- ディクテーションの正しい方法や実践効果がわかり、自身にとって最適なトレーニング方法かを見極められる
- ディクテーションを行う際のNG方法がわかるため、最短距離で成果を出せる
- ディクテーションにつまずいた際の対処法がわかり、挫折せずに継続できる
ディクテーションは、英語を書き取るという様々なスキルを駆使しながら行う学習方法です。慣れない人にとっては難易度が高く、継続が難しい可能性もあります。
そこで、今回はディクテーションのやり方に迷っている人に向けて、正しいやり方や挫折しないためのコツを紹介します。
この記事を読めば、挫折することなく正しい方法でディクテーションを継続しながら、英語力の向上を実感できるようになりますよ。
ディクテーションとは?初心者向けの効果的なリスニングスキル強化用トレーニング
ディクテーションとは、聞いた英語の音声を書き取るトレーニングのことです。英語の音声を一語一語書き取る必要があるため、リスニング力の強化に効果的です。
ディクテーションには、以下の2種類があります。
穴埋め
文章を聞いて、抜けている単語を書き取るトレーニングで初心者向け。空欄部分に集中してしまい全文把握が難しくなるため、穴埋めディクテーションに慣れたら、全文書き取りへの移行がおすすめ
全文書き取り
聞こえた音声を全て書き取るトレーニング
以降では、主に全文書き取りのディクテーションについて、効果やメリットを詳しく説明していきます。
ディクテーションのやり方・コツ・手順を解説【教材が速すぎて間に合わない状態を脱する効果的な方法】
ディクテーションをやってみようとしたものの、
「教材のスピードが速すぎてついていけない」
「次の音声に進むまでの間に書き切れない」
などの原因で挫折した初心者の方は多いかもしれません。
もし失敗したのなら、ディクテーションの正しいやり方を実践できていない可能性があります。
正しいディクテーションは、以下4つの流れで行います。
- 最初は細かく聞き取ろうとせず文章全体を聞いて大体の内容を理解する
- 一文ずつ音声を止めながら細部を聞き取った後、再度全文を聞く
- スクリプトを見ずに聞き取れているか自己チェック後、スクリプトを確認する
- 最後に全文を聞き取りながら弱点強化のためのトレーニングを実践する
手順を詳しく解説するので、やり方を参考に今すぐ実践していきましょう。
最初は細かく聞き取ろうとせず文章全体を聞いて大体の内容を理解する
ディクテーションを始める前に、まずはスクリプトを見ずに、音声全体のリスニングを行います。その際には途中で止めずに、全体の内容を捉えることに集中しましょう。
一言一句を聞き取ろうとするのではなく、全体の内容を推測することによって、後ほど書き取る際に話の流れに集中して聞けるようになります。
「どういう話なのかな」程度の、大まかなイメージの流れを掴むくらいで構いません。
イメージを掴めたら、次の音声を流すまでに、どういう単語が出てきそうかを推測しておきましょう。そうすることで、全く予想していなかった単語や文法が出てきて焦ってしまい、聞き取りに集中できなかったという事態を回避できます。
実際にネイティブと対峙する際にも、全体を通してどのような話か掴むことが大事なため、英会話の基礎トレーニングだと考えると良いでしょう。
一文ずつ音声を止めながら細部を聞き取った後、再度全文を聞く
一文ごとに音声を止めながら、聞き取れた音声を書き取っていきます。
一度目に書き取った後、次は途中で止めずに全文を通して聞きます。その際には、自身で書き取った内容の確認と、聞き取れなかった箇所をメインに聞くようにしましょう。
書き取る際には、上述したように、意味に集中することが重要です。
一言一句聞き取ろうとすると内容理解が疎かになり、逆に聞き取れなくなる可能性があります。
細かい助詞などの聞き取りが難しかった場合には、推測した意味をもとに文章を組み立ててみましょう。
意味を理解できずに淡々と英単語を聞き取っているだけでは、コミュニケーションで必要な英語力の向上には繋がりません。
実際に、ネイティブと対峙する際には聞き取りができるだけではなく、伝えたいことを理解することが最も重要です。
そのため最初は英単語を全て逃さず聞き取ろうとするよりも、「何を伝えているのかという部分に意識を集中する」ことをイメージすると上手くいきますよ。
スクリプトを見ずに聞き取れているか自己チェック後、スクリプトを確認する
書き取りが一通り終わった後は、すぐにスクリプトを確認するのではなく、まずは自身で全文チェックを行いましょう。
全体をリスニングしながら、以下の項目に従って、細部を確認していきます。
- スペルミスがないか
- 冠詞(a/an/the)や前置詞(at/on/forなど)の抜け落ちはないか
- 複数形のsは漏れていないか
上記項目に注意しながら、文章が完全形になっているかを確認します。
次にスクリプトを確認して、間違いがあれば原因を分析することが大切です。
考えられる間違いの原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 未知の単語・熟語・フレーズであった
- 発音を知らなかった、もしくは認識に誤りがあった
- スピードに追いつけずに聞き逃しがあった
- 文法知識が不足していた
- リエゾンなどの音の変化が聞き取れなかった
上記の間違いの原因によっては、必要な対策も変わってくるため、正しく間違いの原因を突き止めるのが重要です。
最後に全文を聞き取りながら弱点強化のためのトレーニングを実践する
聞き取れていなかった箇所に注意しながら、再度全文を聞き直します。
その際に、スクリプトを読みつつ、流れてきた音声を声に出して読んでみましょう。このトレーニングが「オーバーラッピング」です。
文字を確認しながら自分で発音することで、認識に誤りのあった発音の矯正や、速い英語音声についていくためのトレーニングができます。
間違った箇所の原因を解明できれば、日々の学習に取り入れることで、自身のさらなる英語力の向上が見込めます。
とはいえ、まずは試しにディクテーションを行ってみて、やり方と対策を徐々に習得していけば問題ありません。
実際にディクテーションに挑戦しながら、正しい手順を覚えたい人は、以下を視聴してみましょう。
英語コーチングスクール「イングリッシュカンパニー(ENGLISH COMPANY)」が提供する動画です。
『【実演でわかる】苦手がまる見えになるディクテーションのやり方』
10分程度でディクテーションの手順を、実際に手を動かしながら理解できます。
ぜひ紙とペンを用意し、腕試しを兼ねて挑戦してみてください。
逆にディクテーションのNGなやり方は?効果を得るため避けるべき行動
リスニングを行いながら、同時に書き取るトレーニングであるディクテーションですが、実際に取り組む際には以下のように注意すべき点があります。
- やればやるほど上達するわけではない!長時間行うのはNG
- しつこく聞き返すのはNG!スピードは変えずに5回まで
- 極端に短く音声を止めるのはNG!音声の切れ目がタイミング
- 書き取るスピードが大事!ある程度のスペルミスは大目に見る
せっかくディクテーションを行うのであれば、効果的な方法で成果を出したいですよね。
以降で、それぞれの内容について解説していきます。
長時間行わず毎日20〜30分ほど取り組む【やればやるほど上達するわけではない!】
ディクテーションのために長時間高い集中力を保つのは、ストレスがかかってしまい、毎日取り組むのが苦痛になりやすいです。
そのため、ディクテーションは集中できる時間内で取り組みましょう。
英語を聞き、慣れるだけでも時間はかかるため、長い目で見て取り組む必要があります。
1日のトレーニング時間を長くするのではなく、毎日20〜30分程度の練習を2〜3ヶ月継続することを目標にしてみてください。
初めは、30秒ほどの内容を書き取るのにも時間がかかるため、忍耐の必要な作業です。
無理やり長く取り組もうとすると苦痛に感じて、途中で投げ出したり、勉強時間になると憂鬱になって学習自体をやめてしまう可能性があります。
最初は15分程度でも構わないので、慣れてきたら徐々に学習時間や教材の時間数を長くするなど、ストレスの少ないトレーニング時間で取り組むようにしましょう。
しつこく聞き返すのはNG!スピードは変えずに5回まで
一言一句書き取りたいと、何度も聞き返してしまうかもしれませんが、全てを書き取れなくても聞き返しは5回程度にとどめましょう。
実際に、5回ほど聞き返して聞き取れないものは、それ以上聞いても聞き取れない可能性が高いです。全く聞き取れそうになければ潔く諦めて、聞き取れない原因を追及する方が効果的です。
もちろん、「もう少し聞いたらわかるかも」程度の単語であれば、根気強く聞き取りを行ってすっきりする方が良いかもしれません。
ただし、聞き取れない単語のみ音声を遅くして聞き取る方法はおすすめしません。
英語を聞いた経験が全くない場合であれば、スピードを落として英語に慣れるのも1つの手ですが、このやり方はディクテーションを行ううえでは逆効果。
ゆっくりとした発音に慣れてしまうと、ゆっくりした発音しか聞き取れない神経回路を形成して、通常スピードでの会話が聞き取れなくなってしまうためです。(※1)
そのため、ディクテーションを行う際には、通常のスピードのまま音声を聞くようにしましょう。
※1:植村研一”脳科学から見た効果的多言語習得のコツ” p.27
極端に短く音声を止めるのはNG!音声の切れ目がタイミング
ディクテーションを行う際には、聞き返しながら書き取るのが通常の方法ですが、徹底的に書き取ろうと単語ごとに止めてしまっては効果がありません。
単語1つひとつの音を確認する方法は、フレーズやセンテンスで生じる音声変化や、英文特有のリズムを聞き取る能力の向上を妨げてしまっているのです。
また、人が1回聞いただけで覚えられる言葉の長さは、母国語でも7秒が限界といわれています。外国語であれば一度で覚えられる言葉の長さは0.3〜5秒程度です。(※2)
短く切る際には、5秒程度を目安にしてトレーニングを行うとストレスなく継続できるでしょう。
同じ音声を何度も繰り返し聞いて口に出すと、覚えられる言葉の長さは延びるため、繰り返し継続することをおすすめします。(※3)
どうしても1文が長すぎて覚えられない場合には、ポーズが入る音声の切れ目で止めながら行いましょう。
※2, ※3:植村研一”脳科学から見た効果的多言語習得のコツ” p.27~28
書き取るスピードが大事!ある程度のスペルミスは大目に見る
学校の試験や資格試験の場合には、スペルミスは致命傷です。しかし、ディクテーションではその限りではありません。
ディクテーションで最も重要なのは、キーワードを聞き取って、概要を理解すること。スペルミスをそこまで気にする必要はないのです。
もちろん、完璧にスペルを覚えておくに越したことはありません。
ただ、スペルが書けずに手が止まってしまって、次の音声の聞き取りに集中できないようであれば、ディクテーションのトレーニングに影響が出てしまいます。
そのため、スペルミスや単語のスペルの書き取りのスキルに苦手意識を感じているようであれば、再度単語の書き取りや覚え直しを行う必要があります。
ある程度のスペルミスは大目に見ながら、トレーニングを滞りなく進めていくことが大切です。
スペルミスがあった際には、スムーズに書き取りができるようになるまで復習しましょう。
ディクテーション教材の正しい選び方!注意点を押さえて自分に合ったものを選択
最近では、英語の学習方法に関する参考書も多く出版されているため、ただでさえ、自身に合った教材を探すことは至難の業です。
とはいえ、無理なく学習を継続するためには、自身のレベルに合わせた教材での学習が必要不可欠です。
ディクテーションに使用する教材の選び方がわからない人は、ぜひ以下のポイントを中心に教材選びを行ってみてください。
- 書き取った後の弱点強化が重要!スクリプト付き教材を選ぶ
- 半分以上は聞き取れる!難易度が高すぎない教材を選ぶ
- まずは確実に聞き取れる長さで!音声の長さが短い教材を選ぶ
- 趣味や仕事関連ならなおよし!楽しく取り組める教材を選ぶ
参考書でも動画でも、まず教材と取り組む方法を定めたら、それ以外のものは取り入れないことが重要です。
教材と方法を確定させて取り組んだ後、状況に応じて難易度を上げたり方法を変えたりしながら、学習を楽しんでいきましょう。
以降で、教材選びのポイントについて細かく解説していきます。
書き取った後の弱点強化が重要!スクリプト付き教材を選ぶ
ディクテーションに使用する素材を選ぶ際には、必ずスクリプトがついているかを確認しましょう。
スクリプトを確認しながら、書き取った音声の答え合わせや間違った際の原因分析を行うためです。
ただ書き取りを行っただけで、間違っているポイントや聞き取れなかった単語をそのまま放置していては、せっかくの学習時間を無駄にしてしまいます。
ディクテーションでは、書き取るトレーニングと同等に、その後の弱点強化のための学習が非常に重要です。
書き取るトレーニングだけに必死に取り組んでも、最大限の効果は発揮できません。書き取った英文が合っているかを確認できなくては、意味がないのです。
ディクテーション専用の教材であれば、スクリプトが付いている場合が多いもの。しかしディクテーション専用以外の教材を利用する場合には、必ずスクリプトがあるか確認するようにしましょう。
半分以上は聞き取れる!難易度が高すぎない教材を選ぶ
ディクテーションに使用する教材は、自身に合った難易度のものを選ぶようにしましょう。
具体的には、初めて聞いた時でも最低7割程度は理解できるレベルがおすすめです。残りの部分は聞き取れなくても、推測して聞き取れるレベルの内容が理想的。
全体の半分以上が聞き取れないような教材を使用してしまうと、内容が分からず、都度停止してスクリプトを調べる手間がかかります。
結果的に、なかなか学習が進まず、自身のモチベーションも下がって学習効率が落ちてしまうのです。
7割以上の意味が分かる内容なら、聞き取れない箇所があっても意味を推測しながら学習を進められ、効率的に取り組めます。
まずはざっと教材のスクリプトを確認し、目に入った文章の意味が大体理解できるか確認しましょう。辞書を引かなくても意味の分かる単語や文法が多く目に入れば、自分に合った教材である可能性が高いです。
「早くいろんな英語を聞き取れるようになりたい」と、現在の自身のレベルよりも少し高めの教材に手を出したくなる気持ちもわかります。
しかし、初めてディクテーションに取り組む場合であれば、正しいやり方に慣れるためにも、書き取りに苦労しない教材を選ぶことが大切です。
慣れてきたら徐々に教材の難易度を上げていく方法が、学習を継続させる秘訣でもありますよ。
まずは確実に聞き取れる長さで!音声の長さが短い教材を選ぶ
ディクテーションに用いる素材については、できるだけ短いものを選ぶようにしましょう。
30秒〜1分程度の音声で、初めのうちは十分なトレーニングになるはずです。
ディクテーションは、音声を止めながら一言一句を全て書き取る必要があるため、通常のリスニングに比べて何倍も多くの時間を要します。
さらには、間違いや聞き取れなかった部分を確認する作業はより多くの時間が必要となるため、初めから3分程度の長い音声に取り組んでしまうと途中で挫折してしまう可能性があるのです。
長い音声を何時間もかけて書き取った後に、再度同じ時間で答え合わせや弱点の分析、復習を行っていては、1つの文章だけに時間を取られてしまいます。
そのため、初めのうちは短めの文章で慣れて、書き取れる喜びを感じながら成功体験を積むことを重視していきましょう。
趣味や仕事関連ならなおよし!楽しく取り組める教材を選ぶ
学習を継続させるためには、自身が楽しみながら学ぶことが最も重要です。
そのため、ディクテーションの教材を選ぶ際には、自身が興味を持ち楽しく取り組める内容であるかを基準に判断しましょう。
最近では、以下のように様々なジャンルの教材が登場しており、学習のバリエーションが豊富です。
- 海外のプレゼンテーション動画や字幕付きの洋画が見られる動画配信サービス
- 文字起こし機能を搭載した英語アプリ
- 英語のニュース番組
プレゼンテーション動画などは、もちろん全文を書き取るのは難しいはず。一部を切り取って、その部分だけを繰り返しながら書き取るのがおすすめです。
プレゼンテーション動画や映画などは、聞いているだけで、ポジティブで学習のモチベーションが上がるようなセリフのものを用いると、より前向きに学習を進められるようになりますよ。
【前向きになれるディクテーション用おすすめ動画】
キャロル・ドウェック『必ずできる!― 未来を信じる 「脳の力」 ―』|TED
机に座って参考書を開く学習方法だけに縛られずに、自身が楽しく取り組める方法を模索しながらティクテーションのトレーニングを継続していきましょう。
ディクテーションの英語学習法としての効果とメリット
聞き取れない理由がハッキリわかる!自分の弱点の克服
ディクテーションを行うことによって、これまでリスニングの問題に苦戦していた人でも英語を聞き取れない理由が明確に分かるようになります。
ディクテーションは、英語音声を一言一句逃すことなく、聞き取る必要があります。そのため、リスニング問題の実践などでは聞き逃して問題なかった単語でも、理解しておかなければならないのです。
そもそも、日本人が英語を聞き取れない原因には、以下の4つが挙げられます。
- 英単語と英文法の知識不足
- 英語の発音に慣れていない
- 英語の語順に慣れていない
- スピードについていけない
リスニングに苦戦している人は、上記のいずれかに当てはまる場合が多いです。
まずはディクテーションを行いながら、自身が聞き取れない原因を上記の項目に当てはめて、考えてみてください。
原因がわかったら、あとは弱点を克服していくだけです。
ディクテーションに取り組むことで、徐々に苦手が得意に変わっていき、英語が嫌いな人でも以下のメリットを得られますよ。
音声変化やスピードにも対応できるまでにリスニング力が向上する
ディクテーションを継続すると、リスニング力が向上します。
音声を聞いて書き取れなかった部分について、正解のスクリプトを理解することで英語特有の音声変化を習得できるからです。
英語特有の音声変化は「リエゾン(リンキング)」とも呼ばれ、子音と母音、単語と単語が連結して音が変化することを指します。
例えば、「Check it out!」という単語について音の変化を見ていきましょう。
通常通り、単語を一つひとつ発音すると「チェック イット アウト」という音になります。しかし、ネイティブは「チェッケラゥ」のように発音するのです。
ネイティブの会話では、リエゾンのような音の変化は頻繁に行われます。英語特有の音の変化を理解していないと、中学校レベルの文章でさえ、音を聞いただけでは理解できないのです。
研究論文『英語の音変化におけるリスニング演習の一考察』にある通り、音の変化の「パターンを認知して慣れていくこと」が重要です。
したがって、ディクテーションによって音の変化を聞き取れるようになることは、リスニング力を高めるうえでは効果が期待できます。
また音声を聞いて変化を都度学ぶだけでなく、実際にテキストや参考書などで音声変化を深く学習すると、さらに上達のスピードが上がるでしょう。
日本語を介さず英語を英語のまま理解する英語脳を鍛えられる
ディクテーションに取り組むことによって、英語を「読める」状態から「聞いてすぐに理解できる」状態にできます。
理由としては、ディクテーションは書き取るだけでなく、文脈を理解しつつ内容の意味を把握するトレーニングを行うためです。
「書いてある英語はなんとなく理解できるけれど、音声として聞くと全く意味がわからない」という人は多いかもしれません。
音声より英文を理解しやすい理由の1つは、英語を日本語の順番に入れ替えて、理解しやすいように頭の中で変換していることです。
一方、リスニングを行う際には、英語をいちいち日本語に変換する時間がありません。聞こえた順に、つまり英語の意味を聞こえたままの語順で理解していく必要があり、日本語の語順に整理していると理解が追いつかないのです。
ディクテーションをリスニングの練習に取り入れれば、英語を英語のまま理解できるようになり、聞き取りや書き取りのスピードが上がっていきます。
全部を完璧に聞き取れなくても、聞こえた情報から内容を把握する想像力も鍛えることが可能です。
結果的にディクテーションによって、相手が伝えたいことをイメージやニュアンスで即座に理解できる感覚が育まれ、英語脳を作っていけるのです。
スピーキング時やライティング時のアウトプットに強くなる
ディクテーションはリスニング力の向上だけでなく、スピーキング力やライティング力の向上にも効果的とされています。
ディクテーションを通して聞き取れなかった部分を、内容から推測したり、文法知識で補って書き取ろうとしたりするためです。
もしディクテーションの際に、一言一句全てを書き取ろうとした場合、ストレスがかかるうえ、非常に困難です。
一方で、聞き逃した部分があったとしても、全体的な意味の理解に集中すると、概要は書き取れるようになります。
全てを書き取れなくても概要を理解できれば、文法上のルールや単語の習熟度によっては自身で文章を組み立て直すことが可能です。
「何を伝えたいのか」を考えて文章を組み立てられるため、ネイティブと対峙した際にも相手の意図を把握しやすくなり、スムーズにやり取りができます。
「話し手が英語で伝えたいことは何か」に焦点を当ててディクテーションを反復するうちに、実際のやり取りでも役立つ「推測力」が身に付くのです。
反復学習を続ければ、”the”の音が聞き取れなくても、
「文法上、ここで”the”が来るな」
と推測できるようになり、自然な英文を書くスキルも鍛えられます。
話の内容を聞き取ると同時に文章を組み立てることで、スピーキングやライティングをマスターするために必須の、アウトプットの練習にもなるのです。
自身が書き取った文章でリーディング力も強化できる
ディクテーションは、自身の書き取った英文を復習することで、リーディング力の強化も見込めます。
書き取った後に、理解できなかった単語や文法を調べる一連の作業により、英文の意味を理解する中で、リーディング力も向上していくのです。
最終的には、聞き取りながら意味を理解していく状態が最も理想的ですが、初めから聞き取りと意味の把握を同時にできる人は多くありません。
初心者のうちは聞き取れた英文も含め、改めて全体のスクリプトから、単語や文法の理解を深めていくことが重要です。
学習を繰り返していくことで、徐々に聞き取りながら同時に理解できるようになっていきます。
ディクテーションは、聞き取り・書き取り・復習などに時間を取られて、労力のかかる作業だと感じるかもしれません。
それでも毎日少しの時間だけ、短い音声教材でも構わないので、聞き取りを続けていくことが、英語スキルの向上に不可欠です。
ディクテーションができない原因別の解決策!効果を出して上達するためのコツ
ディクテーションを継続するうえで重要なのは、上述したように、自身の弱点の洗い出しを行うことです。
とはいえ、原因だけを分析して解決策が見出せなければ意味がありません。
原因別に講じるべき対策については、以下のようなものが考えられます。
- 単語や熟語などの知識不足や負荷を感じる場合には教材の難易度の見直しを
- 発音が聞き取れなかった場合にはフォニックスの学習がおすすめ
- スピードについていけない場合にはリスニング量を増やす
- 文法知識が不足している場合には基本的な文法のみ反復学習
- 音の変化で聞き取れない場合にはオーバーラッピングやシャドーイングを
これから弱点強化のための学習に取り組むという人がいれば、ぜひ参考にしてみてください。
単語や熟語などの知識不足や負荷を感じる場合には教材の難易度の見直しを
単語や熟語の知識不足が原因でディクテーションができない場合は、以下の2パターンに分けられます。
- 音自体を全く聞き取れない
- 聞き取りはできるが、スペルがわからない
どちらのパターンかによって、アプローチ方法を変える必要があります。
聞き取れない単語が圧倒的に多いと感じた場合には、学習法をいったん単語の暗記に集中させてみてください。
スペルがあいまいな単語が多い人は、書いて覚える量を増やすようにしましょう。ディクテーションしていて出てきた知らない単語やフレーズは、都度書き留めることが重要です。
とはいえ、単語の暗記だけに時間を取られていては、ディクテーションを行う時間が短くなってしまいます。
その際には、教材のレベルが自身のレベルに合っていない可能性も考えられるため、レベルの見直しを検討してみても良いでしょう。
また学習自体が長く苦痛に感じられ、いつまでも先に進めない場合は、学習の負荷が少ない教材に変更しましょう。
最初は1~3分程度の短い音声で構いません。完璧に聞き取れるまで何度も学習すれば、短い音声でも、その中で登場する文法や音声変化をマスターでき、長い音声も少しずつ聞き取れていきますよ。
発音が聞き取れなかった場合にはフォニックスの学習がおすすめ
知っている単語でさえ、アクセントの位置を間違えて覚えていたり、自身で発音できない単語であれば聞き取れなかったりする場合があります。原因は、母音や子音が区別できないことです。
その場合には、英語の音とアルファベットをセットで覚えるトレーニングであるフォニックスを学習してみましょう。
フォニックスでは、以下のようなルールを学びます。
サイレントe:make, cake, siteなど
語尾のeは、発音せずに直前の母音をアルファベットの読み方のまま読む
二文字子音:oil, moon, foot, houseなど
単語の中のoi, oo, ou, owなどの母音が連続する場合には、単体の読み方と同じ場合もあれば、異なるアルファベットや単語によって異なる場合もある
母音の発音の違い
- oil=ˈɔɪ
- moon=u:
- foot=u
- house=au
一部を紹介しましたが、上記のようなルールの学習によって、英語の発音をマスターできるようになります。
アルファベットの読み方を理解できるようになれば、文字を見るだけで、未習の単語でも自力で読めるようになるため、学習の効率化に繋がります。
フォニックスが学べるサイト「あいうえおフォニックス」は、子供から大人まで理解しやすい解説と5分程度の動画で学べるため、スキマ時間に活用していきましょう。
スピードについていけない場合にはリスニング量を増やす
スピードが速いと感じるのは、リスニングの量が足りていないことが要因です。練習時間が不足していると、リスニングに慣れていけず、聞こえてくる英語を頭の中で処理できません。
この場合には、当然ですが、リスニングの量を増やす必要があります。
とはいえ、全く聞き取れない状態でトレーニングをむやみに継続しても意味がありません。学習量が不足している段階では時間がかかりすぎるため、書き取る練習はいったんストップさせ、聞き取ることだけに集中することが大切です。
まずは短い英語音声でも良いので、自身にとって聞き取りやすい教材を毎日聞くことから始めましょう。
その際に、聞き流すだけでは理解に繋がらないため、声に出してアウトプットすることで理解を早めていきます。
注意点は、先述しましたが、音声を流す際のスピードを遅くしすぎないことです。
あまりにもスピードが遅い英語に慣れてしまうと、かえって速いスピードについていくためのトレーニングも必要になってしまいます。最初は通常のスピードで、音声を区切りながらのトレーニングを繰り返すようにしましょう。
文法知識が不足している場合には基本的な文法のみ反復学習
文法知識が不足している場合には、まずは基本的な文法だけで構わないので、一通り理解できる状態にしましょう。
さらに、理解できる状態から使える状態にしておくと、ディクテーションの際には役立ちます。
ネイティブと話す際に、英文法がわからず「えっと……」と考えている時間はありません。無意識かつ瞬時に、アウトプットできるようにならなければ意味がないのです。
そのため、一度覚えて終わり、ではなく何度も何度も復習しましょう。余裕があれば、苦手な文法を使用した例文などを自身で作成するのもおすすめです。
ただし、文法書の解説を読んでも理解できないような難解な文法については、無視しても構いません。
実際の会話にはあまり役に立たない文法のために、時間と労力をかける必要はないため、負担がかかりすぎない程度に文法復習の時間を作るようにしましょう。
音の変化で聞き取れない場合にはオーバーラッピングやシャドーイングを
音と音がつながるリエゾンのような音声変化が苦手な場合は、以下のようにネイティブ特有の発音を学べる動画で慣れていくのがおすすめです。
音声変化は、オーバーラッピングやシャドーイングのトレーニングを重点的に行うことで、身体的・感覚的に理解できます。
上記のYouTubeチャンネルでは、連結による音の変化や、音の脱落について理解できるため、オーバーラッピングやシャドーイングを行う際にもスムーズに取り組めるはずです。
なお研究論文『「外国語の流暢な使用」につながる repetition と automaticity について』では、オーバーラッピングとシャドーイングの練習は、各3~5回必要だとしています。
1~2回程取り組んでも効果を感じられなかった人は、1つの教材につき最低3回は取り組んでみてください。スクリプトを見なくても、正しいリズムやイントネーションで発話できるレベルまで目指すのがおすすめ。
反復学習を行う結果、リスニング力に加え、英会話でも必要とされるリアルな英語の発話方法を習得していけるはずです。
ディクテーションとシャドーイングの比較:どちらがリスニングに効果的か研究論文から考察
英語のリスニング力を強化するうえで、もう一つ外せないトレーニング方法があります。それが、シャドーイングです。
シャドーイングとディクテーションは、英文の一言一句を逃さず聞き取ることを求められるという共通性を持ちながらも、アウトプットの方法が異なります。シャドーイングは音声に数秒遅れて、自分も同じように発音する訓練方法です。
リスニング力向上のための手段として、ディクテーションとしばしば比較されてきました。
シャドーイングは音声で、ディクテーションは文字でアウトプットするため、どちらがより効果的であるのか、論文を用いながら考察していきます。
シャドーイングとディクテーション、より効果的なのは?
論文タイトル:英語聴解力の指導法に関する実験的研究 ーシャドウイングとディクテーションの効果についてー
著者名:柳原由美子(千葉敬愛短期大学)
発行年:1995年
発行元:外国語教育メディア学会(LET)
論文では、シャドーイングを取り入れた指導法の効果を明らかにすべく検証を行いました。
同時に、シャドーイングと比較対象に用いられることが多い、ディクテーションを取り入れた指導法の効果も明らかにしていきます。
シャドーイングは、聞き取った音声を同時に聞き手が模倣していく作業です。学習者は無意識のうちに、語と語が繋がってリエゾンなどの現象が起こることを学びます。
さらには、英語のリズムやイントネーションなどを体得していくこととなり、学習者のスピーキング力をも向上させる可能性が高いのです。
上記を踏まえ、文字中心の英語教育に慣れてきた日本の学生にとって、英語を聞いて理解するリスニングの指導方法として「シャドーイングとディクテーションのどちらが効果的なのか」を検証していきます。
何度も反復を行い脳への刺激を与え続けることが最重要
検証の方法は、以下の通りです。
被験者は、千葉県内のある私立短期大学1年生90名です。
実験では90名を、以下の3つのグループに分けました。
- シャドーイング方式による学習群
- ディクテーション方式による学習群
- 聴解のみに取り組む学習群
約2ヶ月の間に90分の授業を8回行う中で、それぞれのトレーニングと試験を繰り返します。
結果として、以下のようなことが明らかになりました。
英語を聞いて理解するリスニング力をより高めると考えられるのは、シャドーイング方式の指導であるということです。次いで、ディクテーション方式の指導、聴解のみの指導という結果になりました。
シャドーイング方式の指導に効果があったのは、シャドーイングという作業のなかで音声の入力と出力を同時に行うことによって、多量の情報を貯蔵できる聴覚的感覚記憶を何度も刺激できたことが要因として挙げられます。
ディクテーションに関しては、英語のリスニングに慣れていない人にとっては、英語を書き取る作業負担が大きく難易度が高いため、ある程度リスニングに慣れてからのトレーニング強化が効果的だと考えられます。
ディクテーションのやり方をマスターしたい人からよくある質問と回答
ディクテーションをマスターするためには、実際にディクテーションの経験がある人からの話を聞くのが最も効果的です。
様々な人の知見を取り入れて、自身の学習に生かしていきましょう。
Q:ディクテーションに使えるおすすめのオンライン教材やアプリ、書籍を教えて!
ディクテーションに使える教材として、動画配信サービスであるYouTubeはもちろん、他ジャンルに及ぶプレゼンテーションの総合サイトであるTEDを利用する人も多いでしょう。
なかでも、初めてディクテーションに取り組むという人には、以下の動画がおすすめです。
「何かを本気でやりたいなら30日間続けてみる。本気でやれば大抵のことは30日間でできてしまう。」というプレゼンターの実体験に基づいた話を聞くと、これからディクテーションのトレーニングを頑張ろうとする人の背中を押してくれるヒントが見つかるはずです。
VOA Learning English / YouTube
アメリカ合衆国国営放送「Voice of America」による無料英語学習サイトの動画であるため、日本人にも馴染みのあるアメリカ英語で、初めてディクテーションに取り組む人にも易しい内容です。なかでも『English In A Minute』のシリーズは1分間の短い動画で、スピードも速すぎないため、無理なくディクテーションを進められますよ。
他にも、ディクテーションに特化した無料アプリとして『ディクトレ-ディクテーションを取り入れた英語リスニング学習-』もおすすめ。
さらに「音=文字」を一致させることを重視した参考書『ゼロからスタートディクテーション』も手に取ってみてはいかがでしょうか。
Q:ディクテーションでは同じ教材を何回くらい聞くべき?
ディクテーションでは、聞き取れるまで繰り返し聞くのが重要です。聞き取れなかった部分については、5回程度は聞くようにして、どうしても聞き取れない場合には答え合わせに進みましょう。
聞き取りに時間をかけすぎても、復習の時間に充てられずに逆効果になりかねません。
Q:英語の完全な初心者だけど、ディクテーションで効果を得られる?
もちろん初心者の人でも、ディクテーションで英語力向上の効果は得られます。ただし、継続することが大前提です。
初心者の人であれば、まずは短い英文で、スクリプトが必ずついている教材を準備する必要があります。そのうえで、ディクテーションの効果を感じられるまで継続し続けましょう。
Q:ディクテーションでスペルがなかなか完璧に書けない…カタカナじゃダメ?
もちろん2〜3度繰り返し聞くなかで、どうしてもスペルがわからない場合には、カタカナで表記しても問題はありません。ただ、英語力向上のためには正確な綴りを理解しておく必要があるため、復習の際に改めて正しいスペルを身につけましょう。
フォニックスを併せて学習することで、聞いた音を正しいスペルで表記できるようになるため、より効果を実感できますよ。
Q:ディクテーションだけでは身に付かないスキルは?
流暢に発音できるという意味でのスピーキング力の向上は、ディクテーションだけでは身につけられない可能性があります。
もちろん、発音できない単語については聞き取りができません。聞き取れるようになるためには、自身で発音できるようになる必要があります。
従って、ディクテーションと並行して、声に出してスピーキングの練習を行うことで、スピーキング力の向上も期待できるというわけです。
Q:ディクテーションは時間がかかって他の勉強をする時間がない…効率的にこなすコツは?
ディクテーションに時間が取られ過ぎている場合には、他の勉強をする時間も含めて学習時間のスケジューリングを改めて行いましょう。
ディクテーションは、どうしても聞き取れない単語があると集中して時間をかけ過ぎてしまう場合があります。
ディクテーションに取り組む場合には、聞き取りや考える時間を決めて、タイマーなどで管理するのがおすすめです。
さらには、その場で復習を行うのももちろん大切ですが、復習が必要な単語や参考書のページを書き留めて、後で時間をとって復習に充てるのも学習時間のバランスを取る秘訣です。
Q:ディクテーションの教材は洋楽でもいい?洋楽を教材にするとしたら聞き取るコツは?
上述したように、自身の好きなものを学習に取り組む方法は、非常に素晴らしい勉強法です。
そのため、洋楽をディクテーションに使用するのは問題ありませんが、曲の選択に注意しましょう。テンポが速すぎる曲やラップ調の曲などは、とても聞き取りが難しいため、スローテンポの曲やバラードがおすすめです。
また、ディクテーションを行う前に、音と意味を一致させるためにも、日本語訳に目を通しておくとスムーズな聞き取りができるはずです。