やりたいことを探し出す努力が大事。ペンギンラッシュ 望世が語る、経験と知識の価値 #セルフライナーノーツ

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一度しかない人生。何か物事に打ち込んでみたいけど、そもそもやりたいことが見つからない。そんな悩みから、学生生活を心から楽しめていない人、卒業後の進路を決めきれずにいる人も少なくないのではないでしょうか。

9月2日にアルバム『皆空色』をリリースし、メジャーデビューした4人組バンド・ペンギンラッシュ。メンバーの望世さん(Vo/Gt)は今年3月に大学を卒業したばかりなのだそう。学生に一番近い先輩として、現役学生に対するアドバイスをいただきました。

文:蜂須賀ちなみ
 写真:郡元菜摘
編集:学生の窓口編集部

メジャーデビューによって叶った夢

――メジャーデビューおめでとうございます。改めて今の心境を聞かせていただけますか。

望世さん(Vo/Gt): 今回、ペンギンラッシュはビクターエンタテインメントというレーベルからメジャーデビューするんですけど、わたし、高校生のときからビクターに入るだろうなって思っていたんですよ。高校生のときに授業で書いた「二十歳の自分への手紙」みたいなものにも「ビクターからデビューする」と書いていたくらいで(笑)。

わたしの好きなアーティストにはビクターに所属している人が多くて、なんとなく「入るならここ以外ないだろうな」と思っていたんですね。だから、メジャーデビューがうれしいというよりも、ビクターから作品を出せるのがうれしいというのが一番の気持ちです。

――高校時代からの夢を叶えられた秘訣はなんだと思いますか?

精神論になってしまいますけど、今考えると、「ビクターからデビューする」とずっと思っていたんですよね。「夢は思い続ければ叶う」ってよく言いますし、わたしはどちらかというと、その言葉を疑っていたタイプだったんですけど、今振り返ると、ブレなかったことが大事だったんじゃないかと思います。

――望世さんは今年の3月に大学を卒業したんですよね。

はい。創造表現学部という、文章を書くことに重きを置いた学部に通っていて、ノンフィクションのゼミに入っていましたね。最後にドキュメンタリー作品を完成させて、卒業という形でした。大学生活を通じて、自分が興味を持っている分野の方々、専門知識のある先生方と関われたことは、自分にとっての財産になりました。

――同世代のご友人とは連絡をとっていますか? 大変な思いをされている方も多いんじゃないかと思いますが。

そうですね。高校時代の同級生と今でも月一ぐらいで連絡を取り合っているんですけど、やっぱり、みんなつらそうだなっていう印象はありました。入社したのにまだ一度も同僚に会えていないとか、会社をクビになってしまったとか。

4月になって新しい生活が始まるタイミングでこういう事態になってしまったので、「何をしたらいいかわからない」と悩んでいる子がたくさんいましたね。

メジャーデビューによって叶った夢

――ペンギンラッシュとしてはどうでしたか。

わたしたちに関しては、ちょうど制作時期と被っていて、やるべきことがたくさんあったので、「何をしたらいいかわからない」というふうにはなりませんでした。時間ができた分、より制作に打ち込むことができたし、わりと楽しく(外出自粛期間を)過ごせていた気がしますね。

ただ、バンドにとってはライブが一番の楽しみでもあるので、それができないことによるストレスはありました。そこから、「ライブができないなら何をしようか」という話し合いをしていって。今はSNSもありますし、バンドの動きを見せられる方法はいろいろとあるので、「自分たちのメディアから発信をする」ということを積極的にやっていこうという結論になりました。

曲を書く身としては……わたし、芸術は「楽しい」という感情からはあまり生まれないものだと思っていて。わたしの場合、自分の内面と向き合って、負の感情から曲を書くことが多いので、むしろこういう状況のほうが(曲を)書けるんですよね。

――今回のアルバムもまさに、負の感情を昇華させた曲が多いように感じました。


はい。ただ、負の感情を込めたことには違いないんですけど、それは、わたしの経験・考え方・思想から出てきたものであって。聴いた人それぞれの解釈をしてもらいたいと思っています。

つまり、わたしの書いた曲には物としての実体がないんですよね。そう考えたとき、これって般若心経で言う「空」(くう)の概念だなと思って。それがきっかけで『皆空色』というタイトルをつけたんです。

――元々、般若心経に興味があったんですか?

どっぷり信仰しているわけではないんですけど、考え方が自分にしっくりくるなぁと思っています。般若心経は、けっこう自由なんですよ。「これはこうだ」と押し付けるのではなく、「はい、自分で考えてくださいね」「あなたの解釈でいいですよ」という投げかけ方をしてくれる。その感じが好きですね。

――望世さんの書く曲には「誰かに決めつけられたくない」「自分の目で確かめたい」といった自由を求める気持ちが反映されているものが多いですが、今回は特にそれが強く出ています。

これまでは濁して書いていた部分もあったんですよ。なぜかというと、「勘違いされるのが怖い」「叩かれたらどうしよう」という気持ちから、明確に言うことを恐れていたから。だけど今回、そこから放たれたんですよ。自分の気持ちや考え、伝えたいことを、嘘をつかずにちゃんと曲に落とし込もうという意識が強くなってきていますね。

自分の好きなこと、やりたいことを探す努力が大事

――そうして変わることができたのはどうしてでしょうか。

この1~2年が、わたし個人の人生にとっても、バンドにとっても、とても濃い時間になったんですよ。

大学3~4年生になり、卒業を前にすると、周りはみんな就職活動を頑張っていくことになるじゃないですか。そのなかでわたしは「バンドをやる」という選択をして、就職活動もしなかったんですけど、その選択ってなかなか厳しいものだったし、周りとの考え方のギャップを感じることも多くて。

そのギャップに悩みながら、「でもやっぱり、自分のやりたいことを優先したい」という気持ちで選択をし、卒業に向かっていくなかで、自分で言うのもなんですけど、成長できたのかなと思っています。

――ギャップというのは?

最初に話したように、わたしは文章を書く学部に通っていたんですけど、同じ学部の学生のなかには、「そもそも文学に興味がない」「なんとなくこの学部に入った」という人もいて。

そういう人を見たときに、せっかく大学に入ったのに、講義の内容にそれほど興味を持てず、つまらなさそうに4年間を過ごすのって、もったいないんじゃないかと思ってしまったんですよね。

わたしにとっては、大学の講義はめちゃめちゃおもしろいものだったので、そういう人たちと自分との間にギャップを感じていました。

――大学に進学する人のなかには、望世さんのようにしっかりとした目的を持って進路を選ぶ人もいれば、「就職にはまだ早いからとりあえず進学しておこう」という考え方の人もいると思います。

はい。「とりあえず大学に入学しておきたい」という気持ちも、もちろん理解できます。ただ、(大学に)来てしまったものはもうしかたないじゃないですか。だからこそ、そこから自分の好きなこと、やりたいことを探し出す努力をすることが大事だと思いますね。

そういう人(=なんとなく進学を選んだ人)たちのなかには、就活の時期に入ってからも「何がやりたいのかわからない」と言っている人がけっこういたんですよ。わたしはバンドをやっていたから、「好きなことがあって羨ましい」と言われることも多かったんですけど、正直「いや、あなたが動かなかっただけじゃん」とも思ってしまって。

経験や知識があれば、おもしろみのある人になれる

――「興味がない」と閉じたまま4年間を過ごすのではなく、いろいろな経験をしたらよかったんじゃないかと。

そうですね。特にわたしたちの世代は、物心ついた頃からインターネットやSNSがあって、情報が溢れている状態がデフォルトだったと思います。だけどそうすると、流れてくる情報を鵜吞みにしてしまい、自分で調べたり考えたりしなくなるから、思考力が低下するという弊害がある。

思考停止を防ぐという意味でも、経験を積むこと、知識を蓄えることは大事だと思います。自分の身体で経験を積んだり、熱を持って勉強して知識を得たほうが、きっと将来的におもしろみのある人になれると思うんですよね。

――それに、知識や経験があったほうが、大人になってから自由に遊べるようになりますよね。

確かに。バンドにもそういうところはありますね。
たとえば、曲のアレンジを決めるのって、基本的に悪ノリだったりするんですよ。

今回のアルバムで言うと、「turntable」は高校生の頃に作った曲で。元々はポップでキャッチーな曲だったんですけど、活動を経て、できることが増えていったときに、自分たちのやりたいことがこの曲から離れていった感覚があったので、次第にライブでもやらなくなっていったんですね。
だけど今回、レーベルの人から「この曲はどう?」と提案されて。当時のままではやりたくなかったから、アレンジを変えることにしたんです。

――サビは王道の4つ打ちだけど、そこまでの展開が変則的で、一筋縄ではいかない感じがありますね。

はい。これ、わたしたち的には上手くバランスをとれた手応えがあるんですよ。当時のキャッチーさと、経験を積んだ今の自分たちだからこその「小賢しさを使って遊ぶ」みたいな感覚が両立できたんじゃないかと思っています。

――その感覚は今後も大事にしていきたいものですか?

そうですね。わたしたちはバンドだけど、バンドの枠に囚われず、他のアーティストの方たちと一緒にどんどん新しいことをしていきたいと思っていて。これまでの考え方に縛られずに、どんどん新しいことをやっていけたらと思っています。

学生のみなさんに対しては「今はインプットの期間にしてみてはどうですか?」と提案したいですね。わたしも後輩から話を聞くことがあるんですけど、学校に行けていない人もいるだろうし、きっと今はとても大変な時期なんじゃないかと思います。

だけど、この状況下だろうと、誰かを傷つけること以外は自由にやっていいはずで。今はこれだけネットが発達していますし、学校に行けないなりに、友達に会えないなりに、できることがあると思うんですよね。「できない」と嘆くのではなく、遊びでもなんでもいいので、今できることを経験してみるのがいいんじゃないかと思います。

編集部:ゆう

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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