悩みは停滞じゃない、前進のための一歩だ。大学卒業から1年、ましのみ が気づいたこと #セルフライナーノーツ

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大学卒業から1年の【ましのみ】にインタビュー。「悩みは停滞じゃない、前進のための一歩だ」 #セルフライナーノーツ

小さい頃、大人から「将来の夢」を聞かれたとき、あなたはどう答えていましたか? お花屋さん、お医者さん、スポーツ選手、アイドル、ヒーロー……。選択肢は無限大です。しかし物心がつき、「現実」の厳しさを知るにつれて、「どうせわたしなんかにはできない」と思うようになった人も多いのではないでしょうか。

慶応義塾大学出身のシンガーソングライター・ましのみさんも、まさにその一人。「歌手になりたい」という幼い頃からの夢を次第に自ら諦めるようになってしまったそうです。ところが、「やっぱり歌が唄いたい!」と大学受験を終えてから一念発起。大学3年生のときにメジャーデビューを果たしました。

「就活までに結果が出なかったら諦める」――厳しい条件を自らに課し、夢を叶えたましのみさん 。そんな彼女にインタビュー。大学時代のことを振り返ってもらいつつ、卒業から1年が経った今の率直な気持ちを語ってもらいました。

文:蜂須賀ちなみ
写真:佐藤友昭
編集:学生の窓口編集部

INDEX

1. リミットは就活まで。幼少期の夢と改めて向き合った大学時代
2. 停滞を感じる時期でも振り返れば大事な一歩になっている
3. 大学生に戻れるならサークルに入りたい



リミットは就活まで。幼少期の夢と改めて向き合った大学時代

ましのみ インタビュー 「リミットは就活まで。幼少期の夢と改めて向き合った大学時代」

――ましのみさんは、小さい頃から歌手になりたいと思っていたのに、一度それを諦めてしまったんですよね。

ましのみ:そうなんです。うちは普通のサラリーマン家庭だったし、音楽をやってた人が親戚にいたわけでもなかったので、会社に勤めないっていうことに対して「そんなの大変だから夢のまた夢だよ」みたいな考えがなんとなく蔓延してて。

わたし自身も「わたしなんかには無理だ」って思ってたし、やりたいって言うことすら恥ずかしいと思ってました。

――慶応義塾大学に進学されてますけど、ご自身としては、卒業後も堅実な道を進むつもりだったのでしょうか?

ましのみ:はい。バリキャリが夢だった ので、中学生ぐらいの頃から「公務員になりたい」とか「官公庁に勤めたい」って言ってました。「誕生日プレゼントに塾行かせて」って両親にねだったこともありましたね(笑)。

まじめだったというよりかは、勉強を頑張っていい成績を取って、(両親から)ほめられるのが嬉しかったんですよ。それで「安定した道を選んだほうがみんなが喜ぶかな」っていう考え方を当たり前にするようになっていったんです。

ましのみ インタビュー 「リミットは就活まで。幼少期の夢と改めて向き合った大学時代」

だけど……うちの高校、すごく自由で個性を尊重してくれる校風なんですけど、文化祭で個人で出し物をする機会があって。みんなが自分の好きなこと、得意なことを披露してるなかで、わたしは、音楽の先生にピアノを弾いてもらって歌を唄ったんですよ。そのときに改めて 「やっぱり唄うのって楽しいなあ」っていう気持ちになった んです。

――それがきっかけで「歌手になりたい」という気持ちが再び芽生えたと。

ましのみ:あとは、大学受験も大きかったですね。どの大学のどの学部を受験するのか、卒業したあとに何をやりたいのか、っていうのを考えれば考えるほど、「歌手になりたい」っていう気持ちが出てきちゃって。

これはきっとやらないと後悔するなと思ったので、 「就活が始まるまでに結果が出なかったら諦める」と自分のなかで決めて 、受験が終わったタイミング、高3のときに音楽活動を始めました。

――音楽活動を始めたとき、ご両親の反応はいかがでしたか? 学生時代に将来の夢をご両親に反対されて、悩んでしまう人も多いかと思いますが。

ましのみ:その気持ちもすっごくわかります。わたし自身、音楽をやるようになってから初めて自分の意見を持って行動できるようになった ので、「よし、これから始めよう!」っていうタイミングで反対されてたとしたら、ちょっと悩んじゃってたかもしれないです。

でもうちの場合は、両親から反対されることはなかったですね。ただ、大学生活もあったので、「学業との両立は結構大変だと思うし、音楽の道は厳しいと思うよ。それでも頑張っていける?」とは言われて。「頑張れるよ」「じゃあ応援するね」っていうやりとりはしました。

ましのみ インタビュー 「リミットは就活まで。幼少期の夢と改めて向き合った大学時代」

――受験が終わってから就活が始まるまでとなると、2~3年で結果を出さないといけないということですよね。「時間がない!」っていう感覚でしたか?

ましのみ:まさにそうですね。ずっと焦ってました。もう音楽のことしか考えてなかったし、大学1、2年のときなんて単位がひどくて、留年ギリギリで……(苦笑)。

わたしの場合、とにかくいろいろな人に聴いてもらいたいっていう気持ちがずっとあったから、そのためのひとつの手段としてメジャーデビューがしたいなと思って 。そこに最速で行くことを一番に考えて、ライブをしたり、オーディションを受けたり、SNSをやったりしていました。

――実際に目標を達成して、大学3年生のときにメジャーデビューしていますよね。

ましのみ:当時は「スタートを切れてホッとした」っていう感覚でした。最終目標はもっと先にあるからそこまで行くのは当然だと思ってたし、「スタートすら切れないなら就職しないとダメだ!」っていう感じだったので。



停滞を感じる時期でも振り返れば大事な一歩になっている

ましのみ インタビュー 「停滞を感じる時期でも振り返れば大事な一歩になっている」

――ここまでのお話を聞いた印象だと、人よりも速いスピード感で生きているというか、すごく生き急いでる人なんだなって思って。

ましのみ:あはははは! 本当にその通りですね。 生き急いでます!

――でも今回のミニアルバム『つらなってODORIVA』を聴いて、そんなましのみさんの考え方、生活のしかたが変わりつつあるのかなと思ったんですよ。

ましのみ:そうですね……。それで言うと、前よりも友達と遊びに行くようになりました 。元々は1週間に1回友達とごはんに行っただけで「疲れた……」って思うタイプだったんですけど、(大学を)卒業したぐらいから、無理してでも意識的に外に出るようにしてて。

そうしてるうちに「疲れた」っていう感覚もなくなってきて、今では、大学の友達やミュージシャン、クリエイターの方々とか、いろいろな人たちと会ったり話したりするのが楽しくなってきてますね。

――そもそも頑張って外に出ようと思うようになったのはどうしてですか?

ましのみ:音楽面での変化が結構大きい ですね。

それに引っ張られるようにして生活も変わっていったというか。それまでの勝手なイメージだと、音楽に詳しすぎる人って頭でっかちというか、たとえばわたしが「こういう感覚でやりたい」と言ったとしても「でもセオリー的にはこうだよね」って言い返してくるような印象があったんですよ。

だから、そういうふうになって自分の感性を潰してしまうくらいなら、わたしは内省的に掘っていくほうが合ってるのかなと思ってました。だからどんどん閉じていってたんです。

ましのみ インタビュー 「停滞を感じる時期でも振り返れば大事な一歩になっている」

だけど「エスパーとスケルトン」(註:作詞作曲はましのみ、編曲はsasakure.UK)を一緒に作ったsasakure.UKさんのような、知識と感性を両立されてる方と出会うなかで「こういうやり方があるんだ」「いいなあ」って思うようになって、音楽のことをもっと勉強したいと思うようになった んですね。そうやって音楽面での考え方が変化していくなかで、プライベートでも、どんどん外に開けていくようになりましたね。

あとは……周りの子もそうなんですけど、21才を過ぎたぐらいから、人生について考えることって増えません?

――わかります。20代が始まるタイミングだし、4年制の大学だと就活を始める時期だし、学校を卒業したあとのことを考える機会が増えますよね。

ましのみ:そうなんですよ。それで、ハタチのときにはなかった「この先の人生を全体で見る」っていう考え方が出てきた こともあり、自分の知らない価値観、生き方をどんどん取り入れたいっていう気持ちが強くなってきたのかもしれないです。

――今回のアルバムにある「つらいときは立ち止まっていい」「逃げたってかまわない」というメッセージは、他者を知ることの意義や、長い目で人生を見つめる感覚に気づけた今のましのみさんだからこそ歌えたことですよね。歌声もやわらかくて、傍に寄り添ってくれるようなやさしさがあります。

ましのみ:ありがとうございます。確かに、曲を書くときも唄うときもすごくやさしい気持ちでした。

ましのみ インタビュー 「停滞を感じる時期でも振り返れば大事な一歩になっている」

わたし、友達やファンの子から恋愛相談を受けることもあるんですけど、そのなかで「最近全然上手くいかない」「つらい」っていう悩みを聴く機会が多いなって思ったんですよ。

でも、悩んでる最中は「全然進めてない」って感じてたとしても、あとから振り返ってみたら、実はその悩んでいた時期が、前に進むための大切な一段になっていることだってある 。そんな想いを込めて、一人ぼっちになったときに聴きたい曲、生活をしてるなかでの「踊り場」になってくれるような曲を5曲書きました。

「エスパーとスケルトン」では恋愛の一番楽しい時期を描いてるんですけど、そうではない日々のほうがわりと多いじゃないですか。なので、「7」では2人の関係性がちょっと上手くいってないところを書いてますし、「NOW LOADING」では別れたあとの自暴自棄になってるところを書いてますし。「のみ込む」は悲しいことやつらいことがあったときに聴きたい曲ですね。

――ましのみさんも、上手くいかなくて落ち込むことはありますか?

ましのみ:もちろんあります。この5曲も、最初は聴いてくれる人に対して唄ってるつもりだったんですけど、実は根本では、わたしが唄ってほしい曲だったりするんですよね。

この1年間リリースがあんまりなかったし、人間関係も外に開き始めたばかりで、音楽についても改めて勉強し始めたばかりだから、障壁にぶつかりながらやってきた感覚があったんですね。

上手くいかないことが多くてもどかしさもあったし、「わたし知らないことばっかりだな」「後退してるのかな」って思ったりもしたんですけど……。でも結局この作品を作るときに、この1年で培ったことがすべて活かされてて。まさにわたしも「踊り場」にいた っていうことですよね。

今回の作品ができたとき、新しいステージに行けたなっていう感覚がすごくあったんですよ。今、成長した状態でナチュラルにやりたい音楽をやれてる感じがして、とても楽しくて。ネクストステージっていう感覚がかなり強いです。



大学生に戻れるならサークルに入りたい

ましのみ インタビュー 「大学生に戻れるならサークルに入りたい」

――すごく素敵な作品だと思います。ここまでお話ししていただいたように、卒業してからの1年間で考え方が大きく変わったかと思いますが、今、大学時代に戻れるとしたら、やってみたいことってありますか?

ましのみ:サークルに入っておけばよかったと思ってます 。わたし、大学生ノリみたいなことをやったことがないんですよ。

――新歓にも行きませんでしたか?

ましのみ:それもほとんど出てないですね。一度、アコースティックギターのサークルに入ろうかなと思ったんですけど、そこにも入らずに終わっちゃいましたね。なんか怖かったんですよ。「パリピの波に呑まれて窒息死したらどうしよう……」って勝手に恐れてて(笑)。

ましのみ インタビュー 「大学生に戻れるならサークルに入りたい」

今考えてみると、わたしはサークル活動に生産性を求めちゃってたんですよね。あの頃のわたしは音楽を始めたばかりで。如何にたくさんの曲を作るか、ライブや発信を通じて如何にお客さんと付き合えるか、っていうことが何よりも大事だったから、そこに時間を割きたかった。

だから「みんなで曲を練習して合わせる活動なんてやってる暇がない!」って思ってたんですね。でも今なら、そういう時間が楽しいんだろうなっていうことがわかりますし、やってみたいなっていう気持ちもあります

――生産性のない時間こそ大人になってからふとしたときに思い出すというか。のちに青春と呼べる思い出になりますよね。

ましのみ:そうなんですよね。だから大学生らしい青春がしたかった(笑) 。クラスの子がよくスノボに行ってたんですよ。わたしは「その日はライブがあるから」と断りつつも、みんなが少し羨ましくて。サークルでの飲み会とか、追いコンとか、合コンも経験してみたかったですね。

あとは、卒業してからもっといろいろなことを勉強したくなりましたね。「あの講義取っておけばよかったなあ」とか「せっかく中国語(の講義を)取ったんだから、ちゃんと勉強して喋れるくらいになっておけばよかった」みたいなこともたまに考えます。

ましのみ インタビュー 「大学生に戻れるならサークルに入りたい」

――学生の頃は、メジャーデビューというスタート地点に一刻も早く到着したかったから、音楽のことだけを考えて5倍速で必死に走っていたけど、たとえば速度を落としたら、景色を楽しんだり長く走ったりすることのできる余裕が生まれるわけで。

ましのみ:そうですね。あの頃の努力があったからこそ今があるんだっていうことはわかっているので、ないものねだりではあるんですけど、努力をするにしても、長く続けられるような努力をしていかないと意味がないなあとは思うようになりました。

要は、5倍速にすることによって、解像度が落ちちゃってたん ですよ。大学生の頃のわたしは音楽のことしか考えていなかったから、学業をおろそかにして、単位を落としてしまった。そういうふうに、できないことが生まれちゃってたわけじゃないですか。それで今になってから、取り戻すように、ライブのサポートメンバーからコールのやり方を教わったりしてるわけで(笑)。

だからきっと、生き急ぐことがすべてじゃないんですよね。やらなきゃいけないこと、やりたいことをちゃんとやったうえで生き急いだほうがいいんだ なっていうことに最近やっと気づきました。

――生き急ぐことをやめたわけではないんですね(笑)。

ましのみ:あはは! いや、わたしとしては最近そうじゃなくなったって思ってるんですよ? でも周りの子からは「“マジで生き急いでる”から“ちょっと生き急いでる”に変わったぐらいだよ」って言われちゃう んです(笑)。

ましのみ インタビュー 「大学生に戻れるならサークルに入りたい」

【インフォメーション】

■「ましのみ」ワンマンライブ『ODORIVA』

2020年5月13日(水) 大阪 アメリカ村BEYOND
2020年5月20日(水) 東京 shibuya WWW X  

■「ましのみ」/1st Mini Album『つらなってODORIVA』

発売日:2020年3月18日(水)

■「ましのみ」楽曲配信先総合リンク⇒https://lnk.to/mashinomi

■「ましのみ」Official HP:http://mashinomi.com/

編集部:ゆう

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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