困難を乗り越える鍵は、勇気と信念。go!go!vanillas 牧 達弥が「夢」の大切さを語る #19才のプレイリスト

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人生はきっかけの連続だ。だからこそ、自分のやりたいことをどう選べばいいのかわからない、今何をするべきなのか迷ってしまうという大学生のために、「音楽」という道を選んだアーティストに直撃し、19才の頃に聴いていた楽曲を元に人生観を語っていただく連載『#19才のプレイリスト』。

第2回目となる今回は、go!go!vanillasの牧 達弥さん(Vo/Gt)が登場。4月22日に配信をスタートする『アメイジングレース』(※1)は、2018年末に交通事故に遭った長谷川プリティ敬祐さん(Ba)の復帰作です(※2)。

人生の困難に直面したとき、牧さんのことをかりたてた「夢」の存在について、語ってもらいました。

※1:CD発売は6月3日 ※2:2019年に発表された曲は事故以前にレコーディングを終えていた

文:蜂須賀ちなみ
写真:佐藤友昭
編集:学生の窓口編集部

新たな自分を形成するため、大学進学を機に上京

--牧さんは大学に入学するタイミングで上京したんですよね。

牧 達弥さん(Vo/Gt):そうですね。僕は大分出身なんですけど、18才のときに東京に出てきて、そこで初めて一人暮らしを始めました。

上京したときは、めちゃめちゃうれしかったし、ワクワクしてましたね。今と比べて当時はオンラインショップも発展してなかったし、「東京に行かなければ手に入れられないものがある」っていう感覚が強かったんですよ。例えば、当時の大分は中古のCDショップがあんまりなかったから、音楽のルーツをどんどんさかのぼっていったときに、手に入らない昔のCDとかもたくさんありましたし。

なので、上京してからは「やったー! なんでもCD買えるじゃん!」っていうのが一番うれしかったですね。そのためにバイトしていた気がします(笑)。

あと、僕としては、東京に出てきてからがスタートだっていう気持ちがあったんですよ。やっぱり地元って落ち着く半面、束縛も多いなと思ってて。

親戚や昔から気の知れた仲間がたくさんいる分、なかなか思い切れなかったんですよね。「バンドで飯食っていく」って言ってもちょっと笑い話にされるというか、「いやいや、そんなにうまくいかないでしょ」「普通に就職しなよ」って言われるんだろうなって考えちゃって。

そういうことがあったので、僕のことを知っている人が全然いないところに行ってゼロからスタートしたい、新たな自分を形成していきたいという想いで東京に出てきました。

--ということは、上京を決めた段階ですでに「バンドでやっていこう」という気持ちがあったんですかね。

そうですね。まあ若かったし、他にもいろいろな勉強をしていたので、そのなかでもしも音楽を超えるようなものがあれば、そっちに切り替えるつもりではいました。でもやっぱり音楽が一番だなと改めて思ったので、19才のときにバンドで生きていこうと決めました。

それで「もしも“バンドで食っていく”って伝えたら、親はなんて言うだろう」って考え始めたんですよ。

もちろん「いつかは言わなきゃいけないよなあ」とは思っていたんですけど、絶対止められてると思っていたし、「手塩に掛けて育ててもらったのに、就職しない息子なんて」っていう後ろめたさもあったから、言いづらくて。だからそこからはずっと逃げてましたね。

しかもそういう話って、「事務所から声がかかった」「CDを出すことになった」みたいな、なにかしらのアクションがないと切り出せないじゃないですか。

でも、そういうことも全くなかったし、(ライブの)お客さんもそんなに多くなくて。上京してからの生活は自由で楽しかったけど、そこに対する不安はあったかもしれないです。

19才のプレイリスト

--では19才の悩んでいた上京時代に、牧さんがよく聴いていた曲を紹介していただけますか。

相対性理論の「LOVEずっきゅん」ですね。僕が19才の頃はちょうどmyspaceがめちゃくちゃ流行ってた時期だったんですけど、そこで1位になってバーンって出てきたのが相対性理論だったんですよ。

初めて聴いたときは革命的だなって思いましたね。歌と歌詞はめちゃくちゃサブカルな感じだけど、アレンジの方向性が日本っぽくないんですよ。そのバランスが絶妙だったし、これはみんな好きになるだろうな~とも思いましたね。自分としては音楽研究みたいな感じで、一番最初のEP(2008年リリースの『シフォン主義』)はよく聴いてました。

あと、黒猫チェルシーの「廃人のロックンロール」 、OKAMOTO’Sの「Insane Man」 にも刺激を受けましたね。

黒猫チェルシーはテレビの音楽番組で取り上げられてて、「カッコいいじゃん!」「うわ~、やっぱ東京はすげえな!」みたいな感じで聴いてました。

OKAMOTO’Sは「ボーカルの人、ジャック・ホワイトみたいでカッコいい!」「メンバーもめっちゃ演奏うまいじゃん!」って気になり始めて。曲を聴いたとき、これはもう完全に世界に向けて発信してるなあって、僕は思いましたね。

「Insane Man」のMVは新宿レッドクロス(※3)で撮影してるんですよ。

それもあって、レッドクロスっていう場所が僕にとってはすごく輝いて見えましたね。いいロックバンドは全部あそこにいるじゃん! っていう。

ただ、その2バンド(黒猫チェルシー、OKAMOTO’S)が僕より年下なのがすごく嫌だったんですよ……。

--自分のバンドがまだ日の目を見ていないのに、同世代で活躍している人を見たら、複雑な気持ちになりますよね。

そう、モヤモヤしちゃって。それもあって、当時の僕は変にこじれてましたね。「客になんて媚びないぜ」みたいな感じでライブをやっていたし、それがめちゃくちゃカッコいいことだと勘違いしてて。だから、全然売れなかったです。痛い思いをしました(苦笑)。

※3:新宿にあるライブハウス。後にgo!go!vanillasのホームといえる場所になる

「バンドで飯を食っていきたい」母親にそう伝えた大学3年生の春

--結局、バンドでやっていきたいという気持ちはいつ両親に伝えたんですか?

3.11(東日本大震災)のあと、ちょうど春休みだったこともあって、大分に帰ったんですよ。それが大学3年生のときだったんですけど、3年ってなると、もう就活をし始めている時期じゃないですか。だけど僕はエントリーシートすら書いたことがなくて(笑)。

ばあちゃんから「あんた、どうするんかえ?」って聞かれても、「うーん……貿易関係かな?」みたいな感じで、のらりくらりとかわしてたんですけど、さすがにもう、言わんとなあとは思ってて。

それで大分に着いてすぐ、おかんと一緒に近所の居酒屋に呑みに行ったんですよ。そしたら「あんた、なんか言いたいことあるんやろ?」って先に言われて。やっぱり親の直感ってすごいですよね。そのおかげで「俺は音楽をやりたい。これで飯を食っていきたい」って伝えることができました。

--反応はいかがでしたか?

普通に「いいよ」って言われましたね。僕としては「これを言ったら縁切られるんじゃないか」っていう怖さがあったから、肩透かしを食らったような感じでした。

そもそもうちのおかんは、「就職して、家族を持って、大分に帰ってきて、じいちゃんばあちゃんに囲まれながら暮らして……」っていう考え方の人だったんですよ。だから「いや、うれしいけど、なんで?」って聞いてみたら、おかんも、3.11があってからいろいろ考えたみたいで。

大分は(震災による)被害は大きくなかったんですけど、死者が何千人規模で増えていくのをニュース番組で見ているうちに、「もしも今、タツ(牧)が死んでしまったとして、自分のやりたいことをやりきれていないとしたら、それは果たして幸せなのか」っていうことをすごく考えたみたいなんです。

「だったら、あんたのやりたいようにして死んだほうがいいでしょ?」っていう話をされたときは「うわあ、やっぱり親ってすげえなあ」って思ったし、そのおかげで「じゃあ頑張らないと」って腹をくくることができましたね。あのときのことはすごく思い出深いです。

--当時の牧さんのように、夢があるけど、それを家族に伝えることのできない人は少なくないと思いますが、そういう人たちに伝えたいことはありますか?

運のような、自分では測れないものがいつ来てもいいように、夢に向かって走り続けることは重要だと思いますね。そうしているうちに、チャンスって舞い込んでくるものだと思うんですよ。

頑張ったことによって、すぐに芽が出る人もいれば、すぐに芽が出ない人もいると思います。

でも今になって思うのは、どの世界でも、早く芽が出れば成功っていうわけでもないってことで。遅く咲こうが、そこからの開花が半端なかったら、早く芽が出た人よりも最終的に幸福度が高くなる可能性もあるじゃないですか。

たとえば、就職活動をして志望企業に行けなかったとしても、「この会社(第一志望ではなかったが採用された会社)には俺の熱意が伝わったんだ」「だったらこの会社を俺がもっとデカくしてやろう」って考えて、そこでできることを頑張れば、もしかしたら、元々行きたかった企業からスカウトされることもあるかもしれない。

そうしたら、新卒のときよりも成長した状態で元々志望していた会社に行けるっていうことだから、最強だと思うんですよ。そういうふうに、ポジティブに考えていくのが近道なんじゃないかなあとは思いますね。

バンドメンバーと共有した「夢」の存在

--生きていると、思わぬ悲劇や苦しみに直面することがあると思います。バニラズの場合、2018年末にプリティさんが事故に遭いましたが、そういう苦難に直面したとき、牧さんはどのように乗り越えようと考えましたか。

あの事故でプリティが亡くならなかったのは、不幸中の幸いでした。だから、はたから見たら僕らの試練なんて大したことではないかもしれないし、そんな上から目線で語れることなんてないんですけど……。

でもやっぱり、僕の人生にとってすごく大きな出来事だったんです。だって、プリティとはもう17年ぐらい一緒にいるし、しかも同じ仕事をしているから、めちゃくちゃ近くにいる存在なわけじゃないですか。当たり前にずっと一緒にいると思ってたやつがね、事故に遭って、会話もできないような状態になって、っていうときはもう……。

でも、僕の場合は、プリティと「バンドでデカくなっていく」っていう同じ夢を共有していて、それをお互いに確認しあうことができていたから。

「あいつは今が意識ないけど、きっとこうしたいって思うんだろうな」「こういうことをやっていったほうがあいつはきっと安心できるよな」って考えながら、全部を正当化して、ポジティブな方向に持って行けたのかもしれないです。

--夢があるから踏ん張ることができたと。

本当にそう思いますね。ここで「それでもやっぱり諦められないなあ」って思えたからこそ「あ、俺こんなにバンドが好きだったんだな」「よし、じゃあまだ頑張れるか」ってなれるわけで。僕の場合はそうでした。

仮に「もうダメだ」って思ったとしたら、その程度の夢だったってことなんですよ。そうだった場合は、自分がもっと高みを目指せるような、他の夢を探すことに時間を使ったほうがいいんじゃないかと思います。

--「アメイジングレース」の〈その時が来るまではわからないことばかり/心配ないよ なんて言えないが〉という歌詞は、まさに今回の経験があったからこそ出てきた言葉ですよね。「大丈夫」とも「心配ない」とも言いはしないところに、牧さんの誠意を感じました。

僕は、安心感はときに甘えになると思ってるんですよ。「大丈夫だよ、俺が背中を押すよ」「いつまでも見守ってるよ」って言おうと思えば言えるんですけど、それがやさしさとは限らないじゃないですか。

僕も、お母さんにはつられた(ビンタされた)ときは「ふざけんなよ」って思ってたけど、よくよく考えたら、自分の子どもを叱るのってすごくきついことだから、「俺のことを思ってやってくれていたことだったんだな」って、今ならわかるんですよ。

僕が歌詞にしてることも、そういうことだと思いますね。ピンチを乗り切れるかどうかって、結局は自分次第なんですよ。ピンチになったときに自分が起こすアクションが、次の自分を助けることになるというか。

今って自立というものがかなり促されてる時代だし、SNSやネットを利用して、若い人でもどんどんアクションを起こしていけるような時代ですよね。僕はそれがすごくいいことだなって思ってて。

自分の生き方や「命がある」ということに対する感覚って、ときに麻痺しがちだけど、今はみんながそこについて考え始めてるから、地球規模でもっといい方向に進んでいく気もしてるんですよ。

だから、僕からアドバイスできることって、そんなにないかもしれないです。だって「もうみんな、気づいてるでしょ?」って思うから。

夢に向き合う勇気と信念があれば、人生、すごくよくなるんじゃないですかね。夢を持つこと自体が難しいと言われる時代だけど、それはね、生きていくうえでは絶対に必要なことだから。

大学生ってお金はないけど、時間があるし、自由だし、若いし、最強じゃん。だったら、夢を探す努力をしたほうがいいはずだって、僕は思いますね。

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