「めんどくさい」は一番のラッキー。武田真治を形作った経験と知恵 #セルフライナーノーツ

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どんなことにも挑戦してみるのが大事。そうは言っても、失敗するのが怖いと思ってしまったり、最初にまず何をやるべきなのかがわからなかったり……。考え事でがんじがらめになり、なかなか行動に移せない人もいるのではないでしょうか。

芸能活動30周年を迎えた武田真治さん。サックスプレイヤーとして、俳優として、バラエティタレントとして、幅広く活動する武田さんのモチベーションになったものは? これまでの活動で実感した「成長のきっかけ」とは? アルバム『BREATH OF LIFE』のリリースを記念して、お話を伺いました。

文:蜂須賀ちなみ
 写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部

高校3年生で芸能界入り、お弁当欲しさに活動の幅を広げる

――『BREATH OF LIFE』、どんなアルバムになったと感じていますか?

武田真治:「サックスのアルバムってどんなの?」「小難しかったら嫌だな」と思われるかもしれないんですけど、インストゥルメンタルアルバムとしては、かなり聴きやすいアルバムなんじゃないかと思います。小難しい雰囲気になることだけは避けたかったんですよね。なるべく自己満足にならないように、ポップでキャッチーな曲を多く作ったつもりです。

――武田さんのサックスといえば、バキッとした音色のイメージが強いですが、「Deep Breath」は一味違う音色で。これもまた素敵だなと感じました。

あ~、よく気づいてくれました! これが唯一静かな曲かもしれないですね。他には、もちろんジャズっぽいことをやっている曲もありますし、EDMサウンドの曲もあれば、ファンキーな曲、ゲストボーカルのShihoさんに唄ってもらっている曲もあって。どんなシチュエーションでも聴けるアルバムになったのではないでしょうか。

あと、「lux illumina」はNHK「ニュースきょう一日」のオープニングとエンディングで使われている曲なんですよ。きっと世の中のほとんどの人は知らないんだろうなぁ……あれを僕が吹いてるってこと(笑)。

――ここでアピールしておきましょう(笑)。武田さんがサックスを始めたのは中学生の頃。高校生のときには、校外でのバンド活動も積極的に行っていたそうですね。

僕が高校生の頃、1980年代後期には、ホコ天ブームというものがあって、歩行者天国でバンドが演奏をするのが流行っていたんですよ。そこで出てきたミュージシャンがメジャーレーベルと契約し、芸能界のお仕事もするようになる、という道筋があって。その流れに乗り遅れたくなかったから、勉強そっちのけで、一生懸命サックスばっかりやっていましたね。

僕の世代は、確か、日本の人口が一番多いんですよ。だから大学進学が人生設計の大前提で、しかも両親の願いとして「いい大学に行ってほしい」というのがあったので、高校は一応進学校でした。「あなたの世代はすごく競争率が高いから、高校2年生から受験勉強を始めなさい」と(両親から)言われていたんですけど、僕は「やだ!」と言っていました(笑)。日常会話で微分積分が出てくることってないじゃないですか。受験が終わったら忘れるような知識を、一時的に無理矢理憶えるなんて、なんだか無駄に思えてしまったんですね。

「だったら、若いうちに身体に憶えさせたいものってなんだろう?」と考えると、僕にとってはサックスでした。3歳からピアノをやっている人と高校に入ってからシンセサイザーを始めた人では、やっぱりテクニックの開きがあるでしょ? そういう「逃したな」と思うような経験をもうしたくなかったというか。だから今はサックスをやるんだ!という気持ちでした。

――その後、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得し、芸能界入りした武田さん。『BREATH OF LIFE』は芸能生活30年を記念したアルバムとのことですが、そもそも、30年続くと思っていましたか?

いや、思ってなかったですね。最初は、24歳ぐらいまでしかイメージできていなくて。そこから先は……ビジョンがないままでしたね(笑)。

こういうインタビューでも「幅広く活動されていますよね」「どうしてそうなったんですか?」と言っていただくことがあるんですけど、元々は、現場に行けばお弁当が出るからで(笑)。最初の頃はお給料が低くて、超貧しかったから、お弁当がすごく貴重だったんですよ。

始まりはシンプルに、ただただ「食べるため」でした

挑戦すべきはバカらしいこと。失敗しても笑い話が増えるだけ

――結果的に、高校時代の自分が望んだ通り、サックスを仕事にできている現状があるかと思います。武田さんは「好きなことを仕事にする」ことに関して、どのように考えていらっしゃいますか?

好きなことが仕事になることほど、幸せなことってないですよね。でもね、すぐにそうなれなくてもいいと思うんです。

俳優さんとか、ロックバンドとか、アスリートとか、若くして夢を叶えちゃう人たちって一定数いるし、そこに対して劣等感を抱いてしまうこともあるじゃないですか。だけどそういう人たちは、神様が時代に送り込んだ生きるお手本だから、自分とは同じレベルで考えないほうがいいと思っています。

――ご自身も、夢を叶えた側=周囲の人に羨ましがられる側だったのでは?

確かに、二十歳ぐらいの頃はチヤホヤされていました。だけどね、しっぺ返しが来たんですよ。若くして輝いている人たちのなかには、輝きながらも、地に足のついている人もいます。だけど僕の場合はふわふわしていて、半端だったんです。

きっと、そういう悩み(=若くして夢を叶えた人を見て劣等感を抱く)って、若いのに高級なお寿司屋さんに行っている人を見て、悔しくなるとか、そういうことだと思うんですよ。だけど、そのなかには、寿司の味なんてわかってないやつもいます。僕がそうでしたから(笑)。

そのうえで思うのは、やっぱり、自分のやりたいものにストレートに挑戦してみるのが大事かもしれないということ。

――自分と周りを比較するのではなく、自分の本音に耳を傾けることが大事だということですね。

「何をしたらいいのかわからない」という人もいるみたいだけど、それは多分嘘。本当に好きなことは、こっそりどこかに持っていて。だけど、それを自分の人生の選択肢に入れていいのかわからないから、他にも変なものを並べて「どれにするべきだろう」なんて言っているんだと思うんですよ。

以前、明石家さんまさんがテレビで言っていた言葉で、いいなと思ったものがあったんですよ。選択肢を1個、2個、3個、4個、5個と並べていくことを、漢字違いで「御託を並べる」(五択を並べる)と言っていて。そういう状態になったら、もう迷っているということなんですよね。

大学は人生の選択肢を広げるために行くものだとよく言うけど、僕は、広げないで、ストレートに進むのも大事だと思います。実際、僕の世代は高卒で銀行に勤めることができたんですが、その4年後に大卒の連中が就職する頃にはバブルがはじけて就職難だったんですよ。未来のことなんてわかりませんからね。

だから、最初に思いついた1個目の夢に挑戦してみるのがいいんじゃないんですかね。もっと言うと、今の自分が一番バカらしいと思うこと。

――バカらしいと思うこと?

はい。「スポーツ選手になりたい」でも「アイドルになりたい」でもいいですけど、なんとなく憧れていて、できたらいいなと思うようなことってあるじゃないですか。で、それって大概、できないと思っている。そういうものをあえて実行に移して1個1個潰していくところから始めてみるといいと思います。

失敗しても、思い出の引き出しに笑い話がポンと1個入るだけですから。「やってみてダメだった」経験があればちゃんと諦められるし、それをやれている人に尊敬も生まれるので、なにも損しないんです。

一番みっともないのは、将来、本業の人を目の前にしたときに「俺もあのときオーディション受けていれば、今頃共演していたんだけどな~」と言うこと。それよりも、「実は俺もオーディションを受けたことがあって、これがそのときの映像なんだけどさ、ひどいよね~(笑)。やめてよかった~、ハハハ」と言える人のほうが魅力的です。

やった失敗より、やらなかった後悔のほうが、後から後から膨らんじゃうんですよ。「今の俺、本当はこんなはずじゃないのに」という気持ちは、自分の中で広がっていってしまうもの。こんなはずじゃない、ここにいるべきじゃない、こいつらと一緒にいるべきじゃない。そんなふうに思いながら食べるご飯は全部不味いし、そういうときは、人に何をされても感謝できないんです。

知恵がその人の価値になる。だからこそ転がり始めるのが大事

――一つを選ぶことは他を捨てることでもあるから、「本当にこれでいいのか?」という不安や恐怖から、なかなか決断ができないという人もいます。

なるほど。でもね、何か1個ですっごい成功したら、そのとき選ばなかったことにも、あとから手をつけられますよ。

俺も別に、北海道から出てきたときは、自分の夢の中に「俳優業」なんて全くありませんでした。で、いざやってみると、「めんどくさい」「悔しい」という感情が出てくるんですよ。めんどくさいとか悔しいって思えたらラッキーです。そこから「もうちょっと要領よくやれないかな」「もっとうまくなりたいな」と考えるようになる。

それで、次の機会にはちょっと上手くやれるようになる。その次の日にはさらに……ということがずっと続いていく。

――やっているうちに学習し、めんどくささは改善されていくと。

めんどくさいと思っていたことができるようになるって、すごく楽しいんですよ。それに、ある程度うまくやれるようになると、今度は、別の仕事が来るようになるんですよね。

知識というものは、ノートブックを開くだけでも得られるかもしれません。だけど、実際に行動に移すとね、知恵がつくんですよ。その知恵が、人としての価値になってくるんです。

そこまで来るともう、俳優業を最初からやりたかったかどうかなんて、どうでもいいですよね。だから、「望んだから経験する」とか「望まないから経験しない」とかじゃなくて、「とりあえず転がり始める」ことが大事だと思います。

――今日話していただいた武田さんなりの人生哲学は、もちろん一朝一夕で生まれたものではなくて。苦い経験もしたからこそ、こういう考え方になったんですよね。

そうですね。名前を知ってもらえるようになったあと、精神面も含め、体調を崩してしまい……。そのときに自分なりに苦労して、そこで初めて「人のことをもっと尊重しよう」「毎日を大切に生きよう」と思えるようになりました。考え方が全然変わりましたね。

身体を鍛えるようになったのも、「将来こうなりたい」という夢や希望からではないんですよ。自分が体調を崩したことによって空けてしまった穴、そしてその穴が自分以外の誰かで簡単に埋まってしまうことの現実。そこに対する悔しさが僕をずっと走らせてくれたっていうのは正直あります。

ただね、もしも、あの頃の自分に「お前、このままだと体壊すよ」と伝えられたとしても、そうしてあの時期を上手く回避できたとしても、僕はそれを選ばないと思います。なぜなら、今のほうが健康だし、今のほうが充実しているし、あの頃がなければこうはならなかったと思っているから。

大学生の方のなかには、「とにかく楽しいという感情だけが先に欲しい」と思う人もいるかもしれないけど、もしかしたらそれは間違っているかもしれない。ネガティブでもなんでも、感情が動くものに対して向き合って、一つ抜けたとき、人は初めて進むことができると思うんですよ。

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