「ダイバーシティ」の意味とは? 日本でダイバーシティが注目されるようになった理由や施策事例を紹介!
ダイバーシティとは「多様性」や「多様化容認」という意味を持つ用語です。アメリカの差別解消運動をきっかけに始まり、近年は日本でもダイバーシティへの取り組みが活発になってきました。
ダイバーシティの意味と国や各企業の取り組みについて紹介します。
ダイバーシティとは簡単にいうと「多様化容認」への取り組みのこと
ダイバーシティ(diversity)とは、元々「(人種・文化・言語などの)多様性」という意味を持つ英単語です。
ビジネスの世界での「ダイバーシティ」は、「多様性」「多種多様性」といった意味合いで使われます。つまり、「年齢や性別、人種や国籍、宗教、性的嗜好・性自認、学歴や職歴といった、企業に関わりを持つ一人一人についての多様性を認める」ということを指し、ビジネス活動において多様性を重要視しますということにつながるのです。
ダイバーシティはアメリカでの差別解消運動が起源
ダイバーシティの考え方は、1960年代アメリカの人種差別・女性差別の解消運動が起源です。
当時のアメリカでは公民権運動などが盛んに行われており、その成果として公民権法が成立、米国雇用機会均等委員会が設置され、多様性を認めないことによる差別をしにくい社会へなろうとしていたのです。
反ダイバーシティによる差別を訴えやすくなったため、企業としては訴訟リスクを下げるための対策が必要になりました。当初は、「訴訟リスクを下げるための苦肉の策」という印象が強いダイバーシティ対応が多かったのですが、このことをきっかけにアメリカ社会は多様性容認へと舵を切っていくことになったのです。
日本ではダイバーシティ経営として定着しつつある
日本のビジネスシーンでは「ダイバーシティ」よりは、「ダイバーシティ経営」の名称の方が一般的です。
ダイバーシティ経営(ダイバーシティマネジメント)とは、経済産業省の定義によると
ーーー
「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」
引用:経済産業省 ダイバーシティ経営の推進ーーー
となっています。
「人材の多様性を活かし、個々人の能力が最大限発揮できるような環境を整える経営」ということになりますね。
ダイバーシティとインクルージョンの違いとは
ダイバーシティと同じように語られる言葉に「インクルージョン」があります。
インクルージョンは、ダイバーシティの後に出てきた言葉で「包括」「包含」という意味です。ダイバーシティは「多様性を認める」という意味で使われますが、インクルージョンは「多様性を認めることを大前提として、多様な個人の能力が発揮できる環境を整える」という意味で使われます。
先ほどの「ダイバーシティ経営(ダイバーシティマネジメント)」に近い言葉になりますね。
インクルージョンは、ダイバーシティと合わせて「ダイバーシティ&インクルージョン」とも言われます。
▶「インクルージョン」とはどういう意味? ダイバーシティとの違いは?日本における取り組みも紹介
表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティとは
ダイバーシティには、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティがあります。
表層的ダイバーシティ:生来からあるもの自らの意思で変えられないもの
表層的ダイバーシティは、生来からあるもので自らの意思で変えられないものです。
- ・人種
- ・年齢
- ・ジェンダー
- ・障害
- ・民族的な伝統
- ・心理的能力・肉体的能力
- ・特性
- ・価値観
- ・性的傾向
が代表的なものです。
深層的ダイバーシティ:表面的には同じに見えるため見落としがちなもの
深層的ダイバーシティは、表面的には他者と同じに見えるものの、実は内面には大きな違いがあるというもの。表面的には同じに見えてしまうために、問題が複雑化してしまう可能性をはらんでいます。
- ・宗教
- ・職務経験
- ・収入
- ・働き方
- ・コミュニケーションの取り方
- ・受けてきた教育
などが代表的なものです。
日本でもダイバーシティが重要視されるようになった理由
日本はアメリカに比べてダイバーシティへの反応が遅く、欧米では「当たり前」のことができていない状態が続いてきました。男女雇用機会均等法や女性管理職増加のための施策、障がい者雇用など、法整備や公的な支援はあるものの、多様性に対する意識よりも同質性に対するこだわりが強い状態が続いていたのです。
そんな日本の経営層が「ダイバーシティ経営」を強く意識するようになったのには理由があります。
- ・労働人口の減少
- ・企業のグローバル化
- ・価値観の多様化(消費行動の多様化)
- ・労働人口構造の変化
- ・雇用に対する意識の変化
少子高齢化に伴う労働人口の減少と労働人口構造の変化
少子高齢化に伴い、労働人口が減少しています。古くから想定されている労働環境は、「男性の正社員+パートの女性」に代表される生涯同じ会社に勤める男性が設定されていました。
しかし、少子化による新入社員数の減少、社員数の多くを占める団塊の世代・団塊ジュニア世代の高齢化と退職により、旧来のモデルでは立ち行かなくなってきているのです。
労働人口構造が変化することによって、今まではイレギュラーとされてきたケースの労働者にも対応する必要が出てきており、ダイバーシティへの対応に迫られることになった企業も多いのです。
企業のグローバル化により世界基準を求められるように
日本だけで企業活動をしている企業もありますが、規模の大小を問わず世界規模での活動が必要になっている企業はダイバーシティ対応が必要になります。
「日本企業だから、日本の企業文化に慣れてもらう」は通用しないのです。
価値観が多様化し労働者ニーズに合わせた対応が急務に
「ワークライフバランス重視」「企業に対する帰属意識よりも自分の成長」といった、古い時代の価値観から抜け出せない人は理解しにくい価値観を持った労働者の出現により、企業側も労働者ニーズに合わせた柔軟性が求められます。
労働者人口が減少している以上、良い人材に長く働いてもらうためには、人材マネジメントにおいても多様性を重視する必要が出てきているのです。
ダイバーシティ実現に向けた国の施策
ダイバーシティ推進のため、国も施策を打っています。
経済産業省:ダイバーシティ経営推進のために先進事例の共有
経済産業省は、ダイバーシティ経営推進のために先進事例を共有し、優れた事例に関して表彰するといった施策を打っています。
- ・新・ダイバーシティ経営企業100選/100選プライム
- ・ダイバーシティ2.0
- ・ダイバーシティ経営実践のための各種支援ツールの提供
- ・なでしこ銘柄
- ・女性リーダー育成
- ・女性起業家等支援
厚生労働省:雇用均等政策による法律面でのダイバーシティ対策
厚生労働省は、女性活躍推進法の制定・改正、育児・介護休業法改正など、性別や働き方にかかわらず、能力を発揮できる社会に向けた取り組みを行なっています。
たとえば、このようなことを行なっています。
- ・男女間の賃金格差解消のためのガイドライン制定
- ・パワーハラスメント対策を事業主の義務に
- ・フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインの策定
- ・均等・両立推進企業表彰(ファミリー・フレンドリー企業部門)
- ・テレワーク総合ポータルサイトの開設
ダイバーシティ実現に向けた企業の取り組み
ダイバーシティ実現に向けた取り組みを行なっている日本企業について紹介します。
資生堂:女性社員が8割強を占める会社としてのダイバーシティ&インクルージョン
資生堂は、女性社員が8割強を占める会社です。さまざまなライフステージを迎えてもキャリアを追求できる組織を目指しダイバーシティ&インクルージョンの取り組みをしています。
- ・第二の社内公用語として英語を採用
- ・東京レインボー・プライドへ参加(2015年から)
- ・work with Prideよりゴールド認定
参考:ダイバーシティ&インクルージョンについて カラフルでインクルーシブな資生堂に!
富士通:「誰もが自分らしく活躍できる」企業文化の醸成に向けたダイバーシティ&インクルージョン
富士通ではグループ全体としてダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいます。
- ・2008年にダイバーシティ推進室設置
- ・2017年度「女性のエンパワーメント原則」のCEOステートメントに署名
- ・2018年度「LGBTIに関する企業行動基準」に賛同
三井住友海上:「人財が競争力の源泉」の認識下でのダイバーシティ&インクルージョン
三井住友海上では、ダイバーシティ&インクルージョンをベースに「働き方改革」「健康経営」「プロフェッショナリズムの浸透による専門性の強化」を推進しています。
- ・在宅勤務制度
- ・無意識の偏見に対する理解とコントロール研修
- ・育児休業中の臨時就業制度
ダイバーシティへの取り組みは一朝一夕では成果が出ない
ダイバーシティは、多様性を認め活かしていくという意味合いで使われることが多いです。ダイバーシティへの対応といってもアメリカがそうであったように一朝一夕で成果が出るものではありません。
深層性ダイバーシティのようにパッと見ただけではわからない多様性もあります。自分たちの意識を変えるところから初め、ゆくゆくはあらゆる人が生きやすく働きやすい世の中になっていくようにしたいですね。
(マイナビ学生の窓口編集部)