恋愛ってコスパ悪くない? それでも恋をすべき理由をMACOに訊いてみた #セルフライナーノーツ
大切に築いてきた2人の関係性がゼロに戻ってしまうのは悲しいから、最初から恋なんてしないほうがマシだ。好きな人のことで頭がいっぱいになり、生活のペースが乱れるのに耐えられないから、正直恋愛は苦手だ。そんな考えから、やがて恋愛から離れていった人もいるのではないでしょうか。
「恋蛍」「3月9日」「桜の木の下」を配信リリースしたMACOさんは、デビュー以来、ラブソングを唄い続けているシンガーソングライターです。彼女は、恋愛におけるコスパ(コストパフォーマンス。対費用効果)の悪さ、面倒の多さを認めたうえで、それでも恋をする自分自身のことを歌にし続けています。
「恋愛もそんなに悪くないよって、わたしは言いたいですね」とMACOさん。その真意を語ってもらいました。
何歳になっても恋が簡単になることはない
――昨年、レーベル移籍のタイミングでリリースした「タイムリミット」は働く女性への応援歌でしたが、今回の連続リリースの3曲中、初めにリリースされた「恋蛍」はラブソングですよね。
MACO:はい。「タイムリミット」で1回振り切って新しいことに挑戦した分、ファンのみなさんが「次出す曲はどんな曲なんだろう?」っていうふうにきっと期待してくださってたと思うんですよ。それを踏まえて、「恋蛍」では、唄いたかったことをそのまま歌詞にしました。自ずとというか、自然にできた曲ですね。
わたしの恋愛観には、歳を重ねて変わっていく部分と全然変わってない部分があって。「恋蛍」ではその変わってない部分を1番のAメロ、Bメロで言っちゃってるんですよ。サビにある〈時を忘れて彷徨う〉っていうフレーズでも、今まで積み上げてきた年月に関係なく、ずーっと同じことを繰り返してるっていうことを唄ってて。他にも、これまでにも唄ってきたようなフレーズがけっこうあるし、ファンの方のなかにはそれに気づいてる人もいると思うんですけど……。
結局、24、5歳のときの自分にとっても、28歳の今の自分にとっても、恋ってずっと恋なんですよ。恋って、何年経っても簡単になることなんてないんだなあって思いながら書きました。成長した自分に出会えるときもあるけど、根っこの部分では「ああ、ずっとわたしはこういう性質なんだな」って思い知らされる。それがきっと恋愛なのかなって。
――恋のどういうところが難しいと思いますか?
MACO:すごくありきたりですけど、ずーっと不器用に生きてるなって自分では思ってます。「ありがとう」とか「ごめんね」はすぐに言えるんですけど、もっともっと重要なことをつい後回しにしちゃうんですよ。
それは相手が長年寄り添った人でも初恋の人でも変わらないし、ずっとそんな性格のままだから、なんか……ピーターパンみたいな感覚があるんですよね。
――似た傾向の後悔を繰り返してしまうから、いつまでも大人になれずにいる感覚に陥ると。
MACO:まさにそうです。全然成長できてないなあって。
――それを歌詞に書くことによって、自分の不器用さが不特定多数のリスナーに知られることになるかと思いますが、そこに対して抵抗はないんですか?
MACO:それがないんですよ。自分のなかでは消化しきれないことや、好きな人にも言えないようなことを歌詞に書いてるから、(リスナーから)「めっちゃ分かる!」って言ってもらえたりするとむしろ「あ、わたしだけじゃなかったんだな」って安心します。
それにわたしは、恋愛のことを唄って、みんなの気持ちを代弁するのが自分の仕事だと思ってるし、そこに縁を感じてるんですよ。10代の頃から歌が好きで学園祭で唄ってたのも、22歳でデビューしたのも、今こうしてラブソングを唄ってることも、全部偶然じゃなくて多分決まってたんだろうなって最近思うんですよね。
だから自分のありのままを曲に書いちゃうし、曲に書くことによってその感情が自分だけのものじゃなくなるのも、そういうものだって思えるというか。
――その感覚はデビュー当時からあったんですか?
MACO:いや、デビューしたての頃はどこか地に足のついてない状態で、与えてもらったお仕事を一生懸命やることで精一杯だったので、そうではなかったですね。
2、3年前に父を亡くしたんですよ。反抗期じゃないですけど、それまではちょっと父をぞんざいに扱っていて。父は頻繁に連絡をくれていたんですけど、正直「ウザいなあ」と思ってたから、わたしはもらったメールも読まないまま放置してて。
そんななかで、突然病気で亡くなってしまって。「失くしてから初めて大切さに気づく」ってよく言うし、ありがちな話だと思うから、そのときは本当に……悔しかったんですけど……。
後になって父からのメールを読み返してみたら、「人にはそれぞれ持ち合わせた特技や趣味があるけど、MACOにとってはそれが歌だったんだね」「MACOが小っちゃい頃から歌を好きだったのは、神様からの思し召しなんじゃないかな。
今の会社の人と出会って、デビューして、ライブをしたり曲を出したりしているのも、きっと必然だったんだとパパは思ってるよ」っていうことが書いてあって。
それを読んだときに、わたしは実体験をおのずと歌にしてるけど、確かに「MACOちゃんが代弁してくれてる」って思ってもらえるような存在になるために生まれてきたのかもしれない、って思うようになったんですね。それが転換点でした。
その時々の想いを歌に残すほど、宝物が増えるような気持ちに
――「桜の木の下」はAbema TVのドラマ『僕だけが17歳の世界で』の挿入歌です。『僕だけが~』は7年前に亡くなった幼馴染が桜の咲く間だけ蘇るというストーリーですが、曲を書き下ろすにあたって、今話していただいたような実体験と重ねて考えたことはありましたか?
MACO:そうですね。「死んだ人が蘇る」というドラマの設定はめっちゃファンタジーですけど、正直羨ましいなって思って。
わたしの場合、亡くなったのは幼馴染ではなく父だったので、境遇は少し違いますけど、「(父が)生き返ったらわたしはどう思うだろう」「限られた時間のなか、わたしたちはどうやって過ごすかな?」ということを考えながら作った曲ですね。
なので、ここ2、3年で形作られたわたしの死生観みたいなものが歌詞に出ちゃってると思います。
――〈あなたと出会えて私は変われたのです〉というフレーズには、恋愛含め、これまでのさまざまな人間関係によって今の自分が形作られているんだというMACOさんご自身の感覚が表れているように思います。
MACO:そうですね。やっぱり、たった1つの恋愛のなかでもいろいろなことを考えるから、そういうこぼれおちた想いを忘れたくないというか、全部記憶したいんですよ。だから歌にしてるんでしょうね。それが増えれば増えるほど、自分の宝物が増えていくような感覚があります。
――過去の出来事をまるごと“宝物”と言えるのが素敵ですよね。わたしだったら、ダメな恋愛は普通に“嫌な思い出”として認識しちゃうし、一刻も早く忘れたいと思ってしまいます。
MACO:あ~、なるほど。でも、みんながみんな、悪人なわけではないじゃないですか。そもそもわたしだって完璧じゃないし、最初に話したように、欠けてる部分がありすぎるからこそ歌を唄ってるんですよ。だから「この人のこういうところが嫌い」って思うことがあっても、「いや、でもわたしは、この人のもっといいところを知ってるはず」と考えることもできるというか。
それに、生きてたらきっともっと楽しいことがあるじゃないですか。だからムカつくことがあっても、数日、数ヶ月後には絶対笑い飛ばせる気がするんですよ。それさえもいつか笑えるようになるというか、笑い話にしちゃったほうがいいなって思うんですよね。
結局人と人って他人同士だから、わかり合えないところも当然あるんですよ。多分わたしにも、他の人からしたら「なんでそんなふうに思うの?」みたいに不思議がられる部分はあります。でもそれこそが人間だし……って思いません?
――人と関わることって難しいしめんどくさいけど、それこそがおもしろいんじゃないかと。そう思えてるからこそMACOさんはラブソングを通じて、恋をすること、もっと言うと他者と交わりながら生きることを唄ってるんですよね。
MACO:うん。きっとそうなんでしょうね。
恋をするとこれまで知らなかった自分に出会える。それは人生の財産になる
――一方で今、「恋愛はコスパが悪い」「だからわたしは恋愛をしない」という選択をする人もいるみたいなんですよ。
MACO:え? コスパが悪いっていうのは“付き合う”っていう行為自体がめんどくさいっていうことですか?
――そうですね。たとえば、何年間かお付き合いした末に別れることになった場合、それまでに費やした時間やお金が無駄になるじゃないですか。あとは、好きな人ができて心が乱れることによって、生活のリズムが変わることを嫌う人もいます。
MACO:へえ~、なるほど! でもそれも一理あるというか、聞いててすごく納得できるなあって思いました。確かに、恋をすると、自分の時間も自分の感情も一気にそっちに持って行かれちゃうし、恋愛ってコスパ悪いですよね。めっちゃわかる。でもわたしは、そのコスパ悪い感じが好きなんですよ。
――というと?
MACO:好きな人ができて、心が忙しくなることによって知らなかった自分が掘り起こされるというか。「え、わたしってこんなこと思うの?」っていう絶対に人には言えないような気持ちが芽生えちゃったりするんですよ。
それって、恋をしたからこそ、これまで知らなかった世界を見ることができた、これまで知らなかった自分を知れたっていうことじゃないですか。
わたしはそういうことがあったら「しめしめ……これは歌詞に書けるぞ……!」って思いながらすぐiPhoneにメモしちゃうけど(笑)、曲を書かない人にだってそういう経験はあると思うし、そういう経験ってきっとその人の人生の財産になると思うんですよ。
確かに、別れることになった場合、それまでに費やしたお金や時間がもったいないっていう気持ちもわかります。でもそのなかで成長してる自分は確かにいると思うし、たとえば「もう絶対にこんな恋愛はしない」「そのためにはこうしよう」っていうふうに考えられれば、その経験は絶対に次に繋がるんですよ。
だからわたしは「コスパ悪い」っていう理由で恋することを諦めたくはないですね。
――それこそ大学だったら、キャンパス内でいろいろな学年、学部の人と出会う機会があるわけで。
MACO:ですよね。いいなあ……。そう考えるとやっぱりもったいないですよ、「コスパ悪い」で諦めるのは!
わたし、大学行ってないのでそういう環境があるのはすごく羨ましいですね。サークル活動も羨ましいし、合コンもやってみたい(笑)。
よくドラマとかでも見ますけど、その日のためにみんなでおしゃれして、いいお洋服を着て、いいバッグを持って……っていう、ああいうのを1回やってみたいですね。そこにめちゃくちゃドンピシャな人がいたら、もう多分、その人一直線になっちゃうと思いますね。
いなかったら……女側だけで楽しめればいいかな(笑)。
――(笑)でも、“恋をすることによって初めて知れた新しいわたし”が必ずしもポジティブなものとは限らないですよね。たとえば嫉妬しちゃったりとか、自分の心の汚い部分を知るきっかけにもなるかもしれなくて。
MACO:確かに。でも……さっき「人生としての財産を」みたいな話もしましたけど、元々、恋ってめちゃめちゃハッピーなものなんですよ。「恋蛍」のAメロにはそういう恋愛のハッピーな部分を書いているんですけど。
――〈寝不足迎えた朝日と/目の下のクマも/私はそれを幸せと呼んだの〉という部分ですか?
MACO:そうです! 「あの人のことが大好き!」「だから今ならなんだって頑張れる!」っていう状況ってはたから見たらバカっぽいかもしれないけど、そういう恋愛の底知れないエネルギーってやっぱりすごいなって思いながら、この歌詞は書いたんですよ。
もちろんアンハッピーなこともあるけど、恋することによって生まれる素晴らしい瞬間っていくつもあるんです。その瞬間にね、瞳の輝きも変わるし、女の人は肌がつやつやになるし、男の人は色気が増してカッコよくなりますよ!
だから「恋愛、そんなに悪くないよ」ってわたしは言いたいですね。自分のまだ知らないところを掘り出してくれるような人とたくさん出会って、いろいろな宝物を見つけてほしいなって思います。
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