理系ライターXが行く!vol.1『人を助けるマシンをつくりたい』#大人の社会見学

編集:ナベ子
2020/01/17
仕事を知る
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理系ライターX」がすべての大学生に贈る、企業見学レポート連載!持ち前の「理系知識」を駆使し、様々な企業に取材!企業の知られざる一面や、想像もしなかった"あたらしい働き方"が見つかるかもしれないぞ。

「オムロン」に取材してきたぞ!

「オムロン」という社名を聞いたことがあるだろうか。もしかすると「あぁ~、あの卓球ロボットの……」とか「体温計のロゴマークで見たような」という方がいるかもしれない。 “福利厚生の素晴らしい会社”として知っているケースもあるだろう。同社は幅広い分野で「社会の役に立つ」事業を続けているBtoBメーカーだ。

そのオムロン株式会社で入社以来、画像処理技術の研究に携わってきたのが、京阪奈イノベーションセンタで働く青位初美さん。

2児の母であると同時に新規プロジェクトにも携わり、仕事と家庭を両立する青位さんに、仕事のやりがいや同社ならではの働き方についてお話を伺った。

幸せとは、自分の夢と仕事がリンクすること

青位さんは子どもの頃、家の中にある機械を手当たりしだいに分解し、組み立て直す遊びが大好きだったという。

「何かに興味を持つと、この中は一体どうなってるんだろうと思い、ついバラバラにするクセがありました。“頼むから、壊さんといてな”と親からよくいわれていましたね(笑)」

根っからのリケジョは大阪大学工学研究科に進み、専攻は電気電子情報工学科の研究室を選ぶ。研究室が始まって以来、初めての女子学生だったそうだ。

「だから逆に先生の方が、女子学生をどう扱ったらいいんだとオロオロされたりして(笑)。私自身は男性が多いとか、女性がどうとかいう視点で物事を考えたことがないんです。自分のやりたいことをできる場所であれば、どこでもいいじゃないのって思うタイプですから」

そんな青位さんがオムロンに就職した理由は、まさに自分のやりたいことができる会社だったから。就活で出会ったオムロンは「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべき」とアピールしていた。

「見つけた! もう、ここしかないやんって感じでしたね。だから福利厚生がどうのとか、女子社員の扱いがどうなってるとか、最初はまったく気にしませんでした。後で調べてみると、福利厚生がとてもしっかりしている会社だとわかり、めちゃラッキーみたいな」

そしてオムロンを選んだことで、その後のキャリアパスも大きく開かれた。そもそも女性が働きやすい会社だったが、さらに時短勤務の条件が緩和されて在宅勤務制度も導入された。

「しかも当社では制度利用に関して男女を問わないのです。だから男性でも育児や介護に取り組む人がいて、それが当然のことと認められています。その背景にあるのは、企業理念に人間性の尊重を掲げ、さまざまな考えを持った多様な人財、誰もが個性や能力を存分に発揮し、活躍できるよう制度を整える当社の考え方です」

青位さんは、以前の事業部で責任ある仕事を任されながら、お子さんを2人出産し育てている。まだ小学生の2人にとっては、学校から帰ると家にお母さんがいてくれれば何よりうれしいだろう。

「家庭も仕事も、自分の夢を追いかけて日々を過ごせる私は、とても幸せだと思います」と語る青位さんの表情はとても輝いていた。

そんな青位さんが「人々の生活を支える技術やロボットをつくる」という夢を持って働いている「オムロン」とは、どのような会社なのだろうか。

機械と人の融合から効率化へ

「センシング &コントロール + Think」――。オムロンのホームページにアクセスすると、まずこのキャッチフレーズが目に飛び込んでくる。この言葉には同社の業務内容が、極めて簡潔に、しかも的確に表現されているはず……。とはいえ「BtoBメーカーって?」と予備知識のない人には「ちょっとわからない」と感じるかもしれない。

オムロンは京都に本社のあるオートメーションのリーディングカンパニー。売上高は2019年3月末時点で、約8,600億円、従業員数は3万人以上、世界中に拠点のある大企業だ。BtoB、つまり企業対企業の取り引きがメインなため、一般の消費者にはあまりなじみがない。だから知らない学生も多いかもしれない。けれども、まちがいなく日本の優良企業の一つだ。

同社は、制御機器、電子部品、社会システム、ヘルスケア、環境など多岐にわたる事業を展開している。ヘルスケアは体温計や血圧計だし、電子部品もその名前からなんとなく製品イメージがわくだろう。では制御機器事業、社会システム事業とは、一体どんな製品を扱っているのだろうか。

「売上のもっとも多いのが制御機器事業で、センサーやコントローラーなどをつくっています。社会システム事業のわかりやすい製品といえば、駅の自動改札機ですね。」と説明してくれるのは、名刺の英語表記に“engineer”と記されている青位初美さん。大阪大学工学研究科電気電子情報工学で修士課程まで学んだ、バリバリのリケジョだ。

センサーやコントローラーが何かと問えば「工場の自動化を支える装置」と教えてくれた。例えば食品工場の製造ラインを思い浮かべてみよう。

ベルトコンベアの上を容器が流れていき、自動的に中身が充填され、最後にはきちんと包装されて商品ができあがる。一連のプロセスでなにが起こっているだろうか。まず決められた量だけ、きちんと中身を入れなければならない。さらに、まちがいなく規定量が入っているかどうか、確かめる作業も必要だ。

これを人が計量カップなどで量を測って容器に入れ、ハカリに載せて重さを測れば、もちろん製品は完成する。けれども、それでは時間がかかって仕方がないし、人手もたくさん必要だ。

「そこで人の代わりに作業するのが、規定量通りに中身を充填するのがコントローラーつまり制御機器で、決められた量がきちんと入っているか確認するのがセンサーです。機械に任せれば、人より断然速く正確に作業できますね」

ということは、最近よくいわれている“AIが発達すれば、これまで人が担当していた作業が不要になり、人が要らなくなる”という近未来の話が、すでに現実となっているのか。

「まさか(笑)。そんな大げさな話ではなく、工場のラインが自動化されたのは、もう何十年も前の話ですよ。ただ、最近はセンサーやコントローラーの性能が高くなり、生産ラインに関わる人の数がかなり減ってきています。とはいえ人がまったく要らなくなるなんてことには、ならないと思いますね。機械にできることは機械に任せて、その分生まれたゆとりを活かして、人は人にしかできないより創造的な作業を担当する。そんな未来になると思っています」

AIが人の仕事を全部奪ってしまうなどとは、オムロンでは考えていないようだ。

職業ドライバーをサポートする

そこで改めて注目したいのが、「センシング &コントロール + Think」という言葉だ。

「これから何より重要なのは“+ Think”の部分、つまり人が考えることによって生まれる知恵です。当社の主力製品のセンサーは、情報を集める機器でもあります。実際に1つのセンサーだけでも毎日、膨大な量のデータが集められています。そのデータを活かすも殺すも、まさに知恵次第。データの活用法を考えるには、そもそも問題意識がなければ始まらないわけで、問題意識を持つのは人にしかできないことじゃないですか」

オムロン株式会社 技術・知財本部 青位初美さん※オムロンの研究開発拠点である京阪奈イノベーションセンタには、オムロンの歴史・事業概要・技術を紹介するコーナーも設置されている。

自動車関連の事業にいた頃、青位さんは、まさに知恵を活かす業務に携わっていた。そのテーマはアクティブセーフティ、“積極的な安全確保”だという。具体的に何をしていたのだろうか。

「ドライバモニタリングシステムの開発に携わっていました。この技術は、今は安全運転管理サービスに活かされています。例えばトラックや長距離バスなどのドライバーの運転中の状況を各種センサーで捉え、その人がどういう状況にあるのかをAIを使って判断し、必要なサポートをアドバイスするのです。視線の動きを画像センサーで追えば、少し眠そうでぼんやりしているときや脇見をしたときなどに、直ちにアラートを出せます。あるいはハンドル操作の動きやアクセルやブレーキなどのペダルの踏み方などをセンサーできめ細かく測定していれば、“いつもと違う”動きを見つけられます。すると健康状態に何か問題があるのではないかと予測できるでしょう。疲れがたまって、動きが鈍くなっているのではと判断すれば、早めに休ませてあげられますよね」

ドライバーはもちろん運送会社などにとっても、事故を起こす確率を限りなく下げられるのだから、何ともありがたいシステムだ。職業ドライバーに限らず、今や社会問題となっている高齢者が運転するクルマにも、ぜひつけてほしい。

その技術、誰のどんな問題解決に役立つの?

青位さんはいま、京阪奈イノベーションセンタで新たなプロジェクトに取り組んでいる。今回のテーマは、これまで関わってきた仕事の延長線上にあるテーマ、ターゲットはこれまで対象としてきた職業ドライバーも含むメンタル不調者だ。

職業ドライバーを一つの切り口として考えた場合、ネット通販などの普及により、物流に対するニーズは非常に高まっている。インターネットのおかげで買い物はとても便利になった。ただし、最後は必ず誰かが荷物を運ばなければならない。倉庫から各拠点までの配送や最終拠点からエンドユーザーへのお届けなどでは、まだまだ人手つまりドライバーが欠かせない。

ところが、働き手は不足する一方だ。

「少子化によりドライバーのなり手もどんどん減っています。すると残ったドライバーたちに、そのしわ寄せがいってさらに仕事がきつくなり、事故発生のリスクが高くなる。交通事故以外にも見過ごせない問題が出てきています。それはドライバーのメンタル不調で、注意力を要求される車の運転は神経を疲れさせるのです。ところが荷物が増え続けているため、ドライバーは十分に休みをとりづらい。無理をして精神的な負荷がかかると、メンタル不調に陥る人が出てきます。こうした状況を何とか改善したいのです」

以前の業務では運転中のドライバーの動きをきめ細かくモニタリングし、安全確保につなげていた。新規プロジェクトで考えられているのは、運転中に限らずドライバーの普段の生活ぶりまで広くモニタリングし、メンタル面の変化をいち早く捉えるシステムだ。

「例えば体調を崩して休まれた方が、復職したときなどを重要なタイミングと考えています。一度メンタル不調になり、元気になって職場に戻った。でも、その方は決して絶好調ではないはずです。するとささいなキッカケで、また不調になるリスクがある。ところが“少ししんどいな”と感じたとしても、まじめな人ほど“それまで休んでいたのだから迷惑かけちゃいけない”などとがまんしてしまいがちです。そんな人の微かな変調をリアルタイムに捉えられれば、早めに休んでもらったりできるでしょう。センシング技術をはじめとする当社の技術力をフル活用して、働く人を応援したいのです」

オムロン株式会社 技術・知財本部 青位初美さん※京阪奈イノベーションセンタ内には、思いついたときすぐにディスカッションできるスペースがたくさんあるそうだ。

プロジェクトはまだ立ち上がったばかりで、今は現場のヒアリング活動に力を入れているところ。これから本質的な課題を抽出して、その課題解決に提供できる独自の技術を創出する。

しかもオムロンでは新製品やサービスを開発する際に「社会の役に立つ、新たな価値があるのか」が問われるという。

プロジェクトチームのメンバーは4人、いわゆる理系が2人で残りは文系。青位さんは画像認識のプロとしてメンバーに加わり、他の3人はまったく異なるバックグラウンドを持つ。

「現場でヒアリングを重ねると、メンタルの問題の深刻化をひしひしと感じます。1日でも早く製品化につなげて、困っている人たちに提供したいですね。」

【お話をしてくれた人】
オムロン株式会社 技術・知財本部 研究開発センタ 知識情報研究室
青位初美(あおい はつみ)さん
大阪大学 工学研究科 電気電子情報工学卒業。2009年の入社以降、一貫して画像処理技術の研究に従事。2児の母として仕事と家庭の両立を組織を巻き込みながら実践中。在宅勤務や短時間勤務を利用しながら、自らの夢の実現に向け日々邁進。社会課題解決の解決を目指し、プロジェクトのキーパーソンとして活躍中。

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文:竹林篤実
イラスト:TOA
編集:ナベ子

編集:ナベ子

生まれは北海道、学生時代は主に研究と剣道に捧げてました。最近は妖怪が好きです。
好奇心で人生をもっと豊かに!をテーマに日常/非日常のアレコレを題材にした記事をメインで担当してます。

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