シンガー・yama「表現力は感性を磨くことで身に付けられる」 #学生新聞
幼少期から歌うことが好きで、生涯歌い続けていたいというyamaさん。一時、人前で歌うことを避けていたが、今では自分の思いを伝えるために、有観客でのライブやドキュメンタリー動画で自身のことを発信している。今回はアーティストとしての想いや表現力について伺った。
▼杉野遥亮さん、もーりーしゅーとさん、山下幸輝さんが登場!
学生の君に伝えたい3つのこと
表現力は感性を磨くことで身に付けられる
昔から歌うことが好きで、自宅で歌を録音したりしていることの多い子ども時代でした。自分には突出した才能がないと思っていましたが、歌だけは他人に認められたいという思いから幼少期にはコンクールに出たこともありました。しかし、他人と競わなければならないコンクールのステージに立ったとき、パニック障害に似た症状になるなど自分は人前で歌うことができないのではないかと思ってしまい、音楽から離れることもありました。でも、やっぱり自分には音楽しかないと感じ、音楽活動を再開することにしたのです。自宅で録音をし音源をアップロードするようになり、今のレコード会社から声がかかり、デビューすることができました。デビューするまでは自分のために歌っていましたが、デビューをしてからは曲を聴いてくださる方が元気になってほしいという気持ちで歌っています。
表現力というのは何度も練習したからといって身につくわけではなく、むしろ過去に体験したことから生まれるものだと思っています。表現力を鍛えるには、日頃の感情を分析すること、多彩な方々とコミュニケーションを図ることが大切です。日常生活を送る中で気になったことや心が動いたこと、逆に心が動かなかったことなどを日記や詩の形式でメモに残しています。
たとえば、悲しいと感じたときに、なぜ悲しいと思ったのかを分析し、音楽活動に活かしています。メモをしていると暗い内容が出てくることが多いですが、音楽などの形にしていくときは、「孤独だよね」とまとめるのではなく、最終的には光が差してくるような要素も追加させています。
もともと自分は、人に心を開かず一線を引いた状態で人と関わってきましたが、体育会系のマネージャーに連れられて挨拶や人との接し方を学んでからは、昔の友人などと久しぶりに会った際に、「明るい性格になったね」と言われることが増えてきました。マネージャーは、「今日のライブは調子が良くなかったね」などと嘘のない率直な言葉で接してくれる存在です。これまで「自分の色ではない」と断ることも多かったのですが、とりあえず1回やってみようというように、気持ちのありようも変化してきました。休みの日には人と話したり、詩集を読んだり、美術品に触れたりして感性を磨くようにしています。表現力を身につけようと思うのならば、外の世界に目を向けたり、多彩な人と出会ったりして、自分の“物差し”、つまり物や人を見る目を鍛えてほしいですね。
初めのころは作家さんやシンガーソングライターさんに楽曲を書き下ろしてもらっていました。ただ、詞は自分の内面から出た言葉ではなかったので、ライブでお客様を目の前にするようになって、自分の本当の想いを伝えたいと思うようになり、作詞・作曲をするようになったのです。また、この人のようになりたいという目標とするアーティストはいませんが、ロックやファンク、R&Bなど幅広いジャンルが好きなので、ジャンルを超越した存在を目指しています。他にも趣味で書いていた絵をアルバムのアナザージャケットや特典にしていますが、今後はグッズにしてみたいです。
学生時代は選択を迫られることも多いと思いますが、どんな選択でも他人に任せず自分自身で考えてほしいです。自分の選択なら間違いはないと思うので自分を信じて頑張ってください。
PROFILE
yama(やま)
SNSを中心にネット上で注目を集める新世代シンガー「yama」。2018年よりYoutubeをベースにカバー曲を公開し活動をスタート。2020年4月に自身初のオリジナルとしてリリースされたボカロPくじらが手掛けた楽曲「春を告げる」は、SNSをきっかけに爆速的にリスナーの心を掴み、あらゆるヒットチャートでトップにランクイン。現在の音楽シーンを象徴するアーティストの一人。
学生新聞2023年4月1日発刊号 https://gakuseishinbun.jp/
取材・文/田根颯人(中央学院大学4年)
取材/宮田紋子(津田塾大学4年)、八木彩花(上智大学4年)、岡部満里阿(国立音楽大学2年)、豊増萌(立教大学2年)、田根颯人(中央学院大学4年)、須藤覚斗(立教大学4年)、前田蓮峰(中央大学1年)