【世界一優しいSDGs入門】 200文字で読む全17ゴールの中身

編集部:ゆう

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最近、「SDGs(=持続可能な開発目標)」という言葉を目にする機会が増えたと思います。

新型コロナという未知のウイルス、気候変動や貧困、飢餓、差別など、人類は多くの問題を抱えていて、それらを解決しようとする取り組みが「SDGs」です。しかし、論点はあまりにも広く、一見すると私たちにはあまり関係ないようにも感じるので、まだまだ身近な問題としてとらえられていない方も多いと思います。

そこで今回は、『SDGs×自治体 実践ガイドブック 現場で活かせる知識と手法』(学芸出版社)の著者、高木超先生に「世界一優しいSDGs入門」というテーマで、SDGsの要点を解説していただきました

高木超(たかぎ・こすも):慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。ミレニアル世代を中心にSDGs 達成に向けて取り組む「SDGs-SWY」の共同代表も務める。

高木先生:「私たちが暮らす地球上では、貧困や温暖化、紛争など、さまざまな問題が起きています。身近な例で言えば、みなさんの学校では、蛇口をひねると飲める水が出てきますよね。しかし、こうした当たり前に思えることも、海や川が汚染され続ければ、当たり前ではなくなる日が来るかもしれません。つまり、持続可能な世界ではなくなってしまうのです。

そのような状況で、私たちが『いつまでに、世界をどのような状態にするのか』、その方向を示してくれるコンパスのような存在がSDGsです。まずは、SDGsを理解するうえで、次の3つのポイントを押さえてください」

高木先生が語る「SDGs」の3つのポイント

(1)2030年に向けた世界共通の目標。
(2)17のゴールと169のターゲット、232の指標で構成。
(3)理念は「誰一人取り残さない」

つまり、SDGsで掲げられた17のゴールはすべて2030年までに達成することが大前提で、すべての人が例外なく恩恵を受けられなければ達成とは認められません。10年後の世界に、貧困にあえぐ人や飢餓に苦しむ人は一人でも残っていてはいけないのです。

SDGsを達成できなければ、地球はこれ以上持続できなくなってしまうかもしれません。世界中で課題となっている貧困や格差、紛争、環境汚染などの問題を解決して、初めて持続可能な環境が整うという瀬戸際にいるのです。では実際にどんな課題があるのか、さっそく17ゴールの中身を解説してもらいましょう。

SDGs17のゴール

(1)貧困をなくそう

「貧困問題は、世界中が必ず取り組まなければならない課題です。世界では、7.4億人が1日1.9ドル(1.9ドル=約200円)未満で生活する『極度の貧困状態』(※1)に苦しんでいます(2015年時点)。特にサハラ砂漠以南のアフリカに集中していますが、実は日本でも7人に1人の子どもが貧困状態(※2)にあると言われています。SDGsでは、『あらゆる貧困を半減させる』という目標が掲げられています」

(2)飢餓をゼロに

「世界では、8億2160万人(2018年時点)が栄養不良に陥っていると推定されています(※3)。しかし、世界では年間で約26億トンの穀物が生産されていて、現在の世界人口を考えれば十分な量と言われています。つまり、食料が平等に分配されていないことが問題なのです。先進国では賞味期限前に捨てられてしまう食料が大量にある一方で、開発途上国は飢餓や栄養失調に苦しんでいます」

(3)すべての人に健康と福祉を

「日本は新生児死亡率が世界で最も低い、『赤ちゃんが最も安全に生まれることができる国』です。一方、世界で最も新生児死亡率が高いパキスタンは、日本の約50倍の高さです。(※4)そして、世界では毎年29万人以上の妊産婦が亡くなっています(※5)。SDGsは、新生児死亡率を1000件中12件以下まで減らすこと、妊産婦の死亡率を10万人あたり70人未満に削減することなどを掲げています」

(4)質の高い教育をみんなに

「日本は、5歳児のうち幼稚園や保育所に在籍している子どもの割合が95%を超え、小学校4年生時点で、算数について最低限の習熟度に達している割合は99%(※6)と、世界的にも高い教育水準です。しかし、世界では約5人に1人の子どもが学校に通えていない(※7)。日本の水準は、決して世界の常識ではないのです。SDGsのターゲットでは、すべての子どもが無償で質の高い初等教育・中等教育を修了できることなどが掲げられています」

(5)ジェンダー平等を実現しよう

「世界経済フォーラムの報告書によると、各国の男女格差を測る『ジェンダーギャップ指数』で、日本は153カ国中、121位という結果に終わりました(※8)。上位の北欧諸国から大きく離れています。日本は女性議員や女性管理職の割合も低く、LGBTQと呼ばれる性的少数者への理解も進んでいるとは言えません。SDGsの17目標の中でも、日本が重点的に取り組まなければならないゴールのひとつだと言えるでしょう」

(6)安全な水とトイレを世界中に

「今、新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるっています。感染症の予防策として、手洗いは非常に有効で、しかも安価に実践できる予防のひとつです。しかし、世界の人口の4割に及ぶ約30億人が、水と石けんで手を洗う設備が自宅にない(※9)そうです。一方、先進国の日本でも、実は水道管の老朽化に伴う維持補修は重要な課題。SDGsでは、すべての人々が安全な水を利用できる状態にすることなどを目指しています」

(7)エネルギーをみんなに そしてクリーンに

「地球温暖化の要因となる温室効果ガス。その排出量の削減は喫緊の課題です。そのためには、石油や石炭などの有限な資源を使う化石エネルギーから、太陽光や風力などを用いる再生可能エネルギーへの転換が求められます。一方、世界で約8.4億人が電気のない生活を送っています(※10)。そこでSDGsは、すべての人々に、安価で信頼できる持続可能なエネルギーへのアクセス権の確保を目的に掲げています」

(8)働きがいも経済成長も

「新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中で失業率が高まっています。また、世界では約1億5200万人が児童労働に従事している(2016年時点)と指摘されています(※11)。私たちが着ている服も、もしかしたら不当な労働で作られているかもしれません。そのほか、日本でも過労死などの問題が発生しています。こうした背景から、SDGsは経済の安定的な成長率や適切な雇用の創出などを目標に掲げています」

(9)産業と技術革新の基盤をつくろう

「重度の障がいを抱え、外出が困難な人たちが、スマホやパソコンを使ってロボットを遠隔操作し、接客などを行う。これは未来の話ではなく、すでに日本で開発されている技術です。まさに『誰ひとり取り残されない』社会に向けた試みですよね。最近ではオンライン授業や在宅ワークも普及しましたが、それもインターネット環境があってこそ。世界では誰もがネット環境に恵まれているわけではなく、その整備には先進国の支援も必要です」

(10)人や国の不平等をなくそう

「2019年1月、国際NGO『オックスファム・インターナショナル』は、世界で最も裕福な26人が、世界で最も所得が少ない層の38億人と同等の資産を保有していると発表しました(※12)。背景には貧困問題だけでなく、家事や介護などの労働が正当に評価されていないこと、女性の賃金が男性に比べて低いことなど、さまざまな不平等があります。経済問題だけでなく、人種や性別の差別問題、難民問題などの不平等も存在します」

(11)住み続けられるまちづくりを

「世界では、開発途上国を中心に都市化が急速に進んでいます。世界人口の約半数が都市で暮らしており、そのうち4人に1人がスラムに近い環境で生活しています(※13)。また、日本では、地域防災戦略を策定している自治体の割合は100%(※14)と、防災への取り組みが進んでいますが、すべての国が災害に対する備えが万全というわけではありません。スラムの改善や災害対策、公共交通機関の整備は各地で重要な課題となっています」

(12)つくる責任 つかう責任

「日本では莫大な食品ロスが問題視されています。まだ食べられるのに捨てられる食品の量は年間612万トン(※15)。この数字は、飢餓に苦しむ人たちへ向けた世界の食糧援助量の1.6倍に相当します(※16)。現在、人や環境に配慮した『エシカル消費』が注目されていますが、まずは買い物の際、『この食品は環境破壊に繋がっていないか』と想像してみるとよいでしょう。食料廃棄物の発生防止、削減などをSDGsは課題に挙げています」

(13)気候変動に具体的な対策を

「地球温暖化との関連が疑われる自然災害は、世界規模で増えています。1998年から2017年の20年間で、130万人が気候・地球物理関連の災害で亡くなったと推定されています(※17)。こうした気候変動の原因とされる温室効果ガスの排出量について、日本は国別で世界ワースト5位(2017年)に位置しています(※18)。国境を超えたグローバルな課題である気候変動は、世界中が連携して立ち向かわなければならない問題です」

(14)海の豊かさを守ろう

「乱獲や気候変動の影響で、海洋生物は1970年から2010年の40年間で半減しています(※19)。このままでは、2050年までに海洋中に存在するプラスチックの重量が魚の重量を超過するとの予測も(※20)。海洋プラスチックごみの多くは内陸で発生し、川から海に流れ着いているとも指摘されています。自分の街に海がなくても、他人事ではありません。SDGsは海洋汚染を防止し、持続可能な形で利用することを世界中に求めています」

(15)陸の豊かさも守ろう

「陸上の環境破壊も深刻です。1990年からの30年間で失われた森林は178万平方キロメートルに及び、日本の国土面積の約4.7倍です(※21)。過剰な森林伐採や山火事で森林が失われてしまった結果、絶滅の危機に瀕している生物も少なくありません。また、外来種による生態系への影響も問題視されています。東京近郊でもアライグマやハクビシンといった外来生物を見かけることがあるように、みなさんの身近にも外来種の影響があるはずです」

(16)平和と公正をすべての人に

「世界では、2018年に紛争や迫害によって7080万人もの人々が移動を強いられました。7080万人のうち、2590万人が難民です。しかも、難民の2人に1人は18歳未満の子どもだと言われています(※22)。平和と公正に関して言えば、日本でもいじめや性犯罪など多くの問題が発生していますし、決して開発途上国だけの問題ではありません」

(17)パートナーシップで目標を達成しよう

「パートナーシップと一口に言っても、先進国から開発途上国への援助や、政府と民間企業の連携など、さまざまな協力関係があります。SDGs達成に向けた課題のひとつに、開発途上国における資金不足が指摘されています。一方、SDGsを達成すれば、新たに12兆ドルの市場機会が生まれるという試算も(※23)。SDGsを達成するには、すべてのステークホルダーの協力が不可欠です」

あなたもSDGsと関係している

今回は高木先生が簡潔に説明してくれましたが、ここでは解説しきれなかった問題もまだまだ存在します。

高木先生:「SDGsが定める17ゴールは、互いに影響し合う関係です。だからこそ、SDGsを達成するには世界中の人々の協力が不可欠です。みなさんも、『こんなに使い捨てのレジ袋を使っていていいのだろうか』、『なぜ、この商品はこんなに安いんだろう』と疑問に思う瞬間があるはず。その違和感こそが自分の行動を変えるチャンス。SDGs達成に向けたヒントは、私たちの日常にあふれているんですよ」

これからの時代、SDGs抜きに未来は語れません。次回は「日本の学生とSDGsの関係」について、高木先生にお聞きしましょう。


(出典)
※1:世界銀行「世界の貧困に関するデータ」
※2:厚生労働省「平成28年 国民基礎調査/貧困率の状況」
※3:国連「2019 世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書
※4:UNICEF(2018)「Every Child ALIVE」
※5:UNICEF等(2019)「Levels and Trends in Child Mortality 2019」
※6:総務省「SDGグローバル指標(SDG Indicators)」
※7:国連広報センター「持続可能な開発(SDGs)報告2019」
※8:World Economic Forum(2019)「Global Gender Gap Report 2020」
※9:UNICEF「新型肺炎30億人が家で手洗いできず世界の4割、ユニセフが警告」
※10:国連広報センター「持続可能な開発(SDGs)報告2019」
※11:国際労働機関(2017)「児童労働の世界推計:推計結果と趨勢、2012~2016年(日本語訳)」
※12:OXFAM international “Billionaire fortunes grew by $2.5 billion a day last year as poorest saw their wealth fall”
※13: 国連広報センター「持続可能な開発(SDGs)報告2019」
※14: 総務省「SDGグローバル指標(SDG Indicators)」
※15: 環境省「我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成29年度)の公表について」
※16: 消費者庁「食品ロスとは?なぜ食品ロスの削減が必要なの?」
※17: 国連広報センター「持続可能な開発(SDGs)報告2019」
※18: 外務省「二酸化炭素(CO2)排出量の多い国」
※19: WWF(2015) “Living Blue Planet Report Species, habitats and human well-being”
※20: WORLD ECONOMIC FORUM(2016) “The New Plastics EconomyRethinking the future of plastics”
※21: FAO(2020) “THE STATES OF THE WORLD’S FORESTES 2020”
※22: UNHCR(2019) “GLOBAL TRENDS FORCED DISPLACEMENT IN 2018”
※23: BUSINESS & SUSTAINABLE DEVELOPMENT COMMISSION(2017)「ビジネス&持続可能開発委員会報告書 より良きビジネスより良き世界 概要」

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