成功の形は一つじゃない。フレデリック 三原健司、前向きでいられる理由とは #セルフライナーノーツ

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人が成長するためには、目標を設定し、そこに向かって努力を重ねることが大事だと言われています。とはいえ、最初に設定した目標を達成できなかったとき、成し遂げられなかった自分がダメな人間に思えてしまい、落ち込んでしまう人もいるのではないでしょうか。

心が挫けそうになったとき、わたしたちは、どのようにモチベーションを保てばいいのでしょうか。フレデリックの三原健司さん(Vo/Gt)に、物事を前向きに捉えるための秘訣を伺いました。

文:蜂須賀ちなみ
 写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部

「好きなことで食べていきたい」とミュージシャンに

――高校卒業後、音楽の専門学校に進学したということは、そのときにはすでに、音楽の道に進もうと決めていたんですかね。

三原健司さん(Vo/Gt):はい、進路はわりと早い段階から決めていましたね。高校生のときに「好きなことをして食べていこう」と決めたんですよ。唄うのが好きだったから、「音楽に携わる仕事がしたい」「できればミュージシャンになりたい」と思っていたんですけど、とはいえ、そのためにどういう道を歩んでいったらいいのか、わからなくて。そこで専門学校に入ることにしました。

――進路選びで迷わなかったのは、やりたいことが定まっていたからかと思いますが、一方、学生のなかには「選択肢が多すぎて何を選べばいいのかわからない」という悩みを抱えた人もいます。

その気持ちもわかりますし、そもそも、選択肢が多いということは好奇心が強いということだから、決して悪いことではないと思います。

とはいえ、選択肢がどれだけ多くても、好き嫌いってあるじゃないですか。なので、「自分の好きなもの/嫌いなものはなんだろう?」と考えてみることを、第一歩として始めてみたらいいんじゃないんですかね。そこから好きなものについて考えていくなかで、「これなら仕事にしたいかも」と思えることが見つかると思うんですよ。「仕事にしたい」とまでは行かなくても、「これなら毎日続けられる」というものは出てくるだろうし。

――好きなことを仕事にするメリットはなんだと思いますか?

モチベーションを保てることですね。好きなことを仕事にした場合、それを嫌いになることって絶対にないじゃないですか。

――そうでしょうか? 今まで知らなかった苦しさを知り、離れたくなるケースもあるかと。

確かに、ときには「やりたいこと」だけではなく「やらなければならないこと」に向き合うことが必要な場面も出てきます。だけど……自分の場合、それを苦だと思ったことがないですね。「やらなければならないこと」があることによって、「やりたいこと」がより魅力的に感じられるから、その過程も全部楽しめちゃうというか。

目標を達成できなくても、積み上がっているものは確かにある

――「やらなければならないこと」のなかには地道な努力も含まれると思いますが、それをサボりたくなる瞬間はありませんか?

あんまりないですね。それに関しては、物事を長期的に見るようにしています。

たとえば、「体脂肪率10%を切ろう」という目標で筋トレを始めて、それなのに、体脂肪率11%で終わってしまったとするじゃないですか。それは「目標を達成できたかどうか」で考えると、「できなかった」ということになるんですけど、その過程でやったことは何かしらに活かされるはずなんですよ。10%を切ることはできなかったけど、筋トレをしたおかげで他のスポーツが得意になった、みたいな。

それってつまり、積み上がっているものはちゃんとあるし、無駄にはなっていないということですよね。そうすると、目標が達成できなかったとしても、「1ヶ月で結果が出なかった」「だけど1年単位で積み上げればいけるかもしれないから、まあいっか」ぐらいに思えるようになるんです。

僕の場合はそれもあって、積み上げる過程自体を楽しめているのかもしれない。

――それはいい考え方ですね。全部が身になると信じられているということだから、「挫折」という概念がなくなる気がします。

挫折経験が多かったからこそ、こういう考え方になったのかもしれないですね。元々物事を深く考えるタイプではなく、「まずは行動だ」というタイプなので、上手くいくことばかりでもないんですよ。

失敗して、失敗して、失敗して……だけどそのなかで「成功の形は一つじゃないんだ」「別の形の成功もたくさん転がっているんだ」と気づけたというか。そういう経験が自分を変えてくれて、結果、今みたいな考え方になったのかなと思います。そう考えると、過去の自分が「失敗」と思っていたものは、実は「挑戦」だったんだと思いますね。

フレデリックはお客さんから「次は何をやってくれるんですか?」「楽しみにしています」と言ってもらえることが多いんですけど、それは、僕らの「挑戦」をみんなが楽しんでくれているからなんじゃないかと思っていて。

その「何かやらかしている感じ」は、バンドとしても大事にしているんですよね。おもしろいか/おもしろくないかで判断しているところはずっと変わってないですし、遊び心は常に持っておきたいです。

コロナ禍で改めて考えた芸術の役割

――フレデリックは9月22日にEP『ASOVIVA』をリリースしました。新曲は4曲ともコロナ禍で制作したそうですが、緊急事態宣言以降、ミュージシャンとしてどんなことを考えていましたか?

一番に思ったのは、「俺らは(現状を)嘆く側ではない」ということで。

僕らのバンド名は、絵本の「フレデリック」から取っているんですよ。その絵本は、フレデリックという野ネズミの話で。他の野ネズミが冬眠に向けて、食べ物や寝床を確保しているなか、フレデリックはずっとぼーっとしているんです。だから他の野ネズミが「何してるの?」って訊くんですけど、そうしたらフレデリックは「言葉を集めているんだよ」とか「音を集めているんだよ」と答える。ずっとそんな感じだから、フレデリックは変わり者として扱われます。

だけど冬眠が始まって、最初のうちは食べ物もあるから楽しく過ごせるんですけど、やがてそうではなくなってくるんですね。そのときフレデリックが動き出して、集めていた言葉や音をみんなの前で披露する。それによって、みんなの心が温かくなるんです。

そういうふうに、言葉や音楽の面白さ、芸術の必要性を説いた絵本なんですけど、俺らはそこに惹かれて始めたバンドであって。そう考えると、僕らが初めにやるべきことは、やっぱり音楽なんですよね。

――健司さんとしては、芸術は、人に何をもたらすと考えていますか?

……難しいですけど、芸術があることによって、喜びの種類が増えるなぁとは思っています。

上京する前に、和食のお店でバイトをしていたんですよ。和食って、盛り付けのしかたとか、見映えによる美をすごく大事にしているんですけど、それもある意味芸術ですよね。量はそんなに多くないから、ただお腹を満たしたいんだったら、他の料理を選んだほうがいいんですよ。それでも人が和食を食べるのは、きっと、「食べる」だけでは満たせない喜びを感じたいからで。

だとしたら、もしも世界から芸術を取っ払ってしまったら、いったいどうなるんだろう?と僕は思います。ちょっと言葉にしづらいですけど、そういう意味で、芸術は大きな役割を果たしているんじゃないかと。

できなくなったことよりも、できるようになったことに目を向けたい

――フレデリックの場合、作詞作曲をしているのは三原康司さん(Ba)です。今回の新曲を受け取ったとき、健司さんはどう感じましたか?

康司が曲を書くうえで大事にしているのは、どれだけ表現が皮肉めいていたとしても、最後には絶対に救いの手を差し伸べることだと思っていて。それがコロナ禍によって、より色濃く出てきたんじゃないかと思っています。僕としては、そのメッセージを感じ取ることを大事にしながら、4曲唄ったという感じですね。

「SENTIMENTAL SUMMER」は夏の曲ですけど、自分たちにとって夏といえば、やっぱり夏フェスです。夏は僕たちにとっての青春であり、バンドの成長に必要な期間。それが失われたのは悲しかったし、だからこそ「またいつか取り戻すんだ」という気持ちがこの曲には込められています。

これってバンド以外にも当てはまる話で。たとえば、スポーツする人にとってのオリンピックも、野球をする人にとっての甲子園も、失われた夏ですよね。「SENTIMENTAL SUMMER」も、他の3曲も、この期間がなかったら生まれていなかったかもしれない曲です。

――初回盤のDVDや、音源の5~7曲目(※7曲目の「終わらないMUSIC」は初回盤のみ)には7月に行われたオンラインライブの模様が収録されていて。これもまさに、この期間だからこそ生まれたものですね。

僕たちは、生のライブとオンラインライブは別物だと捉えているんですよ。音量を上げても、部屋を暗くしても、生のライブと同じ快感をオンラインでは味わえない。その代わり、オンラインにはオンラインのよさがあるんですよね。

それは、自分で(ライブを観るときの)環境を決められること。スピーカーで大きな音で聴くこともできるけど、イヤホンやヘッドホンをして、細かい音を聴くこともできる。アーカイブ配信がある場合は、朝でも、昼でも、夜でも、好きな時間帯にライブを観ることができる。

そこからオンラインならではの楽しみ方を考えていった結果、7月のライブに関しては、アコースティック編成でやってみることにしました。

フレデリックは普段ダンスミュージックをやっていますけど、オンラインライブだと、そのなかにあるメロディのよさ、歌詞のよさを細かく聴いてもらえるんじゃないかと思ったんですよね。

――今話していただいたことは、序盤の内容にも通じていますね。コロナがあって、当初の想定通りの活動はできなくなったけど、この状況による不自由さではなく、新しく生まれた自由のほうに目を向けるのが、フレデリックというバンド。

そうですね。僕らも今、模索しながら活動していて。生活様式が変わっていって、何が正解かわからない時期だけど、だからこそ、自分なりの正解を見つけることが大事だと思うんですよ。

今言っていただいた通り、不自由になったことももちろんあるけど、この状況による利点もどこかに落ちているはずで。学生のみなさんにも、それ(=新たに生まれた可能性)を見つけることに時間を費やしてもらいたいなと思います。


編集部:ゆう

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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