話し上手になるための8つのステップ ~会話のカギを握るのは聞くことにある~【世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力】 #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・まえれなです。
みなさんは話し上手になりたい!と思ったことはありませんか?
初対面の人と話す時や、プレゼンで大勢の前で話す時など、「もっと上手に話せたらいいのに」と感じる人は多いのではないでしょうか? 様々な実用書を読んで実践してみても、それでもなかなか上達しない....なんてことはありませんか?
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』の著者であるシン・ドヒョン氏は、話し上手になるということはどういうことか、以下のように述べています。
「話し上手」とは、単に話術に長けているというより、絶えず自分を省みて成長し、他人に関心を傾けて理解し、その場の状況を読み取る目を備えた、総合的な力を指す。つまり、「言葉の勉強」というのは、その境地に至ろうとして努力する過程のことだと言っていい。
話術に関する本はすでにたくさん出回っているが、そのほとんどは実用書だ。そのため、どうしても中身は単調になる。話し上手になるための努力の過程をすっ飛ばして、名スピーチの実例やテクニックの紹介に終始し、ただ言い回しの問題にとらわれているために、どんな意味を言葉に込めるのかという、最も肝心な点を見逃している場合が多い。
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』では、話し上手になるために必要な自分磨きのための8つのプロセスを紹介しています。ここではそのうちの1つを一部抜粋してお届けします。
第五章『傾聴』
相手の心を得たければ、まず開かせなさい。
相手から奪おうとするなら、まず与えなさい。
これが秘密の知恵であり、柔よく剛を制する方法です。
----------老子
----------引用文出典:『老子』
会話とは、話すことと聞くことを合わせたものだ。一般にうまく話すほうが大事だと思われているが、実はうまく聞くほうが重要だ。
面接のような特殊なケースを除けば、会話のカギを握るのは断然、聞くことにある。主に自ら進んで聞き役に回る人が、人間関係の中心に立つものだからだ。
あなたは話し上手な人になりたいと思うだろうが、よくよく考えてみよう。あなたが会いたいと思うのは、自分の話をよく聞いてくれる人ではないだろうか。というのは、誰でも聞き役に回るより、自分の話を聞いてほしいという欲求が強いからだ。
マーケティングの世界でも、消費者の欲求をしっかり把握することで成功できるように、会話においても相手の話したいという気持ちを汲み取って、聞き役になってあげられる人のほうが魅力的に見えるものだ。
老子は、「人はそうするのが当然だ」と説教しているわけではない。これは戦略の一つだ。相手の心を得ようとするなら、まず心を開かせなければならない。相手が十分に本音をさらけ出せるよう関心を注ぎ、安心できるように温かく包み込んであげることだ。相手があなたに本音を見せてくれるということは、つまりあなたがその人の心をつかみ始めたことを意味する。
奪おうとするなら、まず与えよ、というのがキーポイントだ。自分の耳を与えて、相手の言葉を奪い、心もつかみ取るのだ。あなたが聞いてあげればあげるほど、相手は話してくれる。あなたが聞くことに集中すれば、相手も話すことに集中し、あなたが心から耳を傾ければ、相手も心から話をしてくれる。
聞くことが話すことに勝り、話し手ではなく聞き手が心をつかみ取る。上手に話して相手の心をつかむことが剛の技であるとすれば、よく聞いてあげることで相手の心をつかむことは柔の技だ。剛と剛が争う世界で柔を選ぶことは、一種のフェイント作戦といえる。
これこそ老子が言うところの「秘密の知恵」に他ならない。
■実際に読んでみた感想
「一つの言葉には、語り手と聞き手の両方の人生が込められている」という本文に入る前の著者の言葉で私はこの本に出会えたことに感謝した。私達は日々、どんな時でも言葉を使って暮らしている。人々とコミュニケーションをとるとき、何か書類を提出する時などさまざまな環境状況において言葉を使わずに生活することはまずないだろう。
そんな時私達はいつの間にか何も考えず言葉を発していないだろうか。誰かと話をする時必ず語り手と聞き手という立場が発生する。その時にどういった解釈をするのかは人それぞれである。語り手の話す内容を必ずしも聞き手が肯定することはできないとしても理解することはできる。
そうしたことを改めて意識して賢者の知恵から学ぶことができるのがこの本である。今本屋に出ている話術に関する本はたくさんあるが、言葉の使い方を根本から変える方法を提示してくれる本は他に見たことがない。この本を読むことで、自分の言葉の使い方をふりかえり、自分と世の中を変えるために言葉を手段として使えるようになりたいと思う。(まえれな)
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』
定価 : 1,650円(税込)
頁数 : 224頁
ISBN : 978-4-7612-7488-7
発行日 : 2020年4月15日
■著者情報
シン・ドヒョン
人文学者。大学で哲学と国文学を専攻。幼いころから哲学を学び、東西の古典に親しんできた。世の中を変える勉強と自分を変える勉強は同時に進めるべきで、そうしてこそ本当の変化がもたらされると信じる。その第一歩として、“言葉の勉強”をはじめ、その成果を本書にまとめた。
ユン・ナル
ソウルで高校の国語教師を勤めながら、哲学をはじめとして人文学の勉強にもいそしみ、エッセイを執筆・発表している。他人の視線にとらわれず、新しく深みのある文章を書くために、日々努力している。
米津 篤八
朝鮮語・英語翻訳家。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に勤務。退職後、ソウル大学大学院で朝鮮韓国現代史を学び、現在は一橋大学大学院博士課程在学中。翻訳書に『言葉の品格』『言葉の温度』(光文社)、共訳書に『チェ・ゲバラ名言集』(原書房)などがある。