メガバンクを舞台に銀行員の過酷な仕事ぶりを描き大ヒットドラマとなった『半沢直樹』。銀行員だけでなく、多くの社会人が主役の半沢直樹に共感したのではないでしょうか。しかし、あのドラマで描かれていたことは、どこまで本当なのでしょうか。元銀行員の方にその実態を語ってもらいました。
「『半沢直樹』は全体的に見て、銀行の内部をとてもリアルに描いたドラマではありました。たとえば、金融庁検査。さすがに金融庁の人がファイルを投げつけたり、書類を改ざんしたりすることはあり得ませんが、金融庁検査が入った支店の尋常ではないピリピリした空気がよく描けていたと思います。ただ、5億円を融資した会社が倒産し、支店中が血眼になってその資金回収にあたるシーンは、ちょっとオーバーだと思いましたね。5億と言えば大金ですが、全員があんなことをしていたら、他の仕事に支障をきたします」。
「ドラマの決め台詞にもなった『倍返し』ではないですが、半沢直樹は同僚や取引先の人の気持ちを汲み取り、上司に対して立ち向かっていきます。しかし、実際の銀行であんなことをしたら行内の空気が悪くなるだけで、何の解決にもならないですね。銀行は良くも悪くも縦社会ですから、上司に面と向かって意見するということはあり得ません。ただ、中にはきちんと話を聞いてくれる上司もいますし、そうでない人もいる。それは個人差であって、銀行だからということではないんじゃないでしょうか? ただしノルマが達成できない時は、結構厳しく言われますね。また、出向になった人たちが『負け犬』のように描かれていましたが、それは出向先にもよりますし、銀行員になれば転勤や出向は当然あり得ることです。あれを見て学生さんが銀行員になりたくないと感じないよう、ぜひ『出向=負け犬』ではないということを伝えたいですね」。
実際に働いている人でないと分からない職場のリアルな空気。参考までに、その業界を描いたドラマや小説を見たり読んだりするのは、いいことですが、あくまでも虚構の世界だということをお忘れなく。
文●imago