「夢を持たなきゃいけない」なんて思わなくていい 。SUPER BEAVERが考える人生の選択 #セルフライナーノーツ

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人生は一度きり。だからこそ、誰のどんな言葉にも左右されることなく、自分のなかに信念を持ち、それに従って行動することが大事だとされています。信念とは「夢」とも言い換えられるかもしれません。しかし、その「夢」をなかなか見つけられないからこそ、今悩んでいるという人もいるのではないでしょうか。

「夢がなければダメですか?」 わたしたちの疑問に対して、SUPER BEAVERのみなさんは「そんなふうに思わなくてもいい」と答えてくれています。それを理由に、自分を否定する必要はないのだと。

文:蜂須賀ちなみ
 写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部

「できるまでやる」ことが実は一番難しい

――新曲の「突破口」、〈できるまで やればいいってこと〉というフレーズが印象的でした。そうは言っても、挫けそうになることってあるじゃないですか。

柳沢亮太(Gt):もちろんあります。この歌詞に関してはすごく考えたんですよ。「失敗は成功のもと」「だから若いうちは失敗したほうがいいよ」というのは、すでに成功した人にしか言えない言葉じゃないですか。何を失敗と捉えるかは人それぞれ違いますけど、自ら望んで失敗しにいく人なんていないし、失敗したくないからこそ、悩んだり、ちょっと臆病になってしまったりするんだと思うんです。

じゃあ確実に成功に辿り着く方法があるのだろうか、というと、「できるまでやる」以外のルートはないのかなと思ったんですよね。たとえば、「サッカーのリフティングを20回やる」という目標を立てたとしたら、19回までは全部「できていない」ということになる。もちろん、「やっているうちに足の使い方が上手くなった」とか、別の喜び・成功は生まれてくると思うんですけど、「20回やる」という目標を達成するには20回やる以外には道がないですよね。

途中で「やめたい」と思うときも来るでしょうし、「やめよう」と決めたものの、その決断をよしとできなくて、苦しむこともあるかもしれません。そう考えると、「できるまでやる」というのは一番難しいことだなと思います。

――SUPER BEAVERの活動を見ていると、芯が通っているように感じるというか。曲を聴きながら「こういうふうに生きられたらいいな」と思うときがあるんですよね。

柳沢:僕らとしても別に「自分はこうですよ」という話ではなくて。「自分はこうありたい」「こういう観点で物事を見たい」という願望・希望を口に出すことによって、自分自身に言い聞かせている部分が少なからずあると思います。

圧倒的な正解が見つかったとは、今でも思えていません。ただ、バンドの実体験を踏まえて(歌詞を)書いているので、5年前には言えなかったことでも今なら言えるというか。歳を重ねた分だけ、「こうであったほうがもっと素敵なんじゃなかろうか」、「同じ“悩む”にしても、こういう悩み方のほうがまだ楽なんじゃなかろうか」といった発想の切り替え・転換が少しはできるようになったんじゃないかと思います。

悔しさを悔しさのまま終わらせない行動を

――SUPER BEAVERは、2009年に一度メジャーデビューしたものの、2011年にレーベル・事務所を離れる決断をし、今年6月にメジャー再契約しました。インディーズに戻ってきたことをみなさんは「負けた」「落ちた」と表現しているけど、その後の活動によって、それが「あってよかった経験」に変わっていますよね。

渋谷龍太(Vo):自分たちにおいては、「悪かった経験を悪いまま終わらせるのは悔しい」という気持ちがすごくありましたね。自分がただ一人で悔しく思うなら全然構わない。ただ、その時間に携わってくれた人たちの時間まで悔しいものにさせちゃうっていうのが、どうしても許せなかったんです。

そう考えたとき、この経験をポジティブなものに変えていくしかない、「あの時間があったから今こういうふうに思えている」と言えるような未来にしていかなきゃいけない、という感覚はすごくありました。

――インディーズに戻ろうと決めたときは、どんなことを考えていましたか。

渋谷:あのときはまず、自分たち自身を守るために「今いる場所から逃げる」という行動から始めた気がします。自分が死なないように、腐らないようにするためには、逃げるのも、辞めるのも、休むのも、全然間違いじゃない。ただ、それをやったからには、その先で「結果的に勝った」と思えるような時間にしていかないとね、という感覚でした。

「今どうするのが最善なのか」なんて、きっとその場じゃ判断つかないんでしょうね。インディーズに戻ったとき、数年後の未来まで見えていたらもっと気持ちも楽だったと思うけど、当時「負けた」「落ちた」と感じたのは事実なので。もしも逃げなかったら、あのとき感じた悔しさは、悔しいのままで終わっていたと思います。

……いや、わからないか。別の選択肢を採った自分たちが、そののち、他に何かしていたかもしれないから。そこはたらればの話になってしまうので、わからないんですけど。

上杉研太(Ba):結局、抱えきれないほど抱えたって上手くいくわけはないから、選んだ1個を掴んで、その後自分がどうするか、という話になってくるんだと思いますね。自分の手足・脳みそを使って考えて。意地でも手繰り寄せる。切れるカードを切っていく。そこに労力と努力をかけていくしかないんじゃないかと思います。

今だからわかる「夢を見つける」ことの難しさ

――とはいえ、その「掴むべき1個」を見つけるのが簡単ではなくて。一昨年、渋谷さんにお話を伺ったとき、「若いうちに夢を見つけることが推奨されているけど、実際それって難しくない?」という話題になったじゃないですか。

渋谷:そうですね、はい。

――お三方はどう思いますか? 夢を見つけるのって難しいと思いますか?

藤原”32才”広明(Dr):まず、夢を持つことはとてもいいことだと思います。ただ、僕たちは単純に運がよかっただけで、それは稀なケースなんじゃないかと思っています。

僕は小学生の頃からドラムをやっているんですけど、たまたま彼(柳沢)が幼馴染だったり、「ドラム教えて」と言ったら教えてくれる人がいたり、親が応援してくれたり、先生が学校の教室を貸してくれたり……いろいろな人に助けてもらったんですよ。そうやってやりたいこと・好きなことを応援してくれる大人が僕の周りにはいたし、そこに対して、すごく感謝しているんです。

普通、小学生が「バンドやりたい」なんて言ってもなかなかできないと思うんですよ。だから、自分に状況に対しては「単純に運がよかった」と思うし、そういう環境にいられない人にとっては(夢を見つけるのが)難しいんじゃないかと思います。

柳沢:僕個人としては、「音楽をやりたい」「バンドをやりたい」という気持ちがずっとあったので、「夢を見つける」という作業をしていないんですよね。ただ、高3のとき、「お前はいいよな」と言われたのはすごく憶えています。そのときに初めて、誰もが「これになりたい」という明確な何かを持っているわけではないんだということを実感しました。

上杉:同じように、僕も妹に「(夢があって)いいね」と言われたことがあります。だけど、別にそれに対して、「いいだろ!」と思ったこともないというか。立派に就職して、お金を稼いで、生きているんだから、それでいいじゃんって思いますね。

だから僕は「夢がなくても、幸せだったらそれでいいんじゃないの?」と思っちゃいます。それでも「誰々はこういう道を生きているのに、僕はこれでいいんだろうか」と悩んでしまうのは、自分と周りを比較してしまうから、という気がします。

誰かと自分を比べてしまうのは普通のこと

――大学生世代が抱える悩みの一つに「夢に向かっている人がキラキラして見える」「その人と自分を比べて劣等感を抱いてしまう」というものがあります。

渋谷:それはめちゃくちゃ共感しますね。多感な時期だし、そんなもんだと思いますよ、絶対。「大学を出たら次は就職」というフォーマットが何となくできちゃっていて、「ここで自分の人生が決まってしまう」と思っちゃってもしかたがないような状況だとは思うんですよね。

だけど、自我が芽生えて、そこから何か自分のやりたいことを見つけて……ということをやるための期間としては、高校ないし大学にいる間のスパンというのは、僕は全然、長いとは思わない。むしろかなり短いなと思っています。

本当はもっと長い時間をかけていろいろなことを見つめなくちゃいけないのに、決断のデッドラインみたいなものが何となく決まってしまっているこの状況は、絶対にしんどいですよね。その気持ちはめちゃくちゃわかるし、その年齢で折り合いをつけるのは難しいと思う。

柳沢:でも折り合いって一生涯つかないような気もします。

これは僕個人の話ですけど……さっき「高3のときに“夢があっていいね”と言われた覚えがある」という話をしたじゃないですか。でも数年後、逆転現象を経験していて。大学を卒業して、20代に入ると、今度は「あ、君はまだ夢を追いかけているんだね」という空気が出てくるんですよ。

それは実際に言われたこともありますし、勝手に自分自身をみじめに思っちゃって、「23歳になったぞ」「俺は本当にアルバイトをしながらバンドを続けていていいのだろうか」「俺は何者でもないのではなかろうか」という劣等感を抱いてしまったこともあります。

――それは最終的にどこに落としどころを見つけたんですか?

柳沢:「どうして自分はそれでもバンドをやっているのか」と考えたときに、劣等感よりも「好きだから続けたい」という気持ちが勝った。それが一番でかいですね。

そう考えると……これはあくまで僕個人の意見ですけど、「夢に向かっている人がキラキラして見える」「誰かと自分を比べてしまう」というのは、結局、自分自身のなかに理想があって、そこに追いついていない自分みたいなものをすごく自覚してしまうからなんだと思います。

そうなると、結局自分次第の問題でしかないし、今の自分を許せるか/許せないか、という話な気がしていて。

――そうなると、「誰かと比較するのではなく、自分のなかに芯を持つことが大事」という話に戻ってくるとは思うんですけど……。

柳沢:はい、そうであれたら一番いいんだと思います。だけど、それが難しいんだとは思います。

一同:(頷く)

渋谷:それを言っちゃうとマジで救いがなくなっちゃいますからね。「それがあるから頑張れる」の「それ」が見つからなくてみんな悩んでいるわけで。

柳沢:ねえ。

渋谷:そういうものと出会えるなんて、マジで稀だから。まだ出会えていないということに対して、焦らせるような風潮はかなり怖いなぁと思いますね。結局は、出会えていないのが普通だと思いながら、いろいろなものと向き合いながら過ごしていく時間を大事にしていくのがいいんだと思います。だから「夢を持たなきゃいけない」なんて思わなくていいし、もっと楽でいい気がしますね。

――最後に主な読者層でもある学生へのメッセージをいただこうと思っていたのですが、今日のお話を聞くと学生に対してだけ言葉をいただくのも、ちょっと違う気がしていて。 

渋谷:……(学生に対して)かけられる言葉は、実はないんですよね。個人の人生を尊重すると、やっぱり無責任なことは言えないし、「夢は絶対叶う」とか「努力していれば大丈夫だよ」なんて僕の口からは絶対に言えないから。

だから「一緒に頑張っていきましょう」としか言えないですね。前に引っ張ることもできなければ、後ろから押してあげることもできない。俺らも必死にやれることをやるので、いち人間同士として、一緒にやっていきましょう。

編集部:ゆう

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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