就活シーンで必ずといっていいほど登場するキーワードのひとつに『自己分析』があります。しかし、何のために自己分析をするのか、就活においてどんな役割を果たすのか、はっきりと答えられる人は少ないのではないでしょうか。まずはその何たるかを、就活アドバイザー才木弓加さんに紐解いていただきました。
就活では、エントリーシートから最終面接まで、すべてのシーンで自己PRが必要になります。自分のことはよくわかっているから大丈夫! と思うかもしれませんが、毎年多くの就活生が自己PRを考える段階でつまずき、そのせいで就活終盤まで悩む人もいます。
原因は自分のことをよく理解していないことにあります。自分の実態とずれたアピールを繰り返しても、相手に自分の魅力は伝わりません。まず大事なのは「自分を知ること」なのです。
長所や短所を含め、自分を理解することが、効果的な自己PRには必須です。どこへ出ても堂々と自分を紹介することができる、強みを伝えることができる、そのための最も有効で必要不可欠な方法が「自己分析」といえます。
就活生の多くは、自己分析を「いい自分」や「就活のためのアピールポイント」を見つける作業だと思い込んでいますが、そうではありません。自己分析の目的は、「自分自身を理解すること」。
「いい自分」だけを探そうとすると、過去の高成績や華やかな出来事ばかりに目がいきますが、それでは本当の自分と向き合うことはできません。なかには「面接で発言してもマイナスにならない短所」を探す人もいますが、これも偽りの自分をつくりあげるだけ。素直に自分の長所と短所を知ることがポイントです。短所を自覚すれば、その改善策を考えることができます。企業が知りたいのも、短所がないかどうかではなく、「短所を自覚し乗り越える力」を持っているかどうかだと覚えておきましょう。
自分の実態を理解できれば、どんな場に出ても、自己アピールは説得力ある魅力的なものにできます。自己分析とはそれを可能にする手段なのです。
自己分析の過程で偽りの自分をつくらないコツは、就活を一旦忘れることです。
今まで気付かなかった新たな自分を発見しよう、という純粋な気持ちで取り組みましょう。きれいごとではないリアルな自分が見えれば、強みや弱み、相手にマッチするポイントが驚くほどクリアになります。そうして面接した結果、採用側も内定の判断をしやすくなるというものです。
過去に私が指導した学生の一人は、面接官から「あなたのように自分をよく理解している人はいませんよ、すごいですね」と言われ、その後内定を得たそうです。面接官は「これほど自分自身の長所も短所も理解している人ならば、入社後にぶつかるであろう仕事の壁も乗り越えられるはずだ」と考え、それも判断材料として採用を決めたのではないでしょうか。
文・磯野佳世子
才木弓加・プロフィール
大学などでの就職対策セミナーの講師を務めるかたわら、自ら就職塾を主宰し、 直接学生への指導にあたる。就職本も多数執筆。就職情報サイト 「マイナビ」(http://job.mynavi.jp/)では、 イマドキの就活のノウハウを熟知した講師として、エントリーシート、面接、自己分析、 就活マナーなど、多方面から「才木流」の内定獲得術を伝授。著書に「自己分析の「正解」がわかる本」( 実務教育出版社) 「サプライズ内定」(角川マガジンズ)「面接担当の質問の意図」(マイナビ)など。