国人と会話をした際に、相手が日本語を間違えたからと言って、馬鹿にする人はいるでしょうか。
むしろ、「頑張って異国語を話そうとしている」と尊敬の念を抱く人の方が多いのではないでしょうか。
そう考えると、「英語を話すのが恥ずかしい」と黙り込んでいる時間は非常に勿体無いのです。
間違いやコミュニケーションの場を避けていると、何ひとつ学ぶことができません。英語を習得している人は、みな間違えながら、自信をつけてきたはずです。
外国人と英語を話す機会があれば、恐れずにどんどん英語を発して、その機会をフル活用しながら上達させていきましょう。
英語を使って「何かを伝えたい」という思いが弱いため
英語を話せるようになりたいという人の中には、「簡単な英語を使って海外旅行ができればいい」と考えている人もいるでしょう。
そのような人の中には、「正確な英語でネイティブとコミュニケーションを取りたい」という思いが弱く、学習が中途半端になってしまう人もいます。
カタカナ英語や携帯で翻訳機能を使いながら、「なんとなく日常会話ができる程度の英語を学べればいい」という意識で学習をしていても、おそらく英語は話せるようにはなりません。
それどころか、途中で挫折してしまう可能性もあります。
英語が話せるようになりたいという思いがある人は、なるべく具体的で明確な目標を持つ必要があります。
また、日本語ばかりを話す環境にいると、英語の必要性が薄れてモチベーションが下がってしまうものです。
そのため実際にネイティブと会話ができる英会話教室へ通ったり、英語のネットニュースを視聴したりするなど、英語を避けられない留学先のような環境作りが重要でしょう。
英語を使う必要性を普段の生活で感じられず学習動機が低いため
先ほど紹介した「日本人に相応しい英語教育」によると、日本人が英語を話せないのは「英語を話せないと日常生活に支障をきたすほどの環境下にないから」と述べられています。
もともと欧州諸国などではEU域内の諸国からの外国人社員が多いため、共通言語として英語を使用する機会が豊富です。
ストレスなく英語を使って、業務をこなす必要があることから、日常的に英語を使う条件が揃っています。
しかし欧州や英米の旧植民地とは異なり、日本国内では英語圏からの社員が少なく、英語を使う必要がある職場は非常に限られているのです。
社内に数%しか在籍していない、外国人社員のために、全社員に英語での業務を課すのはあまりに酷ですよね。
さらに現在では、翻訳ツールも発達してきており、日本の街中や海外で外国人に話しかけられても、英語ができなくて困ることはあまりなくなってきています。
そのため英語で流暢に話せなくても、ネット時代において、メールやファイル文書による業務遂行が可能な最低限の英語力があれば、現場では重宝されるというわけなのです。
そのような状況下で、英語を話せるようになるために英語を学習しようという動機を強く持ち、奮起する人が少ないのは言うまでもないでしょう。
学校の授業で文法を理解するのが難しく英語が嫌いになってしまったため
日本の多くの学校教育においては、正確な文法にこだわり、それを生徒に習得してもらうために必死である傾向が強いです。
もちろん、名詞や形容詞、動詞など基礎的な部分は最低限把握する必要があります。なぜなら、意味を正しく理解するうえで、「形容詞は名詞を修飾する」「副詞は動詞を修飾する」などの文章構造が理解できることは重要だからです。
関係代名詞や現在完了形、未来形などという難しい文法の理解に苦しみ、英語学習に苦手意識を持った経験がある人もいるでしょう。
いざ英語を使う際にも、
「文法的に合っているのかな」
「文法がわからないから話すのはやめておこう」
などの考えが頭を巡り、結局英語を積極的に使うことから遠ざかっていってしまうのです。
このように「細かい文法まで全てを理解しなければならない」という意識で学習すると、途中で挫折してしまう可能性があります。
日本人が英語を話せるようになるための対策・解決方法7選を科学的根拠とともに紹介
日本人が英語を話せない理由を理解できたところで、その対策方法がわからなければ意味がありません。
ここから、英語を話せるようになるための対策方法を7つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
- 完璧ではなくても知っている英単語を使って堂々と話す
- 日常生活の中で自分に英語で質問して英語で答える練習をする
- 様々な方法で英語を英語のまま処理する英語脳を鍛える
- 明確な目標を立てて学習継続のためのモチベーションを上げる
- 日々の中に英語時間を組み込んで普段から触れる英語の量を増やす
- 英語日記を書くことで英語の手軽なアウトプットを習慣化する
- ネイティブと直接会話のできるオンライン英会話を利用する
完璧ではなくても知っている基本の英単語と文法を使って堂々と話す
英語を話せるようになるためには、難しい単語や文法を覚えるための学習よりも、知っている単語と文法を使って、自分の意思を表現することが重要です。
本来、英語は勉強の科目ではなく、コミュニケーションのための手段です。
いくらTOEICで頻出の英単語や文法を豊富に知っていても、知識を実際に活用できなければ、話せるようにはなりません。
ネイティブと会話する際に正しい英単語を知らなくても、自分の意思を伝えたいという誠実な思いがあれば必ず相手に伝わります。細切れの英単語やジェスチャーを使いながらでも表現することで、相手は意思を汲み取ってくれます。
しかし間違いを恐れて黙り込むなどして、相手に伝えることをやめてしまえば、自分の意思はなかったも同然なのです。
たとえ間違えても、馬鹿にされるわけではありません。間違えたら、また勉強して、次に話す際に活かしていきましょう。
難易度の高い文法の知識がなくても、日常英会話ができる人はいます。したがって、英会話が苦手な人がコミュニケーションの手段として英語を学ぶ場合、文法を完璧に使いこなせる状態を目指す必要はありません。
初心者は文法の基礎だけは中学校レベルのテキストで固めつつ、細かいミスは大目に見て、英語というコミュニケーションを楽しむことに集中して学習しましょう。
一生懸命相手に伝えたいという思いを持って、知っている英単語や簡単な文法の知識を使い、堂々と話すことが重要なのです。
日常生活の中で自分に英語で質問して英語で答える練習をする
学習院女子大学紀要の研究論文「日本人が英語で考えられない原因: 語順の違いと英語音声の特質」では、疑問形を使った「独り言英会話」という勉強法を推奨しています。
会話なら相手がいなくても練習できます。いつも頭の中で考えていることを、英語で考えれば良いというわけなのです。
やり方はとても簡単です。
疑問文で自分に質問して、その質問に答えていきましょう。
“What is this in English?” (これは何ですか?)
-“This is a notebook.” (これはノートです。)
“What is this in English?” (これは英語でなんといいますか。)
-“This is an eggplant.” (これはナスです。)
“How are you today?” (ご機嫌いかがですか。)
-“I’m doing well, thank you. And you?” (元気です、ありがとう。あなたはどうですか?)
上記のように、What・When・Where・How・Whyなどの疑問詞を使って、会話を繰り返していくのです。
日頃、日本語で考えていることを英語で考えるだけで、膨大な語彙力が必要になるため、それだけでも非常に有効なトレーニングになります。
初めから完璧な文法や単語で表現できなくても、今あるスキルで表現できる範囲で始めたら良いのです。
1人での英語の会話に抵抗がある人は、ペットに英語で話しかける習慣をつけるのも良いでしょう。
つまり「絶対に英語を話したい」という気持ちさえあれば、相手がいなくても英会話教室に通わなくても、無料で英会話ができるのです。
様々な方法で英語を英語のまま処理する英語脳を鍛える
英語をスムーズに話すためには、スピーキング力や相手が話している内容を理解するリスニング力が必要不可欠。
特に、ネイティブ間での会話は非常にスピードが速いため、日本人はまずその速さに圧倒されるケースが多いです。
スムーズな会話に慣れていないのは、一度日本語を介して英語に訳しているからなのです。そうすると、余計に時間がかかってしまうため、英語を英語のまま処理する英語脳を鍛えることによって、短時間で理解できるようになります。
英語脳を鍛えるためには、以下のような方法があります。
- 音読
- スラッシュリーディング
- ディクテーション
- シャドーイング
2014年度の日本認知科学会で発表された研究論文の「英語シャドーイングが英語読解プロセスに与える影響:近赤外分光法による脳内処理メカニズムの検討」の中で、シャドーイングについて、学習者の黙読スピードを速くすることに寄与するとされています。
シャドーイングの教材である音声のスピードを上げることによって、英会話においても自然とスピードの速い英語にも対応できるようになるはずです。
明確な目標を立てて学習継続のためのモチベーションを上げる
英語を話せるようになるためには、日々のトレーニングの積み重ねが何より重要です。
そのためには、学習継続のモチベーションを保ち続ける必要があります。
武庫川女子大学情報教育研究センター紀要の「英語学習ポートフォリオの導入意義と開発に関する一考察」でも述べられているように、英語を身に付けるのに必要な学習量はおおよそ2,000〜3,000時間といわれています。
ただ、現状の小中高全ての英語学習時間を合計しても、1,000時間にも満たないのです。
それほどに英語を習得するためには、膨大な時間が必要ということです。
その期間中は、モチベーションが下がるため、学習に挫折してしまわないための工夫を凝らさなければなりません。
そのためには「英語がペラペラになる」というような漠然とした目標よりも、「半年後に英語を使ったプレゼンができるようになる」などの具体的目標を決めて取り組むのが良いでしょう。
年齢や性格にもよりますが、必要に迫られて英語を学ぶ人より、「英語を話せている理想の自分」を目標に思い描ける学習者ほど第二言語学習がはかどりやすいとされています。
参考:日本人中学生における理想 L2 自己と動機づけとの関係
「英語をスラスラと話して、楽しそうに輝いている自分自身」
をできるだけ具体的なシチュエーションとともに思い描くことで、英語を勉強する目的を見失わず、英語学習を継続する秘訣ですよ。
日々の中に英語時間を組み込んで普段から触れる英語の量を増やす
上述したように、英語の習得のためには膨大な時間が必要です。とはいえ、英語に触れている時間さえ長ければ良いのかというとそうではなく、正しく学習する時間が必要なのです。
そのためには、机に座って勉強するスタイルでも十分ですが、継続が難しい場合もあります。
そのような場合には、海外のニュースや洋画、英語新聞など様々なツールを利用して、実際に英語に触れる時間を作るのがおすすめです。
座学だけで勉強していては、どのように役立つのか、実際にどのような場面で使われるフレーズなのかイメージできない場合もあります。
実際の英語に触れることは、自分が学んだフレーズや単語が理解できるようになる喜びも得られるうえに、また頑張ろうというモチベーション向上にも寄与するのです。
30分早く起きて英語ニュースを聴いたり、お風呂の中で洋画を観てリラックスしたり、1日のどこかに「英語時間」を組み込んでみてください。
スキマ時間での学習を習慣化することで、英語に触れる時間を増やせますよ。
英語日記を書くことで英語の手軽なアウトプットを習慣化する
実際に経験した人も多いかもしれませんが、インプットの学習を行っただけでは、その全てを英作文やディスカッションなどでアウトプットすることは非常に難しいものです。
そこで英語学習の手法としてよく用いられるのが、英語で日記をつけることです。
試してみると、英語でアウトプットすることがいかに難しいかわかります。いきなり英語で長文を書こうとしても、時間がかかったり継続が難しかったりする場合があるため、まずは短文から始めるのが良いでしょう。
その際には、以下のような項目を織り交ぜて書いてみましょう。
- その日の天気
- 1日の出来事
- 1日の感想
- 明日やりたいこと
初めから完璧な構文や単語で記すのは難しいため、間違えても構いません。そのタイミングで「どうだったっけ?」と調べ直したり、新しい単語の知識を習得したりすることが重要なのです。
日記帳を取り出して書くのが面倒だと感じる場合には、スマートフォンのメモアプリなどでも十分です。自分が継続できるツールを駆使して、どんどんアウトプットしていきましょう。
「書く行為」そのものに疲れてしまう人は、考えを英語に変換して、口に出してみるだけでも構いません。
どう言ったらいいのか分からない表現については、後で調べることを繰り返せば、自然と英語で説明できる内容が増えていきますよ。
ネイティブと直接会話のできるオンライン英会話を利用する
英語を話せるようになるためには、上述してきたように、実際に英語を話す機会を作る必要があります。
ただ、日本で生活をしていると、英語を話す機会はそう多くないはずです。
そのような人には、以下のような理由でオンライン英会話がおすすめです。
- 通学型の英会話教室よりもレッスン料が安い
- マンツーマンレッスンが受けられる
- 教室に縛られることなく好きな場所で受講できる
- レッスンの予約の融通が利きやすい
毎日仕事や家事をしている人からすると、空いた時間に英会話教室まで足を運んでレッスンを受講するのは、結構ハードルが高いものです。
そのうえグループレッスンの場合は、実際に自分が英語で発言・主張できる時間は限られてしまいます。
しかしオンライン英会話であれば、色々な国籍の講師から直接指導を受けられるため、外国語で話す自分だけの時間を多く確保できるのです。
レッスンを開講している時間も、早朝から深夜までと幅広いため、時間の制約を受けることなく活きた英語に触れる機会を作れます。
以上、英語力を上げるための方法を解説してきましたが、これらは「どれか1つだけやれば効果が出る」ものではありません。
自身の英語レベルや状況に合わせて、必要な方法を組み合わせながら日々学習を継続することが大切ですよ。
実は日本人の英語力が上がってきている?大人も子供もアウトプットの継続が大切
最近では幼児教育として、子どもが小さいうちから英語に触れさせる人も増えてきています。また科目として英語を勉強するだけでなく、話せるようになることに意識を向けている人が多く見受けられます。
このような状況が、総合的な英語力の向上に寄与している可能性があるのです。
実際に、最近の日本人の英語力を、データを基に確認していきましょう。
CEFR A1レベルの中学生とCEFR A2レベルの高校生が増加している
令和4年度「英語教育実施状況調査」概要は、中学生や高校生の英語のレベルが着実に向上していることを示しています。
CEFR(セファール)とは、英語をはじめとした外国語の習熟度や運用能力を同一の基準で評価する国際基準のことを指します。
国際的な英語力のものさしであり、ヨーロッパ圏を中心に世界中で活用されているものです。
中学生の間では、CEFR A1レベル(英検3級)相当以上を達成した学生の割合が、目標の50%に対して49.2%という結果になりました。
一方、高校生に関しても、CEFR A2レベル(英検準2級)相当以上を達成した学生の割合が、目標の50%に対して48.7%となっています。
両者ともに目標値に届いていないとはいえ、平成23年度(2011年)の達成率が25~30%程度だったことを考慮すると、着実に改善が進んでいると結論づけられます。
世界的な指標であるCEFR換算で、読む・聞く・書く・話すの4技能の習熟度および運用能力に対する評価が上がっていることは、純粋に喜ばしい結果ですね。
英語で授業を行う中学校が増えていることも学力向上に影響している可能性が高い
文部科学省「小・中・高等学校を通じた英語教育の目標等の方向性」では、「授業は英語を使った実際のコミュニケーションの場面とする」と定められました。
結果、文部科学省「新学習指導要領について」では、中学校・高等学校ともに「授業は外国語で行うことを基本とする」とされました。
それ以降、中学校では3学年を通して、74.4%の学校で英語担当教師が発話の半分以上を英語で行っているため、その成果が出ているように推測できます。
ただし、高等学校においては46.1%と、半数以下にとどまるという結果になりました。
これはCEFR B2レベル(英検準1級)相当以上を取得している英語担当教師の割合が、高等学校で昨年度比2.6ポイント減少していることも要因として考えられ、高校レベルの授業を英語で行ことの難しさを物語っています。
また外国語指導助手(ALT)などの参画状況も下がっているため、ALTの活用人材を増やし、効率的に英語の授業を行わなければなりません。
担任クラスを持っていると、受験シーズンなどはクラス全員分の進路状況等を把握する必要があり、相当な業務量となるのは容易に予想できますね。そこに、自身の英語の勉強を追加すると教師の負担は非常に高くなると考えられるのです。
その点から考えても、ALTを有効活用するのが、英語授業の質向上の近道だと考えられます。
英検準1級を取得済みの英語教員が増加し授業の質が向上しつつあるのもポイント
先ほど紹介した令和4年度「英語教育実施状況調査」概要によると、CEFR B2レベル(英検準1級)相当以上を取得している英語担当の教師の割合が中学校で増加傾向にあると示されています。
国際文化交流機関「ブリティッシュ・カウンシル」では、B2レベルは、自立した言語使用者とされ、「母語話者とお互いに緊張せず、普通にやり取りできるほど流暢で、自然である」と位置付けられています。
さらに授業の内容も、話す能力を養うことにフォーカスされ、ニュース記事について自分の意見を発表したり、仲間の意見を聞いたりする授業が行われ始めました。現代の子供たちは、より質の高い、英語の総合力を磨く授業が受けられていると推測できます。
その点に加えて、英語能力の高い教員が授業を行うことによって、学生たちの英語能力の向上に寄与しているというわけなのです。
従来の「読む」「書く」の2技能を重視した基準が改められ、「話す」「聞く」「読む」「書く」の4技能を総合的に向上させるように変わったことも重要なポイントです。
教師の英語力の向上に伴い、4技能をバランスよく伸ばすことが重要だと、身をもって感じている教師も多いのではないでしょうか。
子供の英語で「話す力」が向上しつつある!大人も自主的なアウトプット学習が不可欠
新しい学習指導要領に基づく英語教育によって、より話す力を重視した教育が活性化されつつあります。
座学ばかりがメインだった高等教育においても、英語での授業だけに固執せず、ディベートやプレゼンテーションなどが授業に取り入れられるように変わっています。
大学受験で評価される4技能を総合的に鍛え上げられることはもちろんですが、実際にネイティブと対峙した際のトレーニングにもなるはずです。
現状の英語教育は、以前までの英語教育の方式とは全く異なり、インプット中心だった世代の大人の人たちからすると非常に驚くべき変化です。
そのためインプットメインの授業を受けてきた社会人は、若い世代の英語力に負けないためにも、自主的にオンライン英会話や英語アプリなどでアウトプットの機会を設けて継続することが大切。
授業の形態の変化によって、英語力の向上だけでなく、英語に対する関心や向き合い方までもが変わっているため、その波に置いていかれないようにしたいものです。
日本人が英語を話せない理由&解決方法が気になる人からよくある質問と回答
英語をスムーズに話せない理由が気になる人は、以下のような疑問も抱えています。順番に解説していくので、参考にしてみてください。
Q:カタカナ英語でも海外の人に話は通じる?海外生活で困らない?
以下のような口コミがあるように、海外の人にはカタカナ英語でも通じます。
(いずれも海外在住者)
ただカタカナ英語で通じるからといって、正しい発音や単語力の学習の手を抜いて良いというわけではありません。
カタカナ英語では、ネイティブとのスムーズな会話には限界がありますし、自分にとっても相手にとっても負荷がかかるのは間違いありません。
コミュニケーションの幅を広げる意味でも、カタカナ英語から脱却するための学習を行っていきましょう。
Q:英語の読み書きばかり練習してきたから話せないのなら、今までの学習は無意味なの?
今までの英語学習で身に付けた、単語の読み方や書き方の知識が無駄になることはありません。
英語をマスターするためには、「話す」「聞く」「読む」「書く」の4技能を総合的に高める必要があり、現時点で足りないスキルを磨くことが大切です。
話す力が不足しているなら、オンライン英会話や英会話アプリ、英語での独り言などを活用し、話す練習の時間を増やしてみてください。