「想いがあるからがんばれる。好きなことを見つけたほうがいいよ、絶対に。」 #生き方コンパス Vol.7:山崎育三郎

「想いがあるからがんばれる。好きなことを見つけたほうがいいよ、絶対に。」 #生き方コンパス Vol.7:山崎育三郎

2020/09/04

#生き方コンパス

若干12歳にして主演ミュージカルでデビュー、大学在学中には約2万人の中から当時世界最年少で『レ・ミゼラブル』のマリウス役を射止め、その後も『ミス・サイゴン』、『モーツァルト!』、『エリザベート』など名だたる名作ミュージカルへの出演を次々と果たしてきた山崎育三郎。

現在、朝ドラ『エール』で演じているウインクひとつで女性を悩殺するプリンス・佐藤久志は、“ミュージカル界のプリンス”として華々しい経歴をもつ彼の、まさにハマり役といえるだろう。

一見、生まれながらの王子様。でも実は、変声期で思うように仕事ができない時期があったり、留学先でイジメにあうなど、チャレンジが多いからこその壁や辛い思いも数多く経験してきている。それでも「とにかくミュージカルと歌うことが好きだ!っていう想いだけ」でここまできたのだと、あの甘い笑顔をキラキラ輝かせながら彼は話す。

彼は今、どんな気持ちでこの場所にいるのだろう?
そんな思いで話を聞いてみると、そこには一歩踏み出すことを恐れない強さと、原点であるミュージカルへの今も変わらない熱い想いがあった。

ラッキーなんかじゃない。こんなに好きなんだから当然



ーー順風満帆に見える山崎さんですが、夢をかなえるための道は決して平坦ではなかったと思います。壁にぶちあたったり、挫折しそうなときはどうやって乗り越えてこられましたか?

山崎育三郎(以下、山崎):やっぱり、ミュージカルと歌うことが好きだ!っていう思いだけですね。中学のとき、自己紹介で「僕は将来ミュージカルスターになりたいです!」って言って笑われたんですけど、その頃からずっと「自分よりミュージカルへの想いがある同世代は日本にひとりもいない」って思ってました。

なんなら12歳で子役デビューしたときも「たぶん日本で一番ミュージカルが好きなのは俺だ」って思ってたし。なにしろ『レ・ミゼラブル』を3時間、アタマから最後まで全部覚えてましたから。


ーーすごい!!

山崎:“ひとりレミゼ”ができるくらい聞き込んで、それぐらい大好きで。それで19歳のときに『レ・ミゼラブル』の全国オーディションを受けたんですけど、その最終審査にジョン・ケアードさんという、昔からレミゼを見てる僕からしたら神様みたいな演出家がロンドンから来ていて。

で、審査曲だった『カフェ・ソング』を歌ったらジョンがものすごい喜んで、「この役はこの曲も歌うんだけど、今から1時間あげるから向こうで練習してくれ」「いや、僕すぐ歌えます!」「オー!この曲は?」「それも歌えます!」って、結局ジョンの前で5〜6曲歌ったんです。

そのときも「俺より好きな人はいないんだから、絶対に俺がマリウスをやるんだ」っていう気持ちでした。


ーーじゃあ、世界最年少で受かったときも、むしろ「こんなに好きなんだから当然」みたいな……。

山崎:そうですね、そんな気持ちはどこかありました。ド新人の大学1年生の、誰だか名前もわからない子が急に抜擢されたから、周りからは「ラッキーだな」とか言われたんですけど……。でも「いや、俺はこのためにずっとやってきた」と思っていたので、むしろ「やっとスタートラインに立てた」という感覚でしたね。

もちろんそこからはもういろんな演出家にご指導いただいて、僕のたった一言のセリフのために1時間稽古が止まったり、「もう帰れ!」って言われたりもするんですけど……でもそんなことを繰り返しながらも、とにかく好きだという気持ちがあったから乗り越えて来られたんだと思います。

主演のオファーを断って新しい世界に飛び込んだ



ーーその後も山崎さんは数々のビッグ・ミュージカルに出演したり、映像進出したりと、目標を次々と叶えていらっしゃるように見えますが、山崎さんの「夢を叶えるための秘訣」はなんですか?

山崎:今、目の前にあることに集中して努力するだけです。ただ、憧れだった『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『モーツァルト!』『エリザベート』(※)の4作品に出ることに関してはずっと夢だったので、子どもの頃から手帳に書いていましたね。ちなみに29歳までに全てに出演させていただくことができました。

※東宝4大ミュージカルとも言われ、絶大な人気を誇る。4作全てでプリンシパル(物語の中心となる登場人物の役)を務めたのは山崎さんのみ(2020年8月時点)。


ーーえ~~!すごいですね!

山崎:でも今はもう、「目の前のことにどれだけ集中して一生懸命挑めるか」。1年後の自分なんて、いつも想像もできていないです。

29歳で4つのミュージカルに出るという夢を叶えたときに、「次はミュージカル界をもっと盛り上げたい」っていう思いが出てきたんですよね。映画の影響とかもあって盛り上がってきてはいるけど、若い世代はまだ観に来てくださる方が少ないですし、なかなか身近なものになっていかない。だから、僕自身が新しいチャレンジをすることでミュージカル界も盛り上げられたら……と思って、映像の世界にチャレンジすることにしたんです。

といっても、まったくの別世界なんでどうなるかわからなかったし、やっと主演ができるようになったミュージカルのオファーを蹴ってまで映像の世界に飛び込むのは怖かったですよ。みんなからも「大丈夫か?」って心配されました。


ーー「
主演を蹴るなんてもったいない!」って思うのが普通ですよね……。

山崎:そうなんですよね。だからファンの方々もきっとビックリしたと思うし、心配もかけたと思います。でも結果的には『下町ロケット』という作品との出会いがあって、そこからドラマのオファーが続いて、好きだったディズニーの作品(実写映画『美女と野獣』の吹き替え)でキャスティングしていただいたり、音楽番組にも出演したりできるようになって。

さらに自分が理想としていたような流れで朝ドラにも出られて、しかも僕だけじゃなく(古川)雄大や小南(満佑子)ちゃんのようなミュージカルの後輩たちも出させてもらって。今、ミュージカル界で革命的なことが起こってるんです。

「その人にしかできない仕事」しか残らない時代になる



ーー山崎さんには明確な夢があったから、先の見えない状況でもがんばれたのかなと思うんですが、学生の中にはなかなか夢が見つけられない人もいると思っていて。

山崎:そういう人、多いですよね。でも、今までは勉強して大学に入って就職して……っていう決まった流れがあったと思うけど、これからはやっぱりその人にしかできないことじゃないと生き残っていけないというか、そういう仕事しか残らない気がしているんです。そうなると、やっぱり“好き“を見つけることが必要だと思うんですよね。

“好きなこと”って絶対みんなあるんですよ、“夢”はなくても。「好きなゲームがある」でもなんでもいい。“心が動くもの”って絶対あると思うし、それが取っ掛かりでもいい気がするんです。好きな女優さんがいるなら、「その人と共演するために俳優になろう」でも「マネージャーになろう」でもいいし。


ーーいろんな可能性が考えられますよね。

山崎:そうそう。好きなものがない人はひとりもいないはず、絶対に。これからの子たちは特に、絶対好きなことをやったほうがいい。今回のこと(コロナ禍)で時代が変わっちゃって、僕らの時代の常識は全部常識じゃなくなったと思うから。


ーー確かに、本当に今すべてが変わってしまったというか、前例のない環境の中で学生たちもがんばっていると思います。山崎さんからそんな学生たちへ『エール』を送るとしたら?

山崎:自分が好きなことを見つけてほしいし、見つけたらそれをとことんやってほしいです。すべては自分の行動で決まるし、今ある環境も全部自分が生み出しているものだと思うから。

僕は高校のときアメリカに3カ月留学したんですけど、初めは馴染めなくて、ずっと閉じちゃってたんですよね。でもあるとき、ダンスパーティーで思い切って飛び出してひとりで踊ったら、次の日から超スターになって(笑)、みんなから「ヘイ、IKU!」って話しかけられるようになった。そういう「一歩踏み出す勇気」みたいなものって、絶対必要なときがあると思うんですよね。


ーー自分が一歩踏み出すことで、人生が180度変わる経験って大きいですよね。

山崎:そうなんです。みんなに「やめたほうがいい」って言われたり、自分にとってちょっと怖いことでも、一歩踏み出すことで全然違う未来が待ってたりする。

僕がミュージカル界からドラマに一歩踏み出すときもひとりぼっちで怖かったけど、今こんな景色になってるわけじゃないですか。こんなこと、あの時は想像もしてなかった。だからやっぱり、一歩踏み出してみてほしいです。自分の想いがあるものだったら絶対にがんばれるから、むしろチャンスだと思って楽しんでほしい!

今までとは違う、人間くさい久志が見えてくるはず



ーー『エール』で山崎さんが演じる久志は、「プリンス」と呼ばれるなど山崎さんとの共通点も多く、これまでの経験を存分に活かせる役柄だと思いますが、改めて佐藤久志という役を演じてこられていかがですか?

山崎:たぶん、僕が演じるという前提で脚本を書いていただいているので、わりとキャラクターを山崎育三郎に寄せていただいたところもあるんじゃないかと(笑)。音楽大学に通っていたり、ピアノを弾いたり、イタリア歌曲やオペラのアリアを歌ったり……今まで自分がやってきたことがすべて詰まってるような役柄だったので、今の自分の集大成というか、自分のすべてをぶつけられる役を朝ドラという大舞台でいただけたのは本当にありがたいし、光栄ですね。


ーー“福島三羽ガラス”(窪田正孝、山崎育三郎、中村蒼)のシーンはいつもとても楽しいですが、窪田さんや中村さんと共演された感想は?

山崎:窪田くんと初めて共演したのは『THE LAST COP/ラストコップ』で、そのときは少年のイメージがあったんですけど。今回久しぶりに再会して、お芝居はもちろんスタッフやキャストのみなさんに声をかけながら現場のムードを作っていて、座長としての居方が本当に素晴らしいなって思います。

蒼くんは今回が初めてなんですけど、普段はすごいおとなしくて、優しい子なんですよ。2人とも年下なんですけど、2人の役が実は結構真逆で。蒼くん演じる鉄男は大将でケンカも強くて男くさい感じなんですけど、普段はどちらかというと窪田くんの方が男くさいので、2人が逆転している感じがあって、それも面白いです。


ーー古川雄大さんとのプリンス久志vsスター御手洗の発声練習対決シーンも最高に面白かったです!あのシーンはアドリブも多かったそうですね。


★プリンス久志VSスター御手洗の対決が話題になった第13週「スター発掘オーディション!」が9/7から再放送!

山崎:始めは台本に“声量対決”って書いてあったんですけど、僕が監督に「声量対決はちょっと視聴者に伝わりづらいので、発声対決にしたい」とお願いして。動きも「こんなふうに動きたい」って提案して、雄大にも「一緒にやってみようよ」って言いながら自分たちで作っていったところはありますね。


ーー他にこれまでで特に印象に残っているシーンはありますか?

山崎:やっぱり『ふるさと』を歌うシーンですかね。幼少期にお母さんと離れてしまったり、いろんなことがあったけど、森山直太朗さん演じる藤堂先生のおかげで歌に出会って光が射す、自分に自信が持てるものを見つけて変わっていくという子ども時代のエピソードのあとに、僕が当時のことを思い出しながら『ふるさと』を歌うシーンは、子役の久志(山口太幹)の芝居の影響もあって想いがグーッと入りました。

今までのキラキラプリンスの久志とはまた違う一面というか、そういう経験があったからこそ明るくポジティブな性格になったんだなと思わせるようなシーンで、すごく好きでしたね。


ーー久志はコロンブスレコードに所属が決まり、これから歌手としてどうなる!?……というとても気になるところからドラマは再スタートしますが、今後の見どころを教えてください。

山崎:これから戦中に入っていくので、久志としてはちょっと苦悩の時代に入っていくというか……。

久志のモデルになった伊藤久男さんは、戦時中(古山裕一のモデルになった)古関裕而さんが作った楽曲をたくさん歌ったんですけど、自分が歌を歌うことで戦地に兵隊さんたちを送り込むことになってしまったというか、それを応援しているような楽曲を歌ったことで、自分の中で葛藤があったり歌う意味について考えたり……いろんなことがちょっと苦しくなっていくんです。なので、今まで見えていた久志とは違う、より人間くさい部分がどんどん見えてくると思います。


ーーちなみに、裕一や鉄男にはそれぞれ恋愛エピソードがありましたが、今後、久志にも恋愛エピソードはありますか?

山崎:ありますね。あるけど……ちょっとそこは笑えるかな(笑)。僕も台本を読んで、「ウソでしょ!? 」ってビックリしたんで。


ーー楽しみにしてます(笑)! それでは最後に、作品のタイトルにちなんで、山崎さんが今いちばん『エールを贈りたい人』を教えてください。

山崎:う〜ん……。(少し考えて)やっぱり高校球児かな。僕も野球が大好きで、甲子園も毎年楽しみにしていたので、今回高校野球が中止になってしまってプレーできなかった高校球児たちにエールを贈りたい。古関裕而さんが作った『栄冠は君に輝く』(夏の全国高等学校野球選手権大会の歌)を伊藤久男さんが歌ってらっしゃったことにも縁を感じます。

でも、高校球児だけじゃなくて、全国の何かに打ち込んでる学生のみんなを応援したいですね。学生にとっては今この瞬間がすべてで、1年が大人とは比べ物にならないくらい大事だったりするじゃないですか。そんな学生たちみんなに、エールを贈りたいなって思います。

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PROFILE:山崎育三郎(俳優・歌手)

2007年ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。ミュージカル俳優および歌手として精力的に活動。TBS系ドラマ『下町ロケット』(2015年)で一躍注目を浴びて以降、舞台・映像問わず活躍の幅を広げている。連続テレビ小説「エール」に佐藤久志役で出演中。

▼連続テレビ小説「エール」 (月~土 8:00/NHK総合)公式サイト
https://www.nhk.or.jp/yell/

取材・文/落合由希
撮影/為広麻里
編集/就活スタイル編集部(まっつ)

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