面接の最後に「何か質問はありますか?」と問われたら、あなたはどうしますか? いわゆる逆質問です。 逆質問はするべきなのかどうなのか、また、するならどんな質問をするのかも悩ましいところでしょう。ここでは、逆質問する意味や目的、する際のポイントを押さえ、評価を上げる逆質問としてはいけない逆質問例を一次・二次・最終面接別に紹介します。
面接の最後に「何か質問はありますか?」と質問する機会をもらうことを、「逆質問」と言います。企業が逆質問の機会を設ける意味は、いったい何なのでしょうか。ここで、企業側・学生側に分けて解説します。
生産年齢人口が減少し新卒の3割が3年で離職する中で、より一層若手人材の活用、定着が企業存続のカギになってきています。そのため、企業側は入社前に自社をよく理解してもらうことを重要視して逆質問の機会を与えているのです。
企業は就活生に逆質問をさせることで、就活生の質問力がどれくらいなのかを見ています。たとえば企業は、逆質問を通じて「自己アピールにつなげられるか」「働く意欲はどの程度か」「自社で働くイメージができているか」「ビジネスマナーはあるか」など、就活生の質問力を見ているのです。
就活生は社会人経験がないため、自分がどんなことをやるのか、仕事のイメージが具体的になっていない人も多いでしょう。逆質問で企業について深く聞くことで、本当に自分にフィットした企業なのかを知ることができます。
就活生は、逆質問を通じて志望動機や自己PRにつなげることも可能です。逆質問は面接の最後に行われるので、面接官の印象に残りやすいもの。そこで、逆質問の中に自己PRや志望動機を入れ込んでおくことが重要になってきます。逆質問でうまくアピールできれば、面接官に入社意欲を伝えることができるでしょう。つまり逆質問は、やり方次第で面接の合格率をアップさせることができるのです。
逆質問をする際のポイントを解説します。「何か質問はありますか?」と聞かれたからといって、何でも質問していいわけではありません。逆質問のポイントを押さえて企業との相性を把握し、また、面接官にアピールできるよう準備しましょう。
面接には、一次面接から最終面接まで多くの段階があります。段階別に面接官が変わってきますので、質問内容も面接ごとに変えるようにします。たとえば最終面接で役員を相手に新入社員研修や業務内容について質問しても、相手はうまく答えられないでしょう。そもそも、役員にする質問としてふさわしくありません。そのため、段階別に逆質問を用意しておいてください。
逆質問では面接官が「はい」か「いいえ」で答えられる質問を避け、相手の回答によって事実がわかる質問をします。たとえば「人事異動はございますか?」と聞かれたら、面接官は「はい」か「いいえ」としか答えようがなく、就活生が聞きたい事実がわかりません。
事実がわかる質問として、たとえば「私はマーケティング職を志望しておりますが、入社して10年のキャリアプランを教えていただけますでしょうか?」と聞けば、入社後の具体的なイメージを把握できるでしょう。
逆質問では志望動機や自己PRを含めた質問をして、アピールにつなげます。たとえば、「私は学部生へのティーチングアシスタント経験から、リーダーシップ力を強みとしております。御社では、若いうちからリーダーシップを発揮する機会はございますか?」と質問するなど。さりげなく自己PRを絡めた質問をすることで、アピールにつなげられるのです。
逆質問ではビジネスマナーも見られています。ホームページに書いてある内容や説明会の内容に含まれているものなどを聞くことは、面接官にマイナス印象を与える可能性があるでしょう。緊張して、逆質問にふさわしくないことを聞かないように注意してください。
一次面接で聞くべき逆質問として、以下のような質問があります。
会社全体の雰囲気、社風や風土、会社のビジョン・ミッションに関する質問。制度に関しては、前向きな質問であれば聞いてみるのもよいでしょう。
一日のスケジュールの例や、仕事自体に求められることなど次の面接の時に生かせそうなネタを集める感覚で聞いていきましょう。
多くの一次面接は人事担当者が面接官となり、グループ面接の形式で行われるケースも少なくありません。他の人と質問が重複した時にも聞きたいことが聞けるように、いくつか質問を用意しておきましょう。また、アピールにつながる質問もしていきたいところです。なお、一次面接ではビジネスマナーを見られていますので、ホームページや会社説明会で説明している事項を聞かないように注意します。
では、実際に一次面接の逆質問例を見ていきましょう。
「御社で活躍している若手社員の方にはどのような共通点がありますか」
「◯◯様が体験された経験で、御社の社風を表していると感じたエピソードを教えてください」
「女性活躍推進について御社は◯◯に取り組まれていると伺っておりますが、その取り組みに対しての女性社員からの声などがあればお聞きしたいです」
「私はゼミでは税法を研究し、また、税理士科目を2科目合格した経験から、数字を見る力を強みとしております。財務部を志望しているのですが、配属の希望はどの程度通るでしょうか」
一次面接の逆質問NG例を見ていきます。ビジネスマナーにふさわしくない質問、他の就活生が行った質問と同じことを聞かないことがポイントです。
「貴社の前期売上高・純利益はどれくらいだったのでしょうか」
「新入社員の年収はいくらくらいでしょうか」
「先ほど質問があったことと同じなのですが、御社で活躍している若手社員の方にはどのような共通点がありますか」
二次面接で聞くべき逆質問としては以下のような質問があります。
部門の雰囲気、その部門が重視している指標などについての質問をすることで、志望部門・職種であることを伝えることができます。また、一次面接で聞いた社風や活躍人材について部門に絞って聞いてみるのもよいでしょう。
企業ビジョンを反映した仕事を行う上で難しい点や、働き方で他部門と求められるものの違い、求められる能力などについて聞くのもお勧めです。部門担当の方であれば、その方の価値観や経験を聞くのも具体例としてイメージしやすいでしょう。具体例を聞くと、自分の志望動機にプラスするなどして説得力を増すことができます。
二次面接では個人面接のケースが一気に増えます。二次面接で活用できる逆質問を紹介していきましょう。大手企業の場合は、一次面接に引き続きグループ面接になることもあります。一次面接と同様に複数質問を用意しておくと、その場で慌てずに済むはずです。
二次の面接担当は人事マネージャー、あるいは配属可能性のある部門のマネージャーなどが出てくるケースが多くなります。企業から仕事へ、より深く入り込んだ質問をすると好印象を与えることができるでしょう。
二次面接となれば、就活生の志望度がどのくらい高まっているかを見られます。実際に働くことを想定した質問をすれば、志望度の高さを伝えられるはずです。また、二次面接では業務を詳細まで理解できているかを問われます。仕事に対してざっくりした理解の質問をすると、「仕事のイメージがついていない」と思われ先の選考に進めない可能性が高いでしょう。
二次面接の逆質問例を見ていきましょう。
「私は◯◯(部門、職種など)を志望しており、一次面接ではキャリアプランについても伺いました。同じ職種を経験された◯◯様が『この仕事をやっていてよかった』あるいは『大変だった』と感じた出来事を教えていただきたいです」
「私は1年間の米国留学で〇〇力を培ってきました。私は〇〇(部門、職種など)部を志望していますが、御社で働く上でも◯◯力が求められると把握しております。〇〇部マネジャーの◯◯様が考える『実務で〇〇力が必要な場面』について教えていただけますか」
二次面接の逆質問NG例を見ていきます。働くイメージがついていない質問、アピールにつながっていない質問などはNGです。「会社や仕事が好きかどうか」の質問も、働くイメージを高めるための質問ではないので避けましょう。
「〇〇部の残業時間はどのくらいで、有給休暇の取得率はどの程度でしょうか」
「私は〇〇部への配属を志望しております。一次面接でご説明いただいた、〇〇部配属後のキャリアプランについてもう一度教えていただけますでしょうか」
「私は〇〇部か△△部のどちらを志望しようか迷っております。〇〇部マネジャーの○○様は、〇〇部のお仕事がお好きでしょうか」
最終面接で聞くべき逆質問としては、以下のような質問があります。
最終面接の逆質問では、経営理念や事業内容に関する質問をすることがお勧めです。最終面接の面接官は社長や役員が多く、経営者は経営理念を元に事業を運営しています。これまでの面接を通じて把握してきた経営理念と事業内容との関わりを質問したり、経営理念ができた経緯を質問したりすることで、最終面接にふさわしい逆質問ができるしょう。
最終面接では「次の面接」がありません。純粋な質問ではなく、伝えきれなかった自分の強みなどを混ぜて、うまく質問していくことが重要です。
最後の難関である最終面接については、「意志確認」「顔合わせ」と油断しがちです。確かに企業によっては、面接の判断を人事担当者や現場マネジャーに任せていることもあります。しかし、人材を重要な経営資源と考える経営者にとって「新入社員は自分の目でしっかりジャッジしたい」と考えるもの。ですから最終面接は、意外と落とされることもある難易度の高い面接なのです。気を引き締めて臨むようにしましょう。
最終面接の場合、社長が出てくることも多くなります。緊張してしまうかもしれませんが、入社させる・させないの判断を下す面接のため、逆質問も工夫を凝らすことが求められます。厳選した質問をぶつけてみましょう。また、アピール不足だったと感じる場合は、自己PRを織り込んだ逆質問をしてみてください。
社長や役員は、就活生がどれくらい社風になじめるかを重視しています。いくら能力が高くても、社風とマッチングしない人材は辞めてしまう可能性があります。最終面接に臨む前に、社風については改めておさらいし、社風に合う人材であることをアピールしたいところです。
最終面接の逆質問を見ていきましょう。
「もし入社させていただいたら、貴社の○○事業に携わりたいと考えております。○○事業は経営理念の△△につながることを教えていただきましたが、その理由について教えていただけますでしょうか」
「私は御社の『◯◯』(理念)に非常に共感しており、入社できた際にはぜひ体現できるような人材になりたいと思っているのですが、◯◯社長がこれまでの経験の中で、『理念を体現できた』と感じた出来事があれば教えていただけますか」
「御社がここまで成長してきた理由としては何が決め手だったと考えていらっしゃるのか、差し支えない範囲で構いませんので教えていただけますか」
「私は学生時代に起業を経験し、チャレンジ精神を強みとしてきました。御社は新規事業の立ち上げを予定されていると伺っておりますが、私が参加させていただく機会はあるでしょうか」
経営理念や事業内容に関する質問をするのは構いませんが、入社意欲と関係のない質問をしないように注意しましょう。事業の強み・弱みなど、これまでの面接のプロセスで聞くべきことも質問しないようにします。
「御社の主力である○○事業の強みや弱みを教えてください」
「競合他社であるA社と御社の事業内容の違いを教えていただけますでしょうか」
面接の最後で聞かれる逆質問。逆質問の意味やポイント、一次・二次・最終面接と面接の段階別で質問すべき内容と注意点、逆質問例を紹介しました。せっかくもらえる情報収集とアピールの機会を生かさずに、面接が終わってしまうのはもったいないでしょう。うまく逆質問をして、内定に一歩でも近づいていきましょう。
監修・文/山崎英理夫
人事コンサルティング歴4年、人事歴8年。人事コンサルタントとして教育研修のプログラム開発、人事制度診断等を提供。また、企業人事として新卒・中途採用に従事し、人事制度構築や教育研修の企画・運用など幅広く活動。この経験を活かし、人材関連の執筆にも数多く取り組む。
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