クリスマスケーキの廃棄をなくしたい! 変えていくにはどうすればいい? #もやもや解決ゼミ

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日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。今回はクリスマス特集です!

今年、みなさんはクリスマスケーキを購入しますか? 12月24日まではケーキ屋さん、スイーツ店のみならず、コンビニ、スーパーなどでもクリスマスケーキが一斉に販売されています。しかし一夜明けると余ったケーキが値引き販売されていたりして、ちょっと悲しい気持ちになるもの。
恐らく日本中でかなりの数のクリスマスケーキが廃棄されていることでしょう。

クリスマスケーキの廃棄をなくしたい! 変えていくにはどうすればいい? #もやもや解決ゼミ

クリスマスを楽しむためとはいえ、食品の大量廃棄が発生するのはいいことではありません。クリスマスケーキの廃棄をなくし、現状を変えていくにはどうすればいいのでしょうか?

愛知工業大学 経営学部経営学科 小林富雄教授に聞いてきました! 小林先生は「食品ロス」についての日本を代表する研究者です。

クリスマスケーキ廃棄の問題点とは?

おせち料理、バレンタインなどもそうですが、ある特定の時期(あるいは記念日など)に集中的に需要が喚起され、市場に投入される商品を「季節商材」といいます。クリスマスケーキはその中の一つで、正確な数字はありませんがやはり多くの廃棄処分が行われていると考えられます。

このような季節商材は正確な需要の量を予測することがほぼ不可能です。

クリスマスケーキは「中食」用の商品です。中食というのは「家庭外で調理された食品を家に持って帰って食べること」です。この中食の消費者がクリスマス当日にどのような行動を取るのか、を予測するのはとても難しいことです。

例えば独身者だとして、昨年のクリスマスにケーキを買ったから今年も買うだろうという予測が当たりますか? 友達に誘われてパーティーに行ってしまうかもしれませんね。また家族を持つお父さんだとして、昨年買わなかったら今年も買わないだろうという予測は当たるでしょうか? お子さんに言われて今年はケーキを買って帰宅するかもしれません(笑)。

生産者側(流通も含めて)にも困難があります。

例えばコンビニやスーパーなどのチェーン店では、お客さんが来店したときに「目的の商品が『ない』」という事態をとても恐れます。販売の「機会損失」と考えますし、「カスタマー・ロイヤリティー」が落ちるからですが、そのためどうしても生産数は過剰気味になります。

また、チェーン店の中の「ある店舗」だけが「たとえ売り切れたとしても売れ残るのは避けたい」と思っても、もしその店舗にお客さんが来て「売り切れじゃないか!」といったことが起こったら、チェーン全体のブランドに傷が付きますので、なかなかそれもできません。

つまり、クリスマスケーキはそもそも季節商材で売れ残りを別の日に売り切ることが難しく、消費者からの需要を正確に予測するの が難しい上に、イベント性が高く欠品を我慢してもらうというわけにもいかない。そのため、どうしても過剰供給になり、廃棄される数も多くなってしまうのです。

※カスタマー・ロイヤリティー(customer loyalty)とは、ある商品、ブランド、サービスに感じる信頼や愛着のこと。

廃棄を食い止めるにはどうすればいいの?

このような食品の廃棄、食品ロス問題は、生産者だけではなく消費者にも責任があります。「生産者だけが商品数を調整すればいいじゃないか」という考え方には限界があるからです。

上記のとおり需要を正確に予測することは不可能な中でも、生産者はできる限り消費者からの需要に応えようとしているわけですから、消費者も需要をある程度「供給に合わせる」という努力をすることも大事です。

廃棄を食い止めるにはどうすればいいの?

国連が提唱している「SDGs」(Sustainable Development Goalsの略:持続可能な開発目標)という考え方があって、その12番目に「つくる責任 つかう責任」とあります。これは、生産者の責任と消費者の責任はイーブンであり、持続可能な社会を維持するには生産者・消費者が共に行動しなければならない、といっているのです。

⇒参照:『国連開発計画 駐日代表事務所』「持続可能な開発目標」
https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals.html

クリスマスケーキの廃棄の問題では、例えばコンビニエンスストア・チェーンである『ファミリーマート』では、クリスマスケーキを完全予約販売制にしています。予約された分だけを作るわけですからロスを最小限にすることができますね。

また予約制にすると、ロスの分を原価に織り込む必要がなくなります。例えば、10個作って9個廃棄なんてことが起こり得るとすると、1個売るだけですべての利益を賄う必要があります。そうすると材料費の原価率を極限まで減らし、利益率を例えば90%以上にするような商品を開発しなければならず、これではとてもよい(高い)食材を使うことはできませんね。

しかし、完全予約制であればその分は確実に売れるわけで、原価率も適正なものにできますからよい食材を使えますし、おいしいケーキになるでしょう。食品ロスが減らせる上に、消費者にも「確実にケーキが買えて、しかもおいしい」というメリットがあるのです。

もう一つ、「クリスマスにケーキを食べない」というのも回答です。季節商材は一時期に巨大になる需要に合わせて生産されているわけで、需要が平準化されれば生産も効率化し、廃棄される量も小さくなります。

一説によれば、クリスマスに合わせて数カ月も前からケーキやチキンを準備しているそうです。(日本では)ほぼ1日のクリスマスのために、ものすごい量の食材を確保し、調理、冷凍するなどして準備しているのです。

これは自然の摂理からすると、あまりにかけ離れた行為ですし、「できたてのものを食べるのが一番おいしい」ということからしてもヘンなことです。消費するにしても適切な量とタイミングというものがあるはずです。

ですから消費者が「クリスマスには食べない」という選択をするのも廃棄問題への一つの回答になります。多忙を極めるクリスマス以外のほうが、職人さんが時間をかけて丁寧に作ったケーキを食べる機会が多い可能性は否定できませんね。もちろんクリスマスパーティを楽しみたい方も多いでしょうから、「クリスマスケーキを自分で作る」というのも重要な回答になるでしょう。

繰り返しになりますが、食品ロスは「生産者の問題」かつ「消費者の問題」です。お互いに歩み寄って行動しなければ何も解決できません。読者の皆さんも消費者として、食品の廃棄を少なくするために行動していただけたら、と思います。


考えてみれば、クリスマスケーキだけではなく、お正月のおせち料理、節分の恵方巻き、バレンタインのチョコレートなど、需要が一気に喚起される季節商材はたくさんあります。それぞれで大量の食品廃棄が起こっているとすれば、クリスマスケーキだけでは済まない問題です。生産者(流通者含む)に解決策を委ねるのではなく、まず消費するわたしたちも意識を変えていく必要がありそうです。

イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp


教えてくれた先生

小林富雄 Profile

愛知工業大学 経営学部経営学科 教授。博士(農学、経済学)。

1973年富山県生まれ。2003年、名古屋大学 大学院生命農学研究科博士後期課程修了。2009年、中京学院大学 中京短期大学部健康栄養学科准教授。2015年、名古屋市立大学 大学院経済学研究科博士後期課程(短期履修コース)修了。2015年、愛知工業大学 経営学部経営学科准教授を経て、2017年より現職。
著書に『フードバンクの多様性とサプライチェーンの進化』(共著,筑波書房,2019年)、『改訂新版 食品ロスの経済学』(農林統計出版,2018年)などがある。

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好きなものはチョコとビールと音楽と映画。ネトフリ廃人。ときどき絵を描きます。
Twitterで人の「いいね!」欄を見て時間をつぶすのが日課。

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