- 正しい英語の発音を習得するための実践方法がわかる
- ネイティブと日本人の英語における発音の違いがわかる
- 発音の矯正が必要かつ重要な理由がわかる
- 英語の発音ルールとフォニックスの重要性がわかる
- 研究論文に基づいた英語の正しい発音の学習方法がわかる
文部科学省の「中学校学習指導要領」では、中学生が英語の強勢やイントネーションなど、音声の特徴に慣れ、正しく発音できる状態になることを目標に掲げています。
しかし従来の学校教育において、英語の「発音」が重視されてきたとは言えません。
研究論文「日本の中学校 ・ 高等学校における英語の音声教育について 一発音指導の現状と課題一」では、英語教員が発音の知識を指導するだけにとどまり、発音練習を実施しないケースが指摘されています。
例えば句や文における“ストレス” について指導されなかった結果、生徒は英文を英語特有のリズムに乗せて読めず、強弱のない日本語のような発音になってしまうのです。
さらに教員自身も発音を学んでこなかったため、適切な指導ができないケースもあります。
世界には英語のネイティブスピーカーよりもノンネイティブスピーカーの人口の方が圧倒的に多く、世界各地でさまざまなアクセントやイントネーションの特徴を持った英語を耳にします。
とはいえ筆者は、「日本人が話す英語は世界的にも理解されにくい」と言われたことがあるのも事実。英会話で相手と正しくコミュニケーションを取るためにも、ある程度は英語の正しい発音のやり方を身につけることが大切です。
この記事では、英会話において正しい英語の発音を身につけることの重要性や、発音矯正に役立つ「フォニックス」のルールを解説します。さらに、正しい英語の発音を身につけるために使えるスクール・学習アプリ・動画なども紹介します。
英語の発音学習者や英会話の質を向上させたい人は、ぜひ役立ててみてください。
英語の発音矯正はそもそも必要?ネイティブの英語と日本人の英語はどう違うのか
結論から言うと、英会話において、英語の発音矯正は必要です。
日本語と英語の発音のルールは大きく異なり、日本人が日本語のように英語を発音してしまうと、相手に理解してもらえず、英会話でのコミュニケーションが成り立ちません。
ネイティブと同じ完璧な発音を目指す必要はないので、最低限知っておくべきルールを押さえて、日本人なりに正しく発音することが大切です。
日本人が英語を正しく発音するためには、以下の流れで練習する必要があります。
・英語と日本語の発音の違いを理解する
・正しい英語の発音を覚える
・正しい英語の発音を自分で実際に何度も口に出してみる
まずは英語と日本語の音の違いを解説するので、練習する前に必要な知識をしっかり押さえましょう。
なぜ英語の母音と子音の区別は難しいのか?日本語との比較で解説
日本人がネイティブのように英語を発音するのが難しい理由の1つは、日本語の母音と子音の少なさにあります。下記の表のように、日本語には母音が5個、子音が17個存在します。
【日本語の母音と子音】
母音 | i, e, a, o, u |
子音 | p, b, t, d, k, g, c, s, z, h, m, n, r, w, j, N, q |
それに対して、英語には約15個の母音と24個の子音が存在するのが特徴です。(参考:英語の発音と発音記号|東京大学教養学部英語部会)
特に母音の数については、日本語の3倍にものぼり、下記のように日本人が発音しない音が数多くあるのです。この母音の多さが、日本人がネイティブのように発音するのが難しい理由でもあります。
まずは日本語にはない音の発音をマスターすることが必要です。
英語は日本語と異なり、スペルと発音が一致しないため複雑:発音矯正で違いを理解することが大切
日本語はひらがなとカタカナが発音記号を兼ね備えているため、綴りと発音が完全に一致します。“a” は“ア” 以外に発音はありません。
それに対して、英語の場合はスペリングと発音が必ずしも一致せず、スペル通りに発音しても誤っていることがあります。例えば、“a” の発音だけでも下記のようにさまざまなパターンが存在するのです。
- /ə/
- /ɑ:/
- /ɒ/
- /æ/
- /ʌ/
詳細は後述しますが、「フォニックス」という学習方法を使って英語の「発音」と「スペリング」の関係性を学ぶことも可能です。しかし、フォニックスで全ての発音パターンを覚えられたとしても例外も存在します。
このように、発音≠スペリングであるとともに、発音のルールを覚えるのは簡単ではありません。日本人が英語で意図を理解してもらうためには、発音矯正によって正しい音とスペリングを理解し、身に付けることが大切なのです。
日本語はほとんどの単語が母音で終わるのに、英語には子音で終わる単語が多い
日本語の発音は「ん」や「っ」で終わる単語を除いて、品詞に関係なくほとんどが「母音」で終わります。
たとえば「食べる」は”taberu”となり、”u”で終わりますね。他にも「犬」という名詞も”inu”となり、”u”で終わります。
それに対して英語の場合は、日本語のように母音で終わる単語もありますが、下記のように子音で終わる単語も数多くあります。
- eat「食べる」
- dog「犬」
どちらの単語もそれぞれ”t”と”g”で終わっています。発音する際にも”to”や”gu”のように母音をつけて発音せず、ほぼ聞こえない程度に「トゥッ」「グッ」と発音します。
しかし「子音で終わる単語がある」という概念は日本語にはないため、日本人は「イート」や「ドッグ」のように、日本語的な発音をしてしまうのです。
また”His dog is cute.”という文章であれば、”is”がなくても意味が通じるため、”is”は弱く発音されるのが英語の特徴です。
弱く発音される音を聞き洩らしてしまうと、前後の言葉で意味を推測できない初心者は、間違った解釈をしてしまう可能性があります。
このような違いが、ネイティブスピーカーの発音する英語と日本人の発音する英語に大きな差を生み出しているのです。
英語の正確な発音を身につける上で「カタカナ英語」が弊害になっている
私たち日本人は「ニュース」や「アナウンス」など、英語をはじめとした外来語をそのまま使用するときはカタカナで表現します。
そのためか英語を発音するときにも、ついつい英語に「カタカナ」を振って、カタカナ読み(カタカナ英語)で置き換えてしまう習慣のある人が多いです。
また、「ホテル」や「デスク」のように英語の外来語をそのままカタカナ読みで読む人もいるでしょう。
しかし、既に説明したように、英語は日本語よりも多くの母音と子音があることから、カタカナだけでは正確に表せない音が数多くあります。
たとえば、”orange”もカタカナ英語で表現すると「オレンジ」となりますが、ネイティブスピーカーの英語に近い形で表現すると「オーゥリィンジュ」となり、全く異なるのがわかるでしょう。
カタカナ英語が、日本人に正しい英語を身につけさせるのを難しくしている要因の1つです。
胸式呼吸のまま英語を話すため、正しい英語の発音ができない
意外かもしれませんが、日本語と英語では「呼吸」のやり方が異なります。この「呼吸」の違いが、発音の違いを生み出す要因の1つです。
日本語で使われている「胸式呼吸」は胸を膨らませて呼吸する方法です。ラジオ体操の深呼吸がこれに当たります。
日本語の音節は英語の音節と比較すると、短いセンテンスを繋げる性質があり、イントネーション・抑揚などの音声変化が少ないため、日本語は胸式呼吸と親和性が高いです。
それに対して、英語ではお腹を膨らませて呼吸する「腹式呼吸」を使うことが一般的です。声楽・管楽器・合唱などで使われますね。
英語は「息の言葉」と呼ばれており、腹式呼吸でお腹から息を押し出して、その息を唇・歯・舌・上顎などを使って調整しながら発音する仕組みです。
胸式呼吸のまま英語を発音すると息の量が足りなくなり、結果的に息継ぎやイントネーション、発音の響きに不自然さを生み出してしまいます。
英語の発音矯正の方法:英会話で必要な発音ルールとフォニックスの重要性を分かりやすく解説
英語と日本語の発音には大きな違いがありますが、英語の発音のルールをしっかりと身につけることで、ネイティブスピーカーの英語を聞き取るスキルが鍛えられます。結果的に、自分でも正しく英語を発音でき、スムーズなやり取りにつながります。
英会話をするにあたり、必要な発音のルールは、下記の3つです。
- 発音記号
- フォニックス
- 音声変化
それぞれの発音のルールの重要性について詳しく解説します。
発音記号を身につけると、スペルが長くて難解な英単語も簡単に発音できるようになる
発音記号を理解できると、下記のメリットがあります。
- 難解でスペルの長い単語であっても正しく発音できるようになる
- リスニング力が飛躍的に向上する
- 英語の学習を効率的に進められる
先述しましたが、英語には”a”という文字だけでも数多くの発音パターンがあります。それぞれの単語には「発音記号」が存在しており、その発音記号通りに発音することが求められるのです。
そもそも「発音記号」とは、英語の発音をわかりやすく示した記号のことを指します。英和辞書や中学・高校の英語の教科書に、単語の横にカッコ書きで示されている/ɑ:/のような記号を見たことがあるのではないでしょうか? これが発音記号です。
発音記号を理解できていると、難解でスペルが長い単語であっても、辞書で発音記号をチェックするだけで音がわかります。わざわざネイティブスピーカーの発音を聞かなくても、一目で正しい発音が理解できるのです。
また発音記号をマスターすると英語の音の作り方がわかるため、スピーキング力だけでなく、リスニング力の向上も期待できるでしょう。
自分が知らない単語であっても、発音記号がわかれば正しく発音できるため、誤った発音で覚えてしまい後から修正する手間を省くことができます。つまり、英語の学習を効率的に進められるのです。
英語の発音矯正の簡単な方法:フォニックスを活用してスペリングと英語の音声をリンクさせる
「フォニックス」とは英語の音声とスペリングを紐づけるルールのことを指します。「フォニックス」学習法は、英語を母国語とする国々の子どもたちに取り入れられており、英語の発音矯正法としては比較的簡単で取り組みやすいものです。
フォニックスを身につけると、単語を見るだけで、ある程度単語の正しい発音が分かるようになったり、逆に音を聞くだけで単語のスペルが予想できるようになったりと、英語力向上に役立ちます。
フォニックスには例外があるため、万能の発音学習方法ではありませんが、高知県庁の資料で言及されている通り、英語学習の入門期に学ぶ単語の大部分をカバーできるため、英語の読み書きの向上に効果的な学習方法の1つとされています。
何よりも、発音記号を覚えるよりわかりやすく、学習負担が少ない点がメリットです。特に英語初心者の人は、覚えにくい発音記号をやみくもに頭に詰め込むよりも、無理なくフォニックスから身につけてみてください。
フォニックスでの基本的なアルファベットの読み方は下記の通りです。(本来英語の正しい発音はカタカナで表記されるべきではありませんが、わかりやすさを重視してカタカナ表記にしています。)
【フォニックスでの各アルファベットの発音のやり方】
A/a ェア | B/b ブッ | C/c クッ | D/d ドゥ | E/e エ | F/f フッ |
G/g グ | H/h ハ | I/i イ | J/j ジュ | K/k ク | L/l ル |
M/m ム | N/n ヌ | O/oオ | P/p プッ | Q/q ク | R/r ゥル |
S/s ス | T/t トゥ | U/u ア | V/v ヴ | W/w ウォ | X/x クス |
Y/y ィユ | Z/z ズ |
上の表を参考に、基本的な英単語の音と結び付けると、スペリングと音声がリンクして正しく発音しやすくなります。
なおフォニックスをスムーズに理解して、すぐ実践に活かせるツールも紹介しているので、チェックしてみてください。
音声変化を身につけることで、流暢でナチュラルな英語の発音に近づける
英語には「音声変化」と呼ばれるルールがあります。音声変化とはその名の通り、英語の2つの音がつながったり、別の音に変化したりすることです。
下記のようにさまざまな音声変化のルールが存在します。
英会話発音のルール | 内容 |
---|---|
リンキング(連結) | 「子音」で終わる単語と「母音」で始まる単語が続いた場合、子音と母音を繋げて1つの音として発音する。 例)Can I 〜?「キャン アイ」ではなく、”n”を”I”を連結させて「ナイ」という音に変えて「キャナイ」と発音する。 |
リダクション(脱落) | 特定の音が弱く発音されたり、省略されたりすること。 例) “going”は「ゴーイング」ではなく「ゴーイン」と発音して、最後の”g”の部分は発音しない。 |
アシミレーション(同化) | 2つの異なる音が重なり、新しい音として発音される音声変化のこと。 例) need youは「ニード ユー」ではなく「ニージュー」と発音する。 ”d”と”y”が「ジュ」という新しい音を作り出している |
アクセント | それぞれの単語で強く発音する音節のこと。 日本語とは異なり英語は強弱をつけて単語や英文を発音する。 |
イントネーション | 「抑揚」。声を上げたり下げたりして単語や文章を読むこと。 |
これらのルールを全てマスターするまでには時間がかかります。
最初はうまく発音できなくても、ルールを知っておくだけで音が聞き取りやすくなり、正しい英語の発音を意識できるようになっていきます。
ネイティブと同じように完璧な発音を目指す必要はないので、上記のポイントを押さえて、相手の英語を理解し、さらに伝わる英語が話せる状態を目指していきましょう。
少しずつでもいいので、覚えてみてくださいね。
【研究論文から考察】英語の発音矯正に必要な正しいトレーニング方法やポイントを解説
ここでは、英語の発音矯正に必要な正しいトレーニング方法やポイントについて、2つの論文を用いて解説します。
それぞれの研究では、英語の正しい発音のやり方を知らない小学生と大学生を対象にした実験を行いました。
これから英語の発音を本格的に身につけたい人に役立つ内容ですので、参考にしてみてください。
ネイティブスピーカーの口唇動画の視聴が学習者に与える影響は大きい
【論文の概要を紹介】
小学校で英語教育が本格化して久しいですが、担任教師だけでなく、外国人指導助手「ALT(Assistant Language Teacher)」も指導に関わることで、子どもたちの英語やコミュニケーションに対する意欲・関心が高まることが分かっています。
しかし、予算や人員配置などさまざまな理由で、毎回の授業にALTを配置するのは難しいのが現実です。そこで担任教師の指導と併せて、ALTが発音の手本を示す動画コンテンツを英語指導に取り入れたところ、子どもたちの英語の抑揚や音素など、発音技能の育成に効果が認められました。
ネイティブスピーカーから学んだあと動画コンテンツを使って復習することで英語の発音が身につく!
動画コンテンツは、学習者が発音時にビデオカメラから取り込んだ自分自身の口唇動画像を、パソコンの画面上に表示したものです。モデルとなっているネイティブスピーカーの口唇動画像と比較しながら、英語の発音を身につけることを目的としています。
実験を実施した岡山県内の小学校では、週に1時間英語の授業があり、2時間かけて1つの単元に取り組んでいます。
基本的には、最初の1時間は担任とALTのティームティーチングで授業を実施。2時間目は1時間目に習ったことをもとに、担任教師が単独で授業を進めていきます。
実験では、担任教師単独での授業実施時に、ALTによる動画コンテンツを使いながら、生徒に英語の発音練習をさせました。
生徒を活動形態AとBのグループに分け、Aでは動画コンテンツと、生徒自身が発音する姿を撮影した動画の比較による発音改善を実施。
Bでは、動画コンテンツのみを使用して発音を練習後、グループ内でお互いの発音を確認させました。
結果的に、自分の発音する姿が見られる動画を活用したAの方で、抑揚・速さ・音素が向上したことが明らかとなります。
この実験結果から、動画コンテンツを受け身で使用し、ネイティブスピーカーの口や唇の動きを見るだけでは、英語の発音を身につけるのは難しいことが分かります。
オンライン英会話や英会話教室などを活用して、実際にネイティブスピーカーと発音練習してから、自宅で英語を発音する自分の口唇の動画を撮影して復習することで、実験と同じような効果が得られるでしょう。
なおオンライン英会話や英会話教室で学ぶ場合は、なるべく多くの講師のレッスンを幅広く受講するのがおすすめです。お気に入りの講師1人のレッスンだけを受けていると、その人の英語だけを聞き取れるようになる可能性があります。
実践的な英語力を身に付けたいなら、他の人の英語が聞き取れないままになってしまう事態を避けることが大切。国籍や年齢、性別にとらわれず、少なくとも4~5人の講師から学ぶのがおすすめです。
大学生を対象にしたトレーニングより導き出した効果的な英語の発音トレーニング方法
【論文の概要を紹介】
日本人が英語の発音を苦手とする理由の1つとして、中学校や高校で英語の発音に関する指導を受けていないことが挙げられます。現在、英語の教員免許を取得するために、発音に関する科目の必修義務はありません。
つまり、英語の教員は、英語の音声学を学ばなくても教壇に立つことができます。このような背景から、正しい英語の発音を身につけている教員が少なく、生徒も正しい英語の発音のやり方を知らないまま育ってしまうのです。
この論文では、英語の発音のルールを全く知らない大学生を対象にした、英語の発音トレーニングについての実験とその結果をまとめています。
まずは発音の基礎を身につけてから洋楽やスピーチで実践練習をする
大学で実践した英語の発音トレーニングの内容は下記の通りです。
指導内容 | 指導時間の目安 | |
---|---|---|
1回目 | 英語の子音単音の練習 | 90分 |
2回目 | 英語の歌(英語のリズムや音のつながりの練習)“Daydream Believer” | 30分 |
3回目 | 英語の歌(英語のリズムや音のつながりの練習)“Bad Day” | 30分 |
4回目 | スピーキング(発音練習の成果確認) | 50分 |
上記の4回の英語発音トレーニングを通じて、学生たちは英語の発音を身につけることの重要性や、自分の英語の発音が誤っていたことを認識することができました。
また、英語特有の子音の発音をある程度身につけてから、洋楽やスピーチなどを通じて実践練習をすることで、多くの学生が正しい英語の発音に近づけたという結果が出ています。
この実験から、上記のような手順を踏むことで、英語の正しい発音を身につけやすくなることがわかるでしょう。ぜひあなたも、積極的に洋楽を聴いて、感想を英語で書いてみるといったアウトプット学習を実践してみてください。
【実体験から紹介】英会話で発音矯正が必要な理由を徹底解説
筆者はオーストラリアの大学院への留学経験があります。留学経験を通じて、下記の4つの理由から英会話における発音矯正の重要性を感じました。
- 正しく発音できないとコミュニケーションが成立しないから
- ストレスを感じることなくスムーズにコミュニケーションができるから
- 「相手に伝わる」と自信を持ってハキハキと英語が話せるようになるから
- スピーキング力だけでなく、リスニング力の向上にもつながったから
ここでは、筆者の実体験をもとにそれぞれの理由について詳しく解説します。
正しく発音できないとコミュニケーションが成立しないから
オーストラリアは世界中から数多くの移民や留学生を受け入れている国です。メルボルンにあるモナッシュ大学院に留学していましたが、シドニーやメルボルンなどの大都市では、オーストラリア人よりも中国人やインド人など非ネイティブスピーカーの方が多くて驚いたことを今でも覚えています。
そのため、世界のさまざまな地域の訛りや特徴がある英語を日常的に耳にしていました。日本で英語を学んでいた時には、ネイティブスピーカーの訛りのない英語をずっと勉強していたため、留学して間もない頃はクラスメイトとなかなかコミュニケーションが取れず苦労したものです。
特に、インド人の学生の英語は独特で訛りが強かったため、全くと言って良いほどコミュニケーションが取れませんでした。
このことをオーストラリア人の友達に話したときに、
「確かにインド人の英語は聞き取りづらいけど、日本人の英語の方がもっと分かりづらい。何を言っているのか本当に分からないことが多いよ」
と言われ、ショックを受けました。
この経験から、英会話では英語を正しく発音できないと、相手とのコミュニケーションが成立しないことを学んだのです。
ストレスを感じることなくスムーズにコミュニケーションができるから
相手が話す英語が聞き取れないと”Sorry?”や”Could you repeat the question again?”と聞き返すことがあります。聞き返すことが多いと、相手もストレスを感じて、うんざりしてしまうでしょう。そして聞き返す分、やり取りに時間がかかってしまいます。
大学院修了後、現地企業で仕事をしたことがあるのですが、中国人上司の言っている英語を100%理解できず、推測で行動して失敗したことがあります。相手に何度も聞き返すことに対して申し訳ないという気持ちが働いてしまったことが原因です。
その後の対応にかかった時間や労力を考えると、「相手に嫌な顔をされてでも聞き返しておけばよかった」と反省しました。とはいえ、何度も聞き返すことで、相手にストレスを与えてしまうのも事実です。
この経験から、英会話で正しく発音できていないと、相手にしっかりと意図が伝わらず、誤解やトラブルにつながることを学びました。
正しい英語の発音を身につければ、ストレスフリーでスムーズにコミュニケーションが取れるようになります。
「相手に伝わる」と自信を持ってハキハキと英語が話せるようになるから
日本の学校で学ぶ英語の授業では、英語の発音はあまり重視されていません。そのため、英語を正しく発音できる人はごくわずかです。
自分の発音に自信がないと、ついつい声が小さくなってしまったり、早口で話してしまったりしてしまいがちです。このような話し方をすることで、余計に相手に伝わりづらくなってしまいます。
日本語では相手の言ったことが聞き取れなかったとき、「え?」と聞き返すことが多いでしょう。しかし、英語の日常会話では”Huh?”「はぁ?」と使うことが多いです。日本語で「はぁ?」と言われると、相手がイライラしているように捉えやすいですが、英語ではそのようなニュアンスは全くありません。
しかし、”Huh?”と言われると、これまでの習慣からつい縮こまってしまうものです。私もそうでした。そして、一度でも”Huh?”と言われてしまうと、英語を話すことにコンプレックスや抵抗感を持つことにもつながりかねません。
心理的に萎縮しないためにも、英会話では正しい英語の発音を身につけることが大切です。正しい発音を身につけられると、相手に意図が伝わる喜びを感じられ、自信を持ってハキハキと英語が話せるようになります。
スピーキング力だけでなく、リスニング力の向上にもつながったから
「自分が発音できないものは聞き取ることができない」と言われていますが、私自身もその通りだと思います。
詳細は次章で説明しますが、英語には日本語にはない独特の発音のルールがいくつか存在します。これらのルールをしっかりと身につけて正しく英語を発音できるようになることで、スピーキング力だけでなくリスニング力も劇的に向上するでしょう。
私自身も、英語の発音をしっかりと学習してからTOEICテストを受験してみたところ、リスニングのスコアが80点近くアップしました。
正しく英語を発音することで、スピーキング力だけでなく、リスニング力の向上にもつながります。
私が行った英語の発音学習方法は下記の通りです。
Step1: まずは英単語1つひとつを発音記号通りに正確に発音できるようにする
Step2: 2語以上のフレーズや英熟語を英語の音声変化のルールに従って発音する
Step3: 英文をスラスラと読めるまで発音練習する
また、発音のトレーニングをするのにシャドーイングやディクテーションを活用するのも効果的です。
聞こえてきた音声を自分でも正確に再現するシャドーイングや、書き取るディクテーションを活用すれば、音素レベルで英語を聞き取れるようになります。
“to”“on”など、弱く発音されやすい音もしっかり聞き取る訓練を重ねられ、英会話の際には細部にこだわり正確な文法で話しやすくなるのもメリットです。
英会話で必須の英語の発音矯正ができるスクールや教材などを紹介
英会話で必須の英語発音矯正ができるおすすめのスクールや教材は4つあります。
教材については無料動画とアプリに絞り、下記の通り紹介します。
- ハミングバード
- サマー先生と英会話!
- 『あいうえおフォニックス』英語発音
- スピークバディ
ここでは、それぞれの特徴や魅力について具体的に見ていくので、英語の発音を身につけるための教材選びに役立ててみてください。
ハミングバード|日本人にぴったりな独自の英語発音習得メソッドを活用したスクール
ハミングバードは、「ハミングバードメソッド」という独自の方法を用いて、英語の発音習得を目指すことを目的にした発音専門スクールです。
「ハミングバードメソッド」とは、英語でよく使われる32個の母音と子音を、”8 Positions”と呼ばれる8つの口の形と舌の位置の組み合わせで表現するメソッドのことです。日本人による日本人のための発音矯正メソッドとして定評があります。
全国に45校以上のスクールを構えていますが、通学だけでなくオンラインでのレッスンも提供しているため、誰でも場所を問わずに受講が可能です。
カウンセリングや家庭学習のサポートも行っているため、モチベーションを維持しながら継続的に英語の発音を学べるでしょう。
無料体験レッスンも実施していますので、興味がある人は気軽に問い合わせてみてください。
サマー先生と英会話!|英語のリンキングについて本格的に学ぶならコレ!
「サマー先生と英会話!」はアメリカのシアトル出身で、スタンフォード大学大学院博士課程で学んだサマー・レイン先生が運営しているYouTube動画です。英会話講師歴は10年以上にもおよび、『好感度UPのシンプル英会話』や『プライムイングリッシュ』などの著作があります。
サマー先生はアメリカ人であるにもかかわらず、日本語が上手です。明瞭な日本語で、英語の発音に関する微妙なニュアンスをわかりやすく説明してくれるので、英語初心者の人であっても安心して視聴できます。
特に、「リンキング」と呼ばれる英語の音の繋がりに関するコンテンツは、解説が分かりやすくおすすめです。リンキングに苦手意識を持つ日本人が多いのですが、リンキングに慣れないといつまでも英語らしい発音ができないばかりか、リスニング力の向上にも繋がりません。
発音に関するさまざまな動画がありますが、上記の「リンキング」に関する動画を視聴するだけでも役立つでしょう。
『あいうえおフォニックス』英語発音|フォニックスを楽しく学んで正しい英語の発音を身につけよう!
「『あいうえおフォニックス』英語発音」は、ロサンゼルス在住のネイティブスピーカー・アリーとファジーが運営する、英語の発音習得を目的にしたYouTube動画です。
チャンネル登録者数は46万人以上にものぼり、かなり人気があります。
「フォニックスのルールを覚えるのは面倒くさい」と、フォニックスの学習を敬遠していた人も、この動画を視聴すれば、楽しくフォニックスの基礎や英語の正しい発音を身につけることができるようになるでしょう。
『あいうえおフォニックス』英語発音にはYouTubeだけでなく、公式Webサイトもあります。公式Webサイトでは英語学習に役立つ豆知識やフォニックス関連のおまけもついているため、併用して学習するのがおすすめです。
スピークバディ|AIがあなたの英語の発音を細かく解析してフィードバックしてくれる!
スピークバディは、感情表現豊かなAIと英語で会話することで、英語の発音や英単語を学ぶためのアプリです。ネイティブスピーカーと英語で話してみたものの、緊張や恥ずかしさによって上手く話せなかった人におすすめします。
AIがあなたの英語の発音を、発音記号レベルで解析して、フィードバックを返してくれます。あなたのどの英語の発音が間違っているのか、細かい点が分かり、弱点の克服がしやすいです。
800以上のリアルな英会話シーンがあり、1レッスンも15分と短めなので、忙しくて飽きやすい人でも楽しみながら継続して取り組めるでしょう。
スピークバディは有料のアプリで、プランによって1ヶ月にかかる費用は異なりますが、1,983〜3,300円(税込)と、オンライン英会話や英会話スクールと比較するとかなりリーズナブル。コスパの良さも学習の継続につながるポイントです。
英語の発音を矯正して英会話をマスターしたい人からよくある質問と回答
最後に、英語の発音を矯正して英会話をマスターしたい人からよくある質問とその回答についてご紹介します。
Q:「英語の発音がいい」と言える人にはどのような特徴や共通点がある?
「英語の発音がいい」と言える人には下記のような特徴や共通点が見られることが多いです。
- ハキハキと相手に聞き取りやすいように話す
- 日本語にはない英語特有の音声の発音が正確にできている
- リンキング(単語と単語の音のつながり)ができている
- 1つひとつの音を全てはっきりと発音していない
- 正しいアクセントとイントネーションが身についている
ハキハキと明瞭に話しながらも、全ての音をはっきり発音するのではなく、強弱を付けられていることがポイント。ぜひ参考にしてみてください。
Q:英語の発音練習として使える例文を2~3文紹介してほしい!
英語の発音の習得に役立つのが早口言葉です。日本語にはない”th”や”r”の音が多用されている早口言葉を何回も練習すれば、短期間で英語の正しい発音を身につけることができるようになるでしょう。
まずは”f”と”r”、”t”の発音をトレーニングするための英文です。
Fred fed Ted bread, and Ted fed Fred bread. (フレッド フェド テッド ブレッド、エンド テッド フェッド フレッド ブレッド)
訳:フレッドがテッドにパンを与えて、テッドがフレッドにパンを与えた。
次に”th”と”r”の発音のトレーニングに最適な英文です。
He threw three free throws. (ヒー スルー スリー フリー スローズ)
訳:彼は3回フリースローをしました。
最初はゆっくりと、それぞれの英語特有の発音を正しく再現できるようにして、徐々に英文を読み上げるスピードを上げていきましょう。