SDGsに取り組む東洋大公認サークル「TIPS」そのバイタリティの源に迫る

編集部:ろみ

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他人ゴトじゃないのはわかっていても、自分ゴトにするのも難しい……今話題の「SDGs」について、そんなジレンマを抱えている人も多いと思います。

そこで今回は、SDGsをテーマに活動を続ける学生サークルを直撃。その取り組みについてうかがいました。

記念すべき第一回目は、東洋大学の公認サークル「TIPS」(Toyo International Policy Study Group=東洋大学国際政策研究会)の代表、三浦央希さん(4年生)と次期副代表、塩澤真結さん(2年生)にインタビュー。自由でアクティブな彼らのバイタリティに迫ります。

TIPSが取り組むSDGsの活動内容

▶サークル結成のキッカケとなったのは「ハルトプライズ」。

――皆さんが取り組まれている活動について教えてください。

そのあたりは僕(三浦さん)からお話します。SDGsはテーマが幅広く、横断的なので、TIPSの活動自体も多岐にわたっていますが、例えば自分たちでイベントを開催したり、コンペに参加したりすることも多いですね。TIPSの設立は今から2年前の2018年7月。「ハルトプライズ」を東洋大学に持ってこようという活動からスタートしました。

――「ハルトプライズ」とは何ですか?

アメリカのハルトプライズ財団が主催する、世界最大の学生起業アイデアコンペです。毎年、SDGsに関連したテーマが設定され、世界中の学生たちで起業アイデアを競い合うんです。昨年のテーマは「1万人の若者を10年で雇用できるアイデア」でした。優勝チームには賞金として約1億円の起業資金が贈られるので、みんな本気なんですよ(笑)。
日本ではメジャーではありませんが、全世界で100万人を超える学生たちが参加しています。学内でもSDGsの認知度は高くないので、まずは関心を高めるためにも「ハルトプライズ」を東洋大学でも開催しよう、と。おかげさまで2018年末に実現できました。

――すごい行動力ですね。

▶バリ島では孤児院の子どもたちに向けた環境教育などにも取り組んでいる。

他に、バリ島でボランティア活動に取り組んだりもしています。これは以前、TIPSメンバーが現地に留学していたことがキッカケですね。今のバリ島は島の半分が観光地化していて、住民たちの価値観も変わりつつあります。例えば、もともとバナナの大きな葉っぱなどを風呂敷代わりに使っていて、使用済みのものはそのまま捨てて土に還す文化がありました。でも、今ではその習慣を引きずったままビニール袋をポイ捨てしちゃって、街や海にゴミが溢れているんです。それが環境にどんな悪影響を及ぼすか、紙芝居や"かるた"にして孤児院の子どもたちに教えたりしています。

――東洋大学内のSDGs化も進めているそうですが。

はい。東洋大学で開かれた「フードロス削減コンテスト」にエントリーし、最優秀賞をいただいたことがあります。“どうやって食べ残しを減らすか”と視点でアイデアを出すサークルが多い中、僕たちは“食品廃棄物からガスを生成して発電し、大学の電力を賄おう”と提案しました。
ちょうど東洋大学の朝霞キャンパスの土地が空きそうで、そこにバイオガス発電所を作って、朝霞市と東洋大学の食品廃棄物を全部回収して発電しちゃおうよ、って。ガスを生成したあとの食品廃棄物は発行するので、肥料にも使えます。

――視点をガラリと変えたアプローチですね。

昨年は浄水器を扱うグローバル企業「BRITA」が企画した学生マイボトルコンテストにも出場しました。「日本でマイボトルを普及させるにはどうしたらいいか?」というテーマのコンペで、特別賞を受賞しました。このときはマイボトルにQRコードを付けることでサーバーが自動で給水、決済まで済ませてくれるシステムを作ろうという構想を練りました。アプリ連携することで、給水スポットの位置情報やマイボトルの大きさなどもデータで共有し、割引サービスなどもアプリ上で展開しようと考えたりもしましたね。

▶「学生マイボトルコンテスト」では、マイボトルを普及させるためのアイデアを競って特別賞を受賞。写真左が三浦さん。

――それはとても実用的で便利そうです。

この受賞をキッカケに、マイボトルの普及を進めるボトルト株式会社さんからお声がけいただき、一緒に東洋大学内のマイボトル普及プロジェクトに取り組むことになりました。さっそく学生たち100人にマイボトルを配って、マイボトルへドリンクをチャージできるサーバーを学内に導入しようとしていた矢先にこのコロナ禍です。今は中断していますが、騒動が落ち着いたらまた進めたいと思います。

成長意欲も自己主張も強いメンバーたち

▶マイボトル普及プロジェクトに協働で取り組むボトルトとTIPSで。

――TIPSのメンバーは、どんな人たちなんですか?

メンバーは計20人くらいいて、全学部にまたがっています。そのほとんどに留学経験があるのも特徴的ですね。僕もドイツ、フランスに1カ月、アメリカのポートランドに半年間、留学しました。そこでは環境問題や多様性に関心を持つ同世代にたくさん会って、あれはカルチャーショックでしたね(笑)。日本ではほとんどそんな話題も出ませんから。

私(塩澤さん)ももともと海外に興味があったので国際学部に入りました。昨年の夏休みにはインターンでラオスに行っていて、今年も留学が控えていたのですが、コロナ禍で取りやめです。TIPSのメンバーは、ひとりでも動ける子が集まってくる印象かな。誰かと一緒じゃないと嫌だ、ってタイプではない感じです。

みんな個性的で、国際的な視野を持ってるよね。メンバーは募集していますが、勧誘はしていないので、みんな自発的に参加しています。だからか、野心的で、熱意があって、信念がある。成長意欲も高いし、自己主張も強いかな(笑)。

――いわゆる「意識高い系」なんて言われたりしませんか?

それはあるかもしれないですね。

私が大学に入る前のことですが、三浦さんが授業中、特別に時間をもらってハルトプライズについて学生にプレゼンしたらしいんですよね。多くの生徒がいる前で、『意識高い“系”じゃないんだよ。意識を高く持とうよ!』って言い放ったそうです。これはもう語り草になってますね(笑)。

つい熱くなってしまって(笑)。

いえ、三浦さんはそれが通常運転です(笑)。でも、TIPSの自由な空気は、三浦さんがリーダーだからこそ。見た目も口調も優しいけど、心があって、熱量がある。何を言っても受け入れてくれる空気が作られている気がします。

そんなこと言われたのは初めてなので、ちょっと照れています…(笑)。

――素敵です(笑)。TIPSの活動の目的って何なのでしょう?

活動の目的は大きく分けて4つです。(1)目標を見つけ、成長できる場となること、(2)SDGsの達成に貢献すること、(3)東洋大学の国際化と多様化を推進すること、(4)学部を超えた交流・協働を促進すること。何か新しいことに取り組むときも、このチーム訓に則っているかどうかで判断しています。

――今後の活動予定は?

TIPSは創設メンバーの僕たち4年生が中心に率いてきましたが、SDGsをテーマにしている以上、やっぱりこのサークルも「持続可能」であってほしいなと思います。故・野村克也監督がこんなことを言っていました。

「金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流」。

僕自身は充実した大学生活が送れたし、成長できたと思っています。ただ、それだけで満足せずに後輩たちを育てたいし、残りの時間で彼らのプラスになるような機会を提供してあげられたらいいな、と考えています。

TIPSが見据える未来

――三浦さんのバイタリティはどこから湧き出てくるんですか?

小学生の頃は大工になって祖母に家を建ててあげたいという夢がありました。中学生くらいで「家を作るのは設計士の仕事か」と気付き、いつしか街作りに興味を持っていたんです。海外留学も「街を見たい」という思いがあったし、今は「街を作るなら、それはもう政治の仕事だな」って思っています。なので、卒業後はコンサル会社に就職が決まっていますが、いずれは今住んでいる千葉県松戸市の市長になりたいと考えています。

――自治体の長として、ぜひSDGsにも取り組んでほしいですね。

松戸市は東京へのアクセスがいいのに、家賃が安い。だから今は外国籍人も増えているのですが、どんな国籍でも暮らしやすい、多様性のある街にしたいですよね。障害のある方もそうです。日本は支援にばかり目を向けがちで、電車の乗り降りひとつでも仰々しい。でも、当事者はもっと普通の自立した生活を送りたいんじゃないかって思うんです。ポートランドでは、車椅子の方が電車に乗ろうとすれば、勝手にスロープが出てきて、スペースもみんなが勝手に空けてくれる。日本ではベビーカーでさえ邪魔扱いする人もいますが、そんな現状はやっぱり変えたいですね。

――塩澤さん、今後の目標はいかがでしょう?

現4年生の引退後は私が副代表になるのですが、三浦さんが繋いでくれた人との繋がりを継続しながら、活きのいい一年生もまとめていきたいと思っています。みんな本当に活きがよくて尖っているので、なかなか大変そうですけど(笑)。

――最後に、同世代の若者たちにメッセージをお願いします。

社会を自分ごととして考えることが大事だと思います。私は小さい頃、母にこう言われたのを覚えています。「真結に子どもができたとき、私がその子に『昔は空も青かったんだよ』と言うような世界にしないでほしい」。その意味がわかるまでに時間はかかりましたが、歳を重ねるごとに母の言葉に対する理解が変わってきました。考える習慣を作ったことで、ものの見方も深まったんだと思います。

同世代に伝えたいのは、「好きなコトやろうぜ」ということ。TIPSのような活動もハードルが高く見えるかもしれませんが、サークルを立ち上げて約2年間で仲間も集まったし、インターン先でもご縁に恵まれました。考えた後は、実行することが大切。行動する人の中からグローバルなリーダーが生まれたり、世界の課題を解決するビジネスモデルが生まれるんだと思います。だから、好きなことをどんどんやっていこうぜ! ってことですね。

――ありがとうございました!

サークルプロフィール

東洋大学 TIPS

TIPSは『SDGs・ダイバーシティ×学生の成長』をテーマに活動する、2018年設立の学生団体。東洋大学白山キャンパスを拠点に、SDGsとダイバーシティについて学び、広め、達成に貢献する活動を展開。ビジコンの企画・運営や、企業・NPO・他団体との連携、コンテストへの参加やイベントへの登壇などを通して、ひとりひとりの成長を目指して活動している。今回は代表の三浦さん、副代表の塩澤さんにお話しいただきました。

東洋大学TIPSの公式HP

東洋大学TIPSのTwitter@TOYO_TIPS

文:猿川佑
編集:マイナビ学生の窓口編集

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編集部:ろみ

編集部:ろみ

学生時代はスペイン語専攻。南米アルゼンチンに留学していたラテン系関西人。好きなものは海外の音楽・映像鑑賞とお酒です。昨年ママになり、最近はもっぱら子供が寝た後に海外ドラマや韓流ドラマを見るのが息抜きです。

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