うちの事務所は放送作家の養成スクールをやっているんですが、そこに1年間通った生徒だけが受けられるシステムになっています。なのでまず学校に入学する必要がありました。そこで授業に出て、課題をこなしつつ、やっていけそうだと判断されたら採用面接に呼ばれます。
僕の時は1クラス25人ぐらい、合計2クラスあって、スタートは全部で50人くらいの生徒がいました。そこから次第に来なくなる人もいて減っていくんですが、面接に進んだのが5、6人。合格して放送作家になったのは3人でした。
――かなり人数が絞られるんですね。面接はどんな内容だったんですか?
面接官は5~6人いたでしょうか。僕たち受ける側も5~6人いて、同時に面接されました。ほとんどの質問は社長がするんですが、その時はまず、好きなテレビ番組と嫌いなテレビ番組を聞かれましたね。あとは、好きなタレントと嫌いなタレントの名前を挙げるっていう。
――まずはテレビの話題からですか。でも、嫌いなタレントなんて正直に答えて、つっこまれたりするんですか?
誰の名前を答えたか覚えてないんですが、確か「おぉ……(頷く)」って言われました。
――そんな感じなんですね……
そこは雑談レベルというか、特に追求されることもなかったです。放送作家っぽい質問というと「嘘でもいいから、面白い人の名前を言ってみて」っていうお題も出ましたね。「嘘でもいいから」ってとこがポイントでしょうか。発想を見るために。
興味がないわけじゃないと思うんですが(笑)、採用面接の大喜利であまり笑いは起こらないんじゃないでしょうか。けっこう真面目な雰囲気ですしね。その後はすぐ、普通にそれぞれのプロフィールを聞かれました。カメラのバイトをしてたら「どんな写真を撮ってたんだ?」とか、ADから転職した人だったら「じゃあAD業務は大丈夫だね」とか。経歴とか特技についての質問です。この人を採ったらどんなことができるのか、事務所に入れる人間に幅を持たせたいってことなのかと。
その時で強烈に覚えてるのは、特技として「守護霊が見えます」って言いだす人がいて。みんな喜んじゃって「どんな霊がついているのか見てくれ!」って。そこから面接官たちの霊視が始まりました。で、彼も「(薄目で手をかざしながら)あなたの肩に40代の男性がいます」って。
落ちました。面白くて盛り上がったんですが……放送作家として適性があっても、うちの事務所に合う人材なのか、とか他にも要素があるそうです。
――なるほど、一概に面接が盛り上がったからといって合格するとは限らないんですね。
最後になりますが、放送作家になりたい人へ選考突破のアドバイスはありますか?
先程も言いましたが、最終面接まで進んでくるのは1年間のスクールを通して選ばれてきた人なわけで、全然ダメってことではないんですよね。放送作家養成スクールって課題も多いし、期間も長いしで、途中で嫌になっちゃう人も多いんです。だからセンスはもちろん「毎回課題をきちんと提出して、なおかつ出席し続けている人を採りたい」というのが方針としてはある、と聞いたことがあります。実際に放送作家になったら、多くの課題をコンスタントにこなしていく生活になるわけです。だから最終面接一本にかける、というよりもそれまでの授業で頑張っておくのが良いアピールになると思います。僕もスクール時代、宿題はちゃんと出してました。
放送作家事務所の面接の一例を教えてもらいました。1年を耐え抜くのがコツとは独特ですが、本当に放送作家になりたい人にとってはやりがいがありそうですね。テレビ・ラジオ業界に興味がある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
文:サクマ香奈